ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.36 三大勢力の会談

 遂に三大勢力の会談の日となった。

 サーゼクスさまに頼まれて会談で席に着くことになった俺は、誰よりも早く会場となる駒王学園の新校舎にある職員会議室で会談が始まるのを、この日のために用意したという、豪華絢爛そうなテーブルを囲むように用意された俺の席に着いて、他の人が来るのを待っている。

 各陣営のトップたちは新校舎の休憩室で待機しているらしい。

 この会議室に来る前に祐斗に聞いた話では、現在この学園全体が強力な結界で囲まれ、誰も中に入ることはできず、出ることもできなくなっているらしい。結界の外には、天使、堕天使、悪魔の軍勢がぐるりと囲み、一触即発の空気だと言っていた。

 もし、今日の協議が決裂なんてしたら、この学園で戦争が始まってしまうかもしれない。そうならないためにも、今日の協議は上手くいってほしいものだな。

 そんなことを考えていると、会議室の扉が開いて、サーゼクスさまが部屋に入ってくる。

 

「やあ、楠緒くん。今日はよろしく頼むよ」

 

「こちらこそ、今日はよろしくお願いします」

 

 会議室に入ってきたサーゼクスさまが俺に気がつくと、手を上げて笑顔で話しかけてくれる。

 俺は慌てて席を立つと、サーゼクスさまに返事をしながら頭を下げる。

 

「頭を上げてくれたまえ」

 

 サーゼクスさまは笑顔のままそう言うと、俺から見て左側にある席に着く。

 

「楠緒くんは、両陣営のトップとは面識はあるかな?」

 

 席に着いたサーゼクスさまが笑顔のままで俺に話しかけてくる。

 

「はい。二人とも会ったことはあります」

 

「そうか。二人とも面識があるなら、少しは落ちついているかな?」

 

「いえいえ、朝から緊張しっぱなしですよ」

 

 いちおうミカエルさんともアザゼルとも面識があるとはいえ、この状況で緊張しないわけがない。

 いくら俺は座っているだけでいいとはいえ、下手をすれば今日の結果で戦争になってしまうかもしれないのだから緊張するのは当たり前だ。

 

「ハハハ、まあ、キミは座ってくれているだけでいいから、出来るだけ楽にしてくれたまえ」

 

 サーゼクスさまは緊張している俺に対して笑いながらそう言ってくれる。

 どうやら、俺に気を使ってくれているようだ。サーゼクスさまにはあまり心配をかけないように気をつけないとな。

 サーゼクスさまと話し終えた俺は、気を入れ直して他の方々が来るのを待つことにした。

 

 

 

 

 

 しばらくすると、続々と各陣営の方々も会議室に集まってきた。

 悪魔側にはサーゼクスさまとレヴィアタンさま。

 天使側にはミカエルさんと知らない女の子の天使。

 堕天使側にはアザゼルと――『白い龍』白龍皇。ヴァーリが席に着く。

 誰もがこの場に相応しい衣装を身に纏っているなか、制服姿の俺だけが少し浮いて見えてしまう。そうして、全員が真剣な面持ちで会談の開始を待っていると、会議室の扉がノックされる。

 

「失礼します」

 

 扉の向こうから部長の声が聞こえてきて会議室の扉が開き、開いた扉から部長を含めたオカルト研究部のメンバーが会議室に入室する。

 ギャスパーの姿だけ見えないが、ギャスパーはまだ神器を完璧に制御することができないため、今回は部室で留守番することになったらしい。

 会議室に入室したみんなと目が合うが、事前に俺も会談で席に着くことを伝えていたので、各陣営のトップたちと同じ席に着いている俺を見ても特に驚いた様子はない。

 すると、アザゼルがイッセーを視線に捉えたと思うと、口の端を愉快そうにあげていた。

 

「私の妹と、その眷属だ」

 

 サーゼクスさまが他の人命に部長たちを紹介し、それに合わせて部長も会釈をする。

 

「先日のコカビエル襲撃事件では、彼女たちとそこに座る彼が活躍してくれた」

 

 サーゼクスさまが俺も同時に紹介してくれるので、俺もサーゼクスさまに合わせて会釈をする。

 

「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」

 

