ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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この話から2巻の話になります。


第二章 戦闘校舎とフェニックス
Life.10 変化した日常


 

 俺が目を覚ましてから、数日が経った。

 現在、俺はQに言われた通り、PSIを身につけるために努力している。

 しかし、結果は……。

 

「はぁ、はぁ……駄目か」

 

 俺は軽い頭痛に耐えながら、近くのベンチに座る。

 Qに言われた通り、自分の創り上げたイメージを投影しようとしても、これが意外と難しい。

 今まで、漠然としたイメージだったせいか、いきなりイメージをしようとしても、上手くイメージが固まらない。

 

「上手くいってないみたいね」

 

 ベンチに座って休憩していると、ジャージ姿の部長に話しかけられた。

 

「おはようございます。今朝もイッセーの特訓ですか?」

 

「ええ、あなたも一緒にどうかしら?」

 

 部長が意地悪そうに微笑みながら聞いてくる。

 

「遠慮しときます。朝マラソンにダッシュ、筋トレはさすがに耐えられませんよ」

 

「そう、残念ね」

 

 部長は俺の言葉がわかっていたのか、さらっと返してくる。

 こうやって、部長と毎朝会って会話をするのが、ここ最近の日課となってきている。

 PSIの訓練は、最初は目立たないように家でやっていたんだが、一度、PSIのコントロールを間違えてしまい、家の中が大変な惨事になってしまっため、広い空間で訓練を行うため、誰もいない時間の公園で特訓を始めた。

 そんなときに、特訓のためにやってきた二人に出会ったのが発端だった。

 そのときに、部長になにをしているのか問い詰められて、PSIのことを話してしまった。

 それ以降、俺が無茶をしないように監視の意味も含めて、イッセーの筋トレはこの公園で行われることになったのだ。

 

「PSIだったかしら? 上手くいきそうにないの?」

 

「はい。イメージがなかなか上手く固まらなくて」

 

「イメージねぇ、私たちが魔力を使うときもイメージは大切だわ。それと似ているのかもしれないわね」

 

 そう言って、部長は自分の手のひらに紅い魔力の球体を創り出す。

 

「……そうかもしれませんね」

 

「今度、朱乃に相談してみなさい。朱乃は魔力を使った攻撃が得意だから、なにかきっかけを掴めるかもしれないわ」

 

「はい。そうしてみます」

 

 会話を終えたあと、俺たちは無言でイッセーの特訓を眺める。 

 ……それにしても、朝からよくダッシュ百本なんてやるよな。しかも、二十キロ近く走ってきたあとだろ。この後、まだ筋トレがあるとか……部長も鬼だな。

 まあ、それはイッセーを強くしようとしての考えからなんだろうけど。

 そんなことを考えているうちに、イッセーがダッシュ百本を終えた。

 

「部長。イッセーの奴、終わったみたいですよ」

 

 そう言いながら、部長の方を見ると、部長をどこか遠くを見て、寂しげな表情を浮かべている。

 どうしたんだろ? 最近、よくあの表情を見るな、なにかあったのだろうか?

 

「部長!」

 

「……ッ! なにかしら!?」

 

 俺が少し強めに部長に話しかけると、部長は少し驚きながら返事をしてきた。

 

「いえ、イッセーがダッシュを終えて、こっちを見てますよ」

 

 俺は部長にイッセーがこちらを見ていることを伝える。

 若干、俺を睨んでいるような気ががするのは気のせいだろうか。

 まあ、自分が必至で走っている横で、のんびり会話なんてされたら怒るか。

 

「じゃあ、俺はそろそろ家に帰りますんで、また部室で」

 

「ええ、また部室で会いましょう」

 

 ベンチから立ちあがったあと、俺は部長に挨拶をして公園を出る。

 

「あっ! 楠緒さん。おはようございます」

 

「んっ? ああ、おはよう。アーシア」

 

 公園を出てすぐの所で、今から公園に向かうのであろう、アーシアと出会った。

 俺が目を覚ました日、部長に新しい眷属としてアーシアを紹介されたときは、さすがに驚いた。

 その後、一応イッセーから教会でなにがあったのかを聞いたが、まあ、アーシア自身が今の生活に満足しているみたいだからいいのだろう。

 

