現実世界で神々はゲームを始めたようです~プレイヤーランキング一位のラッキーボーイは平穏に暮らしたい~   作:ササキ=サン

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○前話の補足
特に親しくもなく、好き、どころかかなり苦手な部類に入るメンヘラショタを救うために、滅茶苦茶頑張ることができる緑くんなので、その数倍良識的で、好感を持てるセイント幼女のためなら、そりゃまあヤンデレ化するよなって話でした。

まあ、殺す確率が3分の1というかなり高めなやつだったのは、母親との微妙な関係や、本人のたまに激情家になる気質、童子とのこじれた確執など、色々な背景あっての話です。



最近ハーメルンだと低評価が多いこの作品ですが、ぶっちゃけ今一番モチベが高いです。主人公を曇らせる展開が楽しくて仕方がないやつですね。

そして出口も作者の中ではダイスを振り終わっているので、その終わり方が衝撃的過ぎて、私自身クッソ笑いながら、さっさと文章化したくて頑張っています。

まあ、あれです。作者の好き勝手に話を進めるので、ついてきていただければ幸いです。


四十三話 地獄へ

 水曜日。夜。

 

 あなたは階段の傍に立っていた。

 

 あなたのすぐ近くには、階段から転げ落ち、頭を強く打ち付けた(ひじり)の母親がいる。

 

 あなたは母親が死に行く様子をじっと見つめていた。

 

「あ、がっ……」

 

 頭を抑え、悶えながらうめき声をあげる。

 

「い゛……だ……、いだ、い、いや゛だ……」

 

 

 

「し゛に゛だく……な゛い゛……」

 

 

 

 …………。

 

 

 

 ――ッッ!!!

 

 

 

 ――お前にっっ、そんなことを言う資格はないッッッ!!!!

 

 

 

 あなたは激怒した。

 

 魔法によって違う次元にいるため、その声が届くことはない。

 

 それでもあなたは声を張り上げ、母親を弾劾する。

 

 ――お前よりもずっと、あの子は苦しかったはずだッッ!!

 

 ――お腹を空かせて、たった一人で、親に見捨てられたっていう思いで、三日間も苦しんだッッ!!

 

 ――きっと助けてくれるという希望にすがって、助けを待つあの子の苦しみが、お前に分かるのか……!!

 

 ――痛いという気持ちがあるなら、恐怖があるのなら、どうしてあの子を置いていったッッ!!!

 

 ――死にたくないという気持ちがあるなら、どうしてあの子の気持ちが想像できなかったッッッ!!!!

 

 ――お前にそんなことを言う資格はないッッ、死んでしまえ……お前なんか、死んでしまえッッッ!!!!

 

 

 

「あ゛……」

 

「だす゛け、て゛……――くん」

 

 

 

 母親は最期にどこかの誰か、男の名前を呼んで、意識を失った。

 

 警察が慌ててそこに駆けつけ、すぐさま救急車が呼ばれ、母親は病院へ運ばれていった。

 

 あなたは動くことができず、ただずっとそこにたたずんでいた。

 

 呼吸が苦しい。

 

 あなたは、人を殺してしまった。

 

 怒鳴り声をあげ、あなたは生涯で最も怒りを露わにした。

 

 だから。

 

 怒りを吐き出してしまえば、頭は徐々に冷静になっていった。

 

 息が荒れる。汗が噴き出す。

 

 自身の行いを振り返ってしまう。

 

 あなたは。

 

 あなたは、とてつもない罪を背負ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水曜日。深夜。

 

 眠ることができなかったあなたは、椅子に座り、虚ろな目でじっと床を見つめていた。

 

 そんな状態がもう三時間も続いていた。

 

『貴方はあの子のためだと思って、女の子の母親を殺しました』

 

 救恤(チャリティー)はあなたに問いかけた。

 

『ですが、それは本当にあの子のためですか?』

 

 

 

「……」

 

『もし、悪い運命が将来あの子に降りかかるというのなら、貴方が守ればよかったのではないですか』

 

『その選択は、本当にあの子にとって最善の選択だったのですか?』

 

 

 

「……」

 

『貴方は……』

 

『本当はあの子のためではなく、貴方自身が抱いた怒りによって、あの母親を殺したのではないですか』

 

 

 

『もしこのことがあの子に知られたら。その選択をあの子に誇れますか?』

 

『貴方は……自分も、あの子も不幸になる選択をしてしまいました』

 

『緑。あなたは母親を(ゆる)すべきだった』

 

仇討(あだう)ちをしてはいけません』

 

『怒りに囚われないでください。咎人(とがにん)の裁きは、主の怒りに任せなさい』

 

『人を裁いてはいけません。裁く者は、いずれ別の誰かに裁かれることになるでしょう』

 

『……』

 

『しかし、貴方の罪は貴方だけのものではありません。貴方を正しく導くことができなかった、私の責でもあります』

 