 ミカエルさんが部長と俺に対して礼を言ってくるが、部長と俺は冷静に振る舞い、再度会釈をする。

 

「悪かったな、俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」

 

 あまり悪びれた様子も見せず、口だけの謝罪をするアザゼルに部長は口元をひくつかせている。

 

「そこの席に座りなさい」

 

 サーゼクスさまの指示を受けて、部長たちはグレイフィアさんに促された壁側に設置された椅子に座る。その席の横には既に会議室に来ていた会長とその眷属たちが座っている。

 サーゼクスさまは部長たちが席に着いたのを確認すると口を開く。

 

「全員が揃ったところで、会談の前提条件を一つ。ここにいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

 サーゼクスさまの言葉が沈黙で答える。

 会議室にいる全員が、神が死んでいることを知っているのだろう。特に変わった様子もなく席に着いている。

 会長たちもこの場にいるということは、事前に話を聞いていたのだろう。神の不在を聞いても、特に驚いた様子は見えない。

 

「では、それを認知しているとして、話を進める」

 

 こうして、サーゼクスさまのその一言で三大勢力の会談が始まった……。

 

 

 

 

 

 会談は順調に進んでいた。

 基本的に各陣営のトップであるサーゼクスさま、ミカエルさん、アザゼルを中心に話は進んでいるのだが、アザゼルがことあるごとに俺に話を振ってくるので、俺は緊張から慌てながらも、できるだけ当たり障りのない意見で答えている。

 アザゼルはそんな俺の様子を見て楽しんでいる様子だ。

 そのまま話は問題なく続けていき、ついに部長の出番となった。

 

「さて、リアス。そろそろ、先日の事件について話してもらおうかな」

 

「はい、ルシファーさま」

 

 サーゼクスさまに促され、部長と会長、姫島先輩が立ち上がり、このあいだのコカビエル戦での一部始終を話し始める。

 部長は冷静淡々と自分が体験した事件の概要を話すが、緊張しているのだろう、ここからでも小さく手が震えているのが見える。

 自分の発言で三大勢力のなにかが変わるかもしれないという状況は、流石の部長でも酷く辛いものだろう。

 まあ、それはしょうがないことだろう。俺もアザゼルに話を振られたときは、酷く緊張しながら意見を答えたものだ。

 今の部長はそれと似たような気持ちなのだと思う。

 部長の報告を受けた各陣営のトップは溜息を吐く者、顔を顰める者、笑う者と反応は様々だった。

 

「――以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔とオカルト研究部の部員である彼が関与した事件の報告です」

 

「ご苦労、座ってくれたまえ」

 

 全てを言い終えた部長にサーゼクスさまが席に着くように促して、部長は着席する。

 

「ありがとう、リアスちゃん☆」

 

 レヴィアタンさまも部長を労うようにウインクを送っていた。

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

 サーゼクスさまの問いに全員の視線がアザゼルに集中する。

 アザゼルはそんな視線を受けながらも、不敵な笑みを浮かべて話し始めた。

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督の俺に黙って、単独で起こしたものだ。その結果、奴はそこに座っている人間に殺されて、その死体の処理は『白龍皇』がおこなった。現在、コカビエルの死体はもうどこにも残っちゃいねぇよ。そのあたりの説明はこの間転送した資料に全て書いてあっただろう? それが全部だ」

 

 ミカエルさんはアザゼルに説明に対して嘆息しながら口を開く。

 

「説明としては最低の部類ですが――あなた個人が我々と大きな事を起こしたくないという話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

 

「ああ、俺は戦争に興味なんてない。さっきの報告じゃあ、奴は全勢力に対して戦争をしかけるつもりもあったんだろう? それはつまり俺たち堕天使にも戦争を仕掛けようとしてたってことじャないか」

 

 アザゼルが言っているのは、俺が部長に話して、部長がこの場で報告したことだ。

 確かにあのときコカビエルは、暴王の力を手に入れたら自分一人で全勢力に戦争をしかけると言っていた。

 あのときのコカビエルの言葉を思い出していると、今度はサーゼクスさまがアザゼルに訊く。

 

「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが、どうしてここ数十年神器の所有者をかき集めている? 最初は人間たちを集めて精力増強を図っているのかと思っていた。天界か我々にせんそうをけしかけるのではないかとも予想していたのだが……」

