ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.30 プール開き

 サーゼクスさまが人間界に来て数日が経った。

 サーゼクスさまとグレイフィアさんの二人は次の日から町の下見をしているようだが……俺が思うにあれはどう見ても観光を楽しんでいるようにしか見えなかった。

 ……流石に神社に普通にお参りしたときはどうしようかと思ったが。

 そんなことでも全て真摯に当たっていたのだと思うが……。

 この数日はサーゼクスさまにこの町を案内していたオカルト研究部だが、今日だけは別の用事が入っていた。

 それは夏の風物詩の一つでもあるプール開きだ。

 部長がプールを一番最初に使っていいという条件で会長にプール掃除を頼まれたのだ。

 それを部長は快諾し、俺たちは水を抜かれたあとのプールの苔を落としたのだ。

 まあプールも一年ぶりだし、授業ぐらいでしか入ることはないから、今日は自由にのんびりと過ごさせてもらいますか。

 まだ野郎しかいないプールサイドで既に海パンに履き替えた俺はそんなことを考えていた。

 どうやら女性陣は着替えに時間がかかっているようだ。

 さっきからイッセーが女性陣の水着姿を妄想して鼻息を荒くしている。

 まあ、気持ちはわからんでもないが、流石にどうかと思うぞ。

 祐斗もイッセーの様子を見て苦笑いを浮かべている。

 そんなことを考えていると、漸く女性陣が水着に着替えて姿を現した。

 ……っ。

 俺は女性陣の水着姿を見て目を奪われる。

 学園でも綺麗所が集まっているのは理解していたが、こうして改めて見るとそれがよくわかるな……てか、イッセー泣くなよ。

 俺は隣で涙を流すイッセーの姿を見て、一瞬で冷静になってしまった。

 それにしても……部長と姫島先輩の水着は大胆すぎないか? まあ、アーシアや塔城のような学園指定のスクール水着で来られてもそれはそれで困るんだけどな。

 まあ、無事女性陣も来たことだし早速泳ぎますか。

 そう考えた俺はとりあえず軽い準備運動を始める。

 

「楠緒。準備運動しているところわるいけど、ちょっといいかしら?」

 

 準備運動をしている最中に部長が話しかけられた。

 

「はい。なんですか?」

 

 準備運動を一旦中止して部長の方を向くと、部長の横に塔城まで立っていた。

 

「実はわるいのだけど……」

 

 部長はそのまま塔城の肩に手を置いて微笑んだ。

 

 

 

 

 

「ほら、膝曲げるな」

 

 本当ならのんびりと泳ぐ予定だったはずなのに、なぜかこうして塔城の泳ぎの練習に付き合っていた。

 さっき部長に塔城が実は泳げないと伝えられ相手してくれと頼まれたのだ。

 まあ、別にそこまで泳ぎたかったわけでもないからいいんだけどな。

 ついでにイッセーは俺と同様、泳げないアーシアの練習に付き合っている。

 ……よし、祐斗。おまえも少し手伝え。

 先程から騎士の力を遺憾なく発揮し、凄まじい速さで泳いでいる祐斗の方を少し睨む。

 

「ぷはー……佐伯先輩、付き合わせてしまってゴメンなさい……」

 

 俺が余所を見ていることに気づいたのか、塔城が申し訳なさそうに言ってくる。

 

「えっ、ああ、気にすんな、気にすんな。おまえには借りがあるんだし、本気で嫌だったらイッセーか祐斗に押しつけてるからな。後輩がそんな遠慮すんな」

 

 俺は塔城を顔を見て笑いながらそう言ってやる。

 これは本音だ。別に塔城に付き合うのが嫌なわけではない。横でこれ見よがしに泳いでいる祐斗にいらついただけだ。

 

「……ありがとうございます」

 

「それでいいんだよ。ほら、端につくから気をつけろ」

 

 俺は塔城の進路から横にずれて、プールの端に手をつかせる。

 

「はい、おめでとう。バタ足の感覚は掴めたか?」

 

「……はい」

 

 俺の言葉に塔城が小さく頷く。

 

「よし、それじゃあ次はもっと本格的に泳ぎの練習と行くか。俺にしかできないスペシャルコースだけどな」

 

「……え?」

 

