ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.9 Q

「……んっ、ここは?」

 

 堕天使と倒した後、意識を失った俺は目が覚めると、辺りの様子が全くわからない暗闇の中に居た。

 どこだここ? もしかして、あの世か?

 マジかよ。ヤバいとは思ったけど、本当に死んだのか。

 

≪ピー……ガガガッ……≫

 

≪ガッ……世界……ガガッ……は≫

 

 呆然としている俺の耳に聞き憶えのある声が聞こえてくる。

 この声は!!

 

「Qッ!!」

 

≪ガガッ……繋が……ガッ……る≫

 

 確かにQの声が聞こえてきたと思った瞬間、暗闇だった空間が光で満たされる。

 俺は急に眩しくなったことに反応して、咄嗟に目を閉じる。

 そして、ゆっくりと慣らすように目を開けると、辺り一帯の光景に驚愕した。

 

「どこだよ……ここ……」

 

 目の前に広がっていた光景は、澄み渡るような大空と水平線まで見える広大で穏やかな海だった。

 そんな空間の中で、俺は人一人が立つのがやっとな狭さの足場の上にポツンと立っていた。

 これからどうしたらいいのか考えながら、辺りを見渡すと、俺の立つ足場から一ヶ所だけ、道が先に繋がっていた。

 ここを歩いて行けばいいのか?

 俺はその道の先を見てみるが、道が長すぎて、この先になにがあるのかわからなかった。

 

「……けど、行くしかないよな」

 

 このまま、ずっとここに立っていても仕方ないと思った俺はその道を進むことにした。

 しばらく歩いていると、道の先に小さくだけど、なにかの建物が見えた。

 ようやくゴールらしいものが見えた俺は、安心しながら歩くペースを上げて、その建物に向かう。

 そして、辿り着いたのは、所々朽ち果てているが昔の神殿のような建物だった。

 だが、俺は注目したのはその神殿ではない、その神殿の中にある巨大な砂時計。

 その前にある、まるで王さまが座るような椅子に座って、こちらを見つめてくる存在。

 俺はその存在が何者なのか、知らないはずなのに、なぜかわかった。

 

「ここはおまえの城か……Q?」

 

 俺の言葉に、椅子に座る存在は一切反応しない。

 よくわからない鳥のような仮面を被り、顔はわからないが、さっきからこいつが俺のことを見つめているのはわかった。

 気がつかなかったが、俺がここに来たときから、こいつは俺のことを見続けていたのだろう。

 

「たった一人の王さま……か。おまえが居るってことは、ここはあの世じゃないんだな……? 一体、なにが目的だ?」

 

≪ピー……ザザッ!≫

 

 俺がそう問いかけると、俺の言葉に応えるように、傍に置いてある古いタイプのラジオから音が聞こえてくる。

 

≪ザー……初めまして……佐伯楠緒……ザザッ……私はQ……ネメシスQ≫

 

 どうやら、Qはこのラジオから俺に話しかけてきているみたいだ。

 ……この声、どこかで聞いたことがあるような? それも、いつも聞いているような?

 

≪佐伯楠緒……君に私の意思を伝える……PSIを身につけろ≫

 

 PSI? なんだそれは? 初めて聞く言葉だな。

 

≪君が……兵藤一誠……リアス・グレモリー……姫島朱乃……塔城小猫……木場祐斗……アーシア・アルジェント……ゼ……ザザッ……ギ……ザっ……セ。おまえの大切な人たちを守りたいならPSIを身につけろ≫

 

 一部分だけ声にノイズが走って聞こえなかったが、そのPSIってのを俺に身に着けさせようとするのが、Qの意思らしい。

 大切な人を守れる力。そんなものが俺に?

 

「そのPSIってのは、なんだ?」

 

 PSIがどんなものなのか知らない俺はQに問い掛ける。

 

≪PSIとは……思念の力……“烈破のバースト”……“心波のトランス”……“強化のライズ”≫

 

 烈破のバースト、心波のトランス、強化のライズ。

 その3つの力がPSIなのか?

 それに、思念の力って……もしかして?

 

「それは、超能力のことを言っているのか?」

 

≪このままでは、君はメルゼーに飲み込まれてしまう。そうならないためにもPSIを……≫

 

 メルゼーってなんだよ。さっきから、俺の知らない単語ばかり出てくる。

 それに、俺の質問の答えはどうした?

