ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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第三章 月光校庭のエクスカリバー
Life.21 写真


 

 部長とライザー・フェニックスの婚約騒動から数日が経ち、俺たちの日常は落ち着きを取り戻していた。

 部室に帰って、俺はみんなにサーゼクスさまと契約を結んだ内容を正直に全て話すと、部長にまた無茶をしてと悲しませてしまった。

 俺がすいませんと謝ると、部長はただ微笑んで、ありがとうと俺を優しく抱き締めた。

 そのときの部長の表情に、俺は心の底から安心することができた。

 イッセーにはカッコつけすぎだと言われたが、それはお互い様だと、笑いながら言い返してやった。

 話している中で、部長に暴王の月のことを聞かれたが、あのときは必死であまり憶えていないと誤魔化した。

 俺たちはなにも失わずに帰ってこれた。今回はそれでいいじゃないか。

 俺はそんなことを考えながら、なにかを熱心に見ているみんなを眺める。

 今日のオカルト研究部会議は、イッセーの家で行われている。

 公園で日課の訓練をしているときに、部長に今日の会議はイッセーの家で行うと告げられたのだ。

 いつも部室として使っている旧校舎は使役する使い魔に言いつけ、全体的に掃除をさせているらしい。

 あの一件以降、俺も出来る限り会議に参加してほしいと言われた。

 俺が無茶ばかりするので、目の届くところに置いておくのが目的らしい。

 俺も断る理由はないので、出来る限りは会議に参加するようにしている。

 まあ、そんな会議もイッセーの母さんが持ってきたある物によって崩壊した。

 

「で、こっちが小学校のときのイッセーなのよ!」

 

「あらあら、全裸で海に」

 

「ちょっと朱乃さん! って、母さんも見せんなよ!」

 

 イッセーの母さんが持ってきたのは、イッセーの恥ずかしい過去が詰め込まれているアルバムだ。

 全員がそのアルバムの中身に夢中になって見ている。

 

「そういえば、佐伯くんは一緒に写ってる写真はないのかい?」

 

 イッセーのアルバムの中に、普段から親友と言っている俺が映っている写真がないことに疑問を持ったのか、木場が聞いてきた。

 

「俺がこの街に引っ越してきたのは、駒王学園に入学してからだからな。そのアルバムに俺の写真がないのは当然だろ」

 

「えっ、そうだったんだ」

 

 木場は俺の言葉を聞いて、少し驚いたようだ。

 

「楠緒くんに始めて会ったときは、イッセーが苛められてるのかと思ったわ。だって、一年生のころの楠緒くんって、いつも眉間に皺を寄せててね。本当に不良かと思うぐらい恐かったのよ」

 

「ちょっと、おばさん!」

 

 いきなり俺の恥ずかしい過去を暴露したイッセーの母さんに俺は声をあげる。

 そういえば、始めてこの家に来たときのあの微妙な表情の理由はそれか。

 俺は溜め込んでいた疑問の一つが解けた。

 

「それが時間が経つに連れて、少しずつだけど笑顔を見せてくれるようになってね。自分が楠緒くんのことを誤解してたんだなって思ったわ。松田くんや元浜くんもいい子だけど、楠緒くんは健全ないい子ですもの」

 

「ふーん、今の楠緒からじゃあ、想像できないわね」

 

「うふふ、そうですね」

 

「……佐伯先輩の赤裸々な過去」

 

「……恥ずかしい」

 

 全員がイッセーの母さんの笑いながら話を聞いている。

 俺はその話を聞いて、顔が熱くなるのを感じた。

 なんだこれは!? 今はイッセーが弄られるだけじゃなかったのか!?

 まさか、昔やんちゃしてたつけが、ここで返ってくるとは!

 

「あはは……これは……」

 

 木場が笑いながらイッセーのアルバムを捲っていると、あるページで動きが止まった。

 木場はそのページを食い入るように見つめている。

 

「どうしたんだ?」

 

「……いや、ちょっとね」

 

 木場にどうしたのか聞いても、なにがあったのか答えてくれなかった。

 俺はしょうがないと思って、木場の持っているアルバムを覗きこむ。

 それから木場の視線を追って、木場が見ている写真を見ると、そこには園児ぐらいのイッセーの写真があった。

 その写真には、イッセーの他にも同年代ぐらいの子供と、その子の父親らしき人物が写っている。

 ……この写真がなにかあるのか?

 俺がその写真の可笑しいところを探していると、一つだけ気になるものを見つけた。

 イッセーと一緒に写っている子の父親が、その手に古ぼけた西洋剣らしきものを携えていた。

 模造品と思うが、なんでわざわざあんなものを持って写真に?

