俺の説明が終わった後、静まり返っていた部屋の中でグレモリー先輩が口を開いた。
「なるほど、まさか超能力者とはね。テレビとかで見たことはあるけど、実際に見たのは初めてだわ」
「俺だって、本とかで悪魔は見たことありましたけど、実際の悪魔を会ったのは初めてですよ」
「フフ、それもそうね」
グレモリー先輩の言葉に笑いながら冗談で返すと、グレモリー先輩も少し笑う。
他の人の様子も見てみると、全員驚いた表情から元の表情に戻っていた。
しかし、ただ一人イッセーだけが、険しい顔で俺を見ている。
「どうしたんだ、イッセー? まだ説明が足りないのか?」
「ああ、おまえが超能力者ってのは正直驚いた。だけどな、おまえは一番重要なことを話してない」
一番重要なこと? これ以上に話すことはあったか?
「わるい、イッセー。おまえはなにを聞きたいんだ?」
少し考えたがわからないので、直接イッセーに聞いてみた。
「楠緒。おまえさっき言った超能力以外にもまだ色々使えるのか?」
ああ、そういうことか。確かにそれは言ってなかったな。
別に言う必要はないと思ってたんだけど、ここまで話したんなら言ってもいいか。
「ああ、多分おまえが超能力と聞いて思い浮かべることは全部できると思うぞ」
「それじぁ! 透視能力とかも使えるんだよな!!」
「……はぁ?」
と、透視能力だと?
「あ、ああ、使えるけど……」
そこまで言って俺は気が付いた。
こ、こいつ、もしかして?
「なんだと! そ、それじゃあ、もしかしてその透視能力でふ、服とかを透視して、女性の裸を眺めれるのか!!」
や、やっぱりか、どうせそんなことだと思ったよ!
というか、おい、そこの後輩! 距離をとるな! そんな風に体を隠して、ゴミを見るような目俺をで見るな!
「……あのな、イッセー。なんか勘違いをしてるようだから言っておくが、透視能力と言っても、おまえの妄想しているモノとは大分違うと思うぞ?」
「はぁ? どういうことだよ!」
テンションが上がっているイッセーが俺に掴みかかる勢いで聞いてくる。
「透視能力と言っても自分の好きなようにモノを好きなように透視できるんじゃなくてだな……例えば、ここでおまえに対して透視能力を使うとするだろ?」
「お、おい! 止めろよ! 気持ち悪い!」
そう言ってイッセーは俺から体を隠すように背を向けた。
「体を隠すな! 別に本当に使うわけじゃねぇよ!」
俺の言葉を聞いて、体を隠していたイッセーはこちらを向きなおす。
「たくっ、それでここでおまえに対して透視能力を使うと、服だけじゃなくて、皮膚とか臓器とかも全部透視して、おまえの骨格くらいしか残らないんだよ」
「……えっ!? そ、そんな……」
俺の説明を聞いて、イッセーの表情が青ざめる。
てか、なんか凄いショックを受けてるみたいなんだが……まあ、イッセーのことだから、透視能力があれば好きなモノを覗き放題とでも思っていたんだろう。
「わかったか。それと、人だけじゃなく、周りの風景とかも透視するから、骸骨が空中浮遊して歩く光景が見れたりするぞ」
「あ……あ……」
どうやら相当ショックを受けたみたいだな。
……少し、そっとしておくか。
「便利な力だと思ったけど、そうでもないみたいね」
イッセーとの話を終えた後、話を聞いていたのかグレモリー先輩がそう話しかけてきた。
「そうですね。力のオン・オフはなんとか出来るようになりましたけど、力を使った後の負担が酷いですから」
「負担って、もしかしてあのときの鼻血もそうなの?」
「……ええ、あのときは鼻血とか頭痛とか高熱だけで済んだけど、親父が言うには、下手をすれば過負荷が掛かりすぎて脳が潰れる可能性もあるらしいですし」
実際に、この力を使えるようになったばかりのときは、力を止めることができなくて何度か死にかけてるしな。
「そう。大変なのね」
「まあ、超能力を使わなかったらなんの問題もないんで、心配することはありませんよ」
「そうね。でも、それだと少しまずいわね……」
そう言うと、グレモリー先輩は顎に手を添えてなにかを考え始めた。
「まずいって、どういうことですか?」
「ええ、あなたは堕天使に顔を見られているわ。もしかしたら、神器所有者と疑われて命を狙われる可能性があるわ」
グレモリー先輩がこの先起こるであろう可能性を挙げる。