 笑顔でそう告げる俺に塔城は若干不安そうに小首を傾げた。

 

 

 

 

 

 それからしばらくして塔城の泳ぎの練習は無事? 終了した。

 結果的に塔城はそこらの水泳部には負けないぐらい泳げるようになったと言ってもいいだろう。

 俺が塔城に行ったスペシャルコースとは、PSIを使って徹底的に泳ぐときの感覚と身体の動きを体験させることだ。

 いやぁ、最初はできるか不安だったが塔城にセンスがあってよかったぜ。やればやるほど面白いぐらいに泳げるようになって行ったからな。

 最後の方は調子に乗りすぎてギネス級の泳ぎを体験させたら、お返しとばかりに腹に一発いい物を貰ってしまったがな。

 その塔城は大分泳いだので、プールサイドの日陰で本を読んで休憩している。

 塔城の練習から解放された俺はPSIの力でぷかぷかとプールに浮かんでのんびりしている。

 

「……いやぁ、平和だな」

 

 こんなにのんびりと過ごしているのはいつ以来だろう。

 イッセーが堕天使に襲われてから、色々とあったからな。

 事件が片付いた後もPSIのことやメルゼーのこともあり、本当の意味で休めることはなかった。

 そう少ししたら、この学園で三すくみのトップによる会談が執り行われる。

 そうなってしまえば、また慌ただしい日々が始まるだろう。

 それなら、こうやってのんびりできるときにのんびりしないとな……。

 そんなことを考えていると、俺の視界に紅いコウモリが飛んでいる。

 ……あれって、確か部長の使い魔だよな。

 俺が視線でコウモリを追っていると、そのコウモリは次はイッセーの方に飛んでいった。

 イッセーもそのコウモリに気がついたのか、コウモリを見たあと反対側のプールサイドにいる部長の方を見る。

 そしたら次の瞬間、イッセーが驚愕する速さで反対側のプールサイド――つまり部長のもとに走っていった。

 どうしたんだ? なんかものすごい形相だったけど。

 

「ひょ、兵藤一誠、ただいま到着しましたッ!」

 

 まさに大興奮といった様子のイッセーに部長は一瞬だけ驚いた表情を浮かべたが、すぐにおかしそうに小さく笑った。

 俺がその様子を見ていると、部長が視線に気づいたのかプールに浮かんでいる俺に対して手招きをする。

 えっ? イッセーだけじゃなくて俺にも用があるのか?

 よくわからないが、とりあえず無視するわけにもいかないのでプールを泳いで部長のもとへ向かう。

 

「なんの用ですか?」

 

 プールから上がった俺が部長に質問する。

 

「実はあなたたちのどちらかにこれを塗ってもらいたいのよ」

 

 そう言った部長は小瓶を俺たちの前に出す。

 なんだこれと俺がその小瓶を見つめていると、部長はその視線に気づいて小さく笑う。

 

「これは美容の特性オイルよ。悪魔は日焼けしないけれど、太陽の光は外敵だから、ちゃんと保護しないとね」

 

 悪魔は日焼けしないって凄いな。日焼けに困っている人に知られたら恨まれるぞ。まあ、その代わりに太陽の光に弱くなるんだけど……てか、オイルを塗るのを男の俺たちに頼まないでください。

 俺が部長の頼みに呆れていると、隣に居るイッセーはものすごい勢いで涙を流していた。

 ……最近涙腺弱すぎないかこいつ。

 

「塗ってくれるのはどちらでもいいから、話し合って決めてちょうだい」

 

「はい!」

 

 そう言って部長が差し出した小瓶をイッセーが間髪入れずに受け取る。

 話し合う気ゼロである。まあ、別にいいんだけどさ。

 俺がイッセーの行動に心の中で溜息を吐いていると、なぜか部長が面白くなさそうに俺の方を見ていた。

 

「随分と簡単にイッセーに譲るのね?」

 

「えっ、いや……」

 

 若干上目遣いで問い掛けてくる部長に少しドキッとして言葉に詰まる。

 ついでにイッセーが小瓶を大事そうに抱え、俺の顔を凄まじい形相で睨んでいることをスルーしよう。

 

「私の身体。そんなに魅力がないかしら?」

 

「い、いや、魅力的だと思いますよ」

 

