ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.11 イメージとコーヒー

 

 放課後、意気揚々と教室を出る松田と元浜を見送ったあと、部室で姫島先輩にPSIのことを相談していた。

 

「上手にイメージを固める方法ですか」

 

 姫島先輩も快く俺の相談に乗ってくれていた。

 

「確かに魔力の源流もイメージですわ。とにかく頭に思い浮かんだものを具現化させることが大事になりますの」

 

 Qが言っていたのも似たようなことだ、PSIは思念の力。イメージを現実に変える力だと。

 

「得意なもの、いつも想像しているものならば、比較的簡単にイメージ出来るかもしれませんわ」

 

 得意なもの、いつも想像しているもの……か。イッセーじゃあるまいし、特にそんなものはない。

 ……どうすればいいんだ。

 いいアイデアが思い浮かばない俺は頭を抱えて悩む。

 

「……イメージの投影……まさか、ここまで難しいとは」

 

「……あっ」

 

 俺が頭を抱えている横で、話を聞いていたのか塔城が、なにか思いついたような声をあげた。

 

「どうしたんだ?」

 

「……いえ、イメージの投影で少し」

 

「なにか思いついたのか!?」

 

「……はい」

 

「あらあら」

 

 なにか思いついたという塔城に対して、俺は驚き、姫島先輩はいつもの笑顔で微笑んでいる。

 

「なんだ? 教えてくれ」

 

「……昨日、喫茶店でやってもらったあれです」

 

「ああ、あれのことだね」

 

 塔城の言葉にソファーに座っていた木場も、思い出したように口を開く。

 昨日、喫茶店でやってもらったこと?

 ……もしかして、あれのことか?

 

「……それって、あれか? エスプレッソにミルクで絵を描いた」

 

「ラテアートですわね」

 

「……はい」

 

 なるほど、自分の頭の中のイメージをミルクを使って映し出すのか……だけど。

 

「あれって、色々な器材が必要じゃなかったか?」

 

「……それでは、こういうのはどうでしょう?」

 

 俺が問題点を挙げると、今度は姫島先輩がなにかを思いついたようにソファーから立ち上がって、なにかの用意をする。

 少し待つと、姫島先輩があるモノを持って戻ってきた。

 

「コーヒーと……クリームですか?」

 

「はい。あまりこういうのは好きではないのですが、今はちょうどいいですわね」

 

 姫島先輩が持ってきたのは、ペットボトルで売られているコーヒーと、ワンカップの小さなクリームだった。

 姫島先輩はそのままカップにコーヒーとクリームを淹れると、カップに両手を添える。

 

「そして、これに魔力を送って……」

 

 そういうと同時に姫島先輩が添えた手から魔力を送ると、カップの中のクリームが勝手に動き出し、魔方陣のような模様を描いた。

 

「……すっご」

 

 俺はその現象に目を見開く。

 確かに、これならイメージをわかりやすく投影できるかもしれない。

 

「これはいいアイデアですわ。小猫ちゃん、よく思いつきましたわね」

 

「……いえ」

 

 姫島先輩に褒められて、塔城が少し恥ずかしそうに呟く。

 

「では、楠緒くんもやってみましょうか。まずは簡単にクリームで円を描くことを試してみましょう」

 

「はい!」

 

 新たに姫島先輩がコーヒーとクリームを淹れてくれたカップに手を添える。

 そして、目を閉じて円をイメージする。

 集中して、出来る限りカップの中のクリームが綺麗な円になるイメージを……。

 そして、頭の中で創り上げたイメージを、目を開いて現実に投影する!

 目を開いた瞬間、頭を奇妙な感覚が襲った。

 今まで超能力を使ったあとに感じていた頭痛とは違う。なんだ? 頭が熱い?

 

「あらあら」

 

「へぇ」

 

「……できた」

 

 奇妙な感覚を感じていると、カップの中に注目していた三人の声が聞こえてくる。

 そうだ。カップの中はどうなったんだ?

