ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.32 吸血鬼

 授業参観は無事に終わった。

 公開授業が終わったあと親父は無理に研究室を抜け出したからと急いで研究に戻ってしまった。

 次の日の放課後、俺たちは旧校舎の一階にある『開かずの間』とされていた部屋の前に立っていた。

 この部屋は外から厳重に閉ざされていて、以前から気になってはいたのだが中を見たことはない。

 部長の話では、この部屋の中に部長の眷属の一人『僧侶』がいるらしい。

 アーシアより前から僧侶が居たことは聞いていたが、俺とイッセーとアーシアとゼノヴィアの四人は会ったことがなかった。

 部長の話によれば、その能力が危険視され、部長の力では扱いきれないため、上から封印をするように言われていたらしい。

 そしてなぜそんな危険な奴が封印されている部屋の前にいるのかと言うと、部長が悪魔の偉い方々からフェニックス家やコカビエルとの戦いによって高評価を受け、封印状態だった僧侶を今なら扱えるだろうと封印を解く許可を貰ったらしい。

 

「ここにいるの。一日中、ここに住んでいるのよ。いちおう深夜には術が解けて旧校舎内だけなら部屋から出てもいいのだけれど、中にいる子自身がそれを拒否しているの」

 

 部長が扉に向けて手を突き出して魔方陣を展開しながら俺たちにもう一人の僧侶について説明してくれる。

 一日中部屋の中に住んでいるか、深夜に自由に外へ出れるのに、本人がそれを拒否しているということは、本当に自分の力が制御できずに危険だと理解しているからか……単なる引きこもりか……。

 

「ひ、引きこもりなんですか?」

 

 俺が開かずの間の扉を見つめながら考えていると、イッセーが俺も気になっていたことを部長に質問する。

 部長はイッセーの質問に溜息を吐きながら頷いた。

 ああ、やっぱり引きこもりだったのか……。

 

「ですが、中にいる子は眷属の中でも一番の稼ぎ頭だったりするのですよ」

 

 部長の手伝いをしていた姫島先輩が補足として、もう一人の僧侶について話してくれる。

 一日中家の中に引きこもってるのにどうやって稼いでるんだよ。直接会わなくても契約ってできるものなのか?

 

「パソコンを介して、特殊な契約を人間と執り行っているのです。直接私たちと会いたくない人間というのもいるのですよ。その手のタイプとは別の形で交渉して、関係を持つのです。それを、パソコンを介してて解決しているのよ。パソコンでの取引率は新鋭悪魔の眷属の中でも上位に入るほどの数字を出しているのです」

 

 不思議に思っている俺たちに姫島先輩が続いて説明してくれる。

 なるほどね。類は友を呼ぶというかなんというか、パソコンを使って契約を取れるんなら稼ぎ頭になってもおかしくはない。そもそもわざわざ契約を行う人間の元に行く取引とパソコンを使った取引では効率が違いすぎる。仮にイッセーたちがこの町の中だとすれば、パソコンは世界中に繋がっている。縄張りとかあるのかもしれないが、それでも絶対数が違い過ぎるのだ。

 

「――さて、扉を開けるわ」

 

 俺が考えている間に扉の封印を解いた部長がそう言って開かずの間の扉を開く。

 

「イヤァァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!」

 

 扉が開いた瞬間、部屋の中からとんでもない声量の絶叫が聞こえてくる。

 部長はこうなることが分かっていたのか、特に驚くことはなく溜息を吐くと姫島先輩と一緒に部屋の中に入っていった。

 

『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』

 

『な、な、何事なんですかぁぁぁぁ!』

 

 部屋の中から部長ともう一人の僧侶であろう声が聞こえてくる。

 どうやら、突然部長が部屋の中に入ってきたことに酷く動揺しているようだ。部屋の中から悲鳴に近い叫び声が聞こえてくる。

 

『あらあら、封印が解けたのですよ? もうお外へ出られるのです。さあ、私たちと一緒に出ましょう?』

 

 姫島先輩の優しい声からは僧侶をいたわっているように感じる。

 しかし、姫島先輩? 引きこもりにその言い方は逆効果だと思いますよ? だって、その僧侶は別に封印されていたから外に出なかったわけではないんですから。

 

『やですぅぅぅぅぅぅ! ここがいいでぅぅぅぅぅぅぅ! 外に行きたくない! 人に会いたくないぃぃぃぃぃぃ!』

 

