HUNTER×HUNTERの世界ヤッホー!!   作:斗穹 佳泉

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第四話 チシキ×ト×ケイケン

二次試験が終了し、三次試験会場に向かう飛行船内。

例の監獄まではそこそこ距離があるみたいなので、それまでの自由時間についての説明を受けていた。

 

 

「それでは、こちらから連絡するまで、各自ご自由にお過ごしください」

 

お豆ちゃんの言葉を皮切りに、受験者は各々自室に戻ったり、食堂へ向かったりとバラけ始める。

 

ん~、私はどうしよっかな。

昼寝したからそこまで眠くないし、卵食べたからそこまでお腹すいてない。

クラピカとレオリオは寝ちゃうだろうし、ゴンとキルアの間にお邪魔しすぎるのもなぁ。

二人のてぇてぇを見たいから、介入しすぎて二人が唯一無二の親友になるのを邪魔できない。

 

「シイナ、俺たちは部屋で寝ることにするぜ。今日は疲れたからな」

「私もそのつもりだ。また明日会おう、シイナ」

「うん、わかった。私は飛行船の中を少しブラブラしとくよ。クラピカ、レオリオ、おやすみ」

 

 

レオリオとクラピカはすぐに寝てしまうみたいだ。

ん~、尚の事暇になっちゃう。

飛行船探索もすぐ終わっちゃうだろうしなぁ。

 

歩きながら考えよっ。

去り際に、クラピカ達がトンパに絡まれているのを見つけたので、奴に向かって殺気を放っておいた。

もろに殺気を受けたトンパは青い顔になってそそくさ逃げかえってく。

ざまぁないねっ。

 

 

 

 

 

 

お腹は空いてなかったけどとりあえず食堂でご飯を食べ、(どれも美味しかった)夜景を眺めながらブラブラしていると、通路の角を曲がったところにあるものを発見した。

食後でお腹が膨れているところで見たくはない光景だったけど、案外ショックというか、気持ち悪いとかじゃなくてビックリが勝っていた。

 

 

「おぉ、これあれだね、キルアが殺っちゃったやつだね。一回自分が死んでるから人の死に対して案外ドライなのかな、私」

 

 

前世の私だと絶対吐いてたね。

てかこれ誰が片付けるの?

お豆ちゃんとか探して片付けてもらおうかな。

血の匂いが好きってわけでもないし。

 

 

あれ、てことは、今ゴンがネテロ会長と一騎打ち状態かな?

これは見に行かないと!!

 

……あれ、ゴン達がボール取りしてた部屋ってどこなんだろ?

総当たりするかぁ。

 

結構な数の部屋があるから、中々骨が折れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、今年は何人くらい残るかな?一回合格者一人って言った私が言うのも何だけどさ」

 

その頃試験官用に割り当てられた部屋で、期待の人物についての談笑が行われていた。

 

「でもそれは、これからの試験内容次第じゃない?」

 

ブハラの言葉に、そりゃそうだけどさ、とメンチが相槌を打つ。

 

「試験してて結構いいオーラのやついたじゃない。どう思う?サトツ」

 

話を振られたサトツは一端食事の手を止め、そうですねぇと少し考えて問いに答える。

彼の中で一番印象に残っているのは、一次試験の後半で自分と並走した、406番。

 

「やはり今年はルーキーがいいですね。特に99番や406番はこの後の試験も注目したいところです」

「あぁやっぱり!?406番料理も結構上手いのよ。腕のいいシェフの下で学べば、絶対もっと輝くわ!」

 

余程彼女のことが気に入ったのか、メンチは我が子を語るかのように目を輝かせる。

その様子にブハラは苦笑いを浮かべて、でも、と続けた。

 

「ルーキーじゃないけど、やっぱ44番かなぁ。255番の時も一番殺気を放っていたし」

「あぁ44番ね。ブハラ、気づいてた?あいつ、最初から私らに向けて殺気放ってたのよ。私がピリピリしてたの、それもあるわ」

「私にもそうでしたよ。彼は要注意人物です。認めたくはありませんが、彼も私たちと同じ穴の狢です」

 

我々がブレーキを踏むところで、ためらいなくアクセルを踏めるところが、違う点でしょうが。

そう言い一段落つくと、そういえば、とサトツはメンチとブハラに向き直った。

 

 

 

 

「ところで彼女の回鍋肉、どれくらい美味しかったのです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

船内のドアというドアをしらみつぶしに探していると、ようやく目的の部屋を見つけることができた。

 

ガチャ、と扉を開けると、大の字でいびきをかいているゴンと、傍に立つネテロ会長が視界に入る。

 

……遅かった!?

 

 

「おぅ、お主か。こやつを探していたのか?」

「え~と、まぁ、そうですけど……なんでゴン君ここで寝てるんです?」

「それはのぅ、かくかくしかじかでの」

「なるほど」

 

 

あの、会長。

説明の合間にちょいちょい私の胸見てるの、バレバレですよ?

メンチも気づいてたと思うのだけど、もしかして指摘するの諦めてる?

てか、マフタツ山でも見てたよね!?

 

 

「あの、会長。私もそのゲームできたりしますか?」

「む?よかろう(これは合法的に揺れる瞬間や、もしかしたらスカートも……ちゃんす)」

 

 

……ん?

今会長の眼に邪な感情が見えた気が。

さすがエロジジイ、手加減されてる今だったら一泡吹かせられるかな?

 

 

 

一つ、深呼吸。

念を使うのはちょっと躊躇われるので、身体の力だけ使うことを意識する。

……よし、行こう。

 

「では、行きます」

「ほれ、かかってきなさい」

 

 

 

 

 

さて、まずはどう躱そうk――なに!?

