ハイスクールD×D ~PSIを持った人間~   作:てんとう

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Life.7 足手まとい

 

 放課後、イッセーが学園を休んだので俺は一人で部室に入った。

 すると、なぜか部室の中で部長と休んでいたはずのイッセーが睨みあっていた。

 この状況がどういうことなのか理解できないいので、俺は二人の様子をソファーに座って見ている木場の近くに小声で訊ねる。

 

「どういう状況なんだこれは?」

 

「佐伯君。実はね……」

 

 そうして俺は木場から、この状況になった経緯を聞く。

 まず、今日イッセーが学園を休んだ理由は、昨日の仕事であったアクシデントが原因らしい。

 そして、家で休んでいたイッセーは昼間に少し外出をして、そこで先日出会ったシスター、アーシアと再会。

 アーシアと飯を食べたり、遊んだり、色々話した後で、友達になったらしい。

 そのすぐあと、公園でイッセーを襲った堕天使。天野夕麻が現れてアーシアを連れて行かれてしまう。

 イッセーはアーシアを助けるために、教会に行こうと部長に提案したのがこうなった原因らしい。

 

「なるほどな……それは難しいな」

 

「そうだね」

 

 イッセーのアーシアを助けたいという気持ちもわかるし、部長のイッセーのことを心配する気持ちもわかる。

 そう思いながらも、俺は木場と一緒に二人の様子を見る。

 そうしていると、姫島先輩が部長に近づき、耳打ちをする。

 どうしたんだ? 姫島先輩の様子が少しおかしいく感じた。

 そして、姫島先輩に耳打ちされている部長もいっそう顔を険しくなった。

 部長はイッセーの方をちらりと一目見たあと、今度は部室に居る全員を見渡すように言った。

 

「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外に出るわね」

 

 その言葉を聞いて、イッセーが部長に詰め寄ろうとする。

 

「ぶ、部長、まだ話は――」

 

 しかし、イッセーの言葉は口元に置かれた部長の人差し指によって止められる。

 

「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ」

 

 部長はそう言うとイッセーに対して、色々は話を始めた。

 一つはイッセーの『兵士』の特性『プロモーション』。

 部長が『敵の陣地』と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れたとき、『王』以外の駒に変ずることのできる力。

 そして、二つ目はイッセーの身に宿る神器について。

 想いの力が神器を動かす……。

 神器を扱うのに、重要な気持ちなのだろう。

 そして、最後に伝えたのはチェスの基本的なルール。

 たとえ『兵士』であっても『王』を取れる。

 そしてイッセーは必ず強くなれるとを伝えた。

 わざわざ、このタイミングでイッセーにこの話をするのは、なにかあると感じた俺は隣の木場に話しかける。

 

「どう思う木場? さっきの部長の話」

 

「部長にも考えがあるみたいだよ」

 

 俺の言葉に笑顔で木場が答える。

 だろうな、イッセーはなにも気付いていないみたいだが、俺は薄々だが部長の真意に気がついた。

 そうしている間に、部長と姫島先輩は共に魔方陣でどこかへジャンプしてしまった。

 イッセーは大きく息を吐くと、なにかを決意したような顔で部室を出るように動き始めた。

 俺はそんな部室を出ようとするイッセーの前に立ち塞がる。

 

「アーシアを助けに行くのか? イッセー」

 

「ああ、行く。行かないといけない。アーシアは友達だからな。俺が助けなくちゃならない」

 

「わかってるだろ。相手は悪魔祓いや堕天使といった、いわば悪魔殺しのプロだ。そんな奴らの本拠地に入ったらどうなるか……殺されるぞ」

 

 俺はイッセーの目を見て本気で言う。

 いくら、神器って行った特別なモノを持っていても、悪魔になりたてで、今まで普通の人間だったイッセーが無事で済むわけがない。

 

「それでも行く。たとえ死んでもアーシアだけは逃がす」

 

 そう言うイッセーの目からは一切の迷いが見えず、本気で言っていることが伝わってくる。

 本当に友達ならここはぶん殴っても止めないといけないんだろうな……だけど俺は……。

 

「……そうか。それじゃあ行って来い。それで必ずアーシアを助けてこい!」

 

 俺はイッセーの顔の前に拳を差し出す。

 

「おう!」

 

 イッセーは俺の拳と自分の拳を合わせると、俺の隣を通って部室の扉を開ける。

 

「イッセー、絶対に死ぬんじゃねぇぞ」

 

 俺は部室を出て行くイッセーの背に向かって、俺の本当の気持ちを伝える。

 

「……ああ」

 

 そう返事をするイッセーの声からは、今までに感じたことのない気合が感じる。

 俺はそのまま部室を出て行くイッセーを見送ると、さっきまで座っていたソファーに座る。

 

「いいのかい? 兵藤君を止めないで」

 

 木場が真剣な表情で俺に話しかける。

 

「ああなったあいつはどうやっても止められないさ」

 

 俺は少し苦笑いをしながらそう言う。

 そして、俺は真剣な表情を作ると、木場と塔城の二人を見つめる。

 

「二人とも頼む。俺じゃあ、あいつの足手まといにしかならない。だから!」

 

 そう言って俺は二人に頭を下げる。

 情けないことはわかっているが、俺にはこうすることしかできない。

 

