光の国に転生したら親友がウルトラマンゼットだったのですが 作:ゼロ様の女
頑張れ!セブンガーガチで面白いので初投稿です
※一部キャラ崩壊注意、かも??
————少女には、ヒーローがいた。
物心つく前から、ずっとそばに居てくれた。
カッコよくて、優しくて、たとえ悩む事があったとしても決して挫けない。
何時も心に寄り添ってくれる、そんなヒーローが。
故に。その命を散らした時、少女は神に願った。
たった一度だけでもいいから、憧れのヒーローに。
「ウルトラマン」に、会いたいと。
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「それが今こうなってるんだから、人生って分からないよね……まあ僕もう人じゃないけど」
茶色く染まった天井を見上げながら、ツバキは一人呟いた。その言葉に応える者は、今ここには居ない。博物館を今日は閉めているというのが理由だが、そもそも普段から客足が多い訳では無い。歴史的価値が高い物を置いているとはいえ、大して派手でもない展示物をわざわざ見に来ようとする者は少ないし、そもそも煌びやかなクリスタルで造られた建物が多いこの星で、ここはある意味異質な場所だ。ここに来るのは歴史マニアと、仕事関係の人。あとは——
「まああの子は訓練かな、最近頑張ってるみたいだし?」
ラルフ。最近現れた、ちょっと天然で弱気なところもあるけど、良い子な転生者としての後輩。
転生者の中でも珍しいウルトラ族である彼女にとって、同郷の後輩が出来たのは言葉に言い表せないくらいには嬉しい出来事だった。前世の自分にはそんな可愛がる後輩など居なかった分、彼の可愛気が際立つ。そして、力になってあげたいとも思えた。ここに来たばかりの自分を助けてくれた、優しいあの人のように。
「フィリスさん、今どうしてるかなぁ……」
そのフィリスは今、自分の"王国"を空けている。過去の遺物を管理する自分たちのような職業であると、時々その知識を買われて調査協力を要請されることがあるのだ。例えば、文明監視員とか……
「いけない。完っ全に忘れてた!」
物思いにふけっていたツバキは、咄嗟にある事を思い出して慌てて飛び上がった。やばいやばいウルトラやばい。そうだった。今日博物館を閉めているのは、重要な来客が来るからであるということを。そして、
後輩の為にテンションアゲアゲで作って使ってしまったばかりのクイズ用の資料が、来客用の応接間に散らかしっぱなしのままであったことを。
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「はあ、はあ、これで全部かな?」
作業に一段落がつき、ツバキはほっと溜息を一つ零す。前に2人が来てクイズをやった時は最高に盛り上がった状態のまま(二人は疲れていたような気もするが)、そのまま帰らせてから自分も疲れて休んでしまったので、翌日も用事がなければ普段使わない応接間には目がいかず、それはもう酷いことになっていた。
「母さんが聞いたら、どう思うんだろ……って、あー!また考えても仕方の無いことを……」
頭に浮かんだ考えを首をふるふる振って打ち消す。どう思っているかなんて結局はわからないし、そもそも一度生まれ変わってしまった時点で、元の世界の両親にもう一度会える確率は限りなく低いのだから。
……この世界にも、両親はいなかったが。そして、この体の持ち主も——
♪♪♪♪♪
と、掃除をなんとか終わらせた所で呼出音が鳴った。危ない。割とギリギリで間に合ったようだ。
「はい、開けますね」
正面玄関へと向かい、扉を開ける。
「やあ、久しぶりだな。ツバキ」
扉の前に立っていたのは、昔何度も何度もテレビで繰り返し見ていた、憧れのヒーローの内の一人だ。引き締まった赤き身体に、金銀の鎧。端正な顔を、黄色く輝く優しげな目と透き通った蒼いランプが彩っている。一目見て勇ましさを抱く容姿ながらも、その所作はどこか緩やかで、気品を感じさせる。
「お待ちしてましたよ、マックスさん」
来客——文明監視員の、お出ましである。
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「すまないね、急な訪問になってしまって」
