ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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第四章 停止教室のヴァンパイア
Life.29 魔王とのお話


 コカビエル襲撃事件の混乱も収まってきた。

 その中でも一番の混乱といえば、あの事件の後、驚いたことに事件で共闘したエクスカリバー使いの一人ゼノヴィアが部長の眷属になったことだ。

 最初は信じられないと驚いたが、部長の選択にどうこう言うつもりはないし、ゼノヴィアも悪魔になったことに納得していたからいいのだろう。

 まあ、ゼノヴィアも今まで信じてきた神が死んでいたことを知り、ゼノヴィアも色々と考えることがあったのだろう。それでも悪魔に転生するのは破れかぶれではないのかと思うが……。

 そんなこともあったが、季節は春から夏に変わり平和な日常に戻ったと思っていたのだが……。

 

「冗談じゃないわ」

 

 そんな平和な日常とは裏腹に、現在部長は怒りを露にしている。

 その理由は昨夜のイッセーの仕事内容によるものだった。

 

「確かに悪魔、天使、堕天使の三すくみのトップ会談がこの町で執り行われるとはいえ、突然堕天使の総督が私の縄張りに侵入し、営業妨害をしていたなんて……!」

 

 どうやら部長はそのことが気に食わなかったのかプルプルと全身を怒りで震わせている。

 先日のコカビエル襲撃事件によって悪魔、天使、堕天使の三すくみの関係に多少なりとも影響が出たらしく、その結果として、一度トップ同士が集まって今後の三すくみの関係について話し合うことになったらしい。

 そんな中で、突然堕天使の総督アザゼルがイッセーの契約相手として接触したらしい。

 確かに営業妨害と言ってもいいだろう。

 それにしてもアザゼルは随分とお茶目な人物らしいが……俺の知っているアザゼルとは大分違う印象だな。ドーナシークの記憶の中には直接会ったことのある記憶なんて無かったから、細かい性格なんて知りようはないんだけどな。

 しかし漸く平和な日常を過ごしていたというのに、また部長たちの傍にいるとイベントに困らないな。

 

「しかも私のかわいいイッセーにまで手を出そうとするなんて、万死に値するわ! アザゼルは神器に強い興味を持つと聞くわ。きっと、イッセーがブーステッド・ギアを持っているから接触して来たのね……」

 

 神器に強い興味を持っているか、またイッセーは堕天使に狙われているのか……大人気だな。

 そんなことを考えながら姫島先輩に入れてもらった紅茶を飲む。

 ……やっぱり姫島先輩の入れてくれた紅茶は美味いな。最近はPSIの特訓のためにペットボトルのコーヒーばかり飲んでたからな。

 

「しかし、どうしたものかしら……。あちらの動きがわからない以上、こちらも動きづらいわ。相手は堕天使の総督。下手に接触することもできないわね」

 

 確かに部長の言う通りだ。下手に接触して余計に関係に罅が入っては元も子の無い。

 またあちらから接触してこない限り、こちらからはどうすることもできないよな。

 

「アザゼルは昔から、ああいう男だよ、リアス」

 

「ブーーーーッ!!」

 

 突然聞こえてきた聞き覚えのある声に驚いた俺は飲んでいた紅茶を思いっきり噴き出す。

 幸いなことに俺の前には誰もいなかったので誰かに紅茶をぶっかけることはなかった。

 

「げほっ、げほっ、さ、サーゼクスさま!?」

 

「おや、随分と驚かせてしまったようだね」

 

 咳き込みながら立ち上がってその声が聞こえてきた方を向くと、サーゼクスさまがにこやかにほほ笑んでいた。

 サーゼクスさまの存在に気がついた姫島先輩と祐斗と塔城はその場で跪き、イッセーとアーシアはその対応に困っている。サーゼクスさまのことを知らないゼノヴィアは周りの状況に首を傾げている。

 

「お、お、お兄さま」

 

 部長もサーゼクスさまが突然現れたことに驚き立ち上がっている。

 

「先日のコカビエルのようなことはしないよ、アザゼルは。今回みたいな悪戯はするだろうけどね。しかし、提督殿は予定より早い来日だな」

 

 アザゼルのことで悩んでいた部長に安心させるように、そう話すサーゼクスさまの後ろにはグレイフィアさんが立っていた。

 こちらが頭を下げると、俺に気づいたグレイフィアさんは小さく微笑む。

 