 

「……わかった。そのPSIはどうやったら、身につけることができるんだ」

 

≪君も先程言ったように、力は既に持っている。PSIとは思念の力。イメージを現実に変える力。ただ力として漠然と意識で使うのではなく。自分を信じ……自らが創り上げたイメージを投影すればいい≫

 

 漠然とした意識ではなく、創り上げたイメージの投影……か。

 確かに、今まで超能力を使うときは、ただ漠然と停めるといったように結果だけで、その過程をイメージしたことはなかった。

 自らが創り上げたイメージ……か。

 

≪そろそろ時間だ……最後に、PSIは自らの発想と想像力でどこまでも伸びる……ザッ……む……ザザッ……を……ブツ……ピィー≫

 

 椅子に座っていたQが右手を上げてラジオを指差すと、ラジオを再びノイズを走らせながら止まった。

 そして、Qは右手をそのまま俺の方に向ける。

 

「ぐっ……ガァ……!!」

 

 その瞬間、俺の心臓がなにかに鷲掴みされたように痛み出した。

 くっ、なにしやがった……Q……。

 俺はその痛みに耐えることができず、そのまま意識を落としてしまった。

 

 

 

 

 

「……くっ……ここは……イッセー?」

 

「楠緒! 目が覚めたのか!!」

 

 再び、目が覚めると目の前にイッセーが俺の顔を覗き込んでいた。

 目が覚めた瞬間イッセーの顔って、出来ることなら女子がよかったよ。

 ……それにしても、ここはどこだ?

 

「イッセー、ちょっと退いてくれ。さすがに、起きて早々顔を覗き込まれるのは気分が悪い」

 

「ああ、わるい」

 

 俺の言葉にイッセーは申し訳なさそうに退いてくれる。

 イッセーが退いた後、俺はゆっくりと身体を起こす。

 

「ぐっ!」

 

「お、おい、大丈夫か。まだ、寝てた方がいいんじゃ」

 

「……大丈夫だ」

 

 少し頭痛がして、頭を押さえた俺を見て、心配そうに声を掛けてくるイッセーに返事を返して、辺りを見渡す。

 そこは見覚えのある部屋だった……ここは、旧校舎の一室じゃないか。

 どうしてここに? 俺はあのとき公園で倒れて……そうだ!

 

「イッセー! おまえ、アーシアは!?」

 

「えっ? ああ、そうだった! ちょっと、待っててくれ。今すぐ、みんなに知らせてくる!」

 

「えっ……おい! ちょ、待て、イッセー!?」

 

 イッセーは俺の呼び止める声を無視して、慌てた様子で部屋を出て行った。

 えー、俺はどうすればいいんだよ。

 今の状況が全く理解出来ていない俺はしょうがなく、イッセーが戻ってくるまで待つことにした。

 そして、しばらく待っていると、部屋のドアが開いてイッセーが戻ってきたらしい。

 そう思ってドアの方を向くと、そこには部長が立っていた。

 

「やっと起きたのね、楠緒」

 

 部長が俺の顔を見ながら、安心したような表情を浮かべる。

 

「おはようございます。部長」

 

「おはようございます。じゃないわよ、あなた三日は寝続けてたのよ」

 

「三日も!」

 

 部長の言葉を聞いて、俺は驚愕した。

 まさか、三日も眠っていたなんて……まあ、あのときの状態を考えれば、こうやって目が覚めたことが奇跡なんだけどな。

 

「身体はもう大丈夫なの?」

 

「ええ、少し頭痛はしますけど、大丈夫です」

 

「そう。それならよかったわ」

 

 部長はそう言いながら、ベットの近くに椅子を持ってくると、その椅子に座った。

 

「イッセーはどうしたんですか?」

 

「イッセーには、他の子たちと一緒に部室で待ってもらっているわ……先に確かめたいことがあるの」

 

 そう言って、部長は真剣な表情だった。

 

「わかりました。一体、なんですか?」

 

 部長の雰囲気を察して、俺も真剣に部長に問い掛ける。

 

「あなた……あの日、私達と別れてからなにがあったの?」

 

「えっ? 公園で倒れた俺をここまで連れてきたのは、部長達じゃないんですか?」

 

「いえ、それは違うわ。あの日、私達が教会から戻ってきたときには、あなたはこの部屋に寝かされていたのよ」

 

 部長の言葉を聞いて、俺は誰がここまで運んでくれたのかを考える。

 もしかして、あのとき、意識を落とす直前に聞こえた公園の砂を擦る音の主がここまで?

 いや、この場所を知っている人物なんて、ほとんど居ないはずなのに、一体だれが……?