 

「イッセーくん、ちょっといいかな?」

 

「ん? なんだよ?」

 

「これ、見覚えは?」

 

 木場はイッセーを呼ぶと、写真に写る西洋剣を指差して、いつもと違う声色で真剣に問う。

 イッセーはそんな木場の様子に圧されながら写真を見るが、一瞬ハッとすると、すぐに微妙な表情を浮かべる。

 

「うーん、いや、何分ガキの頃すぎて憶えてないな……」

 

「こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて……」

 

 木場は一人で呟きながら苦笑をする。

 そんな木場の目は、一瞬だが寒気を感じるぐらい憎悪に満ち溢れていた。

 

「これは聖剣だよ」

 

 そういう木場の声は、いつもよりも低く冷たいものだった。

 

 

 

 

 

 俺は金属音が鳴り響く晴天の空の下で、ふと先日から様子が変な木場のことを考える。

 思い返せば、ライザーとのゲーム中に、ライザーの騎士が聖剣と口にしたときもあいつの様子は変だった。

 あの様子からして、やっぱり木場と聖剣の間には、なにかあるんだろうな。

 そんなことを考えながら、俺は自分に向かって飛んできた野球のボールをキャッチする。

 

「ナイスキャッチよ、楠緒」

 

 俺がキャッチしたボールを投げ返すと、部長が笑顔で言ってくる。

 現在、俺たちは旧校舎の裏手にある少しだけ草の生えてない開けた場所で、野球の練習を行っていた。

 来週行われる駒王学園球技大会の部活対抗戦の練習らしい。

 部活対抗戦の種目は当日に決まるので、目ぼしい競技だけ練習を行っていた。

 実際、練習なんてしなくても勝てるだろうと思うが、どうやら部長はこの手のイベントが大好きだとか。

 ルールや特性は体で憶えておかないと駄目だと部長が言うので、こうして練習しているのだ。

 

「木場! シャキッとしろよ!」

 

 ボーッと、グローブを構えて練習を眺めていると、俯いていた木場の頭にボールが当たり、それを見ていたイッセーが活を入れる。

 木場はイッセーの声にキョトンとすると、ボールに気がついて拾うと、部長に投げ返す。

 部長はそんな木場を注意すると、木場は素直に謝る。

 部長は木場の様子を見て小さく溜息を吐くと、俺たちに休憩と言ってベンチに座り野球のマニュアルを読み始めた。

 休憩中に木場のことが気になった俺は、難しい表情で考え込んでいる木場に近づく。

 

「どうしたんだ王子様? そんな顔してると、ファンの女の子が悲しむぞ」

 

「……楠緒くん。なにか用かな?」

 

 まあ、実際には木場のファンの女の子は、今の木場を見て物思いにふける王子様。と、興奮しているらしいが。

 少しからかいながら話しかけると、木場はどこかぎこちない笑顔を向けてくる。

 

「いや、おまえの様子が変だから、どうしたのかと思ってな」

 

「……そう、ゴメン。心配をかけたみたいだね」

 

 木場が俺の言葉を聞いて、少し頭を下げて謝ってくる。

 

「そんなことないけど……そんなに聖剣のことが気になるのか?」

 

「ッ!!」

 

 聖剣のことを聞いてみると、木場はわかりやすいぐらい反応を見せる。

 

「当たりか……まっ、あまり部長に心配をかけるなよ」

 

「……キミがそれを言うのかい?」

 

「それはそうだな」

 

 俺は木場の返答に笑って答えるが、木場は難しい表情をしたままだった。

 

「さーて、練習再開よ」

 

 マニュアルを読み終えた部長がバットを振り上げて、野球の練習が再開された。

 木場はそのあとの練習も集中できてない様子だった。

 

 

 

 

 

 翌日の昼休み。部室に集まるように言われた俺とイッセーとアーシアは一緒に部室に辿り着いた。

 部室の中に入ると、既にほかのメンバーは顔を揃えていた。

 そして、よく見ると部員以外の誰かがソファーに座っていた。

 って! あの人は……。

 ソファーには予想外の人物が座っていた。

 

「せ、生徒会長……?」

 

 一緒に部室に入ったイッセーも、ソファーに座っている人物を見て驚く。

 ソファーに座っていたのは、俺がこの学園で最も関わりたくない人物。この駒王学園の生徒会長である支取蒼那先輩だった。

 それと会長だけでなく、生徒会の関係者らしい男も一人付き添っていた。

 ……誰だ?

 

「なんだ、リアス先輩、もしかして俺たちのことを兵藤に話していないんですか? 同じ悪魔なのに気づかないほうもおかしいけどさ」

 

 男の言葉を聞いて、会長が静かに口を開く。

 

「サジ、基本的に私たちは『表』の生活以外ではお互いに干渉しないことになっているのだから仕方ないのよ。それに彼は悪魔になって日が浅いわ。兵藤くんは当然の反応をしているだけ」

 

 男と会長の会話を聞いていてわかったことがある。

 どうやら、会長も……いや、オカルト研究部と同じで生徒会のメンバーも悪魔だったらしいな。

 俺は部長たち以外にも悪魔がいたことに驚く。

 

「この学園の生徒会長、支取蒼那さまの真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主さまですわ」 

 

