ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.31 授業参観

 ……はぁ、やっちまった。

 プールから出た俺は気まずい空気の中、みんなより先に一人で帰宅しようとしていた。

 部長と姫島先輩の二人はちょっとやりすぎたのか、放心状態といった感じだったので後のことを塔城に頼んでおいた。あのときの塔城のゴミを見るような目は一生忘れないだろう。今日練習に付き合って上がった先輩としての好感度が一気にマイナスまで行ったなあれは……。

 

「やあ、初めまして」

 

 下を向いて歩いていると誰かに話しかけられる。

 聞いたことない声だと、顔を挙げるとダークカラーが強い銀髪に透き通った蒼い目が印象的な少年が立っていた。

 誰だ、新しい留学生か?

 駒王学園はその校風から留学生が多いため、こうして新しく入ってくる留学生が下見に来ることは珍しくない。

 

「……新しく転入してくる留学生の方ですか?」

 

 下がっていたテンションを無理に戻して、新しく入る留学生が悪い印象を持たないように笑顔で質問する。

 

「そういう訳ではないんだけど、キミとは一度会ってみたくてね」

 

 そういった瞬間少年の纏う空気が一変する。

 先程まではなにも感じなかったのに、今は凄まじいプレッシャーが俺に襲いかかってくる。

 ……なんだこの重圧は? これはコカビエル以上! そんなバカな!?

 俺が驚きを隠さずに少年を見つめると、少年は俺の顔を見て小さく笑う。

 

「流石はコカビエルを殺しただけのことはあるな。感じさせないように気をつけていたのに、俺の力を感じ取ったのか」

 

 何者だこいつは? 向こうは俺のことを知っているみたいだが、俺はこんな少年見たことないぞ……。

 

「自己紹介といこうじゃないか。俺はヴァーリ。白龍皇――『白い龍(バニシング・ドラゴン)』だ」

 

「なッ!」

 

 こいつが白龍皇だと!? コカビエル襲撃事件のときに俺が殺したコカビエルの死体とフリードを回収するためにイッセーたちの前に現れたというあの。

 俺は一気に警戒を高めてヴァーリを睨む。

 こいつは一体何の目的があって俺に近づいてきたんだ?

 

「そう警戒しないでくれ。別に今日は戦いに来たわけではない。さっきも言っただろう? 一度会ってみたかったって」

 

「……その言葉を信じろというのか?」

 

「別に信じてくれなくてもいい。だが、今ここで俺と戦って勝てると思っているのか? コカビエルごときを倒すのに不意打ちをするしかなかったキミが?」

 

「ッ!」

 

 俺はヴァーリの言葉に奥歯を噛み締める。

 確かにヴァーリの言う通りだ。こいつの力はコカビエルよりも上だ。それに加えて俺の暴王の流星はハッキリ言って狙撃用。この状況で戦ったら暴王の流星を撃つ前にヴァーリの攻撃が俺に襲いかかるだろう。

 

「どうやら理解してくれたようだな。暴王の力を持つ少年――佐伯楠緒」

 

「そうだな。とりあえず今だけはおまえの言葉を信じることにするよ」

 

 警戒するだけ無駄だとわかった俺は最低限まで警戒を緩めてヴァーリを見る。

 

「それで? 俺と会ってどうするつもりだ?」

 

「佐伯楠緒、キミはこの世界で自分が何番目に強いと思う?」

 

 ヴァーリの問い掛けに俺は自然と首を傾げる。

 この世界で自分が何番目に強いだと……そんなの考えたことないな。

 元よりそんなものに興味はないし、メルゼーの力だけなら相当な物だと思うが。

 

「あのコカビエルを殺した暴王の力は相当なものだろう。多分三桁には入れるんじゃないか。だが、キミ自身のスペックはもっと下だ。千位台にも入れないだろう」

 

 ヴァーリが一人で話を続ける。

 ヴァーリの言葉の真意を掴めない俺は黙ってその話を聞いていく。

 