「くつろいでくれたまえ。今日はプライベートで来ている」

 

 手をあげて促すサーゼクスさまの言葉に従ってみんなも立ち上がる。

 

「やあ、我が妹よ。しかし、この部屋は殺風景だ。年頃の娘たちが集まるにしても魔方陣だらけというのはどうだろうか」

 

 部屋を見渡して苦笑いをするサーゼクスさま。

 あっ、やっぱりこの部屋って変なんだ。悪魔のことは知らないからこれぐらいが普通なのかと思ってた。

 

「お兄さま、ど、どうして、ここへ?」

 

 怪訝そうに聞く部長だが、まだサーゼクスさまの登場に慌てているようだ。

 まあ、忙しいはずの魔王さまが突然部室に顔を出せば慌てるのも当然か。

 

「なにを言っているんだ。授業参観が近いのだろう? 私も参加しようと思っていてね。ぜひとも妹が勤勉に励む姿を間近で見たいものだ」

 

 ……授業参観? そういえばそんなものがあったな。俺の家は親父が忙しいから無縁の行事だ。

 サーゼクスさま、部長のこと大好きだもんな。あのとき色々計画を立てるために話したときに、その気持ちはよく知っている。

 

「グ、グレイフィアね? お兄さまに伝えたのは」

 

 少し困った様子で訊ねる部長の問いにグレイフィアさんは頷く。

 

「はい。学園からの報告はグレモリー眷属のスケジュールを任せている私のもとへ届きます。むろん、サーゼクスさまの『女王』でもありますので主へ報告も致します」

 

 当たり前のようにそう告げるグレイフィアさんに部長は小さく溜息を吐く。

 どうやら部長は事業参観に乗り気ではないらしい。これはよく話に聞く家族に授業風景を見られるのは恥ずかしいというやつだろうか? 俺にはよくわからないな。

 

「報告を受けた私は魔王職が激務であろうと、休暇を入れてでも妹の授業参観に参加したかったのだよ。安心しなさい。父上もちゃんとお越しになられる」

 

 あの人も来るのか、正直例の婚約パーティーのときのあれのせいで気まずいんだよな。まあ、部長を見に来るのが目的だろうし、会うことはないだろう。

 

「そ、そうではありません! お兄さまは魔王なのですよ! 仕事をほっぽり出してくるなんて! 魔王がいち悪魔を特別視されてはいけませんわ!」

 

 部長の言うことは確かに正論ではある。けど、肉親なのだからそこまで強い言う必要はないと思うのだが……。

 そんなことを考えていると、部長の言葉を聞いたサーゼクスさまは首を横に振った。

 

「いやいや、これは仕事でもあるんだよ、リアス。実は三すくみの会談をこの学園で執り行おうと思っていてね。会場の下見に来たんだよ」

 

 サーゼクスさまの言葉に部員の全員が驚いた様子を浮かべる。

 マジかよ。ここでそんな大事な会議をするのか?

 

「――っ! ここで? 本当に?」

 

 部長も目を見開いて驚いて、再度サーゼクスさまに問い掛ける。

 

「ああ。この学園とはどうやら何かしらの縁があるようだ。私の妹であるおまえと、伝説の赤龍帝、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、魔王セラフォール・レヴィアタンの妹が所属し、コカビエルと白龍皇が襲来し、あの暴王の力を持つ人間が居る。これは偶然では片付けられない事象だ。様々な力が入り混じり、うねりとなっているのだろう。そのうねりを加速度的に増しているのが兵藤一誠くん――赤龍帝だとは思うのだがね」

 

 そう言ってサーゼクスさまはイッセーの顔を見る。

 イッセーもサーゼクスさまに見つめられて緊張しているようだ。

 けど、サーゼクスさまの言うことももっともだな。確かに言われてみればこの場所は特殊な場所だと言える。この原因がイッセーというのは、この間聞いたドラゴンの力が強い力を引き寄せるということだろう。

 

「あなたが魔王か。はじめまして、ゼノヴィアという者だ」

 

 色々と考えているとゼノヴィアが会話の中に入って行った。

 

「ごきげんよう、ゼノヴィア。私はサーゼクス・ルシファー。リアスから報告は受けている。聖剣デュランダルの使い手が悪魔に転生し、しかも我が妹の眷属となるのは……正直、最初聞いたときは耳を疑ったよ」

