アサルトリリィと呼ばれた男   作:岡村優

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90話

百合ケ丘女学院の管轄地を負傷したリリィ二人が走ってヒュージから逃げていた。服装からしてエレンスゲ女学院であろう。彼女たちは強制外征でここまで来ていたのだがどうやら負傷したらしい。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…急いで!ヒュージがすぐそこまで来てる!」

 

「駄目…さっきの戦闘で足が…」

 

もうすでに…二人とも矢が尽きている状態である上、体力も限界が近い危ない状況であった。おまけに負傷している。

 

「ッ!」

 

もうすぐそこまでスモール級の大軍が迫っていた。

 

「あ……あぁ……っ!ヒュージが…あんなに沢山…っ」

 

どちらも満身創痍ではあるが片方はまだやる気のようだ。自身のチャームを構え直す。

 

「私達はエレンスゲのリリィよ!このままでは終わらせない…」

 

するとヒュージの大軍は形状を変化させた。やる気満々なようだ。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ドンドンドン!

 

万事休すかと思われたその時、チャームによる正確な射撃がヒュージを襲う。

 

「梨璃、ヒュージの足を止めたわ!今よ!」

 

「はい!お姉様!やぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そう言うやいなやヒュージの大軍に梨璃が突っ込み蹂躙していく。

 

ザン!ギン!ザザッ!ドドドン!

 

「大丈夫ですか?エレンスゲの方ですよね?」

 

エレンスゲのリリィが礼を言う。

 

「ありがとうございます。その制服…あなた方もしかして…」

 

「百合ケ丘の…!」

 

「はい!一柳隊です!」

 

「挨拶は後よ!今は一刻も早くここから離れましょう!」

 

「はい!お姉様!お二人共走れますか?怪我をしているようでしたら私に捕まって!」

 

この申し出にエレンスゲの二人は断った。

 

「大丈夫です。さあ、あなたも行きましょう。」

 

「うっ、く……ごめんなさい…ありがとう…」

 

エレンスゲのリリィが撤退したのを確認したと同時に一柳対全員が集結していた。最も出征組はまだ帰って来てなかったが。

 

異変に気づいた楓が警告を発する。

 

「10時の方向から更にヒュージが!気を付けてくださいまし!」

 

「待ってください!あのヒュージ、真新しい傷が…」

 

鷹の目で二水がヒュージを確認する。

 

「手負い…あれはチャームによる刀傷。どこかでリリィと交戦した……?」

 

鶴沙が大まかな仮説を立てる。が、ヒュージは逃げ出した。

 

「ええ!?逃げ出した?」

 

「逃しません!雨嘉さん十字砲火を浴びせましょう!」

 

と言う神郭に対して雨嘉は射線が通らないことを伝える。

 

「っ、駄目遮蔽物が多い。それに動きが早い…!」

 

「速さ比べなら私の出番だな!」

 

「いえ、下がって…梅。ここは私が出る…!」

 

言うやいなや突貫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

ゴン!ドン!ガン!ズサァ!

 

「相変わらず、鬼神の如き暴れっぷりじゃのう…もうワシの出番はないかのー」

 

「お姉様…無理はしないでください…っ」

 

と、ミリアムは嘆息し、梨璃は心配した。

 

「…ん?この気配、なんだ?」

 

鶴沙が感じた気配はすぐに現れた。

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇい!!」

 

その声とともに巨大なチャームが空をかっ飛びヒュージに大きい衝撃を与え弾かれそれをチャームの大きさに合わない身体で受け止め吶喊するリリィだった。しかもルナティックトランサーを発動。

 

「何あれ…っ!?巨大なチャーム?」

 

「あんなチャーム、わしでも見たことないぞっ!」

 

これには一同驚愕する。

 

「ヒュージ、見つけたぁぁぁっ!!」

 

と、リリィは某軍人よろしく笑顔であった。

 

「えっ…子供!?」

 

「いえ、リリィです。先ほどのチャームを投擲したようです。」

 

「なんて無茶な戦い方!まるで誰かさんのようですわ!」

 

とそこでその子のレギオンであろう人物たちが戦線に参戦する。

 

「藍!待ちなさい!」

 

「うわー、遮蔽物なんて関係ないね。藍ってば、相変わらずワイルドな戦い方するねー」

 

「今は、藍ちゃんを追いましょう。敵の規模はまだ分からないんだし、孤立させるのは危険よ。」

 

「そうだね………一葉」

 

「はい!恋花様と瑤様は前衛を頼みます。」

 

「お任せー!」

 

「うん、分かった」

 

更に隊長と思われる人物は指示を飛ばす

 

「千香瑠様は死角からの奇襲に備えてください。特に藍は防御が手薄になるので巻き込まれない程度にアシストを。」

 

「了解!藍ちゃんは私が守るわね。」

 

「私はチャームで牽制しつつ、誘導します。各員チャー厶構え。ヘルヴォル、状況開始!」

 

合図とともに持ち場に付き、連携しながら翻弄する。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ごーーーーん!

 

「自分ばっかり目立ってずるいんだー私達のも残しといてよ………ねっ!」

 

「っ………!」

 

「私は別に目立ちたくない…」

 

ドン!ドン!ゴン!ザシュ!

 

「3人とも気を付けて!そのヒュージ!力を残してる!」

 

「っ…………!」

 

「獣と一緒だね、手負いのほうが厄介なんだから、まじで。」

 

「たおす…らんが、ヒュージ…やっつける!」

 

ヒュージが藍と呼ばれるリリィに意識を向けるが…

 

ドン!

 

「藍ちゃんに…わたしの仲間に手出しをするのは許しませんよ?

 

「千香瑠…」

 

「いい感じです、千香瑠様!そのままプレッシャーかけて押しつぶしましょう!」

 

ドドドドドン!ドドドン!ザン!ドドン!

 

どこに逃げても十字砲火を浴びるヒュージ、それに感嘆を漏らす二水。

 

「凄い…凄いです!あんな高度なハイプレス戦術、久々に見ました!」

 

「そうですわね…あのちびっこの無秩序な動き。それすら計算に入れて連携を取ってるように見受けられますわ。」

 

「あれは…あのリリィは…」

 

「エレンスゲのトップレギオン、ヘルヴォルのリーダー……。相澤…一葉」

 

ドドドドドン!ゴン!ザシュ!ザッ!ザシュ!

 

ヒュージは崩れ折れた。


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