「この世界は強い者が多い。『紅髪の魔王』と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえ、トップ十にも入らない」

 

 ヴァーリの言葉に俺は驚く。

 サーゼクスさまでさえ十位以内に入れないって、この世界はどれだけ強い存在が多いんだよ。

 ヴァーリが指を一本だけ立てる。

 

「だが、一位は決まっていた――不動の存在だった」

 

 ヴァーリはそういうとその立てた指を下げる。

 

「しかし最近その順位を脅かす存在が再び姿を現した――それがキミの持つ力。暴王だ」

 

 メルゼーが不動の存在を脅かす力を持つだと、確かに途轍もない強大な力であることはわかるがそれほどのものだったのか。

 そういえばQもあのとき暴王の月はメルゼーの力のほんの一部でしかないと言っていた。

 

「暴王の力が俺の知る通りなら、その力はあのムゲン(・・・)でさえ喰らい尽くすことができるだろう。だからこそキミを見て俺は落胆したよ。そこまで恐れられている力があんなちっぽけなものだとは思わなかった。キミには強くなってもらわなければ困る。暴王の力を極めたキミほど倒しがいのある敵はいないだろう。俺は強くなったキミと戦いたい」

 

 ヴァーリは真っ直ぐと俺の目を見つめてくる。その目からはヴァーリが本気で言っていることが伝わってくる。

 

「今日はこのぐらいにしておこう。赤龍帝――兵藤一誠にもよろしく言っておいてくれ」

 

 ヴァーリはそう言って踵を返す。

 

「……最後に一つ忠告をしておこう。グリゴリには気をつけた方がいい」

 

「はぁ……ッて! ちょっと待て! それはどういうことだ!」

 

 俺を呼び止める声を無視してヴァーリはその場から居なくなった。

 ヴァーリの最後に言った言葉。グリゴリには気をつけた方がいいって、グリゴリは『神の子を見張る者』といった堕天使陣営の組織の名前じゃないのか?

 なんで堕天使側の存在であるヴァーリが自分の所属する陣営を注意するように促すんだ?

 堕天使が俺を狙っているのか?

 白い龍――白龍皇。ヴァーリの言葉はいつまで経っても俺の耳から離れなかった。

 

 

 

 

 

 ヴァーリと遭遇したあのプール開きの日から数日後。

 色々あったが授業参観の日になった。

 まあ、親父は研究で忙しいだろうから俺には関係のない話だけどな。

 ただこの授業参観が普通とちょっと違うところは公開授業ということになっているため、高等部の学生の親だけではなく、中学生やその親まで参加できるという点だ。

 そのため、後輩の前でかっこ悪いところを見せられないと無駄に緊張する奴も少なくはない。

 部長に朝挨拶をしたときに溜息を吐いていた。

 確か部長の家は父親とサーゼクスさまが来るらしいけど、やっぱり授業風景を見られるのは嫌なのだろうか? 俺の親父は来ないと伝えたら地味に羨ましがられた。

 まあ、これは隣の芝生は青いというものだろう。

 

「うわぁぁぁぁん! 同士佐伯よぉぉぉぉ! イッセーがまた! イッセーがまた!」

 

 自分の席に着いて物想いに耽っていると、松田が号泣しながら俺の机にダイブしてきた。

 

「……どうしたんだよ」

 

「イッセーにアーシアちゃんがァァァァ! ゼノヴィアがァァァァ!」

 

 あぁ? アーシアとゼノヴィアがイッセーになんだって?

 泣いてるせいかなにが言いたいのかまったくわからん。

 ……そういえば、ゼノヴィアといえばあのプール開きの日にイッセーに子作りを迫るという事件が起きたらしいがそれと関係があるのだろうか?

 いや、まさかいくら常識知らずのゼノヴィアでも教室で堂々と子作りを迫ることはないだろう。

 

「ゼノヴィアが近藤さんでぇぇぇぇ! アーシアちゃんが食べごろだってぇぇぇぇ!」

 

 ゼノヴィアが近藤さんってなに言ってんだ?

