「どうすっかな…」
百之助は、怒りに任せて突貫したが、長年の戦闘経験からこのヒュージが撃破不可能であることを感じていた。
「仕方ない使うか」
そう言ってポケットから取り出したのは緑色の液体の入った注射器、ブースタードラッグだ。それを首筋に刺し一気に注入する。
「グッ!ガアアアアアア!」
全身に苦痛が走るがすぐに収まった。
「はぁ…はぁ…よし…」
さらにルナティックトランサーを発動。この時点で身体が臨界寸前である。
「アハッ!ハハハハハハハハハハハハハ!!」
そのままヒュージに突っ込み、切り刻み続ける。笑顔で。
頭がおかしくなったのでは無く、本来は戦う事に歓びを感じるが故に、こうやって笑うのだ。ただひたすらに刀、九五式軍刀を振るう。
「何…あれ…」
「笑って…ますの…?」
「はあ…」
待機を食らった他のリリィ達はドン引きである。文香は、心配そうなため息を付いていたが…
「しかし兄上、ブースタードラッグを使いましたね…でなければこんな機動出来ません…」
「「ブースタードラッグ?」」
梨璃と楓が首を傾げた。
「ブースタードラッグと言うのは、人間を一時的に強化する薬です。当然副作用があり…持って20分です。…良くて戦闘不能、最悪死に至る代物ですよあれは…」
「「な!?」」
乱入者が二人突然現れた。
「あれ使ったんだ…あの戦争屋!使うなと何度も言ったのに!」
「百由様?どうしたんじゃ?」
百由とミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスである。
「百之助は、麻薬を打ち込んで戦ってんのよ!」
「それは…不味くないかの?」
「不味いに決まってるでしょ〜!」
「あの…百由様…とミリアムさん?…何故ここに?」
梨璃が何故居るのか言う。
「ああ〜工廠科とは言え、私達もリリィなの。結構戦えるのよ〜!」
「今日は、当番と違うがの。」
こう話してる間でも夢結は暴走状態、百之助は高笑いしながら戦っていた。
「夢結様と百之助様、凄い。」
「じゃが、片方は暴走。もう片方は頭のネジが飛んでおるようじゃ、それに危なっかしいの…」
「百之助はともかく夢結は、なまじテクニックがあるから突っ込み過ぎるのよね…百之助は、元からああだけど…」
「兄上は、久し振りの戦場ですからはしゃいでるだけだと思いますよ?それに私達船坂の家系の者にとって戦場は故郷ですから…私も含めて…」
「貴方は?誰?」
百由は、声の主に問う。
「申し遅れました、船坂百之助の異母兄妹にあたります。船坂文香です。以後お見知り置きを。」
「ワーオ、妹さんか。よろしくね!…因みに何人兄弟?」
「認知している中では、40名中30人目になります。」
「うわあ…凄いね…」
「父上が節操なしですので、まだまだ増えるかと…」
「…聞かなかったことにする。」
「それが良いでしょう。…兄上!?」
単眼鏡で文香が覗いた先では、夢結に攻撃され、血を流す百之助が…