確かに、天野夕麻が俺も神器所有者なのか? みたいなことを言っていたような気がする。
しかも、直接邪魔をしてるわけだし、命を狙われてもおかしくないか。
「そうですね。あまり使いたくないですけど、この力に頼ることになるかもしれませんね」
「……そうね。けど、その力を使うのは最終手段にしなさい。もし、逃げ切れても、それが原因で死んでしまうこともあるんだから」
「そうですけど、正直狙われたら超能力を使わないと逃げ切れる自信はありませんよ」
グレモリー先輩の言葉に俺は正直な意見を言う。
あのときは不意を突いたのもあるし、実際だとどうなるのかは分からない。
「そうね。でも、私たちもいつもあなたに付いているわけにもいかないし……そうだわ。あなたオカルト研究部に入部しなさい」
「はぁ? どうしてですか?」
「保険よ。身近にいる方が、もしなにか会ったときに対処しやすいでしょ」
「そんなもんですかねぇ? まあ、別にいいですけど」
別にどの部活に入っているわけでもないので、グレモリー先輩の提案を軽い気持ちで了承する。
「それじゃあ、これからよろしくね。私のことはグレモリー先輩じゃなくて部長と呼びなさい」
どうやら、その呼び方になにかこだわりがあるのか、部長と呼ぶように強要される。
まあ別に断る理由もないし、嫌な呼び方でもないから別にいいか。
「わかりました。それじゃあ、部長。これからよろしくお願いします」
「ええ、それじゃあ今日はもう好きにしてもらっていいわよ」
「それじゃあ、今日は帰ります。さっきから少し頭が痛いんで……」
サイコメトリー、テレパシー、テレキネシスと力を使ったから、その反動でさっき頭痛に襲われている。
まあ、この程度の痛みなら慣れてるし、寝れば治るか。
「大丈夫なの? よかったら、誰かに送らせましょうか?」
「いや、そんなことしてもらうほど酷くないんで、それじゃ」
俺はグレモリー先輩の提案を断ると、すぐに立って部室から出た。
「あぁ~。あたまいてぇ……」
部室を出た後、無事に家に帰ることのできた俺は制服のままベットの上に倒れる。
……それにしても今日は色々あったな。
俺は頭痛がする頭を働かせて、今日あったことを整理する。
……まさか、この力を他人に話すことになるなんて。
俺の力のことは、俺と親父しか知らない秘密だった。
そして、この力のことは誰にも言わず、絶対に使わないことが、俺と親父の約束だった。
親父がこの力のことを隠した理由も理解している。
普通の子供が、こんな力を持っていることが世間に知られたら、どんな反応をするのか簡単に予想できる。
そんな世間から、俺を守るためにこの力を隠したことは理解している。
しかし、俺は初めてその約束を破った。
きっかけはあの日の予知夢だった。
俺が予知夢を見たのは、あれで二度目。
一度目は、超能力を目覚めたあの日。
あの日の俺はその夢が予知夢だということに気が付かなかった。
そして、あの日、俺はその夢の通り、大切なモノを失った。
あの日、突然目覚めたこの力。
俺にとって、この力とはマイナスのモノでしかなかった。
そして、今回の予知夢もそうだ。
今回は昔と違い、予知夢のことも超能力のことも知っていた。
そして、今度は大切なモノを失わないため、俺は親父との約束を破ってこの力を使った。
だけど、その行動は無意味に終わってしまった。
結局、イッセーは夢と同じように天野夕麻に殺されてしまった。
部長のおかげで、イッセーは助かったとはいえ、それとこれは別問題だ。
これ以上、俺は自分の目の前で大切なモノを失いたくない。
もう二度と大切なモノを失わないための力になるなら、俺はこの力のことをもっと知る必要があると考えた。
なんでこんな力に目覚めてしまったのか……その意味を……。
今思えば、部長達に超能力のことを話したことも、普通の人間じゃなく、超能力者として生きる決意だったのかもな。
「……なぁ……“Q”」
俺が思い浮かべたのは、最近夢の中に出てくるQと名乗る謎の声。
あの声が、なにを言おうとしているのか、まるでわからない。
しかし、俺はあのQと名乗る声がなにを言おうとしているのか、そのことが妙に気になった。
…………
………
……
…
≪ピィー……ガガガッ……SPI・・・・・・ビィー!! ガガッ≫