「あの、イッセーさんとリアス部長はまだ公園にいらっしゃいますか?」

 

「ああ、今筋トレを始めたところだから、早くそれを持っていってあげてくれ」

 

 俺はそう言って、アーシアの持っている水筒を指差す。

 

「はい、わかりました! それでは、また学園でお会いしましょう」

 

「ああ、じゃあな」

 

 アーシアは笑顔で手を振りながら、公園に向かっていった。

 ……さてと、家に戻って、朝飯食って、学園に行くか。

 アーシアを見送ったあと、俺はそんなことを考えながら家に戻った。

 

 

 

 

 

 俺が教室に入ると、なにやら教室の中が騒がしかった。

 なにがあったのかと、俺は原因の四人に近づく。

 

「おい、なにやってるんだ。おまえら?」

 

「おお、聞いてくれ同志佐伯よ! 実はあのイッセーがアーシアちゃんと一つ屋根の下で暮らしてるらしいんだ!! 嘘だよな! 嘘だと言ってくれ!!」

 

「そうだ、佐伯よ……イッセーが、金髪美少女と一つ屋根の下とは……世界の法則が崩れるぞ……」

 

 そこにいたのは、イッセーとアーシア。

 そして、なぜか号泣している松田と手を震わせながらズレた眼鏡を直している元浜だった。

 

「……ああ、そのことか」

 

 俺は二人の言葉を聞いて、なぜこんな状況になっているのか把握した。

 どうやら、二人はどこかからイッセーとアーシアが同棲しているという情報を仕入れたらしい。

 まあ、正確にいえばホームステイなんだが……こいつらにとっては同じことか。

 

「じ、じぁあ、朝、アーシアちゃんに起こされることも!?」

 

 どうやら、二人は俺の反応で情報が真実だと悟ったらしい。

 ……しかし、松田よ。そんな質問して、大丈夫なのか?

 

「アーシアには今朝も起こされてしまったな」

 

「イッセーさんはお寝坊さんですからね。うふふ」

 

 イッセーとアーシアの言葉を聞いて、松田は床に突っ伏した。

 

「ご飯をよそって貰ったりもか……?」

 

 今度は恐る恐ると言った感じで、元浜がイッセーに訊ねる。

 

「アーシアは気が利く子だって、母さんも褒めていたな」

 

「そんな……照れますよ」

 

 自分の頬に手を当てて、顔を赤くするアーシアをイッセーは余裕の表情で、朗らかに見守っている。

 その光景を見て、血涙でも流すんじゃないかと言わんばかりに、元浜は眼鏡の奥からイッセーを鋭く睨みつける。

 どうやら、イッセーはアーシアと一緒に暮らしていることで、完全に調子に乗っているらしい。

 ……あー、二人とも、その気持ちはわからんでもない。あれは俺でもウザいわ。

 

「調子に乗るな!」

 

「いたっ! なにすんだよ、楠緒!?」

 

 俺はイッセーの頭にチョップをする。

 結構力を込めたため、イッセーは若干涙目で俺を見てくる。

 

「調子に乗りすぎだ、正直言ってウザい」

 

「べ、別にいいだろ。ちょっとぐらい」

 

 いや、そのちょっとを超えてたからチョップをしたんだけどな。

 

「大丈夫ですか、イッセーさん!?」

 

「あ、ああ、大丈夫だよ。アーシア」

 

 まだ頭を擦っているイッセーに対して、アーシアが心配そうに話しかける。

 その様子を見て、松田と元浜はさらに凄い目つきでイッセーを睨んでいる。

 ……逆効果だったか。

 

「……もういいや」

 

「ちょ~っと待とうか、佐伯」

 

 誰にも聞こえないくらいの声で呟いて席に戻ろうとしたら、イッセーを睨んでいたはずの松田に肩を掴まれた。

 

「ああ? なんだ……ぐふっ!」

 

 そう言いながら振り向いた瞬間、松田にボディーブローをくらった。

 こ、こいつ、いきなりなにしやがる! 振り向きざまのボディーは駄目だろ。

 

「な、なにしやがる!?」

 

「おまえもイッセーと同罪だろうが! 昨日、見たんだぞ! 学園の小さいアイドル小猫ちゃんと一緒に喫茶店に居ただろ!!」

 

 昨日、塔城と喫茶店……? あっ!