「いえ、僕は嬉しいですよ?憧れの人に会えるのは」
「ハハッ、どこでそんなお世辞を覚えてくるんだ?褒めても何も出てこないさ」
ツバキの褒め言葉を軽やかに受け流しながら、マックスは促された席に座った。
「それにしても、あまり久しぶりという感覚がしませんね。今までで一番早い任務だったんじゃ?」
「いや、そうでも無いさ。これでも長いことこの仕事をやっているからね。5分くらいで終わったこともあるかな」
「本当ですか!?」
「さあ、どうだろうね。それにしても」
ツバキに軽口を返したマックスは、ゆったりと応接間を見渡しながら言う。
「やっぱりここは落ち着く場所だ。今まで聞いた事が無かったが、ここを設計したのは君か?」
「はい、まあ……僕なんてペーペーなんで、粗末な建物ですけどね。こういう時に、ブルー族に生まれて本当によかったと思います」
「謙遜することは無いだろう?私は自分の家を建てる時、コンピューターの世話になりっぱなしだったからな。芸術なら好みだが、どうも、そういう事は苦手だ」
転生する前の彼女は知識としては知っていても確かめようがなかった事だが、この星の住人たちは本当に自分の家を自分たちの手で建ててしまう。材料は空を飛べるものだから一瞬で運べるし、設計まで自らの手でやってしまうのだから、全く驚きだとしか言いようがない。もっともこの星のコンピュータは地球のものとは比べ物にならないような性能だから、それのおかげかもしれない。ただ、そちらだとある程度の型には嵌ってしまうので、今ツバキが居るような地球の家屋に寄せたような空間を作るならば、自分で設計をするしかない。
「この間取りと色調、それに空気感……見覚えがあるのは、気の所為ではなさそうだな」
「まあそれは……マックスさんは行ったことがあるのでしょう?僕が良く知る、あの星に」
「あの蒼い惑星で過ごした懐かしさを共有出来るのは、光の国ではここだけだな」
マックスがツバキと同じ様にこの博物館の内装で安心感を得られるのは、やはりあの1年が影響しているのだろうか。元々の住人であるツバキには分からない感覚だが、あのウルトラ兄弟も、一年居れば地球の文化にすっかり慣れ親しんで愛するようになっていくのだから。
「最も、君がこの感覚を共有出来る理由を、私は知っているわけだが」
「……あの時、別に隠そうとしてたわけじゃないんですけど」
「いやあれはどう考えても隠してただろ。……結局隠せてなかったが」
話は、約二ヶ月前に遡る。
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「よし、今日の仕事は終わりかな、はーあ、ちょっと疲れた」
確かその日も、今日と同じように静かに仕事をしていた。というか、倉庫の整理をするのが大半ではあるが。自分で志願してフィリスの元から独立し、彼から資料の半分ほどを預かって自分で管理するようになって以来、その整理の時間が大幅に増えた。どれだけフィリスが優秀だったのかを実感すると共に、彼におんぶにだっこであった自分を自覚して少し情けなくなる。
「僕、まだウルトラ文字とか基礎知識とか完全に把握出来たわけじゃないからなぁ……」
この身体自体はウルトラ族であるおかげか、光の国の言語の習得は自分の予想を超えるスピードで進んでいる。このままなら、すらすらと文章を書けるようになれる日も遠くはないだろう、会話自体はテレパシーなので問題は無いし、読み物も自作の辞書を使えば、多少突っかかりはしても普通に読めるようにもなった。ただ、膨大な数のある資料を自分で仕分けして整理するとなると、さすがに勝手が違う。新たな博物館を建てる、と言い出したのは自分だし、文句などどこにも言えないのだから、地道にやっていく他ないが。
一息ついてから視線を落とすと、ふと気になるものが見えた。
「ん?これは……」
見覚えのある英語の刻印、黒いカラーリング、薄く設計された形と綺麗な液晶。まさか——
「日本製のテレビだ!……何で?」
一体どこの誰なんだろうか、こんなものを持ち帰ってきて、博物館に預けたのは。地球の任務の手土産にでも持ち帰ったのだろうか。にしたってそこまで珍しいものでもないと思うのだが……