 両手を使ってそのたわわに実った胸をアピールしてくる部長に緊張しながら答える。

 今日は水着なのでいつも以上にその胸が強調されているので、いつも以上に緊張してしまうのは男として仕方ないことだろう。

 

「それにしてはつまらなそうな顔をしたわよ。私でも男の子にそんな顔されたら傷つくわ」

 

「えっ、そんな顔してました?」

 

 どうやら部長は俺がイッセーに対して溜息を吐いたのを勘違いしてしまったらしい。

 まあ若干年頃の娘が健全? な青少年になに頼んでんだって思いもあるけどさ……。

 

「勘違いさせたならすいません。まあ、今回はイッセーがオイルを渡しそうにないんで諦めますよ。背中から刺されたくないので」

 

 今のイッセーからオイルを奪ったらなにをされるかわからない。冗談で言ったが本当に背中から刺されるかもしれないからな。

 

「――」

 

 俺が部長にそう言うと、部長は俺たちに聞こえないぐらい小さい声でなにか呟く。

 

「あの、なにか?」

 

「なんでもないわ……そうね、それじゃあ今回はイッセーに頼みましょうか。楠緒には次の機会にお願いするわ」

 

 部長はなぜか少し不機嫌そうにそう言う。

 これ以上ここに居ても意味がないと思った俺は、部長に軽く頭を下げてプールに戻る。

 まったく、部長には困ったものだ。

 そんなことを考えながら俺は再びプールにぷかぷか浮かんでのんびりする。

 プールの中を漂っていると、突然頭に柔らかいものが当たった。

 

「あらあら、気持ちよさそうですわね」

 

「……姫島先輩」

 

 俺の顔を覗きこんで話しかけてくる姫島先輩。

 まてよ、姫島先輩がこの角度で話しかけてくるということは、さっきから頭に当たっている柔らかい物体は……ッ!!

 

「うぉぉおおお! ガボァァァア!!」

 

 俺の頭がさっきから姫島先輩の胸に当たっていることに気がついた俺は、慌ててしまいPSIのコントロールが乱れプールに沈んでいく。

 

「あらあら。大変ですわ」

 

 沈んでいく俺を姫島先輩が引き上げてくれる。

 あ、危なかった。本気で溺れかけたぞ……。

 

「あ、ありがとうございました」

 

「いえいえ、うふふ」

 

 俺が助けてくれたお礼を言うと、姫島先輩はいつものように笑って答えてくれる。

 ……けど、いい加減放してくれませんか?

 姫島先輩は俺を引き上げた体勢のまま――つまり、俺に後ろから抱きついたまま放そうとしてくれない。

 さっきから背中に柔らかい物体が押しつけられて気が気じゃないんですけど!?

 

「あ、あの? もう大丈夫なんで、そろそろ放してくれませんか? 色々とこの状況は不味いんで……」

 

「あらあら。なにが不味いのかしら?」

 

 それを聞きますか。正直なにとは言いにくいんですけど……。

 

「ほら、周りの目とかあるじゃないですか。みんなここにいるんですから」

 

「でも、イッセーくんはリアスにオイルを塗っていますし、小猫ちゃんは読書をしていますし、アーシアちゃんは疲れたのかしら眠っていますわ。祐斗くんは先程からずっと泳いでいますし、ゼノヴィアちゃんは着替えに手間取っているみたいですし、周りの目を気にする必要はなんてありませんわ」

 

 あれぇ? いつの間にか退路を断たれてませんか?

 てか、祐斗はまだ泳いでいたのか元気だなあいつ。

 

「それとも、楠緒くんはこうされるのはお嫌いかしら?」

 

 姫島先輩はそう言うと、さらに身体を密着させてきた。

 

「ちょっと! 姫島先輩!」

 

「あらあら、真っ赤になってかわいいですわ」

 

 姫島先輩の行動に俺が慌てていると、姫島先輩はなぜか嬉しそうに微笑んでいる。

 

「ああ! もう放して下さい!」

 

「キャ!」

 

 わるいと思ったが、これ以上は危険なので無理矢理姫島先輩を引き離す。

 

「はぁ、はぁ、まったくからかうのもいい加減に……ブッ!」

 

 俺が溜息を吐きながら姫島先輩の方を向いた瞬間、衝撃的な光景に思わず吹き出してしまった。

 