一足で目の前まで踏み込んでくるか!

思ったよりすばしっこいみたいじゃのう。

 

 

ネテロはボールに伸びてくる手を躱しきり、油断していた心を引き締めた。

しかしシイナの動きから、特別何か指導を受けたわけではないと判断する。

 

 

 

 

こりゃあ中々、退屈しなさそうじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

……。

かれこれ動き続ける事五分。

速い、というか、巧い。

私の体の動き出しから、どう動いてくるか攻撃してくるかバレているのを感じる。

それと、私の手足と胸を行ったり来たりする視線に少しずつ恥ずかしさと苛立ちを覚える。

 

お互いに全く息は上がっていないけど、私にも遊ばれてるのくらいはわかる。

だがしかし、女の子としてあのエロジジイにぎゃふんと言わせてやりたい。

 

そう息巻くものの、一向にボールに触れる事が出来ない。

身体のスペックはそこそこあるけど、私自身の経験が圧倒的に足らないんだ。

 

 

更に三十分ほど経過するも、結果は変わっていない。

少しずつ私の中に、目の前の高い壁を越えられないという感情が芽生え始め、視野が狭まっていく。

 

 

そして、ついに私はやってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、白、じゃな」

「なッ!?きゃあああ!」

 

 

スカートなのを気にして使っていなかった蹴りを、深く考えずに使ってしまった。

恥ずかしさで顔が真っ赤に染まるのが、自分でもわかる。

 

 

 

……いや恥ずいよ!?

年齢=彼氏いない歴の私にとって、ジジイとはいえ異性の他人に下着見られるなんてことなかったから!!!

 

乙女をおちょくりやがってぇ!

むぅ、エロジジイ許すまじ。

やっぱ少し本気出す。

 

 

フッと一息吐き、指先にオーラを集め、一番描き慣れた魔法陣を組み上げる。

私が描ける魔法陣の中で、最も速く、最も綺麗に作れる魔法。

込めるオーラは抑えめ。しかし、脳からの電気信号で動く生物なら確実に動きを止める威力。

 

突然の不可解な指の動きに、会長は凝を使うが、もう遅い。

 

 

「『求めるは雷鳴>>>・稲光(いづち)』」

 

 

魔法陣の中心から、会長に向かって雷が走る。

わずか5メートルの距離から不意をついて放たれた雷撃は、避けようとした会長の足に見事命中した。

 

 

「ぬぁに!?」

 

 

体が硬直した一瞬で、会長の持つボールに手を伸ばして弾く。

 

よっし!

後はボールを取るだけ!

 

足にオーラを集め、大きく一歩を踏み出してボールへと手を伸ばした。

会長は今から動き出すところ。さすがにそれでは私より先にボールには届かない。

 

 

「もーらいっ!」

 

 

ボールへはあと数ミリ。

勝った!と笑顔を浮かべる。

 

 

しかしそれは間違いだと、すぐに気づいた。

背後から凄まじいほどの質量を持ったオーラを感じ、そして負けを理解した。

 

 

ちょ、ハンター試験受けに来た受験生に、しかもルーキーに観音様使う普通!?!?!?

手加減してよ!?

負けず嫌いのエロジジイめ!!

 

 

あと少しで届くはずだったボールは、私の前から一瞬で姿を消す。

 

ボールに手を伸ばした状態のままゆっくりと後ろを振り返ると、にっこり笑顔のジジイがこちらを見つめている。

 

ボールはジジイのすぐ横、空中で静止していた。

観音様がボールをつまんでいるんだ。

ジト目で睨むと、

 

 

「ほっほっほっ、お互い様じゃのう」

 

 

してやったり顔のジジイ。

百何十生きている人が、か弱い16の可愛い小娘にすることか!?

負けず嫌いのジジイに溜め息を吐いて、負けを認めた。

 

 

 

 

……くっそぅ。

 

 

 

 

 

その後ジジイは、お主とのゲーム、中々おもしろかったわいと言葉を残して部屋を出て行った。

 

 

「はぁ……私の認識、甘かったな」

 

 

大の字で寝るゴン君に、部屋の隅にあったタオルケットをかけてあげて、座り込む。

 

白い天井を見上げて、ぽつりぽつりと、反省点を口に出して反芻する。

 

自分が特殊な存在であっても、特別な存在ではないということ。

 

確かに焦っていたけど、恥ずかしかったけど、この世界はそういうレベルの話をする世界ではないということ。

 

知っている、というのは慢心を招くということ。

まさか○○が△△するなんて!?というのは、私の勝手な思い込みでしかない。

 

 

「たくさん、経験積まなきゃねぇ……」

 

 

三次試験の内容は、きっとあのトリックタワー。

対人戦が多くあるルートを通れますように……。

 




『求めるは雷鳴>>>・稲光(いづち)

シイナの発の一つ。系統は変化・放出系に属する。

能力
描いた魔法陣の中心から、オーラを雷撃に変換したものを魔法陣の直線状に飛ばし攻撃する。
魔法陣へ込めるオーラ量によって威力・殺傷力は変動する。

(例 一瞬止まる→少しの間命中部位の電気信号をブロックする→電気信号をバグらせて本人の思考とは別の電気信号が走る等)


制約
オーラを変化させ、魔法陣を描かなければならない
発動させるには呪文を言葉に出さなくてはならない
次に使う念能力はローランド帝国の魔法に限られる。

誓約
魔法陣がなんらかの干渉を受けると、魔法陣に使用したオーラは失われる。





※念能力詳細は一部修正が入る可能性があります。

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