「所で百之助、貴様[守護者]になったのだな。」
「ああ。」
「夜々の後釜だな。と言うか喰ったのであろう?」
「いや?託されただけさ」
「そうか…」
ギンは一瞬、悲しそうな顔を見せたが直ぐに元の顔に戻った。
「所で貴方は人間ですか?」
そう聞くのは壱だ。
「その質問を待っとったぞ?答えは否、人では無いわ。」
「では…」
「この角で分からんか?鬼じゃ。」
そう言うと頭に付いた二本の角を指差す。これには、百之助と文香以外がポカンとしていた。
「正確には、人間と化外の中間じゃな。化外の、なり損ないじゃからの。」
「鬼ってもっと怖いのかと思った…」
「昔は人を食いよったぞ?効率が悪いからやめたらしいの。儂は食うたことないが。」
この言葉に全員が一瞬強張った。
「その…いつの話ですか?」
梨璃が恐る恐るギンに、問うた。
「500年前かの?正確には忘れたが、確かそれぐらいだったはずじゃ」
「そ、そうですか…」
その時、百之助の端末がなった。
ぴー
「はい、百之助です。」
『兄上、手荒いお客さんが来た。』
出たのは裕也だった。そのままスピカーにする。
『エレンスゲとルドビコの混成部隊、数は30。どうする?』
「な…」
「何で…」
これには全員が動揺する。
「天葉、梨璃。ここにゲヘナの強化リリィは居るか?」
「…言わなきゃ駄目?」
天葉は難色を示し
「いないと…」
「私だ。」
「え!」
鶴紗は梨璃の言葉を遮った。
「…分かった。」
取り敢えずいるのは分かったため指示を飛ばす。
「命令は2つだ。1つ目は全員生きて帰ってこい。2つ目は。生きてれば良い、全員生け捕りにしろ。そして、引きずって俺の前に全員連れてこい。…文香、娘を母上に預けて行って来い。」
「分かりました。」
『きついが分かったよ兄上』
「儂も行こう。」
「済まないギン。」
「構わんぞ」
そのままギンと文香は退室した。
「仲居さん。そこいる?」
「はい。」
「ひい爺様連れてきて!大至急!」
「分かりました。」
その後。6分後に船坂徳永、百之助の曾祖父が来た。勿論自衛隊の野戦服。及び装備でだ。
「百之助様。お連れしました。」
「お通しして!」
「百之助、久しいな…で何用か?」
どう見ても、60代で筋肉ムキムキの爺さんにしか見えないが。98歳である。
「ネズミが潜り込んだらしいです。」
「よほどの死にたがりじゃな…」
チャキン
そう言いながら89式小銃に弾を込めた。
「で?呼んだのはなぜじゃ?」
「雑談と護衛。」
「なるほど…儂以外で護衛に最適なのはおらんからな。」
「自己紹介してあげて。」
「相分かった…儂は、元日本国陸上自衛隊幕僚長、船坂徳永である。わかりやすく言えば4.11を起こし、南極戦役をくぐり抜け、数多の戦場で生き残ってきた人間じゃ。」
「…御幾つですか…」
「98じゃ、まだまだ若いのには負けんぞ。」
「…歩く軍神と言われてるぜ。…死にかけた事すらないから。」
全員絶句した。何せ生ける伝説である。
「この家には道場があるからの。手取り足取り何時でも指導してやろうぞ。戦場で生き抜く術をな?」
「末恐ろしいお祖父様ね…」
「夢結…同意するが…この人は、リリィですら勝負にならない。文字通り最強だ。」
「手合わせしてくれるんですか?」
そう聞くのは辰姫だ。
「何時でも掛かってきなさい。色々教えて信ぜようぞ。」
「凄い…英雄から教えてもらえるなんて…!」
二水は、リリィでは無いこの老人を。尊敬の眼差しで見つめている。…案の定鼻血が出ていた。
戦闘が終わるまで。昔話を皆で聞いていた。