百之助が出て行ってしばらく経った後、依奈は何かを思い出すように言う。
「百之助も、変わったわね…昔は戦う事しか…頭に無かったし、何も話してくれなかった。それにリリィを【戦友】って言う事も無かったのに…」
「え?」
「初等部に編入されて初めて会った時、目が死んでたし、自分の名前しか教えてくれなかった。受け答えも[ああ]だけだったし」
「今と全然違う…」
と樟美は、声をかろうじて出すことができた。
「それに…笑わなかった…と言うか表情がこの世の終わりって感じだった。そして、もっと危ない戦い方してた。具体的には、味方が射撃してる中を突っ込んでヒュージを斬狩してたよ。」
「危な過ぎる…」
「これには流石に文句を言ったら。[問題ないこちらが避ける、だから安心して射撃して]と言ってたわ。」
「いやいや…頭のネジが可笑しい…」
「それに比べればさほど気にならないよ…今はそこまでじゃないからね」
依奈は、一白置いた。
「多分編入される前から…戦場に身を置いていたんだと思う。それにこう言ってた。[死者のいない戦場なんてものは無い、あるとすれば人間を物と定義したときか、戦を無かった事にしたときかだ。]って、多分経験からだと思う。」
「そんなのって!」
これは全員が…聞きたくなかった。
「あるのよ…そして…私達にはどうする事もできない…ただ寄り添うしか出来ないのよ…」
ここで依奈は、紅茶を飲んだ。続きを紡ぐ為に。
「甲州撤退戦の前、白襷隊が何か儀式してたでしょ?」
「ええ…」
「確かに…」
天葉と茜は、思い出すように言う。
「これ…白襷隊の伝統儀礼で…死ぬ為の儀式よ…」
「「な!?」」
「ワイングラスにワインを注いで、天高く持ち上げ[フロージット]と叫び一気に飲み干しグラスを叩き割る。…これ元々神風特別攻撃隊の出撃前の儀式を改変した物よ。…もとはアニメを参考にしたらしいけど…そして…生き残ってしまった…それが苦痛になっていると思う…本当は死にたいんだと思う…」
これには全員が押し黙ってしまった。
「100人近くいた姉妹達は、殆どが戦死してしまって…もう心が…折れてる可能性すら有る。夢結もああだし…もう耐えられないのかも…」
「ちょっと待って!姉妹が100人近い!?可笑しくない?」
これに反応したのは、茜だ。
「異母姉妹よ…殆どは…」
これに答えたのは天葉だった。
「何よ…それ…」
「話を戻すけど…百之助にとって…私達は…ただの重り…現世に繋いでおくための…百之助は、ああ言うけど…私達が悲しむから…死ねないのかも…」
壱が言う。何かできるのではないかと…
「でも…私達に出来ることはあるんじゃ無いですか?何かしてあげることだって…」
「死者に会うことは出来ない。これだけは…どうしようもない…
彼が百合ヶ丘の墓地に行くと半分くらいは花が手向けられてる…これが意味するの分かる?」
「う…」
「全員が死んだ姉妹達よ…」
更に場が重くなってしまった。