「んんっ〜!!雨もすっかりやんだみたいだな。」
雨がさっきまで降っていたが今はやんでいる。
「ヒュージの方も百之助様達が瞬殺したので最後だったようじゃ。この付近からはもう反応が無い。」
と、ミリアムが探知機とにらめっこして確認する。
「一葉さん!またお会いできましたね。嬉しいです!」
「私もです。先日は簡単な挨拶だけでしたからね。夢結様も来ていただきありがとうございます。」
百之助が夢結に後ろから抱きついた。
「もう///」
「久しぶりなんだから良いじゃないか〜」
「久しぶりって…貴方ね…」
「あの…お二人は…どういう関係で?」
「見ればわかるのでは?」「見ればわかると思うわ」
と、二人同時に言う。
「えぇ!?…つまりお二人は…そういう関係…」
「それはそれとして、随分早い再会になってしまったけれど、あえて嬉しいわ。」
とそこでヘルヴォルの隊員が入ってくる。
「なになに、一葉ってば百合ケ丘の子たちと仲良しだったんだ。」
「いえ…仲良しと言うか…」
「はいっ!お友達です!」
(相変わらずだな梨璃は…)
と、嬉しそうな百之助である。
「ふふっ…そうみたいです。」
一葉は、先ほど助け出されたエレンスゲ女学園の生徒2名を見る。
「あなた達も無事で良かったです。」
「いえ、まさかヘルヴォルに来て頂けるとは思っていませんでした。」
「あっ、まずは御礼申し上げます。この度は救援要請に快諾いただき我がエレンスゲのリリィを保護いただけた事誠にありがとうございます。正式な感謝状は後日、学園を通して送られると思いますが ー」
彼女の父を知っている為、流石にここまで硬いと思わなかった百之助である。
「………」
「かたい! かたい!かたい!かたい!買ったのを忘れて三日後に冷蔵庫から発掘されたドーナツくらいカッチカチでパッサパサだよ。一葉!」
「そんなこと言われても…」
不服そうである。
と、そこで気になった二水が問う。
「あの…貴女は…」
「おっと、自己紹介が遅れたね♪ヘルヴォルのお洒落番長、飯島恋花とは私のことよ!」
「ばんちょう…?」
「エレンスゲには、変わった役職があるのね。」
「HAHAHA!!」
「百之助、笑いすぎよ。」
「ハイスミマセン。」
「本気にしないでください夢結様。恋花様もあんまりふざけないように!」
「だって一葉が硬いからさ〜」
「恋花様が柔らか過ぎるんですよ。」
それを見ていたミリアムが口を開ける
「あれがエレンスゲのトップレギオンか。思ったより愉快な連中じゃの。」
「なかなか面白いレギオンに入ったみたいだナ、千香瑠」
「元気そうだな千香瑠。」
と、千香瑠と呼ばれた人物に梅と伊吹が声をかける。芹沢千香瑠というのが本名だ。
「ふふふ…二人とも同じような感じでしょう?」
「それに夢結さんと同じレギオンに所属してるなんて私も嬉しくなっちゃいます。」
「あー、それはまあ、うちのリーダーのおかげというか…うん。」
とそこで伊吹が声を荒げた。
「おい!さとり!おま!なんて格好!」
「え〜暑いんだも〜ん〜さとりが〜する事なんて〜個人の自由でしょ〜」
見れば上半身の野戦服を脱ぎインナーになっていた。このインナーは防刃防弾ともに優れているものの体組織を支える機能がないためその…揺れるのである。もちろんその下には何もつけていない。
「いいから着ろ!」
「え〜やだ〜」
「おまえな…」
「女の子なんだから着ないとだめでしょ!」
まさかの佐奈にまで言われん始末である。
「こっちはこっちで愉快な連中じゃの…」
「あれでも近衛軍じゃ結構な有名人なんだがな…」
「ええ…」
「それはともかくとして、お主ら知り合いじゃったのか〜夢結様の事も知っておるとはな。」
「ええ、何度か戦場でご一緒する栄誉にあずかりました。」
「ははは、謙遜はよせよせ。大人しそうなナリしてるけど千香瑠は相当な使い手だからな。」
「間違いねぇ」
「ふむ…まあ、そのチャームを見ればわかる。百由様から聞いてはいたが直接見るのは初めてじゃな。」
「あの…千香瑠。携帯食、余ってないかな?藍がお腹すいたって騒いでて…」
「ああ、動き回りましたものねでも急な出撃だったから藍ちゃんが好きなお菓子はないかも…」
「甘くないの…やだな、モソモソしたクラッカーとドロみたいなスープは、いらなーい。」
見ればさっきのチャームぶん投げた子であった。
「おっ!さっきのルナティックトランサーの子だな。そちらは、はじめましてかな?」
「らんだよ。ささきらん。」
「あ、ご挨拶が遅れました。初鹿野瑤です。…よろしくお願いします。」
