HUNTER×HUNTERの世界ヤッホー!! 作:斗穹 佳泉
夢を見た。
この世界に来る前の、家族の夢だった。
家族、といっても父は物心ついたときにはもうおらず、母が女手一つで育ててくれた。
私の両親は所謂駆け落ち婚というやつで、祖父母には会ったことがなく、私にとって母がたった一人の家族だった。
もちろん、授業参観や運動会にだって来てくれたことはない。
生活のためにパートを掛け持ちして、そんな暇はなかったからだ。
小学生の頃「授業参観なんで来てくれなかったの!?約束したじゃん!」と泣いて怒鳴ったこともあった。
母は少し悲しそうな顔で「ごめんね」というだけで、いつもそれ以上何も言わなかった。
母がどれだけ頑張ってきたか、私をここまで育てるためにどれだけ自分を犠牲にしていたかを知るのは、母が死んでからだった。
私が高校を卒業した次の日。
母が急逝した。
そのすぐ後はあまり覚えてない。
私の手元に残ったのは、一通の手紙と印鑑、通帳だった。
その手紙には、たくさんのごめんなさいと、たくさんのありがとうと、たくさんの愛が込められていて、私はたくさんの後悔と共に読んだことを覚えている。
「……ん、朝かな」
すぐそこで寝息を立てるゴンを起こさないように、静かに部屋を出る。
「……顔洗わなきゃ」
「みなさん、頑張ってくださいねー!」
お豆ちゃんとジジイを乗せた飛行船がトリックタワーを飛び立ち、第三次試験がスタートした。
スタート、といっても、まず下に降りることが出来るタイルを探さないと。
ゴン達はタワーの縁に立って下を覗いている。
一言声をかけてから探そうと思い、声を上げたが
「みんなー!私さきn――」
丁度踏み出したところにあったタイルが回転し、言葉は最後まで続かない。
ビックリした!!!
と思ったらすでに
しかしまさかはじめの一歩で下に落ちるとは思っていなかった。
「まったく。そりゃあ、私も戦闘の経験を積みたいけどさ、一言くらいみんなに声かけさせてくれてもいいじゃん」
むすっとしながらも、目の前の台座においてある腕時計を手に取る。
すると、このトリックタワーの看守であるフリ○ザさんの説明が始まった。
私がこれから挑戦する道は『迷宮の道』。
迷宮ってことは、一本道でゴールまでに障害がある感じかな?
これはもしや、当たりなんじゃ?
きっと何かしら謎解きや戦闘が複数配置されてると思うから、気を引き締めなくちゃ。
受験番号406番、クリアタイム12時間3分。
そのアナウンスとともに、私は先駆者達が待っているホールへと足を踏み入れた。
……え?
終わり?
特筆すべきことなんてなにもなかったよ?
むしろ、半分くらい寝てたよ?
1.なんか雑魚モブ複数が道塞いでたので足払いからの横スマで撃破。(2分)
2.通路を塞ごうと壁が上から降りてきたので、閉じきる前にダッシュ。(1分)
3.後ろから大きな球体が迫ってきたので、通路の端っこに身を寄せスルー。1分
4.大量の落とし穴は石橋叩く要領で薄い床を破壊しながら突破。(4時間26分)
5.安全そうな部屋があったので、今後のことを考え熟睡(7時間)
6.大量の雑魚モブが湧いたので拳や手刀で全て鎮め踏破。(30分)
以上。
え、ちょ、こんだけ?
もっと、こう、私の特訓になるような障害とかないの?
あまりのあっさりさに、しゅんとなって座り込む。
ここからあと 60時間も待たなければならない。
しかも、ヒソカやイルミといった、ヤバいやつと共にだ。
ホールにいるのは、私を含め9人。
あぁ、早くゴンたちに会いたい。
ついさっき寝たばかりなので、まったく眠くない。
かといって、何もしないのも暇すぎてどうしよう。
四次試験があるから、魔法陣を描いたり身体動かしたりして私の戦闘スタイルバラすのもよくないし。
「ちょっといいか?」
「え、なにか用ですか?」
何をするか考えていると、隣から声が。
えーと、誰だっけこの人、あ、思い出した!
アリ編で殺されちゃった、……ポックル!
四次試験でゴンの成長に繋がることをしてくれる人だ!
