お人好しトリオ   作:山元周波数

9 / 13
第九話 聞き取り

「おっす、周」

「おはよー。 って、あんたトランプをそんなに積み上げてどうすんのよ?」

 

 周五郎の後ろから明るい二人の声が聞こえてくるが、彼は無視してトランプを一枚とる。

 (これが最後の一枚だ!!)

 

 状況を説明すると、朝早くにロールプレイングをするために学校に来た周五郎だったが、暇だった彼はトランプでタワーを作ってるという訳だ。

 

 周五郎は震える手を押さえながら最後の一枚をタワーのてっぺんの上に載せる。

 

「やった、 完成だ」

 1時間をかけて作ったタワーが神々しく見える。

 (やはり時間をかけて何かをするというのは達成感があるな。俺は今、最高な気分だ)

 

「ふふふっっ、あーーーははははははっっ!!」 と楽しそうに叫ぶ少年を、坊主頭と気の強い美少女がにらめつけていた。

 

 

 

「……楽しそうで何よりだけど、周、なんのために学校に早く来てるのかわかってる?」

 

 (はっ、そうだった、俺としたことが!! いやべ、べつに忘れてなんかねーよ? じぇんじぇんそんなことねーんだからな) と周五郎は一人で言い訳する。

 

 周五郎はぎこちない笑みで、

「えーこほん。ちゃんとお前らが覚えてるかどうか試したんだよ」 と胸を張る。

 

「「どうだかな(ね)」」

 二人が呆れた声をあげる。

 

「そ、そんなことよりさっさと始めようぜ。まずミッツーが報告頼む」

「本当はもう少し追及したいところだけど……。まあ、いいや。じゃあ俺から報告なー。俺の調査だと小杉を好きな人間は、1〜3年合わせて5人ほどだな」

「結構いるんだな」 

 

 (これは調べるのは存外大変だな。まあ、性格の予想とかやった甲斐はあるのか。)

 

「あったりまえじゃん!! あのあどけない顔立ちに、ほっそりとした体型。 ミニスカートからのぞく白くて美しい脚に、肌から仄かにあまーい匂いがする。

そんでもってちゃーんと出るところは出てるんだから。 まさしく、最高の美少女ちゃんだぜ。 ロリコンをはじめ、ファンは多いんだよ。ぐふふ、ぐふふのふ」

 

 ミッツーが品もなく、にやにやと笑っている。

 

 (いつもの爽やかな笑みはどこにいったんだ。この坊主頭は本当、こういう話が大好きだからな。そして詩織さん、隣りで指をならさないでください。マジで恐いから)

 

「三川のハゲ!! 近寄んな、気持ち悪い」

 詩織がミッツーをおもいっきり叩きながら暴言を吐いてる。

 (なーんにも見えない見えない。見えないから助けなーい。)

 

「わ、悪かったよ!! 詩織さん許してー。痛い、痛いってば」

 

 ミッツーが涙目で詩織に謝っている。

 

「ふん、しょーがないわね。二度とアホなこと言うんじゃないわよ」

 

「もちろんですぅ」

 

 (あ、いまちょっとミッツー、オカマ入りました。)

 

「で、ミッツーもう少し詳しく教えてくれよ」 呆れた声で周五郎が訊ねる。

 

「ん、まず、この5人は全員一年生だ。2,3年生も調べたが今のところ情報はなしだな。これがその5人の資料だ」

 

 とファイルを見せてくる。中身を見ると名前、顔写真、性格、所属部活、住所などなどいろんな個人情報がのっている。

 

「えーと、ミッツーこれはどうやって作ったんだ?」

 

「はぁ? んなもんいろいろな手を使ったんだよ、いろいろ。んで特に俺が当たりだと思うのがこいつ」

 

 そう言って資料を開いて一枚の紙を指差してくる。そこにはいかにもおとなしそうな男が載っている。

 (にしても良くできた資料だな。いやでも個人情報だよねこれ……。)

 まあいいかと無理矢理思い、周五郎はミッツーの資料を読み上げていく。

 

「山田俊樹(やまだとしき)、B組所属ってことは、俺達A 組の隣りなわけか。性格はおとなしめ、成績優秀、運動は苦手なのか。

……ん、こいつ音楽部所属だ!! 部活で一緒だったから、顔見知りなんだろうな」

 