 

「そう、いつまで経ってもあなたは戦争をしかけてはこなかった。『白い龍』を手に入れたと聞いたときは、強い警戒心を抱いたものです」

 

 ミカエルさんの意見もサーゼクスさまと同様のものだったらしい。

 二人の意見を聞いて、アザゼルは苦笑する。

 

「神器所有者のためさ。なんなら、一部研究資料もおまえたちに送ろうか? って研究していたとしても、それで戦争なんざしかけねぇよ。戦に今さら興味なんてないからな。俺は今の世界に十分満足している。部下に『人間界の政治にまで手を出すな』と強く言い渡しているぐらいだぜ? 宗教にも介入するつもりはねェし、悪魔の業界にも影響を及ぼせるつもりわねぇ。――それよりも、俺はサーゼクス。おまえたち悪魔の方がなにか考えてるんじゃねぇかと考えてるんだぜ」

 

「……なに?」

 

 アザゼルの言葉にサーゼクスさまは少し目を細めて見つめる。

 

「それは、どういうことだ?」

 

「どういうこともなにも、そこに座っているこの人間が理由だよ」

 

 アザゼルは笑いながら俺を指差してサーゼクスさまに答える。

 なっ! なんで俺のせいでサーゼクスさまや悪魔が疑われてるんだよ……?

 

「こいつはあの暴王の力を持ってるみたいじゃねぇか。俺も一回この目でその力を見たが間違いねぇ、あれは暴王の力だ。おまえもおまえの妹も随分とこの人間と仲がいいみたいじゃねぇか。堕天使の一部では、悪魔が暴王を抱き込んでると思ってる奴もいるんだぜ」

 

 アザゼルが愉快そうに笑いながらサーゼクスさまに続けて話す。

 

「そうか。アザゼル、キミがこの会談に楠緒くんも私たちと同じ席に着くように提案したのは……」 

 

 アザゼルの表情からなにかを感じ取ったのか、サーゼクスさまはそう呟く。

 なんだと? この会談で俺に人間代表として席に着くように提案したのはアザゼルだったのか。

 

「そうさ、ちょうどいいからこの場でハッキリとさせようと思ってな。今はまだ暴王の力が完全に目覚めていないようだが、その力が完全に目覚めてしまえば、どんな存在よりも脅威になる。その力で俺たちに戦争をけしかけられたんじゃあ堪ったもんじゃないからな」

 

 まさか俺の存在のせいで、折角順調に進んでいた会談がこんなことになるなんて、どうする? 俺はどうすればいいんだ?

 

「……アザゼル。言いたいことはそれだけかい?」

 

「ああ、で、どうなんだ? おまえたち悪魔は暴王を抱え込んでどうするつもりなんだ?」

 

 俺がどうすればいいのか悩んでいる間にも、サーゼクスさまとアザゼルは話し合う。

 そして、アザゼルの問いにサーゼクスさまが少し沈黙すると、静かに口を開く。

 

「私たちは彼を抱き込んでいるつもりなんてまったくないよ。もし、誤解させてしまっているのなら、この場で謝罪しよう」

 

 サーゼクスさまはそう言ってアザゼルに頭を下げる。

 

「どうだかな。おい、ミカエル。さっきから黙って見てるが、おまえたち天使はどう思ってるんだ?」

 

 アザゼルが今度はさっきから静観しているミカエルさんに話を振る。

 

「確かにアザゼルの言いたいことはわかります。しかし、先日彼と直接会話をして、彼がどういう人物なのかわかりました。彼なら暴王の力を意味もなく奮うことはないでしょう」

 

 ミカエルさんは微笑んでアザゼルにそう答える。

 

「おいおい、神は暴王の力を持つ者が現れた場合は、力が完全に目覚める前に、この世から排除しろと言ってたはずだぜ。あれだけ、神、神、神さまだったおまえが神の言葉に逆らうってのか?」

 

「結果的に言えば、そうなってしまいますね」

 

 ミカエルさんの答えを聞いたアザゼルが愉快そうに口を歪ませている。

 

「ハッ! あの堅物ミカエルさんが言うようになったね。その発言は『堕ちる』ぜ? ――と思ったが、『システム』はおまえが受け継いだんだったな。今、おまえが『堕ちてない』ということはそう言うことなんだろ? いい世界になったもんだ。俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う」

