ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.1 悲惨な現実

 

 ……さて、あいつはこのあたりにいると思うんだが。

 …………おっ、発見。って……あいつ大丈夫か?

 俺の目線の先には、落ち着かないようすで、あたりをキョロキョロと見回しているイッセーがいた。

 いくら緊張してるからって、あんな調子で今日のデートは大丈夫なのだろうか?

 いつまでも遠くから見てても仕方ないので話しかけるか。

 

「……イッセー君。今日はもしかして例の彼女とデートかな? もしデートなんて言ったら、学園の彼女がいない男子生徒全員を代表して…………潰すぞ」

 

 だけど、普通に話しかけても面白くないので、イッセーに気付かれないように死角から話しかけることにしてみた。

 もちろん、最後の『潰すぞ』はできる限り、低い声で迫力を込めてだ。

 

「なっ! なにを!?」

 

 どうやら、イッセーはその場で跳ね上がるぐらいビックリしてくれたようだ。

 うん。相変わらずいいリアクションだなイッセー。

 

「よっ、イッセー」

 

「く、楠緒か……なんか潰すとか、聞こえてきた気がしたんだけど……?」

 

「えっ? そりゃあ…………」

 

 俺はイッセーの下半身に視線を移す。

 

「な、なにを潰す気だ!?」

 

「そりゃあ、ナニを……」

 

「や、やめてくれ! おまえが言うと冗談に聞こえないから!!」

 

 失礼な奴だな。本当に潰してやろうか?

 

「そ、それよりも、なんか用か?」

 

「ああ、それは「あの~?」……あ?」

 

 後ろから声をかけられたので振り向くと、そこにはイッセーの彼女、天野夕麻が立っていた。

 こいつ、いつの間に!? 全然、気がつかなかったぞ。

 

「あっ、夕麻ちゃん!」

 

「おはようイッセー君。もしかして、待たせちゃったかな?」

 

「い、いや、俺もいま来たところだから」

 

 いやいや、嘘つくなよ!? どうせ、三時間くらい前から待ってるくせに……。

 

「え? でも……」

 

 イッセーはなぜかキメ顔をしているが、天野夕麻は不思議そうに俺のほうを見てくる。

 

「俺のことは気にすんな。俺もさっき、たまたまイッセーを見かけて話してただけだ」

 

「あっ、そうだったんだ! え~っと、あなたは……?」

 

「まあまあ、俺のことはいいから。それじゃあ、天野さん。今日はイッセーのことよろしくな」

 

「え、う、うん!」

 

「さてと、それじゃあ、せっかくのデートをこれ以上邪魔するのも悪いし、俺は行くわ。じゃあな」

 

「あ、ああ。じゃあな楠緒……それじゃあ、夕麻ちゃん。俺たちも行こうか」

 

「うん!」

 

 挨拶を済ませて、二人が手を繋ぎながらデートを始めるのを見届ける。

 ……行ったか。さてと、俺も行くか。

 歩き出した俺はさっき会話した天野夕麻のことを思い出す。

 ……ホントに、このまま何も起こらなければいいんだけどな。

 そんなことを思いながら、俺はある場所に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 ……さてと、そろそろか。

 俺が町外れの公園に到着してから数時間。

 周りはいい感じに夕暮れに染まっている。

 本当なら、あの二人がここに来なければいいんだけど……来た!!

 公園の入り口からは見えない位置で隠れて、二人が公園に入ってきたのを確認する。

 お願いだから、このまま無事に終わってくれよ……。

 噴水の前にいる二人を緊張しながら見つめる。

 

「死んでくれないかな?」

 

 その声が届いた瞬間、天野夕麻の背中から黒い翼が生えた。

 クソッ!! やっぱりか!!

 今から飛び出してもイッセーを助けるのは無理だ。

 なぜなら、すでに天野夕麻の手にはあの光の槍が握られている。

 だけど、大丈夫だ。俺なら助けられる。そのための……()だろ!!

 俺はその場から思いっきり天野夕麻に向かって念じる(・・・)

 

――――動くな!!

 

「!?」

 

 俺が念じた瞬間、光の槍を投げようとしていた天野夕麻の身体が急に停止する。

 

「……なに、急に身体が!?」

 

 天野夕麻は自分の身体に何が起こっているのか理解できていない。

 俺はこの隙を逃さないように、再び天野夕麻に向かって念じた。

 

――――吹き飛べ!!

 

「なっ!?」

 

 天野夕麻の身体が見えない何かによって、後方へ吹き飛んでいった。

 ……今だ!

