ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.16 開始と序盤

 

 決戦当日。

 深夜十一時四十分ごろ。

 俺たちは部室に集合していた。

 それぞれが、一番リラックスできる方法で決戦に備えて待機している。

 俺もソファーに座って、姫島先輩に淹れてもらった紅茶を飲みながら開始の合図を待っている。

 そして、決戦開始まで十分前になったころ、部室の魔方陣が光り出し、グレイフィアさんが現れた。

 

「皆さん、準備はお済みになられましたか? 開始十分前です」

 

 グレイフィアさんの言葉を聞いて、全員が立ち上がる。

 そんな俺たちの様子を確認して、グレイフィアさんは今回のゲームの説明を始めた。

 グレイフィアさんの説明によると、戦闘フィールドは異空間に作られた戦闘用の世界で、使い捨ての空間なので、どんなに派手なことをしても構わないらしい。

 なるほどな、確かにいくらゲームとはいえ、人間界や悪魔の世界で戦い始めたら破壊は免れないものな、全力で戦うためには、使い捨ての害のない空間も必要ってことか。

 

「あの、部長」

 

 俺がそんなことを考えていると、イッセーがなにかが気になっている様子で話しかけていた。

 

「なにかしら?」

 

「部長にはもう一人、『僧侶』がいますよね? その人は?」

 

 そうなのか? 

 アーシアが僧侶になった話は聞いていたが、もう一人いるのは初めて聞いたな。

 俺はその話が気になったが、なぜかイッセーとアーシア以外のメンバーの様子がおかしかった。

 さっきとは空気が明らかに変わっている。

 皆一様に口を閉ざしている。

 どうやら部長の僧侶には、なにかあるみたいだな。

 

「残念だけど、もう一名の僧侶は参加できないわ。いずれ、そのことについても話すときがくるでしょうね」

 

 部長は目を逸らしながら言う。

 イッセーは疑問が増えたといった表情を浮かべている。

 そんな重たい空気の中、グレイフィアさんが口を開いた。

 

「今回のレーティングゲームは両家の皆さまも他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になります」

 

 なるほど、部長の家もライザー・フェニックスの家も、この一戦に注目しているみたいだな。

 

「さらに魔王ルシファーさまも今回の一戦を拝見されておられます。それをお忘れないように」

 

 なんだと!?

 なんで魔王がこの一戦を観戦してるんだ!?

 さすがに、部長もこの話には驚いているようだ。

 

「お兄さまが……? そう、お兄さまが直接見られるのね」

 

 俺は部長の呟くを聞いて驚愕した。

 お兄さまって……部長の兄さんが魔王?

 

「あ、あの、いま、部長が魔王さまのことをお兄さまって……俺の聞き間違いでしょうか?」

 

 イッセーも部長の呟き聞いて、驚きながらも手を挙げて口を開く。

 

「いや、部長のお兄さまは魔王さまだよ」

 

 イッセーの言葉を聞いて、木場がさらりと答える。

 そのあと、俺たちはどういうことなのか話を聞いた。

 前に聞いた天使と堕天使と悪魔の大戦で、先代の魔王はすでに死んでしまったらしい。

 そこで、悪魔たちは魔王の名を残して、巨大な力を持つ者に魔王の名を受け継がれたらしい。

 なるほど、悪魔の世界も色々あるらしい。

 

「サーゼクス・ルシファー……『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』、それが部長のお兄さまであり、最強の魔王さまだよ」

 

 サーゼクス・ルシファー……それが、部長の兄さんの名前か。

 『ルシファー』ということは、もう『グレモリー』という名を名乗っていないわけか。

 それで、部長が『グレモリー』の名前を継がなくてはいけなくて、今回の騒動に発展したというわけか。

 グレモリーの血を残さなければいけないんだろうけど……焦りすぎだろ。

 

「そろそろ時間ですが、その前に少しよろしいでしょうか?」

 

 グレイフィアさんはそう言うと、静かに俺の前まで歩いてくる。

 

「あなたはお嬢さまの正式な眷属ではありません。どうしても、今回のゲームに参加する場合はこちらを腕に装着してください」

 