 姫島先輩が驚いている俺たちに説明してくれる。

 上級悪魔。つまり部長やライザーみたいな家の出ってことか。

 そのあと、姫島先輩が色々と説明してくれるのを静かに聞く。

 昼と夜で学園の分担を分けているらしい。

 姫島先輩に聞いた話を頭の中で纏めていると、男が自己紹介を始めた。

 あの男の名前は匙元士郎。俺たちと同じ二年で会長の兵士らしい。

 イッセーは自分と同じ兵士対してフレンドリーに接するが、匙は溜息を吐いた。

 どうやら、学園でも変態で有名なイッセーと同じなので酷くプライドが傷つくらしい。

 俺はくだらないプライドだなと少し離れたところにある椅子に座って、その様子を眺めていると会長が匙に注意をした。

 今日の目的は新人悪魔たちの顔合わせだったらしく、その匙とイッセーとアーシアが自己紹介を始める。

 

「なにしてるのよ楠緒。あなたもこっちに来て混ざりなさい」

 

 俺は椅子に座って静かにしていると、なぜか部長に呼ばれた。

 あまり関わりたくなかったのだが、俺はしょうがなく近づく。

 

「お久しぶりです。佐伯くん」

 

 去年よく見た眼鏡をあげる仕草をしながら、会長が俺に挨拶をしてくる。

 

「……お久しぶりです」

 

「あら、二人は知り合いだったの?」

 

 俺が挨拶を返すと、部長は少し驚いたようにで俺たちに訊ねてきた。

 

「ええ、去年の始め頃に少し……今は随分とおとなしくなったみたいですが」

 

 会長が少し微笑みながらそう答える。

 

「去年の始め頃って……ああ、イッセーのお母さまが話していた」

 

「あーっ、この話は止めましょう!」

 

 このままだと不味い展開になりそうなので、大声を出して会話を遮る。

 どういうことだ? なんか最近、昔のことをよく掘り返されるな。

 

「というよりも、なんで人間のおまえがここに居るんだよ!」

 

 部長と会長の会話を止めると、匙がそう言いながら俺に詰め寄ってきた。

 はぁ、こうなると思ってたから離れて静かにしてたのにな。

 俺が小さく溜息を吐くと、近くにいる会長が静かに口を開く。

 

「サジ。お止めなさい。先程も言いましたよ。私の眷属なら、私に恥をかかせないこと」

 

「で、ですが会長! 人間に俺たちのことを知られてもいいんですか!?」

 

「彼のことはリアスから聞いているので問題ありません……まあ、私も始めて話を聞いたときは驚きましたが」

 

 会長はそういうと視線を俺に向ける。

 

「それに彼については放置しておく方が危険です。噂ではこの前のレーティングゲームで、フェニックス家の三男をリタイヤ寸前まで追い詰めたと聞きました」

 

「なッ! こいつが!?」

 

 匙が驚いた様子で俺を見つめてくる。

 それにしても酷い言われようだな。

 

「この子が失礼なことを言ってごめんなさい、佐伯くん」

 

 そう言って会長が謝ってくるが、正直会長のほうが失礼なことを言ってたんだけど……。

 

「サジ」

 

「は、はい! 悪かったな」

 

 会長に促されて、匙は謝りながら手を差し出してくる。

 

「別にそう言われるって思ってたから気にするな」

 

 俺は差し出された手を握りながらそう言う。

 

「てめぇには、絶対に会長はわたさねぇからな」

 

 手を握った瞬間、俺にだけ聞こえるぐらい小さい声で匙がそう言うと、握っている手に力を込めてきた。

 俺はその行動に腹が立ったので、顔には思いっきり笑顔を浮かべながら、ライズで思いっきり手を握り返した。

 嫌な音が聞こえてきたり、匙の顔が歪んでいるが、俺は笑顔のまま一切力を緩めない。

 会長はその様子を見て大きく溜息を吐いた。

 

「佐伯くん。そのぐらいで止めてくれないかしら。サジ、あなたはなにをやってるのですか?」

 

「す、すいません!」

 

 俺は会長にお願いされたので、仕方なく手を放してやる。

 匙は会長に叱られて、すぐに頭を下げて謝った。

 

「全く……まあ、これでお互いのルーキー紹介はこれで十分でしょうね。では、私たちはこれで失礼します。お昼休みに片付けたい書類がありますから」

 

 会長が立ち上がり、部室をあとにしようとする。

 

「会長。いえ、ソーナ・シトリーさん……さま。これからもよろしくお願いします」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 イッセーとアーシアが少し慌てながら頭を下げる。

 俺もそれに続いて頭を下げる。

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

 会長は微笑みながらそう言うと、そのまま部長の方を見る。

 

「リアス。球技大会が楽しみね」

 

「えぇ、本当に」

 

 二人は笑顔を見せる。

 そうして、会長と匙は足早に部室から出て行った。

 球技大会、生徒会、そして木場の問題か……。

 どうやら落ち着きを取り戻していた日常に波乱が起こりそうだな。

 俺はソファーに座りながら、ふとそんなことを考えてしまった。

 

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