 

「イッセー!!」

 

「……えっ? く、楠緒!?」

 

 隠れていた場所から跳び出した俺は、驚いているイッセー無視して、急いで地面にヘたり込んでいるイッセーを抱き抱える。

 

「なっ! お、おい!? どうしたんだ、いきな「静かにしろ! まずはここから逃げるぞ!」……えっ!?」

 

 俺はイッセーを抱き抱えたまま、ここから跳ぶ(・・)ように念じた。

 

 

 

 

 

 一瞬、視界が光に包まれたかと思うと、瞬く間に辺り景色が夕暮れの公園から住宅街に変化する。

 

「グッ……ガァ!」

 

 突然、頭が割れてしまいそうなほどの激痛が走り、俺は頭を押さえて倒れこむ。

 や、やっぱり、二人分の移動は無理があったか……。

 し、しかも、予想以上に跳んでない……。

 

「お、おい、楠緒。どうなってんだよ、俺達さっきまで公園に居たはずなのに、なんでいきなり街中に居るんだ……!? って、どうしたんだ楠緒!?」

 

 イッセーは倒れこんでいる俺に気がついたようだ。

 だ、だけど、まずは天野夕麻に狙われているイッセーを逃がす方が先決だ。

 

「い、イッセー。俺のことはいいから……ハァハァ、は、早く逃げろ」

 

「ば、馬鹿言うな! こんな状態の友達を放っておけるわけないだろ!!」

 

「い、いいか、イッセー。俺の頭痛は少し休めば治る。それよりも、おまえは天野夕麻に命を狙われてるんだぞ! ここはあの公園とそんなに距離が離れてない。あいつが追いついてくる前に、早くここから逃げろ!!」

 

 俺は頭痛を我慢しながらイッセーに叫ぶ。

 

「……わかった」

 

 イッセーは真剣な表情で答えると、俺の腕を肩に掛けそのまま俺の身体を支えながら持ち上げた。

 

「ふざけるな、イッセー! 誰が肩なんて貸せって言った!? 俺はここに置いて行け!!」

 

「おまえこそふざけんじゃねぇぞ!! 俺を置いて行けだと!? こんな状態でかっこつけてんじゃねぇ!!」

 

 こ、こいつは……まったく……。

 

「この、大馬鹿野郎が……」

 

「へっ、友達を置いて一人で逃げるのが偉いって言うんなら、俺は馬鹿で結構だ!」

 

「……たくっ」

 

 イッセーの言葉を聞いた俺は頭痛を必死に堪え、イッセーに支えてもらいながら足を一歩踏み出す。

 

「それなら、一緒に早く逃げるぞ」

 

「ああ!」

 

 そう言って、イッセーも一歩踏み出した瞬間、イッセーの身体が地面に倒れこみ、イッセーに支えられていた俺も一緒に地面に倒れこむ。

 

「お、おい! イッセー……ッ!!」

 

 イッセーを見ると、イッセーの背中に先ほど天野夕麻が持っていたのと同じ光の槍が突き刺さっていた。

 こ、これは……?

 

「まったく、あまり手間を掛けさせないで欲しいわね」

 

「あ、天野……夕麻……」

 

 声のした方向に見ると、空から黒い翼を生やした天野夕麻が降りてきた。

 こいつ、もう追いついてきたのか。

 

「あら? あなたは確か今朝あったわよね。どうしてここに居るのかしら?」

 

「……」

 

 俺は天野夕麻を睨みつける。

 

「まあ、いいわ。どうやら、あなたにはなにか特別な『力』があるみたいだけど。もしかして『神器(セイクリッド・ギア)』かしら?」

 

「……どうしてだ?」

 

「あら、なにかしら?」

 

「どうして、イッセーにこんなことをする!?」

 

「ああ、それね。どうしようかな~。別にあなたみたいな人間ごときに話してあげる筋合いはないんだけど……まあ、いいわ。この私にここまで手間をかけさせたご褒美に教えてあげる。それはね、その子が神器なんて宿してる危険因子だったから、早めに始末させてもらったわ」

 

「なっ!?」

 

 な、なんだよ……それ。その神器なんてもののせいでイッセーは…………ふざけるな。

 

「……ふざけるな」

 

「別にふざけてないわよ。それに、あなたも神器を宿しているのなら、いづれ私たちの危険因子なるかもしれないわね。万が一にも、そうならないために、私が直々に殺してあ・げ・る」

 

 そう言うと同時に天野夕麻はイッセーに刺したのと同じ光の槍を俺にも投げつけてくる。

 ぐっ……駄目だ。頭痛のせいで力が使えない……。くそっ、ふざけんなよ……。

 

「天野夕麻ぁあああああああああああああああああ!!」

 

 俺が叫ぶと同時に倒れているイッセーから紅い光が放たれる。

 そして、その光にかき消されるように、俺に向かっていた光の槍が消滅した。

 

「ま、魔方陣!?」

 

「……なに?」

 

 天野夕麻は驚きながら、光を放つイッセーの方を見ている。

 俺もイッセーの方を向くと、イッセーの横でゲームとかで見るような魔方陣が浮かび上がり、そこから綺麗な紅い髪の美しい女性が出てきた。

 ……って、あの紅い髪はまさか?

 

「……これは、どういう状況かしら?」

 

 魔方陣から出てきたその人は、倒れているイッセーや俺達を見つめている。

 ……間違いない。あの紅い髪は学園で有名のリアス・グレモリー先輩じゃないか。

 なんで、あの人が魔方陣から?