「私は吉村・Thi・梅。さっきも話してたけど、千香瑠とは何度か戦場で会った仲だ。」
「ワシはミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスじゃ。リリィじゃが、アーセナルとしてチャームの開発調整も請け負っておる。」
「ミリ村…昼で…マイ?…わかんない」
頭が混乱していた。
「いやいや、混ざっとる混ざっとる。」
「ハハハ、難しい名前だもんな、こっちはぜひグロッピとよんでやってくれ。」
「グロッピ?…ですか…」
「やめい、梅様。変なあだ名で呼ばれるのは百由様だけで十分じゃ。」
「グロッピ…覚えやすくて、いい。」
「むむ、まぁ、どうしてもというのなら良かろう。あまり人前で連呼させたくは無いが…」
「んふ…グロッピ。」
嫌そうなミリアムとは対称的な藍である。
「なんだか、すみません…」
「あははは、面白い娘じゃの。さっきまであんな戦い方してたとは思えん。」
「でも、藍は、藍です。」
「ああ、そうだな見事な戦いだったぞ。」
「お、そうだ。甘いものが好きだったら、このチョコをやろう。」
と、鞄の中からチョコを取り出した。
「ちょこ…!?」
すごく嬉しそうである。
「おい、梅様!そりゃわしが持ち込んだおやつじゃろうが!」
「まーまーいいだろ。ちっちゃい英雄さんにご褒美をあげないと、な?」
ちなみに白襷隊連中は木に寄りかかって睡眠を取ってたりする。
「別に良いが…ブドウ糖補給の為の特性チョコレートじゃ。常人にとっては脳が痺れるほど甘いから覚悟するのじゃぞ。」
「おっけー。らん、あまいのだいすきだからだいじょうぶー。」
と、美味しそうにほうばり始めた。
「なんだかすいません…ほら藍ちゃん、ありがとうございます。でしょ?」
「ほりがとーございはふ(ありがとうございます。)」
「可愛い…神琳、あれ…すごく可愛い…」
「欲しがっても駄目ですわ。こっちで我慢なさい。」
そう言って神琳は、雨嘉に鶴沙の方を向かせる。ほぼとばっちりである。
「こっちってなんだ、私の方を見るな。」
「でも、どこか鶴沙さんに似てますわね。サイズ的なものもそうですけど、どこか雰囲気と申しますか…。」
「どっちも…可愛い…」
「……」
不服そうである。
しばらくして、負傷したリリィを撤退させた後、全員集まった所で一葉は切り出した。(白襷の面々も、仮眠を終わらせている)
「とにかく助かりました。この御礼は、いずれまた日を改めてお返しいたします。」
「で?それでヘルヴォルは、特型追っかけるんだろ?」
「はい…って、何故それを!?」
「俺を誰だと思ってる?気配で特型いるのはわかってるし、君の事だから追うんだろうと思ってたよ。白襷隊は同行する。…それにな、台湾奪還戦で君の父上の部下だったんでねえ、相澤葉一大佐に申し訳が立たねえ。まさか親子揃って戦場に来るとは思っても無かったよ。なあ、トミー?さとり?」
「そうだね〜」
「だな」
「という事は…貴方方が…第1近衛連隊の生き残りですか!?」
「おうよ!…それに、うちの妹も行きたそうにしてるしな!」
「はい兄様!一葉さん!私達一柳隊も同行します!」
「えぇ!?しかし…ん?百之助様と、梨璃さんは、シュツエンゲルではありませんよね?」
「確かにそうだが、梨璃とは腹違いだ。」
「なっ!」
「ねぇ一葉、本当は一緒に協力し合いたいんだよね。でも、これ以上、助けてもらうのはいけないと思ってる。」
「はい、確かに協力し合う事は決まりました。ですが、すでにエレンズゲのリリィを助けてもらっています。ですがこれ以上、一柳隊、白襷隊の力をお借りする訳には…」
「言っておくが、白襷隊の中にはヘルヴォルが嫌いな連中がいるぞ?何度も刃を交えたのもそうだし、血が流れてる。極めつけは【日の出町】だ。俺の姉はそこで戦死した。」
「…っ!」
ヘルヴォル全員の表情が曇った。
「だがな、それとこれとは話が違う。手を取り合うと決めた以上、貸し借りとか言う概念は無しだ。仇討ちも含めて…な。それでいいな文香!」
「わかっています兄上。」
実は文香、小さい頃に目の前でヘルヴォルのリリィに母親を殺されている為ヘルヴォルに対して復讐心を持っていた。
「よろしい!それに、そんな水臭いこと言うなよな。現に梨璃と夢結は一葉が首を縦に振らずともついてくるぜ?なあ?」
「はい!」「ええ」
「分かりましたでは、3隊合同と行きましょう!」
「おう!」
「はい!」
ここにヘルヴォル、一柳、白襷による共同作戦が始動した。