ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.18 切り札と怒り

 

 俺の言葉を聞いて、レイヴェルは顔を紅潮させ興奮した様子で口を開く。

 

「もういいですわ! シーリス手加減はいりません。その人間に自分の身の程を教えてさしあげなさい!」

 

「御意」

 

 レイヴェルの声に促されて、相手の騎士が背負っていた大剣を抜き放ち、明らかにその大剣の間合いの外で構える。

 ……剣士があんなに距離を取って、どうするつもりだ?

 

「はっ!」

 

「ッ!」

 

 気合の籠った声とともに、騎士がその場から大剣を振り抜くと、その大剣から衝撃波が生じて俺に襲いかかってきた。

 俺が予想していなかった攻撃に一瞬だけ気を取られるが、即座にライズで衝撃波をかわす。

 衝撃波をかわした俺に騎士は、その特性を生かしたスピードで俺に接近すると、今度はその大剣を俺に目掛けて振り下ろす。

 大剣の直撃を受けるわけにはいかないので、俺は紙一重で大剣をかわすと、発生する衝撃波をライズで正面から受け止める。

 衝撃で俺の体は吹き飛ぶが、ライズで体を強化していたおかげで、ダメージは殆どないが、あの大剣と衝撃波は厄介だな。

 イッセーのためにも、早くこの騎士を撃破しないといけないのに……こうなったら、あれを使うか。

 俺は右手に指先を騎士に向ける。

 

「なにをするつもりかは知らんが、無駄なことだ!」

 

 騎士はそう言い放ち、再び俺に衝撃波を飛ばしてくる。

 俺は自分に迫ってくる衝撃波に対してなんの反応もせずに、自分の指先にあるイメージを固める。

 今から俺がするのは今日のために開発した烈破のバーストの一つ。

 指先にイメージするのは、凝縮したバーストエネルギー。

 そのエネルギーを俺の指先から弾丸のように射出する!

 

指弾(フィンガー・ボム)』 

 

 俺がそう名付けられたバーストエネルギーの弾丸は指先から離れ、騎士の生み出した衝撃波と衝突する。

 弾丸と衝撃波が衝突した瞬間、衝撃波は霧散し弾丸はその勢いのまま騎士に向かって飛んでいく。

 バーストエネルギーを目で見ることができない騎士は、突然自分の放った衝撃波が霧散したことに驚愕し、その場から動かない。

 そんな隙だらけな騎士に弾丸は衝突しその体を穿つ。

 

「くっ! なにをした!?」

 

「そう簡単には教えねぇよ」

 

「……まさか、人間にやられるとわな」

 

 騎士はそれだけを言い残すと地面に倒れた。

 そのまま体が消滅し撃破したことを確認する。

 

『ライザー・フェニックスさまの「騎士」一名、リタイヤ』

 

「ッ!」

 

 グレイフィアさんのアナウンスが聞こえてくると同時に頭痛が走る。

 ……やっぱり、あれほどのライズとバーストを同時に使うのは辛いか。

 まあ、こっちは終わった。イッセーは無事か?

 そう思った俺は急いでイッセーの様子を確かめる。

 俺がイッセーの方を向くと、そこには信じられない光景が広がっていた。

 その場はイッセーを中心に地面から大量の剣が生え、まるで刃の海と化していた。

 

「……バカな」

 

「これもドラゴンの力だというのか……?」

 

 地面から生えた大量の剣に体を貫かれているライザーの眷属たちは、苦悶の声をあげて消滅した。

 

『ライザー・フェニックスさまの「兵士」二名、「騎士」一名、リタイヤ』

 

「よっしゃ!」

 

 グレイフィアさんのアナウンスを聞いて、イッセーがガッツポーズをとる。

 これをやったのは、やっぱりイッセーなのか?

