とある陰陽師の呪術廻戦   作:沼のプーさん

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初投稿です。生暖かい目でお見守りください。




Episode1.邂逅

 

 

 意識が混濁している。

 あなたの生得領域の中に齢十にも満たないであろう少年が迷い込んだ。悪意や不安のような負の感情は一切見えず純粋無垢な少年そのもの。

 どこから来たのか問うても分からないの一点張りで名は土御門結叶(つちみかど ゆうと)というらしい。土御門という名字からあなたとは血縁関係があるということくらいしか分からない。

 少年から名を聞かれたあなたはこう答えた。

 

安倍晴明(あべのせいめい)

 

 平安時代最強の陰陽師という肩書きはあるものの、現実は幾多の屍の上に立ってようやく成り立っているような重圧しかない肩書きであなたは最強というのを嫌っている。最強というだけで全ての人を救えるわけではないから。

 少年はあなたの名をよく本で見たことがあると言ってくれた。お世辞でもそのような本があるならば見てみたいものだ。自身の名が本に載っているだけで嬉しく思う。

 

 あなたと少年の時間は長くも短いようでかなり話し込んでしまった。偶然か、否か、生得領域という特殊な空間に入り込んでしまった以上は少年も少なからずは呪力を持っているのだろう。せっかくなのであなたは少年に何かしてほしいことはないか、問うてみた。

 

『大好きな幼なじみの女の子がいて、その子が今泣いていて涙を止めてあげたい』

 

 止めてみせよう。

 

 即答だった。普段ならば等価交換という取り引きばかりしていたあなたが心優しい少年に触れたあまり、無償で施しをしようと思った。

 

『安倍晴明さん、ありがとう』

 

 少年はぺこりとあなたに向かって頭を下げると姿形が薄くなり消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かがあなたの身体を嗚咽を漏らしながら揺らしている。

 重い瞼を開けると綺麗な黒髪に整った顔立ちの少女が両目いっぱいに涙を零している姿が目に映った。服の胸の辺りには釘崎野薔薇というネームプレートが付いていた。

 

「結叶……? 生きて……たの?」

 

 状況が上手く掴めないあなたはとりあえず親指を立てておくのと同時に状況を瞬時に整理することにする。

 生得領域に少年が迷い込み、幼なじみの女の子の涙を止めることを約束し、それが引き金となって少年との間に契約が発生しあなたが少年の身体に入り込んでしまった。

 うん、やはり無償での施しなんていうのはするべきではなかったと心の底から思ってしまうあなたは本当の善人でないだろう。

 

「昨日の夜に結叶の家が燃えちゃったって聞いた時……いても立ってもいられなくて……」

 

 あなたは自身の身体を見ると全身に包帯で巻かれ、腕は無数の管に繋がれて痛々しいこと、この上ないような状況である。

 土御門結叶という少年の身体に入り込んでしまったあなたはかつての自身の呪力を感じることが出来るため、自身に刻まれた術式も使えるだろうがいきなり傷がサッパリ綺麗に治っても周りから変な目で見られるので治すのはやめておこう。

 

「結叶のお父さんとお母さんも亡くなっちゃって……村のみんなは気味悪い家が消えたから清々するって言うし」

 

 涙をポロポロと零しながら少女が何も出来ないことにイラつき悲しんでいた。そっとあなたは頭を撫でてみると、うーっと唸りながら瞳を閉じてあなたの胸にゴシゴシと寄り添う。

 純粋無垢な少年と同じように釘崎という少女も心優しいのだろう。他者のために傷付き悲しみ怒るということは決して誰でも出来ることでは無い。

 

「村のみんなはおかしいよ……結叶は優しい、お父さんとお母さんだって」

 

 土御門家の術師であれば火事などすぐに消せたという可能性、非術師ならば難しいが両親ともに亡くし、少年自身もほぼ瀕死だったことを考えると生得領域に入り込んだのは偶然ではなく必然だったかもしれない。

 壁に月日が書かれている紙切れを見るにあなたは千年以上の時を越えてしまった。齢十の少年と交わした約束(呪い)は絶対に守らねばならない。

 

 

 

 コンコン、というノックとともに黒い丸型のサングラスを掛けた白髪の青年が病室に足を踏み入れる。凄まじい呪力の持ち主、さらに六眼というあなたと同じ珍しい眼を持っていることに驚いた。

 

「おっと……ごめんよ。ちょっとタイミングが悪かったかな?」

 

「だ、大丈夫です!! 結叶、早く元気になってね!!」

 

 釘崎少女は白髪の青年と入れ替わるように病室を後にした。

 

「土御門結叶くん、俺は五条悟。単刀直入に聞くけど、今のきみの中身はどっちかな。東北に住んでる土御門家の人間が降霊術である人物を降ろそうとしているっていう情報が入って来てみたら……家が全焼して両親が死亡、そして君だけが生きてる」

 

 サングラスの奥から覗く怒気にも似た感情が瞳を通して感じる。五条悟は少年の両親を殺したのはあなただと疑っているのだろうが濡れ衣である。呪力の痕跡を見てみればすぐに潔白が晴らされるはずだ。

 

「ある人物っていうのは平安時代最強の呪術師、安倍晴明。もし降霊術が成功して、過去の亡霊が受胎しているなら、僕は祓わねばならない」

 

 亡霊という言い草には傷付くものの、あなたにも簡単には祓われたくない理由だってある。

 少年との約束を果たせばあなたは過去、前世に帰れる。だがここで祓われ消されればおそらく未来永劫、無を彷徨うことになってしまう。

 

 あなたは土御門結叶であり、安倍晴明でもある、と答えた。

 

 





最後までお読み下さりありがとうございました( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )
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