 俺の予想通り、部屋の中から聞こえる僧侶の叫びが一段と強くなる。

 その僧侶にとってその部屋は自分にとって楽園、聖域と言ってもいい場所になっているのだろう。

 そんな奴を無理矢理出そうとしても拒否するだけですよ。

 俺が苦笑いをしながらそんなことを思っていると、イッセーが意を決したように恐る恐る部屋を覗きこむと、少しだけ部屋の中に足を踏み入れた。

 

『おおっ! 女の子! しかも外国の!』

 

 僧侶の姿を見たのであろうイッセーがそんな声をあげる。

 部長のもう一人の僧侶はアーシアと同じ金髪少女らしい。

 どうやら同じ僧侶で金髪少女キャラが被ってしまったようだ。

 

『見た目、女の子だけれど、この子は紛れもない男の子よ』

 

 ……訂正。どうやらもう一人の僧侶はとても個性的な男の子のようだ。

 

「どういうことだよ?」

 

「アハハハ、まあ直接会ってみればわかるよ」

 

 俺の質問に祐斗は笑って誤魔化す。

 どうやら祐斗の態度からして、本当のことらしい。

 そこまで言われたら僧侶のことが気になってしまう俺は、先程からイッセーの叫び声が聞こえてくる部屋に入る。

 

「こんな残酷な話があってもいいものか……。完全な美少女の姿で……男だなんて……チ○コがついてるだなんて……」

 

「……下品な単語禁止」

 

 頭を抱えてしゃがみこみながら叫んでいるイッセーに、俺と一緒に部屋に入ってきた塔城が注意をする。

 

「女装趣味ってのがさらに残酷だ! 似合っている分、余計に真実を知ったときにショックがでかい! 引きこもりなのに女装癖かよ! 誰に見せるための女装ですか!?」

 

 イッセーの悲痛な叫びに釣られて俺は僧侶の方を見る。

 その金髪と赤い相貌をした人形みたいな端正な顔立ち、女子の制服を着ていても違和感のない華奢な体つき、確かにどこからどう見ても女の子にしか見えないな。

 

「だ、だ、だって、女の子の服の方がかわいいもん」

 

 イッセーの言葉にさっきまで怯えていただけの僧侶が反論をした。

 まあ、趣味は人それぞれだから俺は否定はしないが……男の子がもんとか言うのはどうなんだろう?

 

「かわいいもん、とか言うなぁぁぁぁぁ! クソッ! 野郎のクセにぃぃぃ! 俺の夢を一瞬で蹴散らしやがってぇぇぇぇぇっ! お、俺は、アーシアとおまえのダブル金髪美少女『僧侶』を瞬間的にとはいえ、夢見たんだぞ!? 返せよぅ! 俺の夢を返せよぅ!」

 

 完全な逆恨みだ。しかも最低な部類に入る逆恨みだった。

 おまえが勝手に期待しただけで、この子なにもわるくねぇじゃねぇか。

 

「……人の夢と書いて、儚い」

 

「小猫ちゃぁぁぁぁん! シャレにならんから!」

 

 塔城の言葉の暴力にイッセーは涙目になって叫ぶ。

 ……どんだけ期待してたんだよ。

 

「と、と、と、ところで、この方々は誰ですか?」

 

 僧侶が俺とイッセーとアーシアとゼノヴィアの四人を指差して部長に聞く。

 

「あなたがここにいる間に増えた眷属と仲間よ。『兵士』の兵藤一誠。『騎士』のゼノヴィア、部員の佐伯楠緒、あなたと同じ『僧侶』のアーシア」

 

 部長に紹介されたので俺たちは「よろしく」と言って挨拶をするが、僧侶は「ヒィィィ、人がいっぱい増えてる!」と言って恐がるだけだ。

 引きこもりの彼にとっては刺激が強すぎたようだ。

 

「お願いだから、外へ出ましょう? ね? もうあなたは封印されなくてもいいのよ?」

 

「嫌ですぅぅぅぅ! 僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁぁぁっ! 怖い! お外怖い! どうせ、僕が出てっても迷惑をかけるだけなんだよぉぉぉぉぉっ!」

 

 部長はなんとかして僧侶を部屋の外に出そうと優しく話しかけるが、僧侶にはなんの意味もないようだ。

 しかし、俺はその僧侶の叫びを聞いてなにか違和感を感じる。

 確かに態度だけみればただの引きこもりだろうけど、なんだこの違和感は? 外の世界なんて無理? 僕が出てっても迷惑をかけるだけ? なにかが引っかかるんだよな?