 

「イッセー、これは一体なんだ?」

 

 俺はイッセーに近づき、剣を指差して聞く。

 

「これは、俺の神器の新しい力『赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』だ。この籠手で木場の神器を強化したんだ」

 

 ということは、この剣の正体は木場の持つ神器なのか。

 

「僕も驚いたよ。凄い力だ……」

 

 神器の持ち主である木場も困惑しながら周囲を見渡している。

 どうやら、この光景は木場も予想以上だったらしい。

 まあ、三人とも無事で済んだみたいだな。

 これで残りは女王とレイヴェルとライザーの三人。

 このままの勢いでいけば勝てる。

 そう考えた俺の耳に信じがたいアナウンスが飛び込んできた。

 

『リアス・グレモリーさまの「女王」一名、リタイヤ』

 

「ッ!?」

 

「なっ!?」

 

「……嘘、だろ?」

 

 俺たちは全員が我が耳を疑った。

 嘘だろ。俺たちの女王っていったら……姫島先輩がやられた?

 絶対に大丈夫だと思っていた人が撃破されたことに、俺たち動揺が走る。

 そのとき、足元が激しく振動し、凄まじい爆発音が俺の鼓膜を激しく揺さぶった。

 その爆発音が聞こえてきたのは、俺のすぐ近く、ちょうど木場がいた方向だ。

 俺はゆっくり木場がいた方向を向いて絶句した。

 イッセーもその光景を見て、俺と同じように絶句している。

 俺たちの視線の先には、木場が全身から煙を立ちのぼらせながら地面に突っ伏していた。

 そして、俺たちが木場に駆け寄る時間もなく木場はこの場から消滅してしまった。

 

『リアス・グレモリーさまの「騎士」一名、リタイヤ』

 

 再びグレイフィアさんのアナウンスが無情にも運動場に響き渡る。

 俺とイッセーは連続で起こった出来事に、その場で立ち尽くすことしかできなかった。

 そんな俺たちの傍で、主を失った剣が儚い音を立てて、一本、一本と崩れて散っていく。

 砕けた剣の破片が、キラキラと運動場に舞う幻想的な空間の中、俺はある一点だけを睨むように見つめる。

 こちらを見つめながら、空に漂う一つの影。

 あのフードを被った魔術師は、ライザーの女王。

 しかし、その女王の様子はどこか可笑しいかった。

 なんで、あいつは姫島先輩と戦って傷一つ負ってないんだ?

 

「『騎士』、撃破」

 

 女王は冷笑を浮かべ、そう一言口にする。

 

「朱乃さんと木場をやったのもてめえか!」

 

 イッセーの言葉から、塔城をやったのもこいつということか。

 俺たちは全員こいつにやられているのか……。

 イッセーは俺の横で拳を天に突き上げて、女王を挑発する。

 しかし、女王は興味が失せたような目で俺たちを一瞥すると、新校舎の屋上のほうへ黒い翼を羽ばたかせた。

 ……待てよ。

 

「誰が勝手に行っていいって言った!!」

 

 さっきからイッセーの横で怒りを溜め込んでいた俺は、無防備に背を向けた女王に対して指弾を放つ。

 しかも、これはさっきの指弾とはまるで違うもの。

 騎士に放った指弾は一本の指先にバーストエネルギーを凝縮させたものに対して、今放ったのは五本の指先にバーストエネルギーを凝縮させた切り札。

 

五行爆華(フィフスフィンガーボムズ)

 

 女王は俺の声と殺気に反応して振り向く。

 しかし、俺の放った指弾は女王が振り向いた瞬間に着弾する。

 そのとき、凄まじい爆炎と爆風が巻き上がった。

 ……どうだ? これが、今回俺が用意した本当の切り札。

 これで撃破出来ればいいんだがな。

 

「……や、やって、くれたわね」

 

 しかし、俺の願いも空しく、爆炎と爆風によって生じた煙の向こうから女王の声が聞こえてくる。

 ……駄目だったか。

 そう思った瞬間、俺の足元に魔方陣が浮かび上がる。

 不味い……ッ!