「んー、ちょっとやってみるか」
ふと、悪戯心が湧いた。
持ち主には悪いが、モノの試しにカプセルの外部から操作して、勝手に電源を付けてようとしてみる。まあ地球の電波は通っていないし、例え付いたとしても光るだけだろう。DVDとかが入ってなければ——
「シャララララ!ぼくのこころにー」
「普通に映像流れてるししかもドラ○もん!?」
ツバキは素っ頓狂な声を上げた。まあこの宇宙でたまたま見つけた日本製のテレビから『夢を叶えてドラ○もん』なんて流れてくれば、そりゃあビックリもするだろう。
余談だが、前世の彼女に紅白派かガキ使派と聞けば、迷わず紅白と返ってくる。何の話だ。
「ドラ○もんのDVD入ったままのテレビとか持って帰ってきたの誰……?何してんの……?」
本当に訳が分からない。しかも映っているのがよりにもよって某特撮回の時のやつである。多分非常に、なんかこう、色々とまずい。せめて本家の映像とかじゃなかったのが救いだろうか。
「けど面白いんだよねぇ……ふふふ、普通に笑っちゃうでしょ、こんなの、はははは!」
「おーい、誰かいないのか……えっ、君その言語、聞き取れるのか?」
「あっ」
——空気が凍りついた。
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「そこからの君は酷かったな、喋る度にボロを出してた」
「いやそりゃ、急にマックスさんが来るからじゃないですか!先に連絡してくれていたら僕だってあんな……」
「結局バレてしまったものはしょうがないじゃないか。私は、地球の話題を共有できる人が増えて嬉しかったぞ?」
「まあそれは僕も同じですけど……」
正直、なし崩し的ではあるといえ、自らが転生者であることを知っていて、気兼ねなく地球、それも日本の話が出来る相手は、かなり貴重だと言えるかもしれない。
「そういえばあの時の流れていた曲、カイトと見ていたものとは違ったな……」
「あのー、ちょっと申し訳ないんですけど……それもだいぶ前のやつなんです。僕が最後に見た時はもうさらに別のヤツに変わってました。これ多分2010年代の奴なんで」
「え」
ラルフと違って、世代の壁は、どうしてもあるものだけど。
「それより、今日はどうして?連絡にあったような物は持ってきていないみたいですが」
「ああ。今日の用件なんだが、……いつもとは頼む事が変わっていてね」
「……と、いうと?」
「ここでずっと保管してくれ、という訳ではなくて、少しの間だけ、預かっていて欲しい物があるんだ。一番いいカプセルを頼めるか?」
「え?」
ツバキは驚いた。彼が彼女に、保管カプセルのグレードアップを頼んだことは今まで一度もなかったからだ。それに、いつもは既に収納済の物を運んで来てくれている。
何か、ある。
「ちょっと待っていてください」
思考を回転させながら、ツバキはカプセルを探して席を立った。そして気づいた。
ここに来てからずっと、マックスの片手が握られたままであることに。
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「これで大丈夫ですか?本当はもう一つランクが上のものもあるんですけれど、今はストックがなくて……」
「いや、これで充分だよ。ありがとう」
目を伏せるツバキに、マックスは手を鷹揚に降って微笑みを見せた。がらどこか、その表情が晴れない。様子を伺いながら、ツバキは尋ねた。
「あの、マックスさん。さっきから、いや、ここに来てからずっと……何を握りしめているんですか?」
「やっぱり君は聡い。別に隠していたわけでもないが。その通りだよ。これが、君に預かっていて欲しい物」
マックスは手を差し出し、握り拳を広げて見せる。そこにあったのは、彼らから見れば随分と小さな、彫刻のようなもの。所々にひび割れが入り、年季が入っているようにも見える。
「"星のカケラ"だ」
「星の……欠片?」
「そうだ。私が監視し続けていた、星の」
「……そんな」
彼が先程言っていた。今回の任務よりも早く終わった事は一度や二度ではないと。それがもし、必ずしも任務の達成という意味ではないのだとしたら……?