「いや、別に大した用じゃないんだ。単に暇だったから話し相手を探していてな」
ほら、その、と彼は続けホール内を見渡した。
なるほど確かに、イルミやヒソカその他、とても気軽に話に行けるような雰囲気ではない。
私も暇を持て余してるし、レギュラーメンバーでなくともゴン達の成長に繋がったりするので、嫌いじゃない。
「いいですよ。私も暇を持て余していたところだったから」
話をしてみると、案外いい人っぽかった。
幻獣ハンターを目指していることもあって亜人種にも詳しく、多くのことを教えてもらった。
そういえば私、まだ人以外の知性ある種族に出会ってないもんね。
あれ、お豆ちゃんって、人なのか?
結構長い時間話し込み、気が付くと晩御飯の時間になっていた。
この世界に来て結構な時間が過ぎたけど、この世界の事を詳しく聞いたのは初めてだったかも。
今まで漫画・アニメ知識でやってきてたから、この世界で生きている人の、生の話を聞くのは新鮮だった。
ご飯を食べ終わりまた少ししゃべると、満腹のせいか少し眠くなってくる。
「ごめんなさい、ポックル。ちょっと眠くなってきちゃった」
「お、確かに長話が過ぎたな。ごめんシイナ」
「ううん、おやすみ」
本当は横になりたかったけど、長髪だし埃とかつきそうだからやだ。
後々邪魔になっちゃうかな、この綺麗な髪。
でも長髪で銀髪ってロマンだよね!
翌日もまた、ポックルとしゃべったり、本を読んだりして時間を潰した。
余談だけど、ハンター語で書かれてたんだよね、その本。
いかに漢字が素晴らしかったかを思い知らされたよ……。
私の隣に本の塔が出来上がった頃。
待ちに待っていたアナウンスが流れた。
そう、ゴン達がやってきた!
最初にキルア、ゴン、クラピカ。
その次にレオリオと
久しぶりのみんなに、つい笑顔になって手を振る。
向こうもそれに気づいたみたいで、4人とも私のところに近づいてくる。
「遅いよ、みんな。クリア出来ないかとヒヤヒヤしたじゃない」
「そうなんだよ聞いてくれよシイナさん。レオリオがさぁ〜」
キルアがにやにやしながらレオリオを振り返った。
いや、これは、そのぉ、とあたふたするレオリオを見て、何があったかは知っているけれど口には出さないことにした。
「諸君。第三次試験、トリックタワーからの脱出。おめでとう」
第三次試験をクリアしたのは、25名。
「残る試験は、第四次試験と最終試験のみ。第四次試験は、狩る者と狩られる者。あのゼビル島にて行われる」
では、早速だが。とフリ○ザが指を鳴らすと、彼の部下がくじ入りの箱を持ってくる。
特にここまで気にしていなかったがらふとある不安がよぎる。
……あれ、もしかして四次試験、ちょっとやばいのでは?と。
これただの運、だよね。
私がみんなを引くかもしれないし、逆もまた然り。
ヒソカやイルミに狙われる可能性もあるんだ。
「諸君にはこれから、タワー脱出順にくじを引いてもらう。では、1番目」
呼ばれたヒソカが箱に歩いていく。
原作通りとは限らないから、ヒソカのターゲットは私の可能性もある。
トリックタワーでスカを喰らって、緊張の糸が切れていたけど、今一度引き締めなおす。
そして、私の番がやってきた。
「次、9番目」
箱の前までゆっくりと歩き、深呼吸を一つ。
頼みます頼みます、ヒソカやイルミ、ゴン達にはあたりませんように!モブかもん!