「あらあら」

 

「あらあら、じゃありませんよ! 早く隠して下さい!」

 

 俺が引き離したときの衝撃で姫島先輩の上の水着が外れてしまっていたのだ。

 俺はすぐさま視線を逸らすが、姫島先輩はなんでもないようにいつも通り微笑んでいる。

 

「慌てちゃって、こんな楠緒くん初めて見ますわ。それではこうしたらどうなるのかしら?」

 

「なッ! ちょッ! はぁああ!?」

 

 姫島先輩は悪戯を思いついたように笑うと、そのまま正面から俺に抱きついてきた。

 ちょっと! これはさすがに冗談じゃないって!

 姫島先輩の胸が俺の前から押しつけられて、しかも顔近ッ!

 姫島先輩がお互いの息がかかりそうな距離まで密着してくる。

 不味い不味い不味いって! こういうのは俺じゃなくて、イッセーの役目だろうが!

 

「うふふ、これで隠れましたわね」

 

「いやいや、隠す以上に大変な状況になってますからね! おい祐斗! そこで笑ってないで助けろ!」

 

 姫島先輩に慌てて話しながら、俺の視界の先で笑ってこっちを見ている祐斗に叫ぶと、急に祐斗の表情が焦り出して俺の視界から消える。

 どうしたんだあいつ? 俺に言われたぐらいで逃げるような奴とは思えないけど……?

 そんなことを考えていると、俺の横をなにかが通り過ぎていく。

 俺の横を通り過ぎていったなにかは俺の視線の先にあるプールの飛び込み台の一つを消滅させた。

 

「随分と楽しそうね。二人とも?」

 

 俺が恐る恐る声の聞こえてきた方に振り向くと、部長が恐ろしいほどのオーラを纏って、右手をこちらに突き出していた。

 まだオイルを塗っている最中だったのか上半身が丸出しだが、纏っているオーラのせいで恐怖を先に感じてしまう。

 あれ? 今の部長がやったんですか?

 俺は額から汗が流れるのを感じる。

 

「あらあら、折角いい雰囲気だったのに邪魔が入ってしまいましたわね」

 

「誰が邪魔ですって! 早く楠緒から離れなさい!」

 

「別にいいじゃないの。あなたはイッセーくんを独占してるのだから、私は楠緒くんを独占しているだけですわ」

 

 部長と姫島先輩が俺を挟んで口論を始める。

 俺はイッセーにどうにかしろという視線を送るが、なぜかイッセーは親の敵を見るような目で俺を睨んでいた。

 えっ、なにこの状況?

 

「それに楠緒くんはあなたの眷属ではないのですから、あなたが口を挟む資格はありませんわ」

 

「ふざけないで! 私は部長で楠緒は部員よ! 同じようなものだわ!」

 

 いや、そう思ってくれるのは本当にありがたいけど、それは流石に無理がないか?

 

「見苦しいわよリアス。だいたい二人とも自分の物にしようなんて強欲ですわ」

 

「なによそれ! あなただって似たようなものじゃない!」

 

「そんなことありませんわ。私はあなたと違って一人の殿方で満足ですのも、楠緒くんも自分だけに尽くす女性の方がいいですわよね?」

 

「ちょっと! その言い方は卑怯よ!」

 

 徐々に口論は激しくなっていき、一触即発の空気が流れ始める。

 この状況で俺はどうすればいいんだろう?

 

「あの……二人とも一旦落ちつ――」

 

「楠緒は少し静かにしていなさい!」

 

「あらあら、怖いですわね。楠緒くん」

 

 部長に言葉を遮られた俺の頭を姫島先輩が、まるで子供をあやすように優しく撫でる。

 この年になって素で頭を撫でられるのは非常にむず痒いな。

 

「うふふ、また楠緒くんの新しい一面が見れましたわ」

 

「なッ! ズルイわよ朱乃!」

 

「うふふ、こういう楠緒くんはいつもと違ってかわいいですわね」

 

 姫島先輩が嬉しそうにさらに俺の頭を撫でる。

 いや、そろそろ恥ずかしいんで止めてくれませんか?

