御狐様の日常話   作:あいざわ

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御狐神宮 零の刻

DMMO-RPG『ユグドラシル<Yggdrasil>』

自由度の高さなどから日本国内で爆発的な人気を誇ったゲームだ。

僕もプレイヤーネーム『キンコ』として12年間ユグドラシルをギルメンと共に楽しんだ。キンコのアバターは少々長めの髪をした男の子の姿で頭からは一対の黄色い狐耳、腰からは9本の尻尾を生やしている。

高校生から中学生の間ほどの容姿をしており、黒と赤を基準とした着物の見た目をした装備をしている。

 

そして拠点となる場所はヘルヘイムにある山。そこにあったダンジョンを攻略しギルド拠点としたのだ。ユグドラシルに似つかなかった和式の建物などはそのまま利用し、一部増築した。

 

『せっかくキンコちゃん狐なんだし、稲荷大社作ってみない?』

 

ギルメンの1人がそう提案することで、どこかみんなの方針は固まったように感じたな…。そこから始まったのは山の大幅改造。山への入口付近には大きな深紅の鳥居を構え、居住スペースや本殿などを整えていく。神社から少し離れたところに寺も作ったんだ。

 

『御狐神宮』ここのダンジョンをクリアした時に決められたギルド名。狐を模したアバターなんて僕しかいないし、小っ恥ずかしかったのを覚えている。でも、みんな楽しんでいた。だから、まだまだ続いていくと思っていたんだ。

 

結局、今回の夏祭りも中止か

 

僕らが今まで必ず夏に開催していた夏祭り、多くのプレイヤーを集め、生産系のギルメン達(とNPC)が出店などを出し、人間、異形種混ざって夜を楽しむのが目的だった。

当然人が集まるから初めは格好の的だったんだけどね。そんな時は仲良くしていただいた他ギルドの方々や、僕のギルドのガチPK勢が総動員され鎮圧されるのだけれど…。

 

懐かしいなぁ、最後くらいお祭り開きたかったんだけど…。

 

山の頂上に構えた本殿の中で、僕はダラダラと寝返りを打つことを繰り返していた。そこで意味もなくフレンド欄をチェックしていると、モモンガという文字に光が宿っていることに気がつく。頬杖を着き、寝転がった状態でモモンガさんを呼び出すことにした。

 

 

「聞こえますか? 僕ですよーキンコです」

 

『キンコさんお久しぶりです。…どうですか?夏祭り、開催出来ました?』

 

「モモンガさん、それわかって言ってません?」

 

 

僕の言葉にモモンガさんは少し元気を無くしてしまう。別に悪気がないことはわかっている。彼も恐らくこの最期にギルメンが全くと言っていいほど顔を出さなかったことにショックを受けている。

 

 

『今からナザリックに来ませんか? 久々にあなたの好きだったNPC達や装飾見ていきません?』

 

「それはすごく魅力的…でもお断りしときます。 ここ2年くらい僕のギルメンは誰もインしないし、僕までここから消えたらNPC(僕の子達)を見捨てた気になってしまう」

 

『…あなたらしいですね』

 

僕らは伝言(メッセージ)を使い互いの状況を報告し合う。ここ2年くらい夏祭りが開催できていないことが残念だー、とか、お互い維持費を稼ぐのに一苦労だったとか。

全くなんで急にみんなインしなくなったのだろうか。意図せず漏れたその言葉がモモンガさんにはちゃんと聞こえ、互いにため息を着く。

 

『あと、5分ですか…』

 

ゆっくりと呟いたモモンガさんの言葉はやはり悲しみ、そして疲れを含んでいる。

 

「どうします?このまま話し続けますか?」

 

『いえ、俺は少し玉座で1人静かに終わろうと思います』

 

モモンガさんの言葉に「わかりました。おやすみなさい」と返すと『おやすみなさい』と返ってくる。

 

会話が終わり本当の静寂が僕を襲う。その静寂に耐えきれず、立ち上がり、本殿から出る。そこにはただただ走り回って遊んでいる子供の見た目のNPC達がいる。白い狐の面を被り、わらじを履き両手を広げ走り回る。小狐である彼らは命令がない限り、どこであろうと遊ぶように設定されている。

 

ただ、声も音もない。

 

表情の変わらない狐面の子供たち。

 

 

「あ、もう時間…」

 

そう呟いた瞬間、僕の視界を埋め尽くすほどの狐面が飛びかかってきた。

 

 

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