取り出したカードにはシールが貼ってあるから、剥がすまではわからない。
順々に引いていき、ゴン達も引き終わった。
「全員引き終わったね?では、そのカードに張られたシールを剝がしてもらえるかな?」
緊張の一瞬。
ゆっくりと剥がしていき、百の位が1であることに安堵する。
はぁ~、よかった、みんなじゃないし、ヒソカやイルミでもない。
私のターゲットは、198番。これあれだね、キルアが投げる奴だよねたしか。
三兄弟の、赤?黄?青?のどれかだったと思う。
「それぞれのターゲットだ」
試験官にそう伝えられ、どよめきが走った。
みんながプレートを隠し始めたのだ。
私ももちろん隠す。
ヒソカやイルミのターゲットになってる可能性もあるからね。
「奪うのは、ターゲットのナンバープレートだ。自分のプレートは、3点。ターゲットのプレートは3点。それ以外は1点。最終試験に進むために必要な点数は、6点。6点分のプレートを集めること」
説明は以上。と、試験官が言うと、船の汽笛が鳴り響いた。
案内されるままゼビル島行きの船に乗り込むけど、その空気は非常に重い。
案内の人が頑張って明るい空気だしてるけど、焼け石に水だ。
可哀想。
「……戦いはすでに始まっている」
「あぁ。どいつも自分のプレートは隠しちまった」
「そうだね。全員のナンバーなんて覚えてないもん」
私はレオリオとクラピカと一緒にいる。
ポックルも話しやすい人だけど、やっぱり好きな人たちと一緒にいたい。
クラピカは落ち着いているように見えるけど、レオリオは若干そわそわしてるように見える。
「もしも……もしもだ。俺のターゲットがお前らなら、俺は容赦しないぜ」
「当然だ。私のターゲットが二人のどちらかでも、遠慮はしない」
「私は、クラピカやレオリオ、ゴンやキルアから取るのは嫌だけど、合格が大事だからね」
「げっ!?お、お前らどちらか、俺がターゲットなのか!?」
私とクラピカの返答に、おもしろいくらいの反応を返してくれる。
ぷふっと思わず笑いが零れてしまうのは、クラピカも一緒だ。
「もしも、の話だよ?レオリオ。私のターゲットはあなたじゃないし、みんなじゃない」
「私もシイナに同じく、だ」
レオリオは苦笑いをうかべながら、浮かべながら「そうだよなぁ、はは」と汗を一筋流す。
そうだ、ポックルにも聞いてみようかな?
「お、俺のターゲットもお前らじゃないからな!」
レオリオの言葉に、わかってるよと返して彼の元に向かう。
すぐに向こうも気づいたようで、やぁと軽く手を振ってくれた。
「調子はどう?」
「俺は特に問題ないぜ。シイナこそどうだ?」
「まぁまぁって感じかな」
他愛もない挨拶を交わし、お互い一瞬黙る。
それにまた、私はぷふっとふき出して、それに釣られて彼も笑う。
「安心しな、俺のターゲットはシイナじゃないよ」
「私も違う、あなたじゃない」
とりあえずよかった。
私じゃないってことは、ゴンの成長の邪魔をすることはない。
そのあとも少し雑談をして島に着くまで待った。
もちろん、ゴンとキルアのてぇてぇは摂取した。
「みなさーん!お待たせしました
!ゼビル島に到着です!それでは三次試験クリア順に下船していただきまーす!」
1人が上陸してから2分後、次の人が出発するから、私は16分後だね。
ゴン達は40分くらいあとだから、私がだいぶ先に出ることになる。
あの赤黄青三兄弟のナンバー、覚えてないんだよなぁ。
森に入ったら絶を使ってキルアを待とう。
キルアに見破られないようにするっていう私の特訓にもなるし。
食べ物とかもどうにかしなきゃと考えてると、すぐに私の番が来た。
「それじゃみんな、先に行ってるね!」
残っているゴン達に元気よく言って、島に上陸した。
船から見えない位置まで歩き、深呼吸。
ゆっくりと、徐々に体表面に留めているオーラを内に閉じこめ、自然に同化するように存在を溶かしていく。
そうだ、これから先の実戦も兼ねて、この魔法を練習しておこう。
溶かしきる前に指先にオーラを集めて、ゆっくりだが確実に、丁寧に描いていく。
この魔法、攻撃魔法に比べて少し複雑なんだよね。
伝勇伝での登場回数は少ないけど、とても役に立つ魔法。
「『求めるは静寂>>>・
体の表面に残っていたオーラを全て込めて描ききった。
呪文を唱えると、私の体の周り数ミリのところに凝でも発見が困難な薄いオーラの膜が現れる。
この膜には空気の振動を伝えないという能力があり、私から外には音が伝わらないし、逆もまた然り。
それでも、全ての音を遮断するこの魔法は、この世界ではなかなか有効な使い方ができる。
そこそこの量のオーラ使うんだけどね。
20分くらいたった頃か、キルアの姿を発見した。
それと同時に、キルアを狙う三兄弟の青も。
音のしない1歩を踏み出して、私の
『求めるは静寂>>>・
シイナの発の一つ。
系統は変化系に属する。
凝でも視ることが困難な程の薄く、音を遮断するオーラの膜で身体を覆う。
膜の外側と内側では空気の振動は伝わらず、自分の体から出る声や足音、心音、外から入る環境音すら遮断する。
纏で体表面に留めているオーラの3分の1を使用する。
オーラを込める量によってさらに持続時間は変化する。
制約
オーラを変化させ、魔法陣を描かなければならない
発動させるには呪文を言葉に出さなくてはならない
誓約
魔法陣になんらかの干渉を受けると、使用したオーラは失われる
※念能力詳細は一部が修正される可能性があります。