 一瞬でその魔方陣の危険を感じ取り、回避を行うが間に合わずに発生した爆風に巻き込まれてしまった。

 

「ガッ!」

 

 ライズによって体も頑丈になっていた俺は、吹き飛ばされて地面に叩きつけられるが、なんとか撃破されずに立ちあがる。

 煙が晴れ、女王の方を見つめると、女王も俺の五行爆華によって、全身に火傷などのケガを負っていた。

 女王はまるで俺を憎むような視線で睨みつけてくる。

 

「人間ごときがよくも私に傷を!」

 

「全員似たようなこと言いやがって……あまり、人間を嘗めるなよ」

 

 激昂した様子で叫ぶ女王に対し俺はそう言い返す。

 

「イッセー! おまえは部長たちの元に行け! 俺はここでこいつを撃破する!」

 

「えっ……わかった!」

 

 イッセー、俺の言葉に一瞬戸惑うがすぐに頷いて新校舎に向けて動き出す。

 

「待ちなさい!」

 

「おっと、そうはさせるか!」

 

 女王がイッセーに攻撃を仕掛けようとしたところを、指弾を放って妨害する。

 妨害された女王は俺を忌々しそうに睨んでくる。

 

「邪魔をするな!」

 

「悪いな、それは無理だ」

 

 女王の言葉に俺は軽い口調で言い返すと、真剣に勝つための方法を考える。

 ……あの爆破は一瞬だ。気を抜いたら回避は間に合わない。

 次にあの攻撃をくらったら、今度こそ終わりだ。

 

「そう。そんなに死にたいのなら、私が今ここで殺してあげるわ」

 

 女王がそう言うと同時に、俺の足元に再び魔方陣が浮かぶ。

 きたっ!

 全身の傷のせいか、魔法の発動までの速度が僅かだが落ちている。

 これなら完璧に避けられる。

 ……避けたあとは、まずあいつを地面に落とさないとな。

 俺はライズで魔法の攻撃範囲から逃れると、女王に向かって思いっきりジャンプする。

 

「馬鹿ね、空中じゃあ避けられないわよ」

 

 女王が唇を吊り上げて笑いながら、俺に向かって魔法を撃つ。

 その攻撃を読んでいた俺は、女王の魔法に合わせて、指弾を放つ。

 女王が魔法を撃った瞬間、俺の放った指弾と衝突して、二つの力が女王の近くで爆発する。

 ほぼ零距離で爆発を受けた衝撃で、空中にいた女王が地面に墜落していく。

 

「くっ! またしても……」

 

「……これで終わりだ」

 

 地面に墜落した女王に対して、俺は一切容赦なく指弾を放ち、女王の体を穿つ。

 

「そ、そんな……ライザー……さま、もうしわけ、ありませ……ん」

 

 女王は最後にそう言い残して地面に倒れた。

 そして、すぐに地面に倒れている女王の体がこの場から消滅した。

 

『ライザー・フェニックスさまの「女王」一名、リタイヤ』

 

 ……勝った。最初の五行爆華での不意打ちがなかったら危なかったな。

 

「ぐっ!」

 

 少し気を抜いた瞬間、激しい頭痛が襲いかかってきた。

 ……まだ、もう少し待ってください。

 俺は体の状態を外から確認しているであろう、グレイフィアさんに対して心の中で願う。

 あと、二人なんだ……そうすれば、俺たちの勝ちなんだ。

 俺は頭痛に耐えながら、新校舎を目指して移動を行う。

 

「あなたもまだ戦いますの?」

 

 急いで部長たちの俺の前に立つレイヴェルがそう聞いてくる。

 

「ああ、まだゲームは終わってないからな」

 

「……そうですか」

 

 俺の言葉を聞くと、レイヴェルは小さく呟いて道を開けてくれた。

 

「……どういうつもりだ?」

 

「別になにを聞いても無駄だと思っただけですわ。私は遠くからあなたたちが無様に負けるところを眺めさせていただきますわ」

 

「……そうか。勝手にしろ」

 

 レイヴェルは俺の返事を聞いて小さく肩を竦めると、炎の翼を広げ、どこかへ飛んでいった。

 その場で一人になった俺は、急いで部長たちのいる新校舎に向かった。

 

 

 

 

 

 新校舎に辿り着いたとき、俺の目に悲惨な光景が飛び込んできた。

 新校舎の屋上で、さっき以上に全身が傷だらけになったイッセーが、ライザーに髪を掴まれ持ち上げられていた。

 

「イッセー!」

 

「……漸く来たか。待ちくたびれて、もう少しで殺してしまうところだったぞ」

 

 俺に気付いたライザーが口を吊り上げ、嫌な笑みで俺を見つめる。

 

「イッセーを放せ。ライザー・フェニックス」

 