 そんなことを考えていると、なになら苛立った様子のイッセーが僧侶の腕を引く。

 その瞬間、俺の中のなにかが危険なものを感じ取って、本能的に部屋の外へ逃げる。

 ……なんだ? 久しぶりに勝手に危険予知が起きたぞ?

 

「ヒィィィィ!」

 

 僧侶の絶叫共に一瞬だけ部屋の中が白く光ったような気がする。

 ……なにが起こったんだ?

 俺がゆっくりと部屋の中を覗きこむと、そこには驚くべき光景が広がっていた。

 部屋の中はまるで時間が停まってしまったかのように、全ての動きが停止していた。

 いや、一人だけ、あの僧侶だけはイッセーの手から逃れ、部屋の片隅で震えている。

 ……なるほどな、これがあの僧侶が封印される原因となった能力か。確かに危険な力みたいだな。

 

「おい、ちょっといいか?」

 

「ヒ、ヒィィィィ! なんで動いてるんですかァァァァ!」

 

 部屋の外から顔を見せないように僧侶に話しかけると、僧侶は俺が動いて話しかけてきていることに酷く動揺する。

 

「落ちつけ。とりあえずこれはおまえがやったんだな?」

 

「ヒィ! ゴメンなさい! 怒らないで! 怒らないで! ぶたないでくださぁぁぁぁい!」

 

 俺の質問に僧侶は震えながら謝ってくる。

 ……どうやらわざとじゃないみたいだな。こいつが封印されていた理由がわかったような気がする。

 

「別に怒ってないから安心しろって」

 

 俺は溜息を吐いて、部屋の中に戻る。

 

「おかしいです。なにかいま一瞬……」

 

「……なにかされたのは確かだね」

 

 俺が部屋の中に入ると、どうやら全員元に戻ったのか動き出している。

 

「楠緒は無事だったみたいね」

 

「停められる前に逃げましたからね」

 

 溜息を吐いていた部長が俺の存在に気づいて話しかけてくる。

 イッセーとアーシアとゼノヴィアの三人は今の間になにが起きたのか理解していないようだ。

 

「その子は興奮すると、視界に映したすべての物体を一定の間停止することができる神器を持っているのです」

 

 姫島先輩がわかっていない三人に説明する。

 

「彼は神器を制御できないため、大公及び魔王サーゼクスさまの命でここに封じられていたのです」

 

 姫島先輩の説明が終わり、三人もこの僧侶がなぜ封印されていたのか理解したようだ。

 制御できない力ほど怖いものはないからな。

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属『僧侶』。いちおう、駒王学園一年生なの――そして、転生前は人間と吸血鬼のハーフよ」

 

 

 

 

 

「『停止世界の邪眼(フォーヴトゥン・バロール・ビュー)』?」

 

 イッセーの問いに部長が頷く。

 

「そう。それがギャスパーの持っている神器の名前。とても強力なの」

 

「時間を停めるって、それ、反則に近い力じゃないですか?」

 

 イッセーの言葉には確かに同じ考えだ。

 時間を停める。口では簡単に言えることだが、実際にこれ以上怖い力は存在しない。

 

「ええ、そうね。でもあなたの倍加の力も、白龍皇の半減の力も反則級なのよ」

 

 部長はイッセーの言葉にそう言い返す。

 確かにイッセーの神器も神滅具と呼ばれる反則級の代物だったな。

 

「問題は、それを扱えないところ。それゆえにギャスパーはいままで封じられてきたのよ。無意識に神器が発動してしまうのが問題視されていたところなの。力を制御できない怖さは楠緒もよく知ってるわよね」

 

 部長が俺の方を見ながら問い掛けてくる。

 

「……そうですね。制御できない力ほど怖いものはありません。ギャスパーの気持ちも少しはわかりますよ」

 

 俺はさっきからギャスパーが中に入っている大きな段ボールを見つめながら話をする。

 まあ、ギャスパーからしたら勝手になにを言ってるんだ思うだろうけどな。

 

「しかし、そんな強力な神器を持った奴をよく部長は下僕に出来ましたね? しかも駒一つの消費だけで済むなんて」

 

 イッセーが部長に質問すると、部長は手元に一冊の本を出現させ、あるページを開いて俺たちに見せる。

 俺とイッセーがそのページを見ると、そのページには『悪魔の駒』について説明が書かれていた。

 