 

「私も悪魔になるとは思ってもいなかったよ。今まで葬ってきた側に転生するなんて、我ながら大胆なことをしたと偶に後悔している……うん、そうだ。なんで私は悪魔になったんだろうか? やけくそ? いや、だが、あのときは正直、どうでもよくて……。でも、本当に悪魔になってよかったんだろうか?」

 

 ゼノヴィアが頭を抱えて悩み始めた。

 だから破れかぶれは止めた方がいいのに、人生の選択は後悔ないようにしないとな。

 

「ハハハ、妹の眷属は楽しい者が多くていい。ゼノヴィア、転生したばかりで勝手がわからないかもしれないが、リアスの眷属としてグレモリーを支えてほしい。よろしく頼むよ」

 

「聖書にも記されている伝説の魔王ルシファーにそこまで言われては私もあとには引けない。どこまでやっれるかわからないが、やれるところまではやらせてもらう」

 

「ありがとう」

 

 ゼノヴィアの答えにサーゼクスさまは微笑んでお礼を言う。

 

「さて、これ以上難しい話をここでしても仕方ない。みんな後は自由にしてくれて構わないよ」

 

 サーゼクスさまがそう言って、俺たちは自由になる。

 俺は時計を見て、もういい時間なのでそろそろ帰宅しようと考えると……。

 

「あっ、少し待ってくれないかな佐伯楠緒くん。キミとは積もる話もあるからね」

 

「はいぃ?」

 

 サーゼクスさまに呼び止められた俺はつい気の抜けた声をあげてしまった。

 

 

 

 

 

 ……どうしてこうなったんだ?

 帰宅した俺はいつもと違う家の状況に戸惑いを隠せないでいた。

 

「急にすまないね。キミの家まで押し掛けてしまって、ご両親に迷惑だったかな」

 

「いえ、気にしないでください。親父……父は仕事で家を開けているんで、あっ、そこにあるソファーに座ってください。グレイフィアさんも遠慮せずにどうぞ」

 

「ありがとう」

 

「私のことはお気になさらず、お飲み物なら私が用意しましょう」

 

 なぜか家について来てしまったサーゼクスさまとグレイフィアさんにリビングにあるソファーに座るように伝える。

 サーゼクスさまはソファーに座られたが、グレイフィアさんは俺がなにか飲み物を用意しようとするとキッチンに近づいてきた。

 

「いえ、グレイフィアさんはお客さまなんですからくつろいでいて下さい」

 

「無理を言ったのはこちらの方ですから、あなたの方こそ遠慮せずに休んでください」

 

 グレイフィアさんはそう言って俺をキッチンから追い出す。

 いや、飲み物って言ってもペットボトルに入ったコーヒーかティーパックぐらいしかないんだけど。

 

「なにか?」

 

「うわぁ! えっ、もう用意できたんですか?」

 

 俺が少し気になってキッチンを覗こうとすると、既に飲み物を用意し終わったグレイフィアさんがキッチンから出てきた。

 手に持っているお盆の上あるティーカップには美味しそうな紅茶が入っていた。

 あれ、よく始めて使う人の家のキッチンでそんなにテキパキと用意できるな……さすがメイド服を着ていることだけはあるな。

 

「あの、どうかなされましたか?」

 

 グレイフィアさんの異常な手際の良さに感心していると、グレイフィアさんに少し心配そうに声をかけられた。

 

「あ、すいません」

 

 やることが無くなった俺は手持ち無沙汰を抱えたまま、サーゼクスさまの座っているソファーの横にあるソファーに座る。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 俺が座るとグレイフィアさんが俺の前にさっき入れた紅茶を置く。

 お礼を言うとグレイフィアさんは小さく頭を下げてサーゼクスさまの後ろに立つ。

 ……別に遠慮せずにソファーに座ればいいのに。

 そう思いながらグレイフィアさんが入れてくれた紅茶に口をつける。

 

「……美味ッ」

 

「ありがとうございます」

 

 グレイフィアさんの入れてくれた紅茶を一口飲んで衝撃を受ける。

 あれ、これ家にあるもんで入れたとしたらティーパックだよな? なんで安物のティーパックでこんなに美味い紅茶が入れれるんだ?