 俺はそう思ってカップがどうなっているのか確認する。

 

「……これは?」

 

 カップの中には、綺麗とは言えない歪な円がクリームで描かれていた。

 まだ完璧ではないけど、上手くいったみたいだな?

 そのまま、しばらく置いていると歪な円はコーヒーに混ざってしまった。

 

「上手くいったみたいですわね」

 

「はい。なんとなく、感覚が掴めたような気がします」

 

 姫島先輩の問い掛けに、俺は頷いて答える。

 あのときの奇妙な感覚がPSIを使うときの感覚なのか。

 

「ありがとうございました……塔城もおまえのアイデアのおかげで上手くいったよ」

 

「いえいえ」

 

「……どういたしまして」

 

 俺は協力してくれた二人にお礼を言う。 

 二人も微笑んで答えてくれる。

 ……さてと、続きは家に帰って試すか。

 時計を確認すると、いい時間になっていたので、今日は家に帰ることにした。

 

「部長。お疲れさまでした」

 

 帰り支度を済ませて、部長に挨拶をしに行くと、部長はまた溜息を吐いて、どこか遠くを見ていた。

 どうやら、俺が話しかけたことに気がついていないらしい。

 今朝も似たようなことがあったけど、やはりなにか悩みごとでもあるのだろうか?

 

「部長!」

 

「えっ、ご、ゴメンなさい。なにかしら?」

 

 少し声を大きくして部長に話しかけると、部長は俺に気がついたのか、急に我に返った様子で反応する。

 

「いえ、お疲れさまでした。今日はもう帰ります」

 

「そう。なにかきっかけは掴めたかしら?」

 

「はい。バッチリです!」

 

 部長の問い掛けに、俺は笑顔で答える。

 部長は俺の言葉を聞いて、少し安心した表情を浮かべる。

 

「ならよかったわ。お疲れさま」

 

「失礼します」

 

 俺は部長に挨拶を終えて、部室を出る。

 部室を出たところで、用事で出ていたイッセーとアーシアが戻って来たところだった。

 

「楠緒。今日はもう帰るのか?」

 

「ああ、じゃあな二人とも、また明日」

 

「おう。じゃあな」

 

「はい。また明日です」

 

「……イッセー、最近部長の様子が変なんだけど、なにか知ってるか?」

 

 俺は別れ際に、最近思っていたことをイッセーに問い掛けてみた。

 

「ああ、俺は最近考えてたんだ。最近、部長考え込む時間が増えたよな」

 

「……心配です」

 

 どうやら、二人とも部長の変な様子に気がついていたみたいだ。

 やっぱり、感じていたのは俺だけではなかったか。

 

「そうだよな。色々溜め込まなければいいんだけど……」

 

「ああ」

 

「そうですね」

 

 俺たちはそのまま少しの間無言になる。

 結局、どうすることも出来ないまま、二人と別れて家に帰った。

 

 

 

 

 

 翌日、いつもどおり早朝の特訓を終えた俺は学園に辿り着いた。

 学園に来る途中、俺はあることを考えていた。

 ……今日、部長たち公園に来なかったな。

 まあ、そんなこともあるのだろうけど……なんか、嫌な予感がするんだよな。

 そんなことを思いながら教室の中に入ると、今日も昨日のように教室内が騒がしかった。

 ……まあ、今日の理由はなんとなく予想がつくけどな。

 俺の予想通り、騒ぎの中心を確認すると、松田と元浜がイッセーに対して、コンビでダブルブレーンバスターを食らわせているところだった。

 あれはイッセーが悪い。二人とも余程の地獄を味わったのか、未だ頭を抱えて悶えている。

 一体、昨日なにがあったんだろうな?

