一通りの訓練を夕方までやった後、夢結と百之助は寮に戻る所であった。
「なあ、夢結…シュツエンゲルの契りをもう交わさないのか?」
「ええ…」
「そっか…」
暫く歩いていくと梨璃と楓と二水(この時二水の事を百之助は知らない)が歩いてきた。
夢結は、会釈して通り過ぎようとしていたが梨璃は、何かを伝えようとしていた。
「あっ…」
夢結が通り過ぎたあと梨璃から声がかけられた。
「まっ…待って下さい。」
夢結は足を止めた。
「夢結様!…私とシュツエンゲルの契りを結んでください!」
夢結の手は握り締められていた。
「私…夢結様に助けて貰って…夢結様に憧れてリリィになったんです。」
「誰に憧れるのかはあなたの自由だけれど、それと私のシルトになるのとではなんの関係も無いわ。」
「それは…」
「貴方とシュツエンゲルの契を結んでも、私の作戦遂行能力が低下するだけよ。それが貴方の望み?」
これには百之助も動揺を隠せない。楓が怒って近づいて来るのを手で静止し。夢結に問う。
「そこまで言わんでも良かろうに、素直に嫌だと言えば済むことだろう?」
梨璃の耳元で囁く。
「梨璃、素直に言えないんだよあいつは、本当にシュツエンゲルの契を結ぶ気があるか?あるなら説得するが?どうだ?」
「はい…」
「了解した。」
夢結を後ろから抱き締める。
「なに…」
「なあ…俺のシュツエンゲル…覚えてるか?」
「ええ」
「実は俺より戦力としては劣っていたんだ。」
「!?」
「でも、心が強かった…絶対に諦めなかった…どんな絶望的な状況下でも気丈に振る舞って周りを鼓舞し続けた…散るまで…最後まで…」
さらに強く抱き締める。
「死ぬときこう言ったよ…夢結ちゃんとお幸せに、だと…」
「なんで…」
「知るかよ…お前が辛いのは良う分かる…俺とて無くした身だ…だがな、梨璃に当たるのは筋違いだろ…それに…お姉様方はとても良くしてくださっただろ…受けたものは他の人に還元せねばならんよ…これは実の姉二人の言葉だかな…」
「そう…でも、私には…」
「成せばなる…俺のお姉様の言葉だ。俺も手伝ってやるから…な?それにあの娘は心に入れても痛くないぞ?保証する。」
「貴方は?結ばないの?」
「言われたら受けるさ…ただ俺の戦闘技術は、人殺しの技だから教えられんがな…」
「分かったわ…」
「なにがだ?」
「貴方を信じてみる。」
「そうか…」
夢結を放し向き合わせる。
「貴方の申し出を受け入れましょう。」
「え…」
「私が梨璃さんの守護天使、シュツエンゲルになる事を…受け入れましょう」
「夢結様」
「貴方にも付き合ってもらいますよ?百之助?」
「了解した。俺の剣にかけても。」
「そこまでしなくても…いいわよ」
「いいや…焚き付けたのは俺だからな…姉上に申し訳ないしな。」
「そう…」