 ゼノヴィアはゼノヴィアだろうが……まさか。

 非常に嫌な予感がした俺は、先程から騒がしいイッセーの席の方を見る。

 するとそこには慌ててるイッセーと、いつも通り笑っているアーシアと、嫌な笑顔を浮かべている桐生と、イッセーに泣きながら詰め寄っている元浜と、なにかが入っている小さな袋を持っているゼノヴィアの姿が……どうやらゼノヴィアは俺の想像以上にぶっ飛んでいるらしい。

 

「……あれは俺がどうにかできることじゃない。諦めろ」

 

「だってよぉぉぉぉ! これじゃあイッセーだけ不公平じゃねぇかァァァァ!」

 

「騙されるな松田! 楠緒はこの前プールで小猫ちゃんに手取り足取りあんなことやそんなことしたり! 部長と朱乃さんに色々ここでは言えないことをしたんだぞ!」

 

 松田の悲痛な叫びにイッセーが大声で反論する……しかも最悪の内容で。

 イッセーの反論のせいでクラス中がざわめく。特に女子の反応が酷い。

 さっきからコソコソとなんか話している。言っとくが全部聞こえてるからな!

 

「てめぇ、イッセーェェェェ! 適当なことぬかしてんじゃねぇぞぉぉぉぉ!!」

 

 流石にこれには俺も激怒に机を思いっきり叩いて立ち上がる。

 塔城にしたのは泳ぎの練習だし、部長と姫島先輩にしたのは説教じゃねぇか! 周りの誤解を招く言い方してんじゃねぇよ!

 

「嘘じゃねぇだろうが! あんな美味しい思いしやがって! 死ぬほど羨ましかったんだぞ!」

 

「知るか! おまえだってアーシアやゼノヴィアに似たようなことしたじゃねぇか!」

 

「ちょっと待て同士佐伯! 今なにか聞き捨てならないことを言わなかったか!?」

 

「似たようなことって、一体お前は学園の二大お姉さまとマスコットになにをしたんだよ!?」

 

 俺とイッセーの口論に松田と元浜まで乱入してきて完全な泥沼状態である。

 アーシアが涙目で必死に止めようとしているが、アーシアにこうなった俺たちを止めることはできない。

 

「いいぜ……ここじゃあ邪魔が入る……屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ」

 

「こっちこそ! 今回だけは赦さねぇからな! てめェが泣くまでぶん殴ってやる」

 

「もはやおまえたちなんか同士ではない! 断罪してやる!」

 

「どうやら決着をつけねばいけないようだな」

 

 結局テンションが変な方向に突き抜けた俺たちは、屋上で殴り合いの大ゲンカをし、三流ドラマのように互いの友情を深め合い、肩を組んで教室に戻った結果、教師に怒られて公開授業なのに廊下に立たされるという前代未聞の出来事となってしまった。

 

 

 

 

 

 お昼休み。

 

「……あなたたちはなにをやってるのよ」

 

「あらあら、二人とも元気ですわね」

 

 俺とイッセーとアーシアの三人が飲み物を買いに出たとき、偶然部長と朱乃さんに遭遇した俺たちは、俺とイッセーが傷だらけの理由を説明して呆れられてしまった。

 ……いや、半分ぐらいはあなたたちのせいですからね。

 ちなみに松田と元浜も同じぐらい傷ついているため、急に傷を治すと不自然なのでアーシアの神器で治療はしていない。

 

「ところで、部長。サーゼクスさまはいらっしゃったんですか?」

 

 話の流れを帰るためにイッセーが部長に質問をする。

 すると、部長は額に手を当てると大きく溜息を吐いた。

 

「ええ、父も一緒に来たわ」

 

 あっ、やっぱりあの人も来てたのか。

 俺は嫌われてるだろうし、出来るだけ会わないように気をつけよう。

 

「あ、部長。それにみんなも」

 

 そんなことを考えていると祐斗が現れた。

 