「イッセーのことを助けてやってくれ! 悪魔の契約を結んだっていい! 代価だったらなんでも払う! だから頼む!」

 

 そう言い終わると、部室の中が静寂に包まれる。

 ……駄目か。まあ、仕方ないよな。

 

「……佐伯先輩。頭を上げてください」

 

「そうだよ佐伯君。頭を上げてくれ」

 

 二人の声を聞いて、俺は頭を上げて二人の顔を見る。

 

「兵藤君は僕たちの仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕は兵藤君の意思を尊重したいと思う部分もある。それに、佐伯君も気付いてると思うけど、部長は兵藤君に遠まわしに行ってもいいと認めていた。けど、それは僕たちにフォローをしろという意味合いでもあると思うんだ」

 

 そう言って、木場は微笑むとソファーから立ちあがる。

 

「だから、僕は元々兵藤君のことを助けるつもりだった。だから、契約なんてする必要はないし、代価なんて貰えないよ」

 

「……私たちに任せてください」

 

「二人とも」

 

 そうだったのか、木場たちもイッセーのことを考えてくれてたんだな。

 

「……それと、佐伯先輩」

 

「なんだ塔城?」

 

 塔城は少し不機嫌そうな顔をしながら、俺の正面までやってくる。

 

「……えい」

 

 塔城のチョップが俺の脳天に炸裂する。

 

「ガッ! ッツ~、なにしやがる」

 

 俺はチョップされた場所を擦りながら、塔城を睨む。

 

「……佐伯先輩が悪いんです」

 

「はぁ? なんだよ。俺は本気で頼んだだけだぞ」

 

「佐伯君。僕も小猫ちゃんと同意見だよ」

 

 木場までも少し真剣な表情をして言ってくる。

 なんだ? 俺はなにか気に障るようなことでも言ったのか?

 

「……仲間から代価なんて取りません」

 

「はぁ?」

 

 俺は塔城の言葉を聞いて、気の抜けた声が出る。

 

「仲間って、俺は別に部長の眷属じゃあ……ガッ! だから、なにしやがる!」

 

 俺の話している最中に、再び塔城のチョップが脳天に炸裂する。

 軽くやっているのはわかるが、痛いもんは痛いんだぞ。

 

「……もういいです」

 

 塔城が不機嫌な表情でそっぽを向いてしまった。

 

「それじゃあ、そろそろ行ってくるよ。早く行かないと兵藤君に追いつけなくなるからね」

 

「……いってきます」

 

 木場は少し笑うのを我慢した様子で、塔城は不機嫌そうなまま、それだけ言うと部室を出て行った。

 

「ありがとうな。二人とも」

 

 俺は部室を出て行く二人の背に向かって感謝の言葉を伝えた。

 部室で一人になって少しして、ソファーに座ったままの俺は自分の情けなさに笑いが出てきた。

 

「ハハハ、なにが超能力だ……こんな力!」

 

 こんな力、持ってたところでなんの役にも立たないじゃないか!

 俺は前にある机に思いっきり拳を叩きつける。

 叩きつけた衝撃で拳が痛むが、そんなのどうだっていい。

 俺だって、出来ることならイッセーの力になってやりたいさ。

 だけど、少し使ったぐらいで体にガタがくる力しか持たないただの人間が、足手まとい以外のなんだってんだよ!

 俺はソファーに座ったまま天井を見上げ、あの日から今日までのことを思い出す。

 

「……ありがとうな。塔城」

 

 塔城が俺のことを仲間と言ってくれたときは、本当は嬉しかった。

 

「……木場、イッセーのことは頼んだぞ」

 

 あいつならイッセーの力になってやれる。

 今後、悪魔として活動するイッセーのいい友達になってくれるだろう。

 

「……姫島先輩。いつもお茶ありがとうございました」

 

 姫島先輩の淹れてくれたお茶は本当においしかった。

 

「……部長。あなたには本当に救われました」

 

 あのイッセーが殺されてしまった日、部長が現れなかったら、俺は堕天使に殺されてたし、イッセーが助かることはなかった。

 部長には本当に返しきれないぐらいの恩がある。

 あの日のぬくもりも多分忘れられないだろう。

 

「……イッセー。ハーレムの夢、絶対に叶えろよ」

 

 だから、絶対にアーシアを助けて帰ってこい。

 イッセーを悪魔にしてしまった原因は俺なのに、無責任なことを言ってるのはわかってる。

 だけど、俺はもう、おまえの助けになってやることはおろか、足手まといにしかなれないんだ。

 ……大丈夫さ。おまえなら絶対に夢を叶えられるさ。

 そんなことを考えていると、いつの間にか俺の目から涙が流れ始めていることに気がついた。

 

「ハハハ、俺ってやつは……」

 

 どうやら、このオカルト研究部で過ごした数日は、俺にとってかけがえのないものになってたみたいだな。

 だけど、俺なんて仲間になる資格はないし、多分、今日でこの部室に来る理由はなくなる。

 

「さてと、そろそろ帰るか」

 

 これ以上、この部室に居ても辛くなるだけだ、みんなが帰ってくる前に出よう。

 俺は軽く涙を拭うと、部室をあとにした。

 

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