 

 アザゼルが冗談交じりといった感じでそう言うと、次に真剣な目で俺を見てくる。

 

「まあ、サーゼクスとミカエルはこう言ってるが、結局はおまえ次第なんだよ。教えてもらおうか。暴王の力を持っているとはいえ、なんで人間のおまえが悪魔と関わってるんだ? 聞いた話だとコカビエルだけじゃなく、俺のところの部下の堕天使も一人殺したらしいじゃねぇか。おまえの答え次第じゃあ、堕天使はおまえを外敵とみなして始末しないといけなくなる」

 

 そう言うアザゼルの目は本気だ。俺の答え次第で、アザゼルは迷わず俺の命を狙ってくるだろう。

 会議室にいる全員の視線が俺に集まる。

 サーゼクスさまとレヴィアタンさまとミカエルさんは静かに、壁側に設置された椅子に座っている部長たちは心配そうに、グレイフィアさんはいつも通りの無表情で、ヴァーリはあまり興味もなさそうに、ミカエルさんの隣に座る天使は真剣な目で、俺のことを見る。

 全員、次の俺の答えによってこの会談の流れが変わることを理解しているのだろう。

 ……俺は。

 俺は一度深呼吸をすると、真っ直ぐにアザゼルを見つめて口を開く。

 

「……別に悪魔とか人間とか関係ないんですよ。俺個人があの人たちと一緒に居たいと思ってるだけですから」

 

「わかんねぇな。リアス・グレモリーたちと関わることでおまえは何度も死ぬ程の危険にあってるわけだろ? なんでそんな風に思うんだよ?」

 

「居心地がいいんですよ。本当の自分を受け入れてくれる場所があるっていうのは、だから俺はそれを守るためだったらなんだってする。おまえたちの言う暴王の力だって利用してやるよ」

 

 最後の方は力が入ってしまい、つい敬語を忘れてそう答えてしまった。

 俺の答えを聞いたアザゼルと一瞬だけキョトンとするように目を見開くと、次の瞬間には大声を出して笑いだした。

 

「ハハハハハ! サーゼクスとミカエルがそこまで言う意味がわかったぜ。暴王の力を利用するなんて普通の奴じゃあ言えねぇな。こいつはバカだ。しかも、これだけ最上級のバカを見たのは久しぶり見た。こんな奴が悪魔と企んで戦争をけしかけるなんざ思えないわ。――悪かったな、俺も総督って立場上おまえがどんな人間が確かめないと部下が納得しないんでな」

 

 アザゼルがそう言って俺に対して軽く頭を下げる姿を見て会議室がざわつく。

 この会議室にいる誰もがアザゼルがそんな態度を取るとは思っていなかったからだ。

 

「さてと、話を脱線させて悪かったな。その詫びと言っちゃあなんだが、俺もそれなりの態度を示そうじゃねぇか。とっとと和平でもなんでも結ぼうぜ。 元々そのつもりもあったんだろう? 天使も悪魔もよ?」

 

 アザゼルの提案によって各陣営は少しの間、驚きに包まれる。

 壁際の席に座っている部長や会長も相当驚愕しているようだ。

 この会議室にいる誰も、まさかアザゼルから和平を提示されるとは思ってもいなかったようだ。

 三すくみの情勢をあまり理解してない俺でも、一つの陣営のトップがそう発言することの凄さは理解できる。

 アザゼルの一言に驚いていたミカエルさんが微笑む。

 

「ええ、私も悪魔側もグリゴリに和平を持ちかける予定いでした。このままこれ以上三すくみの関係を続けていても、いまの世界の害となる。天使の長である私が言うのもなんですが――戦争の大本である神と魔王は消滅したのですから」

 

「我らも同じだ。魔王がなくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない――次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」

 

 ミカエルさんとサーゼクスさまの言葉にアザゼルが頷く。

 

「そう。次の戦争をすれば、三すくみは今度こそ共倒れだ。そして、人間界にも大きく影響を及ぼし、世界は終わる。俺らはもう戦争を起こせない」

 

 そう言うアザゼルの表情はこの会談の中で一番真剣なものだった。

 