 俺は騒ぎを余所に静かに自分の席に座った。

 それにしても、やっぱり部長のあの様子が気になる……早く、いつもの部長に戻ってくれればいいんだけどな。

 俺はそんなことを考えながら、今日の授業の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 放課後、俺はイッセーとアーシアと一緒に部室に向かう途中、木場と合流したので、最近気になっていることを質問してみた。

 

「部長のお悩みか。たぶん、グレモリー家に関わることじゃないかな?」

 

 しかし、どうやら木場も詳しいことはわからないみたいだ。

 けど、木場もやっぱり部長の最近の様子は気になっているみたいだ。

 

「朱乃さんなら知ってるよな」

 

 イッセーが木場にそう問い掛けると、木場も頷いて答える。

 

「朱乃さんは部長の懐刀だから、もちろん知っているだろうね」

 

「だけど、聞いたところで、絶対教えてくれないだろ。直接、本人が言ってくれるのを待つしかないだろ」

 

 俺の言葉に全員が頷く。

 思い詰め過ぎて、なにも起こらなければいいんだけどな。

 そうしている内に部室の扉前に到着すると、木場がなにかに気づいた。

 

「……僕がここまで来て気配に気づくなんて……」

 

 木場が目を細めて、顔を強張らせる。

 気配? 部員以外の誰か部室の中にいるのか?

 俺が木場の様子に少し警戒すると、イッセーがなにも気にしない様子で扉を開いた。

 そして、部室の中に入っていくイッセーの後に着いて、俺たちも部室の中に入る。

 すると、部室の中には部長、姫島先輩、塔城、そして……メイド?

 部室の中には、見たことのない銀髪のメイドが居た。

 あれが木場が警戒した気配の人物か……木場はあの人を知っているみたいだが、部長の知り合いだろうか?

 ……それにしても、部室内の空気が悪いな。

 会話のない張りつめた空気が部室内に漂っている。

 部長は機嫌悪そうな顔をしているし、姫島先輩は表情だけはいつもどおりだけど、どこかいつもとは違う雰囲気が漂っている。

 塔城なんて、部屋の隅で誰にも関わらないように座っている。

 

「まいったね」

 

 俺の横で木場が小さく呟いた。

 アーシアはこの空気に気圧されたのか、不安げな表情でイッセーに頭を撫でてもらっている。

 

「全員揃ったわね。では、部活をする前に少し話があるの」

 

「お嬢さま、その前に眷属ではない者がいるみたいですが」

 

 そう言うと、メイドは一歩前に出て俺の顔を見つめてくる。

 そのメイドと目が会った瞬間、全身が凍りつくような感覚に襲われた。

 俺は自分の身の危険を感じるが、まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。

 

「二人ともやめてちょうだい。グレイフィア、彼にも話を聞いてもらうわ」

 

「……わかりました」

 

 部長の言葉を聞いて、グレイフィアと呼ばれたメイドが一歩下がり、俺から視線を外すと、全身の凍りつく感覚がなくなる。

 俺は大きく深呼吸をして、心を落ち着かせた。

 

「実はね……」

 

 俺が落ち着いたのを確認したあと、部緒が口を開いた瞬間、部室の床に描かれた魔方陣が光り出した。

 あれは……転移現象か? 部長の眷属は全員ここにいるのに一体誰が? メイドのように部長の関係者が来るのか?

 そんなことを考えながら、魔方陣を見ていると、魔方陣に描かれた模様が変化して、見たことのない模様に変わる。

 

「……フェニックス」

 

 隣にいる木場が小さく漏らす。

 フェニックス? 部長の関係者じゃないのか?

 室内を眩しい光が覆い、魔方陣から複数の人影が現れた。

 次の瞬間、魔方陣から炎が巻き起こり、室内が熱気に包まれる。

 くっ! 熱っ! なんなんだ一体?

 炎の中の一つのシルエットが、腕を横に薙ぐと、周囲の炎が振り払われる。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだな」

 

 炎が無くなった場所に立っていたのは、赤いスーツを着た一人の男だった。

 俺はこの男のことを知らないが、このときある確信を持った。

 ……どうやら、俺の悪い予感は的中してしまったらしい。

 

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