 グレイフィアさんはそう言って、俺の前に腕輪のようなものを差し出す。

 

「なんですかこれは?」

 

 俺はそれを受け取りながら、グレイフィアさんに問い掛ける。

 

「その腕輪は今回のゲームのために特別に用意したものです。その腕輪を装着していただければ、今回だけ特別にゲストという立場でゲームに参加することができます。その腕輪には装着したものの状態を状況を確認する機能があり、こちらでゲームの続行が不可能と判断した場合と腕輪が破壊されてしまった場合、撃破扱いとし、強制的にゲームから退場させていただきます。これはあなたの安全を確保するためのものなので、装着していただかない限りゲームへの参加は承認できません。もちろん、対戦相手であるライザーさまには、既に話して許可を得ています」

 

 なるほどな。腕輪を破壊されたらいけないのは厳しいけど、そのぐらいは当たり前か。

 

「わかりました」

 

 俺はそんなに悩むことなく、すぐに腕輪を装着する。

 グレイフィアさんは俺が腕輪を装着したのを確認すると、再び口を開く。

 

「それでは皆さま、魔方陣の方へ」

 

 グレイフィアさんに促されて、俺たちは魔方陣に集結する。

 

「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔方陣での転移は不可能となります」

 

 グレイフィアさんが言い終わったそのとき、魔方陣の紋様が変化して見知らぬものになる。

 そして、魔方陣から発せられる光が俺たちを包み込み、転移が始まった。

 

 

 

 

 

 転移された空間は、さっきまでいた旧校舎とまるでそっくりだった。

 俺とイッセーとアーシアは一瞬、転移に失敗したのかと思ったが、グレイフィアさんのアナウンスによって、無事に転移が完了していることを知る。

 こちらの本陣は今いる旧校舎の部室。

 そして、相手の本陣は新校舎の生徒会室になった。

 イッセーが兵士の特性である『プロモーション』を行うためには、この本陣までいかなけれないけない。

 そして、相手の兵士八人に本陣に入りこまれたら、こっちの大ピンチってことか。

 

「全員、この通信機器を耳につけてください」

 

 姫島先輩にイヤホンマイクタイプを渡される。

 

「戦場ではこれで味方同志やり取りするわ」

 

 それを耳につけながら部長がいう。

 確かに、全員が固まって行動するわけではないし、こういうアイテムは大事だな。

 腕輪もだが、これも壊れないようにしないとな。

 

『開始の時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それではゲーム開始です』

 

 グレイフィアさんのアナウンスと同時に学園のチャイムが鳴り響く。

 こうして、俺たちの負けられない一戦が始まった。

 

 

 

 

 

 ゲームが始まり、いきなり敵味方入り乱れての決戦になるわけなく。

 ゲームの今後の展開を有利に進めるため、俺たちは旧校舎よりの体育館を占拠する作戦をとることにした。

 しかし、その前に自分たちの領土である本陣近辺の森に木場と塔城がトラップを仕掛けに行った。

 他のメンバーは二人が帰ってくるまでの間、本陣で待機することになった。

 そして、俺の目の前でイッセーが部長に膝枕をされている。

 イッセーはそんな状況に涙を流し、部長は少し呆れた表情でイッセーを見つめている。

 俺の隣に座っているアーシアが、そんな二人の様子を見て頬を膨らましている。

 どうやら、二人の状況に少しやきもちをやいているみたいだ。

 最初は部長がなにをしようとしているのかわからなかったが、どうやらイッセーイッセーに封印を少し解除するのが目的らしい。

 イッセーに使われた兵士の駒は八個。

 悪魔としては未成熟であるイッセーには駒の力に耐えることができなかったらしい。

 しかし、あの修行を乗り越えた今、その力を少し使うことができるようになったらしい。

 部長はイッセーの封印を解除したあとも、膝枕を続け頭を撫でながらイッセーに発破をかける。

 イッセーも英気を養ったのか、気合のこもった表情をしている。

 

「ごめんなさい楠緒。関係ないあなたを巻き込んでしまって」

 

 俺がそんな様子を見つめていると、部長が申し訳なさそうな声で話しかけてきた。

 

「なに馬鹿なこと言ってるんですか。部長が困ってるなら、どんなことだって俺は力になりますよ。仲間……ですから」

 

 俺は精一杯の笑顔で部長に言う。

 

「ありがとう」

 

 俺の笑顔につられてか、部長も優しく微笑みながらそう言ってくれる。

 俺はそんな部長の顔を見て、イッセーではないが英気が湧いてきた。

 このゲーム絶対に俺たちが勝つ!