 

「悪魔が一体なんの用かしら?」

 

 少し冷静になったのか天野夕麻がグレモリー先輩に質問をする。

 

「あなたこそ、堕ちた天使がこの土地に一体なんの用で?」

 

 グレモリー先輩と天野夕麻の間に異様な空気が流れる。

 それにしても、さっきから二人が言っている悪魔や堕天使って、どういうことだ?

 

「まあ、いいわ。それよりも早くこの土地から出て行きなさい。さもなくば、容赦しないわよ」

 

 そう言った瞬間、グレモリー先輩の周りの空気がなにか変ったような気がした。

 

「わかったわ。そっちの子を始末できなかったのは残念だけど、当初の目的は達成したし退いてあげる。よかったわね、あなた」

 

 天野夕麻が俺に微笑みかけると、そのまま空を飛んでどこかに行ってしまった。

 

「グッ、ガァアアア!!」

 

 天野夕麻が居なくなって安心したのか、先ほどの何倍もの頭痛が俺に襲いかかり、再び頭を抱えながら地面に倒れこんでしまった。

 こ、これは本当にヤバい。力を使いすぎたか?

 

「あなた、大丈夫かしら?」

 

 突然、頭を抱え込んで倒れたのでグレモリー先輩の心配してくれたのか話しかけてきてくれた。

 

「お、俺は、だ、大、丈夫、だ。そ、それよりも、イッセーは?」

 

 俺は必死にイッセーの方を指差してグレモリー先輩に伝える。

 

「ああ。私を呼んだ子ね、あの子はもう駄目ね。残念だけど死んでるわ」

 

「……っ」

 

 結局、駄目だったのか。イッセーが殺されるってわかってたのに、俺はイッセーを……。

 

「くそっ! 畜生! またか! また俺は!」

 

 イッセーを死なせてしまった悲しさや悔しさから、自然と俺の目から涙が流れる。

 

「ねぇ、あなた。もしも、この子を助ける手段があったとしたらどうする?」

 

 泣いてる俺に向かってグレモリー先輩があり得ないことを言ってくる。

 イッセーを助ける? そんなこと不可能だ。

 死んだ人が生き返るわけがない……待てよ、確か天野夕麻はさっきグレモリー先輩のことを悪魔って言ってたよな? もしかして……。

 

「あ、悪魔、との、契約、ってやつか?」

 

「違うわ。もしそうだとしても、死者を蘇らせるなんて願い。どんな人間の魂を対価にしても不可能よ」

 

「じ、じゃあ……」

 

「この子を救う手段。それはこの子を悪魔に転生させることよ」

 

「……はぁ?」

 

 あ、悪魔に転生?

 

「そ、それって、どういう、こと、だ?」

 

「詳しく話すと長くなるから簡単に言うわね。私はこの子を悪魔に転生させることができるわ。そうすれば、彼は悪魔として再び命を得ることができる」

 

 再び命を得る?

 

「そ、そんなことが、できるのか?」

 

「ええ、だから決めなさい。この子を悪魔として転生させるのか、させないのか」

 

「……俺が、決める」

 

 どうしたらいいんだ。そりゃあ、イッセーを生き返らせたい。

 だけど、いいのか? 俺の勝手でイッセーを悪魔にして……。

 俺は…………。

 

「…………頼む。イッセーを、助けて、くれ」

 

 わかってる。これは俺のただの自分勝手な思いだ。たけど、俺は……もう……。

 

「わかったわ。よく選んだわね。辛かったでしょう」

 

 そう言うと、グレモリー先輩は優しく俺を抱き締めてくれた。

 普段ならグレモリー先輩のような美人の人に抱き締められると、恥ずかしいんだろうけど、今だけはなぜか心が落ち着くような気がした。

 それから少ししてグレモリー先輩が俺を離した。

 

「それじゃあ、あの子は私に任せなさい。グレモリー家次期当主リアス・グレモリーの名に掛けて、あの子を悪魔として生き返らせるわ」

 

「は、い。お願い、しま、す」

 

「ええ、あなたこそ、家までちゃんと帰れるのかしら? 目は充血してるみたいだし、鼻血も凄いわよ」

 

 はぁ……? うわぁ、これは酷いな。 

 グレモリー先輩の言葉を聞いて、鼻を拭ってみると手にべっとりと血が付いていた。

 気が付いてなかったけど、思ったよりヤバいみたいだ、早く家に帰って休もう。

 俺は頭痛に耐え、一人で立ち上がる。

 

「だ、大丈夫、です。それじゃあ」

 

「あっ、ちょっと待ちなさい。そう言えば、あなたの名前を聞いていなかったわ」

 

 あっ、そうだよな。俺が有名なグレモリー先輩を知っていても、向こうが俺のことを知っているわけないか。

 

佐伯(さいき)楠緒(くすお)。あんたと同じ、駒王学園の二年生だ」

 

「あら、同じ学園だったのね。それじゃあ、また学園で会いましょう」

 

 グレモリー先輩が軽く手を振ってくれるのを見て俺は家に帰った。

 




主人公の力はまだ漠然とした力です。
PSIとして分類分けするようになるのは、もう少し先になります。
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