「・・・などなど、意見が対立することだってあるんだ」
「むう、だが、結局二人で乗り切ったってことではないか」
夫婦で意見が対立した話を聞かせてやると、つむじがあまり面白くないような反応を示した。
「それはそうでしょう。乗り越えることが出来たからこそ、結婚したのでしょう」
「近所のおばちゃん達が。かーさんととーさんはおしどり夫婦って言ってた…。で、オシドリって何?」
つむじに対して妹達が反応するがつむじが求めていた反応ではなかったようだ。マリーネとゾイからプイっと顔をそむけると、ヴィルヘルムに向かって宣言する。
「宰相は我が婿にするのだ」
「あ~、はいはい、二十歳になったらもう一回行ってくれ」
ヴィルヘルムがそう受け流すと、はやてはニヤーっと笑って言った。
「まあ、なんて大胆な浮気予告!そうなったら、私はマリーネとゾイと結婚しちゃう!!」
言いながら二人を手招きしたが…。
「えー、僕も結婚するなら。とーさんとがいい」
「同じく」
「なっ!!なんでや~!」
二人同時に袖にされたはやてが半泣きになった。
「私みたいないいお嫁さん、そうはおらんで、そこそこ(給料も)貰えているし、料理かて得意な方やから休暇の日にはお菓子作りもしとる。性格も明るくて、笑いの絶えない家庭を作るのに最適な性格や」
自分を売り込み始めたはやてをみて、なんだか結婚相談所のプロフィールみたいだな。と、ヴィルヘルムは思った。
(後足りないのは、婚活を始めたキッカケだな)
と、くだらないことを考えていると、
「でも、かーさん。ほとんど家にいないじゃん」
「私もパートナーの仕事は在宅勤務派です」
「わっさ!」
二人の言葉に進撃の巨人が殴られたような悲鳴をあげてはやてが崩れ落ちた。
ヴィルヘルムは結婚後、後任のグリフィス達が育ってきたこともあり、管理局を退官し、民間時代のつてで在宅勤務ができる職に就いていた。3人娘のおむつをかえた回数もヴィルヘルムの方が多かったりする。対して、現役の管理局幹部で現場にこだわるはやては当然ながら家に帰るのも遅く、娘達とのコミュニケーションの量も、ヴィルヘルムに比べて少なくなってしまう。
はやて自身もそのことは自覚しており、ヴィルヘルムの内助の功を出されると全く頭が上がらない。世の中のダメな旦那なら、誰が稼いできた金で生活できているんだ。と、でも言うのかもしれないが、残念ながら財産運用についてもヴィルヘルムの方が一日の長があるので、それすら言えない。
(あ、あかん、なんとか反撃を…)
やられっぱなしでは、母親としての尊厳が奪われる。と、危機感を覚え、震える体を鼓舞しながら立ち上がろうとするはやてに、王様が近寄っていく。
つむじは慰めるように、はやての肩に手を置くと、
「気にするでない。うぬが職務に忠実であろうとしていることは、みなが評価しておるわ」
「つ、つむじ…」
娘が自分の職務の大切さに理解を示している。と、一種の感動すら覚えながらはやてが顔をあげ、つむじを見る。
つむじははやての手を取り…。
「それはそれとして、最近、ヴィヴィオとコロナにおっぱいの大きさで負けたというのは、事実であるのか?」
つむじはニヤーっと笑って言った。
「ふっざけんな!この小娘!!ミウラやジークには負けてへん!」
「はっ!その二人(平均≧ミウラ=ジークリンデ)に勝ったとして何の自慢になるのか!」
激昂するはやてに対して、つむじがあざ笑う。
「それだけやない。アインハルトにリオ、それにフーカにだって…」
平均を超える人物が出てこない母に対して、つむじが哀れみの視線を向けた。
「母よ、言っててむなしくないか?」
「くっ!つむじは覚えておらんかもしれんけどな、アンタたちがいっぱい吸うたから」
ヴィルヘルムが無言で空間モニターに、子供が生まれる前に海で撮影された写真を表示した。写真の中のはやてはストローハットを指先でつまみながら撮影者に向かって微笑みかけており、コーデはホットパンツで健康的な素足をさらし、ボタンフロントのノースリーブシャツの裾をへその上で縛り上げることで、黒い水着のトップスを上手く強調している。が、うん、ミットチルダ基準だと平均は超えないかな。
つむじはモニターの中のはやてと、目の前にいる母を見比べると、遠慮なく母の胸を掴んで言った。
「変わらんではないか」
マリーネとゾイも続く。
「…残念ながら、リンネ氏、ヴィヴィオ氏、コロナ氏と比べると…」
「かーさんは、フカッて感じだけど、ヴィヴィ達はフカフカって感じ?」