 

「ああ、あのときか」

 

 俺は松田の言葉を聞いて、昨日のことを思い出した。

 

「やっぱりか! どうして、おまえなんかが小猫ちゃんと一緒に喫茶店に行けるんだよ!!」

 

 怒り狂った松田に胸倉を掴まれる。

 

「や、止めろ。まずは、落ち着いて、その手を、放せ」

 

 確かに、塔城と喫茶店に行ったのは本当のことだけど、別に二人っきりだったわけじゃない。

 この間、迷惑をかけたお詫びとして、塔城と木場に奢っただけだ。

 こいつが見たのは、丁度、木場がトイレに行ったときだろう。

 俺は胸倉を掴んでいる松田を、力尽くで引き剥がす。

 

「ゴホッ、ゴホッ、たくっ、なんなんだよ」

 

「おまえたちばっかり、かわいい子と知り合いやがって! 俺はな! あまりの理不尽に壊れそうだよ!」

 

 さっきまで、俺の胸倉を掴んでいた松田が、今度は自分の頭を抱えて喚く。

 最近、色々な人と知り合ったのは否定はしないけど、教室であまり騒がないでくれ。また、悪い噂が立つだろうが。

 ただでさえ、さっきのおまえの話しのせいで、女子たちがコソコソ話してるんだから!

 

「二人とも、一人ぐらい紹介してくれても罰は当たらないと思うぞ。というか、頼む。頼みます」

 

 元浜が俺たちに顔を近づけながら言ってくる。

 静かな声音だが……迫力が凄まじいな。

 紹介ね……別に出来る人なんて誰もいないぞ。

 そう思って、イッセーの方を見てみると、イッセーは携帯を見ていた。

 なんだ? イッセーは誰か心当たりがあるのか?

 

「ちょっと待ってろ」

 

 そう言うと、イッセーは俺たちを置いて、教室の隅で電話をかけ始めた。

 数分後、イッセーが笑顔で電話を終えた。

 どうやら、上手く話がついたみたいだな。

 

「なんか、大丈夫な子がいたぞ。今日OKだとさ。友達も連れてくるって。これ、紹介できる子の番号。メアドもあるから。てか、まずはメールで連絡取れ。そのほうが幸せになれる」

 

「サンキュー!」

 

 さっきまで嘆いていた松田が高速でイッセーの携帯を奪う。

 ……こいつ、切り替え早すぎだろ。

 

「な、なあ、楠緒。ちょっといいか?」

 

「なんだ、イッセー?」

 

 二人がメアドを登録している間に、イッセーが申し訳なさそうに俺に話しかけてくる。

 

「えっと、おまえも二人と一緒に行ってくれないか?」

 

「はあ? なんでだよ?」

 

「い、いや、別に深い理由はないけど……」

 

 なぜかイッセーの言葉が歯切れが悪い。

 ……こいつ、なにか隠してるな?

 

「ありがとうございます! イッセー様! このご恩は決して忘れません!」

 

「ああ、今度トリプルデートしようぜ! 紹介してくれなかった佐伯は省いて!」

 

 二人とも満面の笑みだ。

 しかし、嫌な予感のする俺は二人がイッセーに返そうとした携帯を横から奪う。

 

「お、おい! 止めろ!」

 

 そして、イッセーが二人に紹介した人物の名前を確かめる。

 すると、そのにはある意味、衝撃的な名前が書いてあった。

 ……あー、なるほどな。それで、俺も一緒に行って欲しいと……おい。

 

「い、いい子だろ?」

 

 イッセーが少し引きつった笑みで、俺に問い掛けてくる。 

 

「あ、ああ、確かにいい子だし、今の時代には、珍しいほどの乙女だな」

 

 俺はそう答えると、静かにイッセーに携帯を返して、自分の席に座る。

 二人は黙って席に着く俺を無視して、まだ見ぬ乙女との出会いに頭の中がお花畑だ。

 それにしても、イッセー……。

 

「いやー、イッセーくん。ところで『ミルたん』って、どうして『ミルたん』なんだ?」

 

 俺は静かに放課後、松田と元浜に襲いかかるであろう悲劇に手を合わせた。

 

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