 

「さて、そろそろ話をしてもいいかな?」

 

 俺と同じくグレイフィアさんが入れた紅茶を飲んで一息ついたサーゼクスさまが話しかけてくる。

 

「はい。それで積もる話とは一体?」

 

 俺はティーカップをテーブルに置いてサーゼクスさまとの話に集中する。

 

「実はリアスの報告を聞いたときから気になっていたのだが、暴王の力を制御できるようになったらしいじゃないか」

 

 最初にサーゼクスさまが問い掛けてきたのはメルゼーの力についてだった。

 そうか、部長の報告を受けたのならコカビエルを殺したのも俺だと知っているんだよな。

 

「はい。親父……父の研究のおかげでなんとか」

 

「キミのお父上の研究? すまないが、キミのお父上はなんの研究を?」

 

 メルゼーの力を制御したのが親父の研究のおかげだと信じられないのか、サーゼクスさまが本当にすまなそうに親父の研究について聞いてくる。

 

「脳科学です。俺の使う力……超能力は本来人間の脳の奥に眠っている力なんです。父はその力を研究していて、今回その研究の成果を使ってサーゼクスさまの言う暴王の力を制御できたんです」

 

「……なるほど、あの全勢力に恐れられた暴王の力の正体が人間の脳の奥に眠っている力だったとは」

 

 サーゼクスさまは俺の話を聞いて真剣になにか考える表情を浮かべる。

 どうやらサーゼクスさまはこのメルゼーの力が人間全員に備わっていると考えているのかもしれない。

 もしそうだとしたら大変な誤解なので、ちゃんと訂正しておかなくては。

 

「けれど、多分暴王の力を使えるのは今は俺だけだと思いますよ。父の資料にも過去に一人いたようですが、その人以外のことは書かれていませんでしたし、俺自身この力がそう言う物だと感じますから」

 

「そうなのかい? それを聞いて安心したよ。流石に人間全員にあんな力が備わっていると考えたら、私でも背筋が冷たくなってくるからね」

 

 俺の訂正を聞いたサーゼクスさまが安心したように微笑む。

 どうやら誤解は解けたようだな。

 

「それじゃあ、もしよかったらその制御した力を見せてくれないかな?」

 

 サーゼクスさまが俺の顔を見ながらそう訊ねてくる。

 

「……わかりました。けど、一応注意はしていてください」

 

 サーゼクスさまのお願いを了承した俺はソファーから立ち上がる。

 そして、そのまま足を肩幅に開き心を落ち着かせていく。

 ……サーゼクスさまの前で失敗するわけにはいかないな。

 そう思いながら俺は一気にバースト・ストリームを展開し、差し出した右手の先に小型の暴王の月を生み出す。

 

「これは驚いた。どうやら本当に制御できてるようだね。ありがとう、もう十分だよ」

 

 サーゼクスさまの言葉を聞いて俺は暴王の月を消す。

 ふぅ、失敗しなくてよかった。

 

「キミが暴王に飲み込まれてしまわないか心配していたのだが、もうその心配は必要ないようだね、安心したよ」

 

 どうやら部長たちだけでなく、サーゼクスさまにまで心配されていたらしい、それを聞くと申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「すいません。心配をかけてしまって」

 

「気にしないでくれ。しかしキミと話せてよかった。父上にもいい報告ができそうだ」

 

「えっ?」

 

 サーゼクスさまの言葉に驚いた俺は口から自然と疑問の言葉が漏れる。

 なんでここでサーゼクスさまの父親が出てくるんだ?

 

「サーゼクスさま?」

 

「おっと、これは言ってはいけないことだった。すまないね、もし気になるなら授業参観の日に直接父上に会って聞いてくれたまえ」

 

 グレイフィアさんに声をかけられたサーゼクスさまが、思い出したようにそう言って誤魔化してくる。

 

「は、はぁ、そうさせてもらいます」

 

 サーゼクスさまは簡単そうに言うが、あの人のことを考えると聞かない方がいい気がする。

 あのときのせいで随分と嫌われてしまったみたいだし……。

 

「この話はこのぐらいにしておこうか。そう言えば、キミのお父上は仕事で家を開けていると言っていたが、お母上はどちらに?」

 

「母は居ませんよ。俺が小さいころに事故で死んでしまったんで」

 

「そうだったのか。それはすまないことを聞いてしまったね」

 

 サーゼクスさまの質問になんてことなく答えると、サーゼクスさまはとてもすまなそうな表情を浮かべて謝ってきた。

 

