ハオ様(偽)はニートになりたい   作:文太マリア

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2話

 「で?何をしに来たのかな時雨(シウ)

 

 「仕事を持って来た。じゃなきゃ、誰がアンタと関わろうとするかよ」

 

 「ひどいなぁ。俺って殺し屋みたいな禪院よりも安全だよ?殺すのも呪霊や快楽殺人者の呪詛師に限定しているしね」

 

 「その禪院を玩具みたいに弄んで、半殺しにしたから怖いんだ」

 

 「いやいや、殺さないように注意したからあんな感じになっただけだよ。

 それに、あれって正当防衛だからね?先に銃をぶっ放してきたの向こうだよ」

 

 東京の六本木にある上等なマンションの一室で、室内に置かれたソファでゴロゴロと漫画を読んでいる俺の前には数人の男達が立っていた。

 目の前で呆れた表情を見せる男に、俺は心外なと言わんばかりの表情で答える。

 この六本木に住むようになって半年。楽に生き抜く為に力を付けて来た結果、呪詛師の世界でそれなりの地位を手に入れていた。

 大陰陽師の再臨。呪術師の世界でも俺は色々な意味で有名人であり、アイヌの呪術師にはスピリット・オブ・ファイアを盗んだ敵として狙われている。

 俺が盗んだわけじゃないんだけどね。

 

 「わかったわかった。じゃあ、仕事の話をするから聞いてくれ」

 

 んで、目の前に居るこの男は仲介屋の使いで来る時雨という韓国籍の元刑事。

 ハードボイルドが良く似合うナイスガイだ。

 

 「仕事は呪詛師の抹殺。名前は粟坂二良で職業は新宿を縄張りとする殺し屋。

 弱者を甚振って殺すサディストなんだが、最近調子に乗っているらしくてな……見せしめに殺して欲しい」

 

 「ったく。正義の味方の呪術師はどうしてるの?職務怠慢じゃない?」

 

 「アイツらは活発化している呪霊の相手で忙しいんだよ」

 

 「そうなの?」

 

 「……まあ、ここら辺はアンタが浄化しているから気付かねぇよな。六本木に呪いの【の】の字もねぇ。

 病院や学校なんかの施設も綺麗なもんだ」

 

 「いやぁ」

 

 「照れるなよ。恩恵を賜っている俺が言うのもアレだが、なんで呪術師にならねぇんだよ。

 受けてる仕事が完全にあっち側だろ」

 

 「いや、俺は自由に楽をしながら生きて居たいんだ。会社勤めは御免だね」

 

 「……もういい。仕事は頼んだからな、奴は〇〇の山に居る」

 

 そう言って、去って行く時雨の背を見送った俺はベランダに出るとスピリット・オブ・ファイアの背に乗って空を飛んだ。

 

 ★

 

 六本木から少し離れた山の中。

 

 「ごめんなさぁい」 

 

 「許してくださいぃ」

 

 泣いて謝る青年達の首から下を埋めて、ニヤニヤと笑いながらナイフを取り出す一人の男。

 奴は男達の後ろに向かって、そのナイフを―――。

 

 「はい。そこまで」

 

 下ろす事は出来なかった。それどころか俺のスピリット・オブ・ファイアの真っ赤な大きな手に体をすっぽりと覆われて身動きが取れない。

 本当に酸素さえあれば何処でも出現できるスピリット・オブ・ファイア先輩はマジで有能だ。これからも俺と一緒に金を稼いでくれると嬉しいです。

 

 「……仕事の成功報酬を全部やるから見逃してくれないか?」

 

 命乞いをする粟坂を無視して、彼の足元に埋まっている青年達の視線に合わせて声を掛ける。

 

 「君達は何処の誰かな?」

 

 「お、俺は元外務大臣の光浦 重蔵の孫!!

 親父と爺さんに頼まれて助けに来てくれたんだろ!?

