うちの姉、Vtuberやってたってよ。   作:エクソダス

3 / 3
よろしければ感想、評価お願いします!


最初の歌枠でコラボってマ?

 それから月日は流れ、姉がVtuberの僕にある朝の習慣ができた。

 昔はそんな習慣になど興味すらなかったが、そういうわけにもいかなくなった。

 

 

「……」

 

 

 僕は早朝に目覚め、道具を持って外に出る。

 

 

「今日もやるか」

 

 

 今日もやる、これができなければ姉のVtuberの活動を邪魔しかねない。

 それほど重大なことに気が付いてしまったのだ。それをできなかったせいで、僕は、前回姉の配信に迷惑をかけてしまった。

 

 

「……」

 

 

 あんな思いは二度とごめんだ。

 肌寒い風が容赦なく僕の体を突き抜ける。

 正直寒い、やる気は全く起きない。でもやらなきゃいけない。

 

 

 僕はその道具を駆使し………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっほっほっほっほっ」

 

 

 縄 跳 び を 始 め た 。

 ピョンピョンと飛びながら縄を回避し、風を巻き起こし、地面をぺちんと打つ縄の音を聞きながら、僕は体が火照るのを感じた。

 

 

「……なにやってんの?」

 

 

 不意に、自分の姉が寝間着姿でやってくる。しまった、起こしてしまっただろうか。

 

 

「あ…、ごめんねえね。おこした?」

「いや、さっきから起きてたけど。なんで縄跳びなんてし始めたのよ」

 

 

 姉は心底不思議そうに僕の目を見る。

 なんで、と言われても…。常識的に考えた結果なのだが……。

 

 

「えっと。前に、コードに足ひっかけてころんだから…」

「……えぇ」

「転ぶ前にジャンプできたらさ。電源切れることないでしょ?」

「……そう……かしら?」

「だから。いつ引っかかってもいいように。飛ぶ練習してるの」

 

 

 僕はフンスっと無意識にどや顔をする。ちょっとだけほめてほしいは内緒。

 だが、そんな僕のどや顔とは反対に姉はなんとも言えない苦笑いをしていた。

 

 

「ねえね?なに?」

「えっと……、『引っかからないように注意する』が先じゃない?」

「あ…そっか」

 

 

 なるほど、そっちのほうが楽か、僕はポンっと手を叩いて納得する。さす姉。

 

 

「ふふっ……相変わらずバカ正直ね」

「んにゅ?それ貶してる?褒めてる?」

「どっちも、さすがうちの弟」

 

 

 姉はからからと笑って僕の頭をよしよしと撫でる。いつものことだが、妙に子供扱いされてる気がする。

 

 

「むぅ……」

「ふふっ…、あ、そうだ。今日も配信手伝ってくれない?」

「?」

 

 

 姉が突然そんなことを言ってきた。

 昨日配信に入ったばかりなので、できれば遠慮したのだが…。

 

 

「ちょっとね、あんたの歌を聞いてみたいって人が大勢いるのよ」

「歌?」

 

 

 そういえば歌姫という設定だったな。

 確かに僕の姉は歌がとても上手だ。僕でも聞きほれてしまいそうなほど…。

 

 

「ねえねが歌姫だから、僕にも歌ってほしいって感じ?」

「ええ、そんな感じ」

 

 

 僕は少し考えこむ。

 まいったな、僕は姉ほど歌は上手くない。そりゃあカラオケとかには行くし、友達には『うまい!』って言われるけど、少しだけ心配だ。

 

 

「うーん……」

「……ダメ?」

「ぅ…」

 

 

 ねえね、その目は卑怯だと思う。そんなうるうるした眼で見ないでほしい。

 僕はため息をついて観念する。

 

 

「……わかったよ。歌えばいいんでしょ?」

「ふふっ。ありがと」

 

 

 まるで『計画通り』とでも言わんばかりの表情をしてから、姉は優しい笑みを僕に向けた。

 姉貴…、卑怯。

 

 

「でも、そんなに多くは歌わないからね?」

「わかってるって。それじゃ。いこ」

「うん」

 

 

 僕は姉に言われるがまま、そのまま縄跳びを置いて姉の部屋に向かった。

 最近姉の部屋によく行く気がするが…、気にしたら負けかなと思うので気にしないことにした。

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

 

コメント

 

『待機なうであります!』 

『わくてかワクテカ』

『たのしみー』

『歌姫はやくー!』

 

 