彼の憂いを帯びたような表情の理由が、分かった気がした。
「どうして、預かっていて欲しいんですか?私に。保管ではなく」
声が震えているのを自覚しながらも、マックスへと疑問を飛ばす。
「いずれ、必要になるからだ。私には他にも任務があるし、ずっと持っていられる訳ではない」
「必要になる、って……だって、その星は……」
「ああ、正直かなりまずい状況ではあるよ。だから、念の為、と言ったところか」
「え?だってもう、その星は……」
「んん??」
多分、何かが噛み合っていない。
「星がどうしたって?」
「いや、だから任務を終えたって言うのは、そういうことなんじゃ」
「いやいやいや、違うぞ?多分考えてることがズレてるぞ?そもそも私は『任務が終わった』とは言っていない」
「あれ?」
何か、盛大な勘違いをしている気がする。ツバキは訝しんだ。
「私は光の国に戻ったとはいえ、任務は終わっていないぞ、あの惑星はまだ監視を続けなければならない」
「あれ……?僕の想像、全部妄想……??」
「ビミョーに韻を踏んでいるのが気になるが多分そうだ。別に星が爆破されたわけでもない」
うっわ恥ずかし。
ツバキはカプセルを放り捨てて全力で顔を覆いたい気分だった。よく聞かなかった自分が悪いとはいえ、羞恥が物凄い。被害妄想……とは少し違うが、思い違いにも程がある。
「まあそれはともかくとして」
「流した!?」
「流さない方が良かったか?……嘘さ、嘘だよ。とにかく、これからの任務では、これが重要になってくるかもしれない。……頼むからその顔やめてくれないか」
「別にもういいですけど……いや、それなら科技局に預けるべきなんじゃないですか?あそこなら、ここでするよりも適していると思うのですが」
ツバキの頭にはさらに疑問が浮かぶ。任務に関わるような重要な物ならば、わざわざここで預けなくても良いはずだ。
「いや、科技局には預けない。というか、出来ないんだ」
「え?」
「私も最初は科技局を訪れた。検査の為だが。そこでこの破片を調べてもらった時……これが非常に危険なものであると判断されてしまった」
「そんなことが……」
「出来るなら速やかに破壊するべきだ、と進言を受けた。だが、それをすれば任務を達成できないと、私は考えた。一応守秘義務はあるから、詳しくは話せないが」
「そんな危険な物を、僕に預かって欲しいと」
ツバキの表情が険しくなる。まだなりたてのぺーぺーであるという自己評価とはいえ、彼女にもプライドというものがある。それに、他の保管物を傷付けるような物を、一緒に置いておくことは到底不可能だ。
「大丈夫だ。危険な物になる心配は今のところしばらくない。あの星の外気にこれ以上触れなければ」
「先の長い時限爆弾と同じじゃないですか。とてもじゃないですけど……難しいです」
「こんな事を、言いたくはないが」
マックスは少し顔を伏せてから、再びツバキを見つめる。
「君は見た事があるはずだ。文明監視員として私が持ち帰った、あの星たちの欠片を」
「……!」
そうだ。見たのだ。
フィリスから預かった資料を整理していて、何度も文明監視員の文字列は目に止まった。確かに、ただの土産のようなものもあったが。
"遺物"は、予想を超えるような多さで存在していた。
「私にはそういう覚悟もある。だが、だからといって、これ以上物言わぬ惑星の残骸を増やしたいわけじゃない」
「それは……」
「守りたいのだ。わかって欲しい」
そう言って頭まで下げようとするマックスを、ツバキは慌てて止めた。
「ちょっと!ちょっとやめてくださいよ!」
「君には重い頼みだとわかっている。けれど、これが私の想いで——」
「もう大丈夫ですから!」
叫んだツバキに、マックスは顔を上げる。
「本当に、いいのか?」
「あーもー!規則とか危機とかなんかあっても!もう僕が何とかしますよ!……それが、ヒーローの助けになるなら」
「!……助かるよ」
彼のの動かない仮面が、ふっと微笑んだような気がした。
「よし。私は行くとしよう。任務が待っているからね」
「え!?渡したらもう終わりですか!?さっきの下りなんだったんですか!!」
「本当にすまないと思っている……」
「もう信用なくなりましたよそれ!」
ツバキが非難するような目を向けると、マックスは一言、真剣な声色で告げた。
「頼んだぞ」
「……ガレット」
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彼は踵を返し、早々と飛び立ってしまった。本当に任務の間の短い期間だったのかもしれない。
「どうしよう、これ」
取り敢えず、このままにしておくと多分危ないのは確かだ。ついこの間整理し終えたばかりだが……
「もっかい、やり直すか」
こればかりは仕方ない。全く、さっき自分が言った言葉を撤回したい。
「ウルトラウーマン、思ったよりキッついぞー、ってね」
急な申し出ではあった。だが、それだけに、本気は伝わってきた。星をこれ以上目の前で壊させないという、強い意志が。
「星のカケラ、か……」
倉庫で、初めてそういう類のものを見た時を思い出す。決してもう届かないものに、思いを馳せるこの感覚は、何かに似ている。
そう。
もうここにはない、"彼女"の心のことを考える、その時の気持ちだ。
元の「私」には確かに存在していたはずの、"彼女"の心。居なくなってしまったのは、やはり私のせいなのだろうか。両親がいない、というのには、何があったのだろうか。
考え出したら決して止まらないが、今日くらい、この思考に流されていくのも良いだろう。
過去の遺物に優しく手を触れながら、
ツバキは今日も、過去を想う。