「あら、祐斗。お茶?」

 

 部長がそう聞くと、木場は首を横に振って廊下の先を指差した。

 

「いえ、何やら魔女っ子が撮影会をしていると聞いたもので、ちょっと見に行こうかなと思いまして」

 

 祐斗の返答に俺たちは首を傾げる。

 魔女っ子? なんだ? ミルたんでも来てるのか……いや、ないな。

 最近俺の中で魔女っ子や魔法少女のイメージがおかしくなってきていることを再認識してしまった。

 頭を抱えながら、みんなでその撮影会を見学しに行くと、そこには一種の異様な光景が広がっていた。

 フラッシュを懸命にたいて、カメラを持った男共が廊下の一角で必死に誰かを撮影している。

 人垣を潜りぬけてその被写体を見つけると、そこには見覚えのある恰好をした美少女がいた。

 その美少女が来ているのは『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』に出てくるキャラの恰好のはずだ。

 確かによく似合っている。ミルたんとは雲泥の差だ。

 ……そうだった魔女っ子ってこういう風な子のことを言うんだよな。

 ミルたんの姿を思い出した俺はなぜか目頭が熱くなってきた。

 そんなことを考えていると、人垣を通りぬけてきた部長が俺の近くに到着し、前方の魔女っ子を見た瞬間慌てふためく。

 

「なっ!」

 

 あまりの狼狽ぶりに俺と近くにいるイッセーも驚く。

 どうしたんだろう? あの魔女っ子が実は知り合いだったとか?

 

「オラオラ! 天下の往来で撮影会たーいいご身分だぜ!」

 

 そんなことを言いながら生徒会のメンバーである匙が人だかりに飛び込んでくる。

 流石にこれだけの騒ぎになら生徒会も動くのもおかしくないか。

 

「ほらほら、解散解散! 今日は公開授業の日なんだぜ! こんなところで騒ぎを作るな!」

 

 匙と生徒会メンバーの立派な働きもあって、先程まで大量にいたカメラ小僧は蜘蛛の子を散らすように居なくなった。

 残っているのは俺たちと生徒会と魔女っ子だけだ。

 

「あんたもそんな恰好しないでくれ。って、もしかして親御さんですか? そうだとしたも場に合う衣裳ってもんがあるでしょう。困りますよ」

 

「えー、だって、これが私の正装だもん☆」

 

 匙がもっともな注意をするが、魔女っ子はかわいらしいポージングをして聞く耳を持たない。

 あー、あれは匙もイラっとしたな、めっちゃ奥歯をギリギリしてるもん。

 だが、匙は部長を見つけると素早く頭を下げる。

 

「これはリアス先輩。ちょうど良かった。いま魔王さまと先輩のお父さんをご案内していたところなんですよ」

 

 匙が廊下の後方に顔を向けると、会長先導のもと、紅髪の男性二人が近づいて来ていた。

 ゲッ、出来れば顔を会わせたくなかったんだが……。

 流石に逃げ出すわけにもいかないので俺はばれないように顔を伏せる。

 

「何事ですか? サジ、問題は簡潔に解決しなさいといつも言って――」

 

 厳格な会長がそこまで言って、魔女っ子を見るなり、言葉を止める。

 

「ソーナちゃん! 見つけた☆」

 

 魔女っ子は会長を見つけると嬉しそうに抱きついていく。

 まさか、あの魔女っ子は会長の知り合いだったのか?

 匙は対応に困っているのかオロオロとしている。

 そんなことを考えていると、サーゼクスさまが魔女っ子に親しそうに話しかける。

 

「ああ、セラフォルーか。キミもここへ来ていたんだな」

 

 サーゼクスさまが呼んだ魔女っ子の名前に俺は凍りつく。

 セラフォルーって言ったら、確か……。

 

「レヴィアタンさまよ」

 

 部長が小さい声で俺と理解できてない様子のイッセーをフォローしてくれる。

 

「あの方は現四大魔王のお一人、セラフォルー・レヴィアタンさま。そしてソーナのお姉さまよ」

 

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!」

 

 部長の言葉にイッセー程ではないが俺も驚いて黙ってしまう。

 この方がサーゼクスさまと同じ魔王のセラフォルー・レヴィアタンさまか……なんか、イメージと大分違うな。まさかコスプレ少女とは思わなかった。

 俺が顔を伏せたままそんなことを考えていると、どうやら部長がレヴィアタンさま話し始めた。

 ……出来ればそのまま話が終わって解散してくれないかな?