これっぽっちも忖度しない娘たちに、はやては同情を誘う作戦を放棄した。
「もう少しこう何というか、手心というか、加減ってもんを覚えへんともてへんよ、娘達。あと、あんま、強く揉んだらアカン。末っ子の夜食が出てきてまう」
なおもまとわりつく娘たちを優しく諫めるはやてを見ながら、ヴィルヘルムが呟く。
「オーバーキルにもほどがあったな」
はやてが耳ざとく聞きつけると、
「ちょっと、旦那さん。あなた子供たちにいったいどういう教育してん?」
「もちろん、家庭を司るものが一番偉いという教育だ」
ヴィルヘルムが得意顔で言うと、
「それ、問題あると思いま~す。ブー、ブー」
はやてが笑いながらクレームをつけた。
と、玄関のロックが解除される音がなる。
「ただいまー」
「今、戻りました」
玄関先からヴィータとシグナムの声が聞こえる。娘たちが廊下に出て二人を迎えると、二人は表情を緩めた。
ヴィルヘルムが立ち上がってハーブティーの用意をし始めると、はやてがカップを用意する。いつもの流れだったが、今日は少し違った。はやてがお湯を入れたばかりのリーフポットを取ると、早々にリビングダイニングにむかう。
「二人とも聞いて~。ビルの教育にちょお問題があると思うんよ」
どうやら味方を増やしに行ったらしい。
「お、なんだ、なんだ」
ヴィータは久しぶりに、はやてVSヴィルヘルムの構図になったことを察知して、はやての味方になろうと腕まくりをした。
「…伺いましょう」
シグナムは一度、ヴィルヘルムの方を見てから、はやての話を聞こうとしたが、
「お前たち、今週末、私の実家に行こうか?ゴットリープおじさんに、末っ子のお披露目を兼ねて…」
っと、ヴィルヘルムが唐突に娘たちに提案をし始めたのを見て、騎士たちは態度を変えた。
「家のことは、副長に任せておいていいんじゃねぇかな?」
「そうですね。彼の采配にミスはありません」
ヴィータとシグナム、この二人は今週末、待機も当直もない完全休養で、丸一日子供たちと過ごせると楽しみにしていたのだ。それを分かっているヴィルヘルムは、こちらに味方しないと、子供たちを実家に連れて帰り、お前たちは留守番にするぞ。と、暗に脅しているのだ。
「ブルータスお前もか…」
「何者だそれは?」
ヴィルヘルムの謀略に屈した騎士たちを見て、思わず漏らしたはやての言葉に、つむじが反応した。はやてが騎士たちにジトっとした視線を送りながら説明する。
「私の故郷の言葉や、裏切りにあったら言うんや」
ハーブティーを差し出されながらも、気まずそうに明後日の方向に視線を向ける騎士たち。
「ずいぶんな、部下を持っているな、はやて」
「明智光秀が、何か言っとるな~」
「大石内蔵助に向かってなんてこと言うんだ」
はやて達の会話に、日本の教育を受けていない子供たちが顔にクエスチョンマークを並べている。はやての影響で地球かぶれになっているヴィルヘルムがちょっとおかしいのかもしれない。
「ふん、どうだか」
自分自身を忠臣であると主張するヴィルヘルムに、はやてが舌を出したころ、人数が増えた気配を察したのか、赤ん坊のぐずる声がテーブルに置かれたベビーモニターから聞こえてきた。
一拍遅れて、
「あふぅ…起きちゃいましたか」
「ふぁあ、今何時だ?」
「ふぁぁい、うーん。おしめじゃないから、お腹がすいたのかも。ザフィーラ、はやてちゃんを呼んできて…」
八神家の末っ子に振り回されて、仮眠を取っていた者たちの声が聞こえてきた。
「出番だそうだ、頼んだぞジュリアス・シーザー」
「まったく、都合のいいことばかり言って…。しゃあないな」
ヴィルヘルムが促すと、はやては不敵に笑った。
「そんなら、いってみよか」
以上でノッポの副長Force編、終了です。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
機動六課の時は、本編の敵キャラクターに負けるところしか書けませんでしたが、やっと勝たせてやれました。
久しぶりに副長を脳内で動かしましたが、副長の地球かぶれがこのまま進むと、老後は蕎麦打ちとかはじめそうだな~。と、妄想しています。
挿絵作成中、マレーネとゾイがギャル化してしまいました。
【挿絵表示】
面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。
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何卒よろしくお願い申し上げます。