「――『変異の駒(ミューテーション・ピース)』よ」

 

「……ミューテーション・ピース?」

 

「変異の駒ですか……?」

 

 俺たちが部長の言った言葉に首を傾げていると、部長の代わりに祐斗が答える。

 

「通常の『悪魔の駒』とは違い、明らかに駒を複数使うのであろう転生体が、一つの駒で済んでしまったりする特異な現象を起こす駒のことだよ」

 

「部長はその駒を有していたのです」

 

 姫島先輩が補足すると、さらに木場が続けて口を開く。

 

「だいたい上位悪魔の十人に一人は一つぐらいもっているよ。『悪魔の駒』のシステムを作りだしたときに生まれたイレギュラー、バグの類らしいんだけそ、それも一興としてそのままにしたらしいんだ。ギャスパーくんはその駒を使った一人なんだよ」

 

 木場の説明を聞き終わった俺たちは素直に感心する。

 なるほど、悪魔の駒にそんなシステムが会ったんだな。

 

「問題はギャスパーの才能よ」

 

 部長は難しい顔をしてそう言う。

 

「どういうことっスか?」

 

「彼は類稀なる才能の持ち主で、無意識のうちに神器の力が高まっていくみたいなの。そのせいか、日々力が増していってるわ――上の話では将来的に『禁手』へ至る可能性もあるという話よ」

 

 部長の言葉からその危険性が伝わってくる。

 ただでさえ時間を停めるなんて危険なものが制御できないまま禁手に至ってしまったら、どんな惨劇を引き起こすのか想像もできない。

 

「そう。危ない状態なの。けれど、私の評価が認められたため、いまならギャスパーを制御できるかもしれないと判断されたそうよ。私がイッセーと祐斗を『禁手』に至らせたと上の人たちは評価したのでしょうね。しかも、お兄さまの話では楠緒が力を制御できるようになったのも私の功績として考えられたらしいわ」

 

 どうしてそこで俺の名前が出てくるんだ。

 ライザー・フェニックスやコカビエルの件で悪魔の上の人たちに目をつけられているんだろうか?

 

「……うぅ、ぼ、ぼ、僕の話なんてして欲しくないのに……」

 

 段ボールに入っているギャスパーが小さい声でそう話す。

 確かにギャスパーからしてみればいい迷惑かもしれないが、このままじゃあ放っておいても禁手に至るって言うんじゃあ、そう言う訳にもいかないよな……なんとか出来ればいいんだけど……。

 ギャスパー自身、自分の能力で他人を停めるの怖いみたいだしな。

 ギャスパーの入った段ボールを見つめながらそんなことを考えていると、イッセーが無言でギャスパーの入っている段ボールを蹴った。

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 段ボールからギャスパーの悲鳴が聞こえてくる。

 ……なにをしてるんだこいつは?

 俺は無言でイッセーの足を蹴る。

 

「ッツー! なにすんだ!?」

 

「それはこっちの台詞だ。怖がらせてどうすんだよ。部長すいませんでした」

 

 俺が部長に謝ると部長は一回咳払いをして話の続きを始めた。

 

「能力的には朱乃に次いで二番目なんじゃないかしら。ハーフとはいえ、由緒正しき吸血鬼の家柄だし、強力な神器も人間としての部分で手に入れてる。吸血鬼の能力も有しているし、人間の魔法使いが扱える魔術にも秀でているわ。とてもじゃないけれど、本来『僧侶』の駒一つで済みそうにないわね」

 

 ……それは本当に凄いな。人間と吸血鬼のいいとこどりじゃねぇか。

 確かにそれじゃあ駒一つじゃ済みそうにないよな。部長が僧侶の変異の駒を持っていて良かったな。

 もし、ギャスパーに僧侶の駒を二個使っていたら、アーシアを助けることができなかったかもしれない。

 まあ、そのときは騎士か戦車になっていたかもしれないけど……。

 

「部長、吸血鬼って太陽に弱いんですよね? こいつは大丈夫なんですか?」

 

 イッセーが俺の蹴った個所を擦りながら部長に吸血鬼の有名な弱点に着いて質問する。

 

「彼はデイウォーカーと呼ばれる日中活動できる特殊な吸血鬼の血も引いているから問題ないわ。ただ、苦手ではあるんでしょうけれど」

 