 俺はライザーを睨みつけながら、イッセーを放すように促す。

 

「いいだろう……ほら」

 

「なっ!?」

 

「イッセーぇぇぇぇ!!」

 

 ライザーはそう言うと、あろうことかイッセーを屋上から地面に向けて投げ捨てた。

 部長は落ちていくイッセーを見つめ名前を叫ぶ。

 俺はライズを使って、落ちてくるイッセーを全力で受け止めた。

 

「イッセー! 大丈夫か!?」

 

 俺は受け止めたイッセーの状態を急いで確認する。

 イッセーの傷は近くで見ると、思った以上に酷いものだった。

 

「ッ……く、くす、お」

 

 イッセーが力を振り絞るような声で俺の名前を呼ぶ。

 

「ま、まだだ……まだ、戦える……」

 

「もういい、喋るな!」

 

 口から血を吐き出しながら話すイッセーに止めるように言うが、イッセーは俺の言葉を無視して話し続ける。

 

「約束、したんだ……ライザー・フェニックスをぶっ倒して、部長に勝利……を……」

 

 そう言いながらイッセーが俺の肩に手を伸ばすが、その手が俺の肩に触れる前に、腕の中のイッセーが光に包まれ消滅した。

 

『リアス・グレモリーさまの「兵士」一名、リタイヤ』

 

 グレイフィアさんのアナウンスが静かに響き渡る。

 俺はイッセーの感触が無くなった手を全力で握りしめる。

 イッセー、あとは任せろ。

 

「ハハハッ! 美しい友情劇も、漸く終わったみたいだな」

 

「……ライザー・フェニックス」

 

 こっちを見て、高笑いをしているライザーを睨む。

 こいつがなんで笑ってるんだ。

 

「わかったか。今度こそチェックメイトだ。今の君たちでは、いくら努力したところで不死身のフェニックスである俺に勝つことは不可能だ」

 

 ……黙れ。

 ライザーの言葉を聞いて、俺の中のなにかか黒く蠢き暴れ出す。

 

「リアス。もう理解しただろう投了(リザイン)するんだ。早くしないと、今度はあの人間が兵士と同じ目にあうぞ」

 

 そう言いながらライザーが部長を見つめると、部長は体を強張らせる。

 

「まだ答えは出ないか……仕方ない。ならば、あの人間に少し痛い目にあってもらうとしよう」

 

「ッ! 待ちなさい! ライザー!!」

 

 ライザーは部長の呼び止めを無視して、炎の翼を広げると、俺の立っている地面に降りてくる。

 

「そういう訳で、貴様には少し痛い目にあってもらうことになった」

 

 ライザーは嫌な笑みを浮かべながら、そう言ってくる。

 

「……聞いてもいいか?」

 

 俺はライザーを正面から見つめながら問い掛けた。

 

「いいだろう。痛い目にあう前に、話を聞いてやろう」

 

 ライザーは笑みを崩さないまま、余裕な態度で返事をする。

 

「おまえは部長を愛しているのか?」

 

「ああ、俺はリアスを愛している。だからこそ、こんなゲームをしてまで、リアスを俺のモノにしようとしているのさ」

 

 ライザーは俺の問い掛けに、なにも悩むことなくすぐに答える。

 

「おまえが愛してるのはどっちだ。グレモリー家としてのリアス・グレモリーか……それとも、リアス・グレモリー個人か」

 

「勿論、両方に決まっているだろう。まあ、グレモリー家でないリアスに正妻は無理だな。だけど、あれほどの美貌だ。愛人としてなら愛することもできるだろう」 

 

「そうか……それがオマエの答えか!」

 

 ライザーの答えに、俺の中で蠢いていた黒いなにかが爆発する。

 

「アアアアアアッ!!」

 

 戦場に響き渡る咆哮。

 俺は感情の赴くままにPSIを行使する。

 今まで発したことのないほどの、巨大なバーストエネルギーが俺の前で凝縮され、一つの力として生み出される。

 

「な、なんだ……それは……」

 

「それ以上喋るな。おまえは……消す」

 

 PSIによって、生み出された黒い球体が巨大な波動を発しながら戦場に轟いた。

 

 

 ゲームは終局に向けて、一気に動き出す。

 

 

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