 

「なにがあったのか。話してくれるわね」

 

「……わかりました」

 

 そうして、俺はあの日の公園の出来事を話し始めた。

 俺の話を聞いて行くに連れて、部長の顔が徐々に険しく変化していく。

 そして、公園でのことを全て話し終えたあと、しばらくの間二人とも無言だった。

 

「……随分と無茶したわね」

 

「ええ、自覚してます」

 

 下手をすれば、あのまま死んでいたかもしれないほどの無茶だ。

 部長も呆れ半分、悲しみ半分といった表情だ。

 

「ごめんなさい。私のミスだわ。まさか、まだあなたのことを狙ってるとは思わなかったの」

 

「いえ、俺の責任ですよ。それに、あのときまで、ずっと守ってもらっていたんですから」

 

 部長の謝罪に俺は自分の責任だと返事をする。

 のこのこ一人で歩いて、堕天使に襲われたんだ。部長の責任なんて一つもない。

 

「でも、あの日もあなたにちゃんと使い魔を付けていれば、あんなことにな」

 

「俺の方こそ、あの日真っ直ぐ家に帰っていれば、堕天使に襲われなかったかもしれないんですから……それよりもあの堕天使はどうなったんですか?」

 

 このままでは、話が進まないので、俺は別の話題を部長にする。

 あのときは状態を確認できなかったので、あの後堕天使がどうなったのか知らない。

 ただ、失神していただけなのか……それとも、俺が殺してしまったのか。

 

「わからないわ。あなたが寝ている間に、私達なりに調べていたのだれど、なにもわからなかったわ。あなたの話に出た公園も、もちろん調べたけど、堕天使の姿や痕跡はなかったわ」

 

「……そうですか」

 

 痕跡がなかったか、たとえ生きていたとしても、まともに動くことなんて出来ないはずだ。

 一体、どうやってあの公園から……?

 

「……そういえば、あなた祐斗と小猫に自分は仲間じゃないって、言ったらしいわね」

 

「えっ?」

 

 俺が堕天使の動向を考えていると、不意に部長からそんなことを問い掛けられる。

 あれ? なんで部長がそのことを?

 

「は、はい。それっぽいことは……あれ? 部長なんでそんな怒った顔をしてるんですか!?」

 

 俺の言葉を聞くにつれて、部長の表情がさっきとは一変して、怒っているような表情に変わった。

 ……俺、なんか不味いこと言ったか?

 

「残念だわ。私はあなたをオカルト研究部に迎え入れたときから、あなたのことは眷属のみんなと同じように大切に思っていたのに、あなたにとって私達なんてその程度の存在だったのね」

 

「い、いえ、そんなことないですよ」

 

「じゃあ、どうしてあんなこと言ったの?」

 

「えっ、いや、なにも役に立たない俺が仲間なんて言えないと思って……」

 

 呟くように言った俺の言葉を聞いて、部長が深く溜息を吐く。

 

「……はぁ、あなたはイッセーよりも手が掛かるわね」

 

「……えっ?」

 

 い、イッセーよりも……そんな……嘘だ。

 部長の言葉で落ち込んでいる俺を余所に、部長は話を進める。

 

「いいわね。もう二度とあんなこと言わないでちょうだい」

 

「……いいんですか? 俺が仲間で?」

 

「ええ、私が認めてあげるわ。あなたは私達グレモリー眷属の大切な仲間よ」

 

 仲間……部長のその言葉を聞いて、俺の胸になにか熱いモノが込み上げてきた。

 

「……ありがとう……ございます」

 

 目から勝手に涙が流れてきて、頑張ってお礼を言うのが精一杯だった。

 

「なに泣いているのよ。仕方のない子ね」

 

 部長はそう言って微笑んで、あの日のように俺を優しく抱き締めてくれた。

 

「ちゃんと、後で二人とは話すのよ。二人とも表情には出してないけど、それなりに悲しんでいたわ」

 

「……わかり、ました」

 

「それじゃあ、今は私の胸で思いっきり泣きなさい。そして、落ち着いたらみんなの所に行きましょう。新しい眷属の子も紹介するわ」

 

 まるで、子供をあやすような優しい声色。

 俺は部長のぬくもりを感じながら、部長の胸の中で子供のように泣き続けた。

 部長の胸の中で泣きながら、部長にはさらに返し切ることのできない恩が出来たのだった。

 




この話で一巻部分終了です。

ようやく、本格的にPSYREN -サイレン-要素を出すことができました。

一巻部分が終了したので、登場キャラの主人公に対する相関図的なモノを作成したのですが、読みたい方はいらっしゃるでしょうか?
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