 そんなコメントを流し見しながら、僕は姉の指示に従い。開始ボタンを押す。

 

 

(あんたが挨拶しなさい)

(えぇ………)

(いいから……)

 

 

 突然姉に挨拶をしろという無茶ぶりをかまされたんですがそれは………。

 仕方ないといった感じに、僕は口を開く。

 

 

「……えっと。皆様集まっていらっしゃるでしょうか?歌姫の…弟です」

 

 

 

コメント

 

『きたあああああああああ!!!』

『おっ!今日もいるやん!』

『ミウ弟君ktkr!』

『弟君歌ってくれんのかな?』

 

 

 やっぱり、ちょっとだけコメントを見てるとうれしい気持ちになる。

 僕は今、妙に気持ち悪い笑顔を浮かべていることであろう。顔出しなくてよかった。

 

 

(私、ここで見てるから。姉が来ないから時間稼ぎって感じで歌い始めて)

(ええぇ………)

 

 

 僕は少し動揺した。

 てっきり姉と一緒に歌う、そんな感じだと思ってたからだ。

 まあ、姉だけだと思えば気楽か。

 

 

「えっと、姉がえっと…もうちょっと来るのに時間がかかるみたいなので、僕が代わりに少し歌いたいと思います」

 

 

 

コメント

 

『おおおおおおおお!』

「マジか!マジすか!』

『これは期待!果たして下手か上手いか…』

『ゲームの腕があれだったからな、どうなるか』

『弟くんの声、やったぜ』

 

 そんなコメントを見ながら、本気で歌おうとする前にまずのどを慣らしたい。

 

 

「えっと、とりあえずあの……その、できれば何か歌ってほしい曲を聞く前に、のどを鳴らしたいんですけど……いいですか?」

 

 

 

コメント

 

『おっけー』

『おけまる』

『理解した』

『がんばれー!』

 

 

 取り合えず許可は貰った。慣らしに何歌おうかな……。うーん。

 

 

 

 

 

「えっと、取り合えずならしで『○表ラバーズ』っていう曲行きます」

 

(え)

 

 

コメント

 

『ふぁっ!?!?』

『慣らしに選ぶ選曲じゃねぇwww』

『選曲が鬼すぎるwwww」

『これは期待』

 

 

 見てみるとコメントも姉すらも驚いているが、僕は関係なく○表ラバーズを流し始める。

 

 レースのように始まったその曲は、とても爽快で聞いているだけで気分が踊りそうな曲だ。

 その音を堪能しながら、僕は歌い始めた。

 

 

「───────────♪」

 

 

 この時ばかりは姉の眼もコメントも気にせずに、喉を慣らすために声を上げた。

 この曲は早いので舌の回りをよくするのに最適な曲だと僕は思う。基本的にカラオケで歌う時はこの曲を歌う。

 

 

「───♪ふぅ」

 

(ぉぉ……)

 

 

 姉に歌うのを見せるのは初めてだったが、姉は小さく拍手をしてくれた。ぼくは笑顔で返す。

 

 

「えと…ありがとうございました」

 

 

コメント

 

『8888888』

『よかった!!マジでよかった』

『すばらしい!』

『予想の数倍うまくて草』

 

 

 予想以上に好評だったようだ。僕は安堵の息を漏らす。

 

 

「えっと…、何か歌ってほしい曲、ありますか…?」

 

 

 こういう時は、基本リクエストを聞くべきだと思う。歌いたい曲はない。

 

 

コメント

 

『○INGうたって!』

『RAGE ○F DUST歌って!!』

『ロ○!!!』

『や ら な い ○』

『おいバカやめろ』

 

 

 最後にとてもアウトな曲が目に入った気がするけど、僕は気にしない。

 それにしても、参った。かなり乗りの良い曲があるが、いまいちピンと来ないというか。

 

 

「う-ん……そうだね……」

 

 

 僕がどうしようか頭を抱えて唸っていたその時。

 突然、PCの何かがなる。

 

 

「?」

 

 

 見たところ、通話系のソフトが作動している。相手は誰だ?

 

 

 

コメント

 

『どうした弟君』

『トラブったか?』

『ミウちゃん来たかな』

 

 

 コメントを見ながらも、僕は姉に助けを求める。

 

 

(誰って書いてある?)