「いえいえ、気にしないでください。その代わり小さいときはいつも父が一緒に居てくれましたから」

 

 言い方を間違えたと感じた俺は必死にサーゼクスさまを宥める。

 

「そうか、素晴らしいお父上だね。一度会って話してみたいものだ」

 

 よかった。サーゼクスさまにまた変な心配をさせるところだった。

 

「そうですか。また当分仕事が忙しいと思いますけど、電話をしたときにでも伝えておきます」

 

「ありがとう。会える日を楽しみにしていますと伝えてくれるかな?」

 

「わかりました……もう大分遅くなってしまいましたね」

 

 俺がふと時計を見ると、いつの間にか深夜を超えようとしている時間となっていた。

 

「おや、いつの間にか思った以上に時間が過ぎてしまったようだね。話はこのぐらいにしておこうか。これ以上は明日に影響が出てしまう」

 

「そうですね。こんな時間では、部屋を探すには時間がかかってしまうでしょうし、こんな家でよければ今日は二人とも泊まって行って下さい」

 

 サーゼクスさまとの話を終えた俺は、二人に今日は家に泊まって行くように提案する。

 よくよく考えれば魔王さまに対してとても失礼なことを言っている気がするのは、気のせいだろうか。

 サーゼクスさまは俺の提案に目を丸くして驚いている。

 

「いいのかい、流石に迷惑じゃあないかな?」

 

「気にしないでください。どうせ俺以外誰も居ないんで」

 

 俺はサーゼクスさまに心配ないように伝える。

 それなりに広い家だから使ってない部屋は何個かあるし、掃除も毎日ちゃんとしているから衛生面的には問題ないだろう。一つあるとすれば、お二人が布団で大丈夫かってところだが……。

 

「そうかい。ではお言葉に甘えて今日は泊めさせてもらおうかな」

 

「ありがとうございます」

 

 サーゼクスさまが俺の提案に承諾してくれ、グレイフィアさんが頭を下げてくる。

 

「最初に提案したのは俺の方なので止めて下さい。それじゃあ、客間に案内するのでついて来てください」

 

 そのあと二人をそれぞれの部屋に案内する。

 二人に布団で大丈夫か訊ねたときサーゼクスさまが日本の文化に触れるにはいい機会だと、逆に機嫌が良くなったので助かった。これで布団なんかで寝られるかと怒られていたら、俺の部屋か親父の部屋で寝てもらうしかなかったからな。

 

「最後に一つ聞いてもいいかな?」

 

 部屋に案内したあと自分の部屋に行こうとしたところでサーゼクスさまに呼び止められた。

 

「なんですか?」

 

 なにか問題でもあったのかと思いながらサーゼクスさまの方を向くと、サーゼクスさまが真剣な表情で俺を見つめていた。

 この空気はあのときと同じだな。

 

「あのときから気になっていたんだが、フェニックス家との婚約のときといい、今回のコカビエルといい、どうしてキミはリアスのためにそこまでしてくれるんだい?」

 

 サーゼクスさまは真剣にそんな不思議なことを聞いてくる。

 

「勘違いしてますよサーゼクスさま。俺は俺のしたいように動いてるだけですよ。部長のことを考えてるなら、何度も同じことして悲しませたりしませんから」

 

 俺は真っ直ぐとサーゼクスさまの目を見つめてそう告げる。

 そのまましばらくの間見つめ合うと、あのときと同じようにサーゼクスさまが微笑む。

 

「そうか、どうやら私の勘違いだったみたいだ。すまなかったね、呼び止めたりして」

 

「いえ、おやすみなさい」

 

 サーゼクスさまに挨拶をして俺は自分の部屋に向かうため振り返る。

 

「できることならこのままリアスの味方でいてあげてほしい。これは魔王ではなくリアスの兄としての個人的なお願いだけどね」

 

 後ろから投げかけられるそんなサーゼクスさまの言葉に俺は振り向かずに答えるため口を開く。

 

「誰に頼まれたって変わりませんよ。俺はいつでも部長の……いや、リアス・グレモリー個人の味方ですから……って言って、あの人を悲しませたら意味ないんですけどね」

 

 俺は最後だけ少し笑いながらそう言うと、そのままサーゼクスさまの方を振り向かずに自分の部屋に戻った。

 

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