「あ、そいつって……」

 詩織が少し驚いた表情で顔写真を見ている

 

「詩織、知ってるのか!?」

 

「うちも女子にいろいろ聞いてみたんだけど、該当しそうな人間は一人しかいなかったの。それがこいつよ」

 

「まじか……。 となると、恐らくこいつで決まりだな。 どうする、周?」

 

「今日、こいつに会って、確かめてみよう」

 

「あんた、どうするつもりなわけ?」

 

「なーに、この周五郎に任せとけ。 昼放課、こいつにコンタクトとるぞ。ちなみにお前ら二人はこいつと面識はあるのか?」

 

「「ないぜ(わよ)」」

 

「そっか。おれもねーからお互いに面識はないわけだ。もちろん、念のため他の4人にも会う。じゃあ、他の四人の資料も写真で撮ってもいいか?昼までに一通り見ときたいんだ」

 

「ん、もちろんいいぜ。けど、個人情報だからくれぐれも慎重にな」

 

「わーってるよ。じゃあ、昼放課に行くってことで。かいさーん」

 

「「りょーかい」」

 そう言うと二人とも自分の机に去っていった。が、すぐに詩織が戻ってきた。

 

「ん、なんか忘れたのか?」

 

「違うわよ。美空(みそら)ちゃんが私達に依頼があるって言ってたのを思い出したの」

 

「美空ちゃんって誰だっけ?」

 

「同じクラスの小谷川美空(こたにがわみそら)ちゃんよ!! 覚えてないの?」

 

「ああ、あのバレー女か」

 小谷川は小杉と仲が良い奴で、周五郎はロールプレイングをしたときにスリッパを交換しているのを知った。少しチャラチャラとした女で、最近髪を茶髪に染め、耳には小さなピアスをつけている。

 残念ながら、髪形がおかっぱなので似合ってないのだが。

 顔立ちはいいんだからもう少し考えろよ、と思うがもちろん口には出さない。もしそんなこと言ったら次の日、周五郎の机は無くなっているだろう。

 読者の皆さま、女の人の怨みは恐いのです。いや、本当に。

 

「あんた、覚え方が雑ねぇ。今日はまだ学校に来てないみたいだけど、来たら相談するって言ってたわよ」

 

「はぁー、めんどくせぇな。どんな依頼か聞いてんのか?」

 

「詳しくはまだ。でもストーカー被害にあってるらしいわよ」

 

「それって警察の仕事じゃね?」 はあ、と周五郎は面倒そうにため息をつく。

 

「うちもそう言ってるんだけど、せめて話だけでもって聞かなくて」

 

「んで、しょうがなくって訳か」

 

「そういうことよ」

 

「はぁ、分かった。取り敢えず聞いてみて、判断してみよう」

 

「悪いわね。こういう頭使うのはあんたの得意分野だと思って」

 

「詩織は脳筋だもんな」

 

「ほほーう、また殴られたいのね」

 

「おいおい、詩織センセ、まだ俺ケーキ奢ってもらってないぜ?」

 

「ぐっ、まだ覚えてたか。もう忘れてると思ったのに」

 

「ぐへへ。ぐへへへへへへへ。

忘れませんよぉー、たとえ隕石が落ちてこようが、地球が爆発しようが、ぜぇーーーーーーーーーーったい覚えてますよぉ?」

 

「わかった、わかったから、その気持ち悪い態度やめてよ!!」

 

「わかればええんやよ、詩織クン」

 

「あとで覚えてなさいよ」

 (ものすごい睨まれているがこ、こわくねぇし。こわく………………。)

 

「詩織さん、怒るのだけは勘弁してくださいよぉ。 何でもしますから」

 やっぱりこわかった。

 

「わ、わかったわかった。許す、許すからマジ泣きしないでよ。」

 

「ぐすん、ほんとに?」

 涙目で上目遣いに周五郎が尋ねる。まるで叱られたときの子供のようだ。

 

「ほんとよ、てかあんた年齢幾つ? この歳でそこまで泣けるってなかなかいないわよ」

 

「ただ詩織が恐いだけなんだけどな」

 

「本当に失礼ね。ま、とにかくよろしくね、美空ちゃんのこと」

 