「神がいない世界は間違いだと思うか? 神がいない世界は衰退すると思うか? 残念ながらそうじゃなかった。俺もおまえたちもいまこやって元気に生きている」

 

 アザゼルは腕を広げながら、言った。

 

「――神がいなくても世界は回るのさ」

 

 アザゼルの言った言葉を俺はなんとなく理解できる。

 例え神が居なくても俺たちはこうしてこの世界で生きている。

 アザゼルの言葉は強い印象を俺の中に刻む。

 

「確かにその通りだな。だが、まさかキミから和平を持ちかけてくるとは思わなかったよ」

 

「はッ、元々戦争なんかには興味はねぇし、そのバカも守るために暴王の力を利用するんだろ? わざわざ暴王の力を敵に回すようなバカな真似はしねぇよ」

 

 サーゼクスさまの疑問にアザゼルは俺を指差しながら答える。

 その後、会談は今度の勢力の話に移っていった。

 どの勢力も戦争を望んでいないことがわかったのか、さっきほどの緊張感は若干弱まっている。

 流石にこの話には参加できない俺は静かに話が終わるのを待つ。

 

「――と、こんなところだろうか?」

 

 サーゼクスさまのその一言で、話しあっていた方々も大きく息を吐く。どうやら、一通り重要な話は終わったようだ。

 会談が始まってからどのくらい経っただろう? 緊張のせいか凄く長く感じたな。

 

「お疲れ様です」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 緊張しすぎた疲れから上を向いて目を抑えていると、グレイフィアさんが微笑んでお茶を給仕してくれる。

 俺がそのお茶を飲んで癒されている。

 ……まったく、なにが俺は座っているだけでいいですか。完全に俺の許容量オーバーしてますよ?

 心の中でサーゼクスさまに文句を言っていると、サーゼクスさまが微笑んで俺の方を見ている。

 

「すまなかったね。座っているだけでいいと言ったのに、楠緒くんには酷く負担をかけてしまった。話し合いはだいぶ良い方向に片付いているし、楠緒くんはもう席を外して休んでくれて構わないよ」

 

「えっ? いえ、大丈夫ですよ」 

 

「ここまできたらおまえがいてもいなくても話し合いに影響はねぇよ。サーゼクスの言葉に甘えて、今日はもう休んだらどうだ?」

 

「そうですね。楠緒くん、今日はありがとうございました。あなたのおかげで話し合いもよい方向に進みました」

 

「楠緒ちゃん☆ 今日はありがとうね☆」

 

 サーゼクスさまの申し出を俺だけ休むのは申し訳ないので断ろうとすると、アザゼルと、ミカエルさんとレヴィアタンさまにまで休むように勧められた。

 ……あれ? もしかして俺はもう邪魔ものなのだろうか? 確かに話し合いは俺のせいで脱線した部分もあったもんな。

 

「わかりました。それじゃあ、お言葉に甘えて先に席を外させてもらいます」

 

「そうしなさい。あとは私たちに任せてくれればいいからね」

 

「失礼します」

 

 俺は席から立ち上がって会議室にいる人たちに頭を下げて、会議室を退出する。

 

「おっと……」

 

 会議室を出た瞬間、緊張から一気に解放されたせいかその場でよろめいてしまった。

 ……危ない、危ない。どうやら、思った以上に緊張で疲れが溜まっていみたいだ。サーゼクスさまの言葉に甘えて正解だったな。

 苦笑いを浮かべながらそんなことを考えると、俺はギャスパーがいるだろう旧校舎に向かうことにする。

 旧校舎へ向かう途中、俺は会談が上手く行ったことを本当に安心して大きな溜息を吐く。

 アザゼルが俺のことをサーゼクスさまに問いただしたときは、本当にどうなるかと思ったが、結果的に良い方向に進んでよかった。結局、俺がいない方がもっとスムーズに話し合いが進んでいたんじゃないかとも考えてしまう。

 そんなことを考えていると、俺は校舎中に危険な気配が包み込むのを感じ取る。

 なんだこの感じは? ギャスパーの神器が発動するときの気配と……いや、この気配はそれ以上の……。

 そう思った瞬間、感じ取った危険ななにかが俺に襲いかかってきた。

 

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