 

「あの、姫島先輩そろそろ――」

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 

 姫島先輩に頭を撫でるのを止めてもらうように言おうとした瞬間、再び俺の横をなにかだ通りプールサイドの一部を破壊した。

 

「朱乃。ちょっと、調子に乗りすぎよね? あなた、私の下僕で眷属だということ、忘れているの?」

 

 いつもの部長では考えなれない程のドスの効いた声音が聞こえてくる。

 こ、こええ、この体勢じゃあ顔は見えないけど絶対に怒ってるよな。

 

「あらあら。そんな風にされると私も困ってしまいますわ――リアス、私は引かないわよ?」

 

 姫島先輩がいつもの笑顔を留め、珍しく目を見開いている。しかも若干口調に怒気が含まれているように感じるのは気のせいだろうか?

 姫島先輩は俺を放すと、プールから出て部長に近づいていく。

 上半身裸の女性が全身に魔力を展開させながら、間近で睨み合う迫力は凄まじい。

 なんて言うんだってこの状況……修羅場?

 

「楠緒は渡さないわ――卑しい雷の巫女さん」

 

「それはこちらの台詞ですわ――紅髪の処女姫さま」

 

「あなただって処女じゃないの!」

 

「あら、そんなこと言うのなら今すぐ楠緒くんに処女をもらってもらうわ。あなたの処女はイッセーくんが予約しているものね」

 

「黙りなさい!」

 

 直後、破壊音と共の部長と姫島先輩は空中へと飛び、喧嘩とは言えない激しいバトルを始めた。

 どうしてこうなったんだ? こういう立場はイッセーの役目じゃなかったのか神様? あっ、神様はもう死んでたんだっけ……。

 

「だいたい、朱乃は男が嫌いだったはずでしょう! なんでよりにもよって楠緒に興味を注ぐのよ!」

 

「そういうリアスも男なんて興味ない、全部一緒に見えるなんて言ってたわ!」

 

「別にいいじゃない! 楠緒は特別なの!」

 

「私だって楠緒くんは特別ですわ! あなたはその場にいなかったか知らないでしょうけど、あのフェニックス家との婚約パーティーのときの彼はとても魅力的でしたわ。多くの上級悪魔の方々に囲まれているに一人で立ち向かったその姿に女なら男を感じるのはしょうがないじゃないの!」

 

 なんか姫島先輩の中であのときの出来事が美化されてないか?

 あのときはサーゼクスさまが手伝ってくれたから、あそこまでできただけなんだけど……。

 気がついたら喧嘩はヒートアップして大変な状況になっていた。

 危険なレベルの魔力が飛び交い、プールを破壊していく。

 戦場の近くにいたイッセーは流石に命の危険を感じたのか、プール用具室の中に逃げていた。

 この喧嘩の原因は間違いなく俺だろうし、ここは俺が悪役になってでも止めないといけないよな。

 仕方ない……二人ともゴメンなさい!

 俺は心の中で二人に謝りながらプールから出て行動を開始する。

 

「いい加減にしやがれッ!!」

 

 そうやってわざと口調を強くして二人に向かって叫んだ俺は、バーストエネルギーで生み出した無数の鎖で二人の身体を拘束する。

 

「なッ! キャ!」

 

「なんですの? キャ!」

 

 驚いている二人を無視して鎖を手繰り寄せ、二人を地面に怪我しないように注意して着地させる。

 

「邪魔しないで楠緒! こればかりは引けないの!」

 

「そうですわ!」

 

「――黙れ」

 

 俺は文句を言ってくる二人に悪いと思いながらも、一年前の俺は笑顔に怒気を込めて部長と姫島先輩を睨む。

 二人とも見たことない俺の雰囲気に驚いて、身体を震わせ硬直する。

 

「――正座」

 

「く、楠緒?」

「ど、どうしたのかしら?」

 

「――正座しろってんだろ聞こえなかったんですか?」

 

 俺の笑顔のままドスの効いた声に戸惑いながら部長と姫島先輩がその場に正座する。

 その後、しばらくの間俺の説教がプールサイドに響き渡った。

 

 

 

 後で祐斗から聞いた話によると、遠目から見たら海パン姿の男が、上半身裸の美女二人をプールサイドに正座させているという犯罪チックな光景になっていたことを教えられ、今度は俺が二人の前で正座することとなったのは、また別の話である。

 

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