 俺がそんなことを考えて必死に願っていると、突然魔女っ子――レヴィアタンさまがもぐり込むように俺の視界に入ってきた。

 

「うおわぁ!」

 

 流石に驚いた俺は慌てて飛び退いてしまう。

 

「ねぇ、サーゼクスちゃん。この子が噂の男の子なの」

 

 レヴィアタンさまが俺の顔をじろじろと見ながらサーゼクスさまに訊ねる。

 というか、サーゼクスさまをちゃん付けとは、流石同じ魔王が俺には真似できないな。

 

「そう、彼が暴王の力を宿す少年。佐伯楠緒くんだ」

 

 サーゼクスさまも自然にレヴィアタンさまに答える。

 

「初めまして☆ 私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆ 『レヴィアたん』って呼んでね☆」

 

「は、初めまして。佐伯楠緒です。よろしくお願いします。レヴィアタンさま」

 

 レヴィアタンさまのノリに圧倒されながら自己紹介を終える。

 なんか、予想以上に軽いノリだったんだが……あれが魔王か。

 

「久しいな。あの婚約パーティー以来か」

 

 俺がレヴィアタンさまのノリに唖然としていると、この場で一番話しかけられたくない人に話しかけられてしまった。

 

「は、はい。お久しぶりです」

 

 非常に気まづい俺は、言葉に詰まりながらも返事をする。

 

「サーゼクスから話は聞いた。どうやら暴王の力を制御できるようになったようだな」

 

「はい。父のおかげでしたが、なんとか制御することができています」

 

「ほう、お主の父上が……」

 

 俺の返事を聞いて何やら考える仕草をする。

 ……どうしたのだろうか? なにか不味いことでも言っただろうか。

 

「……リアスの報告ではコカビエルを殺したのはお主らしいが、それは制御した暴王の力によるものか?」

 

「はい。結果的にはそうです」

 

 実際は紙一重だった。

 一歩間違えば殺されていたのは俺の方だっただろう。

 

「そうか。一応リアスを助けてくれたことは礼を言っておこう。だが、お主はまだ私の言ったことがわかっていないようだな」

 

 部長のお父さんはあのときと同じ目で俺のことを見てくる。

 ……なにもわかってないか。この人が俺に求める答えってなんなんだろう。あれから色々と考えたが、これといった答えは見つけれていない。

 

「……そうかもしれませんね。だから俺は部長の傍で――いや、オカルト研究部でその答えを見つけたいと思います」

 

 俺は真っ直ぐ見詰めながらそう伝える。

 

「……あのときから少しは成長したようだな。それでは楽しみにさせてもらおう。お主が答えを見つけることを」

 

 部長のお父さんは俺にそういうと部長に話しかけに行く。

 緊張から解放された俺は大きく溜息を吐いてしまう。

 ……どうやら少しは認めてくれたのかな? まあ、期待を裏切らないようにしないと。

 

「父上と話してみてどうだったかな?」

 

「……サーゼクスさま」

 

 新たに決意を固めていたところにサーゼクスさまが話しかけて来られる。

 

「わかりません……ただ、話せてよかったです。期待を裏切らないように頑張ります」

 

「キミはキミの思う通りにすればいい。私も個人的に応援させてもらうよ」

 

 魔王さまの応援とはこれ以上の物はないだろう。

 なんだか余計プレッシャーがかかった気がするが、サーゼクスさまの言う通り、これからも俺が思う通りにやっていこう。

 

「捜しましたよ。楠緒」

 

 サーゼクスさまと話していた俺に聞き憶えのある声が話しかけてくる。

 この声は……なんで?