 

 

 

 

 

 木場と塔城が部室に戻ってきたあと、早速俺たちは行動を開始した。

 イッセーは塔城と共に体育館の占拠。

 姫島先輩はトラップを仕掛けた森に霧と結界を仕掛けたあと、他の仕事のために行動をしている。

 部長とアーシアは、今後の展開を考えて本陣で待機。

 そして、俺と木場は……。

 

「掛かったな」

 

「そうみたいだね」

 

『ライザー・フェニックスさまの「兵士」三名、「戦車」一名、リタイヤ』

 

「どうやら、あっちも上手くいっているようだな」

 

「じゃあ、こっちもそろそろ動こうか」

 

 グレイフィアさんのアナウンスを聞いて、イッセーたちは上手くいったことを確認する。

 俺と木場は仕掛けたトラップに引っかかった、三人を見つめる。

 俺と木場の仕事は森に侵入してくるであろう相手の排除だ。

 俺たちは姫島先輩の張った結界に捕らわれた三人の前に出る。

 

「計画通りだな」

 

「残念だったね。もうここから出られないよ。君たちはうちの女王の張った結界の中にいるからね」

 

「しまった。トラップばかりに気を取られて」

 

 こちらの計画に嵌まった三人は、現れた俺たちを見て表情を浮かべる。

 

「人で不足は知恵で補わないと」

 

 木場は自分の頭を指差しながら、いつもの爽やかな表情で三人に向けて言い放つ。

 

「割と好みだから言いたくないんだけど、もしかして三対一で勝てると思ってる? しかも、一人はゲストの人間じゃない」

 

 三人のうちの一人が、俺を見つめて少し笑いながら言ってくる。

 あれは、完全に嘗められてるな。

 

「言ってくれるなぁ、あの女」

 

「ハハハ、じゃあ見返してあげないとね」

 

 木場が笑いながらそんなことを言ってくる。

 ……そのとおりだな。

 

「あの女は俺が相手をする。他の二人はおまえに任せていいか?」

 

「うん。まかせて」

 

 俺の提案に木場は快く了承してくれる。

 

「じゃあ、そういうことでッ!」

 

「ッ!」

 

 俺はそう言い終わると同時にライズを使って、一瞬で標的の女に接近する。

 

「隙だらけだぜ!」

 

「ガッ!」

 

 人間である俺が予想以上の動きをしたのか、三人ともわかりやすく隙が生まれる。

 俺はその隙を見逃すことなく、隙だらけの腹に膝を叩きこむ。

 膝を叩きこんで、体が後ろに引いたところを逃さずに追撃する。

 

「こいつで……撃破だ!!」

 

 相手に一切の隙を与えず、相手の体に数発打撃を叩きこみ、止めにハイキックを顔に叩きこんだ。

 

「悪いな。女だからって、手加減は無しだ。木場! こっちは終わった……ぞ……?」

 

 俺が攻撃した相手が光に包まれて、転送されたのを確認して木場に話しかけると、既に木場は俺が任せた二人を撃破していた。

 ……もう終わったのかよ。

 

『ライザー・フェニックスさまの「兵士」三名、リタイヤ』

『リアス・グレモリーさまの「戦車」一名、リタイヤ』

 

「なっ……塔城が!?」

 

 俺たちが倒した相手のアナウンスと同時に塔城がリタイヤしたアナウンスも聞こえてきた。

 

「木場!」

 

「うん、わかってるよ。早くイッセーくんと合流しよう」

 

 敵を倒した余韻もなく、俺は木場に話しかけると木場は頷いてこう答える。

 どうやら、ゲームが激しく動き出したみたいだな。

 ゲームは序盤(オープニング)から中盤(ミドルゲーム)に動き出したようだ。

 

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