(え、えっと………テオって……)

(…つなげていいわよ)

(う、うん)

 

 

 僕は一度PCのウィルスバスター系が起動しているのを確認してから、『テオ』という子の着信をつなげた。

 

 

「も、もしもし…?」

【もしもし、つなげてくれてありがとう。ミウの弟さん】

「あ、えっと…はい」

【まずは自己紹介をするよ。僕はテオ。君のお姉さんのVtuber友達さ】

「ど、どうも、いつも姉がお世話になってます」

 

 

 

コメント

 

『おおおおおおぅ!!!』

『テオっちきたあああああああぁぁ!!!』

『やっば!神回不可避www』

『切り抜きさんきたいしてまっせwww』

 

 

 僕はそんなコメントを横目で見ながら思い出した。

 確かテオという人は見たことがある…。歌枠をよくしている人だ。普通の人なら興奮するんだろうけど、僕はVtuberを知ってから日が浅い。実感がわかない。

 

 

「えっと…ご用件は」

【なに、君今。歌のリクエストをしているだろう?どうだい?ぼくとデュエットでチューリングラ○でもいかがかな?】

「……チューリングラ○ですか。まあ歌えますけど」

 

 

 僕は助けを求めるように、姉のほうを流し見る。

 

 

(ぐっ)

 

 わりとノリノリのようだ。親指をグッと立てている。

 

 

「えっと……皆様。いいですか?」

 

 

 とりあえず、ダメもとで視聴者様方に助けを求める。本当にダメ元にもほどがあるのだが…。

 

 

コメント

 

『いいぞぉいいぞぉ!!』

『やりますねぇ』

『アー!』

『みんな「がんばって」っていっています(ホモは帰れ)』

 

 

「とのことだ。ではやろうか」

 

 

 まるでいたずらっ子のような声のトーンで、テオはそういった。まあ、皆様が良いなら別に良いけど……。

 

 

「良いですよ。お付き合いしましょう」

 

 

 しかし、何となく僕も楽しかったから、まんざらでもなかった。

 

 

 

 

───

 

──

 

 

【うん、デュエットに付き合ってくれてありがとう。とつぜんお邪魔したね】

「あ、いえ。凸ありがとうございました」

 

 

 そういって、僕はお礼を言う。そしてテオは優しく微笑んでくれた。

 

 

 

コメント

 

『888888』

『よきでした!!』

『今日マジで神回不可避www』

 

 

 どうやら視聴者の皆様も満足してくれたようだ。僕は苦笑いをする。

 

 

【ふふっ、君は素直でいい子だね。どうかな?今度私とディナーでも──】

「ちょっとテオぉおおおおおお!!!うちの弟を誑かそうとしてんじゃないわよ!!」

「ね、ねえね!」

 

 

 突然大声を張り上げる姉に、僕は驚いてついいつもの呼び方で読んでしまった。

 

 

【おや、やっぱり見てたかいミウ。いいじゃないか、減るものでもないんだし】

「良くないわよ!マジでやめなさい!」

「ね。ねえね、どうどう」

 

 

 僕はどうにか姉を落ち着けようと必死だ。

 

 

 

コメント

 

『なにこれ、3角関係?』

『これは恋の予感』

『今回マジで神回すぎだろ』

 

 

 くそ…、この視聴者…。他人事だと思って。あなたたちが今とても憎らしい!

 

 

「うちの弟とったら、本気で許さないから」

「にゅっ……!」

 

 僕はいきなり姉に抱きしめられ、声がこもってしまう。というか、抱きしめられるのは普通だけど…、今この状況で抱きしめられるのは…なんか恥ずかしい。

 

 

「ね、ねえね……急に抱きしめないで」

「あ、ごめん」

【思った以上に仲がいいんだね。楽しそうで何よりだ】

 

 

 そういって、くすくすとテオはいたずらっ子のように笑った。とても楽しそうで、僕もつられて笑ってしまう。

 

「とりあえず…えっと…僕はもう出かけるから…あとはごゆっくり」

「あ、うん」

 

 そういって、僕はその場を去ろうとする。

 Vtuber二人がいるのだ、ここに僕がいるのはお角違いというものだろう。

 

 

「では、テオさん。ごゆっくり」

【ふふっ。君より先に、ミウを僕のものにするのもありか──】

「やってみろ。それをした瞬間僕はお前を殺す」

 

 

 ぶちっ!!!

 テオさんが変なジョークを言うから、また強引に電源を切ってしまった。ごめんねPC

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【恐怖を感じた】

「でしょうね。前にうちの弟はヤンデレだって言ったわよね?」

 

『草』

『くさ』

『電源切りが伝統芸になりそう(小並感)』

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。