「へいへい、この周五郎に任せとけ」

 

 

それから10分後ーーーーー‥

 

「周五郎君〜、依頼があるんだけどー」

 

 金髪のおかっぱ頭の少女が周五郎に元気に喋りかける。膝上20㎝の大胆なミニスカートから、バレー部で鍛えられた脚がチラリと見える。

 

「その声は小谷川か。なんで俺達A 組の連中はこんな元気なやつばかりなんだよ」 と疲れたように周五郎が言う。

 

「そんなこと知らないよー。 ところでね、少し頼み事があるのー」

 

「詩織から少し聞いてる。まずは話だけ聞こうか」

 

「ん、実はストーカーにあってるのー」

 

「かるく言うなよ」

 

「えへへ」 小谷川がぺろりと舌を出す。

 

「とにかく詳しく教えてくれよ」

 

「私ね、男子で同い年の幼なじみが一人いて、小さい頃から仲が良かったの。交換日記も高校に入るまでやってたんだよね」

 

「……おいおい、ストーカー話はどうなったんだよ?」

 

「今の話が関係するんだから聞いててよ。その幼なじみもこの高校に入ったんだけど、最近はあんまり話す機会が無かったんだよ」

 

「なるほど。それで?」

 

「4日前にたまたま廊下で彼に会ったんだけれど、その時彼が私に『どうして俺の気持ちを無視するんだ』って言ったの」

 

「気持ちを無視……。どういうことだ?」

 

「わからないの。 その次の日に家のポストに手紙が入っていて赤い字で『恨んでやる』って」

 

「……随分と急展開なんだな。なにか心当たりはあるのか?」

 

「全然ない……」

 

「小谷川、警察に連絡しろ!! 俺達トリオがやるべき仕事じゃない」

 

「お願いだよ。 犯人は彼だってわかってるんだよ」

 

「だったら尚更……」

 

「実は、もう連絡してるんだけどね」

 

「してたのかい!」 と周五郎は思わず大声をあげる。

 

「まあねー。 でも警察は相手にしてくれなかった。」

 

「それで困って俺達に相談をした?」

 

「そういうこと」

 

 周五郎は一度深いため息をついたあと、

「ちっ、めんどくせーな。多分、今日中には受けてる仕事は終わる。夜にまた連絡するってことでいいか?」 と言う。

 

「じゃあもしかして……」

 

「その依頼、この周五郎が引き受けた。任せとけ」

 

「わーい、ありがとう!!」

 

 (くそ、ストーカーに遇ってるやつを放っておくなんてできねえよ。警察が忙しいってんなら、手の空いてるやつが助けてやればいいだけじゃねえか!! )

 

 

 

 

昼放課ーーーーーー

 

「なに? ラブレターを入れたのはお前じゃないのか?」

 

「ええ、僕じゃありません」

 昼放課に周五郎、ミッツー、詩織の三人は音楽部である1年B 組の山田俊明(やまだとしあき)の元へ来ていた。

 

「どういうことだ? お前小杉の事が好きじゃないのか?」

 

「そりゃあ……たしかに好きですけれど。僕には人に告白する度胸なんてありませんよ」

 

 山田はミッツーの資料どおり、長身で細身の男で顔も大人しそうな雰囲気を出している。

 

 (確かに少し引っ込み思案な感じもするが……)

 

「ほんとにほんとにお前じゃねーのか?」

 

「ええ、僕ではありません」

 

 

 その後教室を出るとミッツーが不思議そうに聞いてきた。

 

「周、どういうことだ? 俺はてっきりあいつかと」

 

「となると、他の4人の中にいるってことかしら」

 

「わからん。取り敢えず他の四人の所に行ってみよう」

 

 

 

 

 

 二十分後ーーーーーーー

 

「他の四人もダメかぁ」 と周五郎がため息混じりに呟く。

 

「周、これってもしかして俺と詩織の調査が甘かったってこと?」

 

「いや、俺はお前らの調査能力は買ってるんだ。」

 

 (しかしどういうことだ。犯人は自分の好きな人を他人には言ってなかったってことか。)

 

 何かがおかしいと周五郎の中の信号がなりひびく。腑に落ちない感じなのだ。

 いったいこの事件どうなってるんだ、と彼は考えていた。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。