 早くここから出してくれ!!」

 

 「俺はその秘書の息子だ!!早く助けてくれよ!!」

 

 涙目で助けてくれと懇願する二人の青年達、見た目はどちらも二十代前半。

 元外務大臣の孫は金色に染められた頭髪と、耳と鼻にはお揃いの髑髏のピアス。

 片や、秘書の息子の頭は緑色で瞳は何故か青色。着色されたコンタクトレンズかな?

 頭部だけで、ロクデナシであることが一目でわかる。

 

 「助けてあげてもいいんだけど……君達は何で命を狙われたの?」

 

 そして、呪詛師に狙われるロクデナシは呪詛師並みのクズである事が多い。

 パワハラ上司や周囲に暴力を振るうヤンキーの方がまだマシだ。

 酷い場合は殺人鬼に性犯罪者。ストーカーなんて者もいる。

 そういった奴等は放置するか、警察に突き出してやるのが世の為人の為というヤツだ。 

 襲って来た場合はどうするのかって?スピリット・オブ・ファイアが美味しく頂きます。

 

 「そんな事知るか!!」

 

 「俺達は被害者なんだよ!!早く助けろ!!

 ジジイに言いつけるぞ!!」

 

 あー。相手にしたくねぇ……。

 イキり始めた二人を無視して、ターゲットの粟坂に声を掛ける。

 

 「ねぇ。何で死んでないの?」

 

 そう。俺は二人のチンピラと話している間にスピリット・オブ・ファイアに対し、粟坂を握りつぶせと命じた。

 なのに粟坂が生きている。まあ。奴が持つ術式のお陰だろうが、少しだけ興味が出た。

 

 「さあ、何でだろうな?」

 

 「じゃあ、いいや」

 

 俺がそう言った瞬間。ドヤ顔を見せていた男は真紅の炎によって肉体を瞬時に焼かれ、魂をスピリット・オブ・ファイアに食われた。

 粟坂の魂を食らったスピリット・オブ・ファイアだが、俺とスピリット・オブ・ファイアに変化はない。

 ヤクザが所有する拷問ビルの呪霊を食いまくったせいだろうか?

 呪力が大きくなりすぎて、呪詛師や雑魚呪霊を食った程度では力の増加を感じ取れなくなった。

 

 種も仕掛けもない突然の人体消失マジックに黙るヤンキーの二人。

 ターゲットも殺したし、さっさと帰りたいんだけど……。

 

 「夜蛾。僕を睨むのは止めてくれないかな?」

 

 「足元の二人から離れてくれたら辞めてやる」

 

 こちらの様子を伺って来たヤクザにしか見えない呪術師の夜蛾。

 仕事の時に呪術師とは何度も顔を合わせているんだけど、彼とはもう7回目。

 彼は俺の力と名前にビビる雑魚呪術師と違って、こんな風に睨んでくるんだ。

 

 「あれかな?呪詛師と間違えて殺そうとしたことをまだ根に持っているのかな?

 あの件に関しては呪術師の仕事を格安で受けて上げたんだから許してよ」

 

 「それに関しては根に持ってはいない。むしろアンタが暴れる事で周囲の呪いも浄化されるから、仕事が減って呪術師としては感謝している」

 

 「じゃあ、なんで?」

 

 「アンタが呪詛師諸共に被害者を殺しているからだ」

 

 「とんでもない誤解だ。襲って来たから反撃しただけさ」

 

 「過剰防衛だろうが!!殺す必要が何処にある!?」

 

 うーん。実に面倒な人だ。

 悪い人ではないんだけどね。俺が殺してきた奴らは全員が漏れなく社会のゴミだよ。

 で、彼の話は最終的に――――

 

 「俺はもうすぐ教師になる!大陰陽師の転生だろうが、今のアンタはガキだ!!

 高専に入れて、常識を教えてやる!!高専に入れ!!上層部に突っつかれてんだ!!お願いしますっ!!!!」

 

 こうなる訳だ。恥と外聞をかなぐり捨てた勧誘に頭が痛くなるよ。

 

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