「日の光嫌いですぅぅぅ! 太陽なんてなくなっちゃえばいいんだぁぁぁぁぁっ!」

 

 吸血鬼と悪魔と引きこもりによるトリプルパンチだもんな。

 そりゃあ太陽の光も辛くなるって……。

 

「おまえ授業にも出てないだろう? 力を克服してクラスと打ち解けなきゃダメだぞ?」

 

「嫌です! 僕はこの段ボールの中で十分です! 外界の空気と光は僕にとって外敵なんですぅぅぅッ! 箱入り息子ってことで許してくださぁぁぁぁいッ!」

 

 イッセーの説得も空しく、ギャスパーは段ボールの中から出てくる気配がない。

 

「もうひとつ、こいつは血を吸わないんですか? 吸血鬼でしょ?」

 

 イッセーはギャスパーの様子に呆れながら、部長にまた質問をしている。

 

「ハーフだから、そこまで血に飢えているわけではないわ。十日に一度、輸血用の血液を補給すれば問題ないの。もともと血を飲むのは苦手みたいだけれど」

 

「血、嫌いですぅぅぅぅ! 生臭いのはダメェェェェェェェ! レバーも嫌いですぅぅぅ!」

 

 色々と苦手なものの多い吸血鬼である。

 これは引きこもり以外にも問題があるんじゃないだろうか?

 

「……へたれヴァンパイア」

 

「うわぁぁぁぁぁん! 小猫ちゃんがいじめるぅぅぅぅ!」

 

 塔城の容赦のない言葉の暴力がギャスパーに襲いかかる。

 相変わらずだな。もうちょっとオブラートに包んでやればいいものを……。

 

「とりあえず、私が戻ってくるまでの間だけでも、イッセー、楠緒、アーシア、小猫、ゼノヴィア、あなたたちにギャスパーの教育を頼むわ。私と朱乃は三すくみトップ会談の会場打ち合わせをしてくるから。それと祐斗、お兄さまがあなたの禁手について詳しく知りたいから、ついてきてちょうだい」

 

「はい。部長」

 

 祐斗が返事をして部長の傍による。

 確か祐斗の禁手は本来あり得ない聖と魔が合わさったものだったか? そんなイレギュラーなものは確かに調べておきたいよな。

 

「それじゃあ、わるいけど、ギャスパーくんのこと、お願いするね」

 

 木場の言葉に俺たちはそれぞれ返事をする。

 まあ俺も問題が起きないように気をつけておくか。

 

「ギャスパーくん、そろそろお外になれないといけませんわよ」

 

 段ボール越しに姫島先輩がギャスパーに話しかける。

 

「朱乃お姉さまぁぁぁぁぁ! そんなこと言わないでくださいぃぃぃぃぃ!」

 

 段ボールの中からギャスパーが姫島先輩に泣きつく。

 

「あらあら。困ったわね。二人とも同じ男の子の後輩ですので、お願いね」

 

「わかりました。まあ、嫌われないようにしますよ」

 

「はい、朱乃さんにお願いされたら、俺もがんばっちゃいます!」

 

 姫島先輩のお願いに俺とイッセーはそれぞれ返事をすると、部長と姫島先輩と祐斗を見送る。

 さてと、頼まれたからにはどうにかしないといけないが……どうしたものか?

 

「うん。では、こいつを鍛えようか。軟弱な男はダメだぞ。それに私は小さいころから吸血鬼と相対してきた。扱いは任せて欲しいね」

 

 そう言って、ゼノヴィアはギャスパーの入っている段ボールにくくりつけてあるヒモを引っ張りだした。

 止めてやれ。おまえに任せたらギャスパーが滅ぼされてしまう。

 

「ヒィィィィッ! せ、せ、せ、聖剣デュランダルの使い手なんて嫌ですぅぅぅぅ! ほ、滅ぼされるぅぅぅぅぅ!」

 

「悲鳴をあげるな、ヴァンパイア。なんなら、十字架と聖水を用いて、さらにニンニクもぶつけてあげようか?」

 

「ヒィィィィィッッ! ガーリック、らめぇぇぇぇぇぇッッ!」

 

 十字架と聖水を使ったら自分にもダメージが行くことに気がついていないのだろうか。

 ……ギャスパーの引きこもりが、さらに酷くならなければいいんだけどな。

 俺はギャスパーを引っ張っていくゼノヴィアを姿を見ながらそんなことを考えていた。

 

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