 

「お、親父!?」

 

 俺が声の聞こえてきた方を振り返ると、研究で忙しいはずの親父がいつも通りの笑顔で立っていた。

 

「な、なんで親父が学園に居るんだよ!? 研究はどうしたんだ!?」

 

「一度ぐらいは愛する息子の学園生活を見ておこうと思いましてね。無理を言って午後から抜けてきたんですよ。それでそちらの方はどなたですか?」

 

 詰め寄る俺に親父はそう答えると、サーゼクスさまのことを俺に聞いてくる。

 

「初めまして、私はリアス・グレモリーの兄で、サーゼクス・ルシファーと申します。お会いできて光栄です」

 

「あなたがサーゼクスさんですか。お話は息子から聞いています。あなたとリアスさんには息子が随分とお世話になっているようで、本当にありがとうございます」

 

「いえ、こちらの方こそリアスがいつも助けられて、彼には感謝していますよ」

 

 親父とサーゼクスさまがガッチリと握手をして互いに笑顔で会話をする。

 

「失礼ですが、彼のお父上ですか?」

 

 会話をしている二人の間に今度は部長のお父さんが入っていく。

 

「はい。そうですが、あなたは?」

 

「私はサーゼクスとリアスの父です。彼にはいつもリアスが大変お世話になっていまして、聞けばサーゼクスも先日お宅に一晩泊られてもらった聞きまして、一度挨拶をしなければと思ってはいたのですが、なにぶん私もサーゼクスも多忙の身でして、なかなか機会を作れませんでした。この度は幸運に恵まれたようです。今日はお会いできて光栄です」

 

「そうですね。あの日は私とグレイフィアがお世話になって申し訳ありませんでした」

 

「いえいえ! こちらの方こそ私の仕事が忙しくて挨拶に伺えなくて申し訳ありません。息子から大変迷惑をかけてしまったことを聞いて、いつかは謝りに行かなければいけないと思ってはいたのですが」

 

 三人で会話が盛り上がって、もう俺の入っていく隙間が無くなってしまった。

 それにしても、部長のお父さんは俺と話すときと随分と雰囲気が違うな。さっき部長と話してたときも優しそうな雰囲気だったし……あれ、俺って本格的に嫌われてるのか?

 

「あの人が楠緒のお父さまなのかしら?」

 

 頭を抱えて悩んでいると、部長が盛り上がっている三人を見てそう聞いてくる。

 

「はい」

 

「素敵なお父さまね」

 

「ええ、自慢の親父ですから」

 

 俺が笑顔でそう答えると部長も微笑んでくれる。

 そうしていると会話が終わったのか、親父が二人から離れて俺に近づいてくる。

 

「おや、あなたがリアスさんですか?」

 

「はい。リアス・グレモリーと申します」

 

「これはご丁寧に、楠緒の父親の佐伯朱鳥です。息子がいつもお世話になっているようで、出来ればこれからも仲良くしてあげて下さい」

 

「はい。こちらこそ」

 

 親父と部長が軽く自己紹介を終える。

 それにしても目の前でそういう風に言われると、流石に恥ずかしいな。

 

「それでは楠緒。教室に案内してくれませんか?」

 

「えっ、授業も見ていくのか?」

 

「当たり前です。今日はそのために来たんですから」

 

 当然だという風に答える親父に、俺はこの年にもなって嬉しくなる。

 親父が授業参観に来るなんて久しぶりだからな仕方ないだろう。

 

「わかったよ。それじゃあ部長。また放課後に部活で」

 

「ええ、お父さまも機会があればまたお会いしましょう」

 

「そうですね。そのときは部活での楠緒の様子を教えていただけますか?」

 

「はい、そのときは喜んで」

 

 部長に挨拶をしたあと、俺は親父を連れて教室に戻った。

 

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