 

 

 ――違います。

 

 あなたは救恤(チャリティー)の言葉を強く否定した。

 

 ――違うんです。全て、私のせいなんです。

 

 あなたは拳を強く握った。

 

 あなたの心を表わすように、手の平には爪が食い込み、血が流れ出て、拳を赤く染めた。

 

 ――あなたの言うことは正しい。私は私自身の怒りで、あの母親を殺した。

 

 ――あの人が赦せなかった。あの子にあんな思いをしたあの人が、私には赦せなかった。

 

 ――だから、私が全て悪いんです。

 

 

 

『絶望することはありません、緑。貴方は正しく自分の行いを省みることができる』

 

 救恤(チャリティー)は嬉しそうに、優しくあなたへ語りかける。

 

『罪を犯したとしても、悔い改めることができるならば、主はあなたをお赦しになるでしょう』

 

『このような話があります』

 

『ある人に二人の息子がいました。ある人は、二人の息子に財産を分け与えます』

 

『その後、兄はある人のもとで善く働き、弟はある人のもとを旅立ち、放蕩(ほうとう)の限りを尽くし、与えられた財産を使い潰してしまいました』

 

『弟は非常に貧しく苦しい生活をおくる中、ある日自らの行いを反省して、父のもとへ帰り、自身の罪を懺悔し、心を入れ替えるので、父のもとで働かせて欲しいと嘆願しようとします』

 

『しかし、その自省の言葉を弟が述べるよりも早く。弟が帰ってくるのを見たある人は、弟に走りより、抱きしめました』

 

『その後、ある人は弟に一番良い服を着せ、履き物を与え、盛大に祝宴を開いて歓迎しました』

 

『分かりますか、緑。このある人こそが、我らの主なのです』

 

『主は慈悲深く、寛容であります。悔い改めるものを温かく歓迎します』

 

『案ずることはありません、緑。あなたにはきっと救われる未来が訪れるでしょう』

 

 

 

 ――いいえ。救恤(チャリティー)さん。私に救われる資格はありません。

 

 あなたは昏い瞳のまま、告げる。

 

 ――今更、のうのうと平穏に生きる気はないんです。

 

 あなたの瞳は、既に自らが歩むべき地獄を見定めていた。

 

 ――だから、今までありがとうございました。

 

 パリッ。

 

 黒い罅があなたから放たれた。

 

『いけません、それだけは、それだけは駄目です!』

 

『求めなさい、緑!! さすれば、必ずや貴方に救いが訪れます!』

 

『貴方は救われるべき人間です! 自分を卑下してはいけません、貴方もまた、主の目には尊い存在なのです!』 

 

 

 

 ――ごめんなさい。救恤(チャリティー)さん。

 

 

 

 そして、帳は下ろされた。

 

 自身に繋がる精神干渉を断ち切るのと同じ要領で、あなたは救恤(チャリティー)との繋がりを切除した。

 

 繋がりが断ち切られた今、【異空間収納箱】から彼女の器である剣を取り出さなければ、あなたと彼女が再び繋がることは二度とないだろう。

 

 静寂が支配する部屋の中。あなたは久しぶりに一人になった。

 

 一度目を瞑り、深呼吸をする。

 

 そして、目を開いた。

 

 その瞳には、いかなる希望も輝きも存在しない。

 

 光無き道を。

 

 地獄を歩むことを、あなた自身がそうあるべきだと定めた。

 

 人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。

 

 聖書に載る、神の子の言葉。

 

 あなたはあの母親を裁いた。

 

 だから、今度はあなた自身が、自分を裁くこととなったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『主よ、我らが主よ!』

 

 救恤(チャリティー)は閉じられた空間の中、必死に祈る。

 

『あなたが愛すべき子が今、自らを地獄に投身しようとしている!』

 

『主よ、主よ……!』

 

 涙を流し、自身の翼をはためかせ、必死に祈りを捧げる。

 

『どうか、緑を救ってくださいませ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

 あなたはふと肩に違和感を覚えた。

 

 上着を脱いで右の肩を見てみると、そこには謎の入れ墨のようなものが刻まれていた。

 

「?」

 

 何、これ。

 

 いくつかの方法を使って、その刻印を調査して見るも、それがどういった影響を持つものなのかあなたには分からなかった。

 

 【変身】の魔術を使っても、体からその刻印を消すことはできなかった。

 

 何か悪い影響を受けるものだろうか。あなたは思考するが、その刻印から流れ込んでくる暖かな気配は、何らかの悪影響を及ぼすのではないかというあなたの疑念を拭い去った。

 

 ひとまず、それが自身に関する悪性の影響を持つものではないと判断したあなたは、その刻印は放っておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 旧約聖書にある、とある話のことだ。

 

 昔々、カインとアベルという兄弟がいた。

 

 アベルは牧畜を営み、カインは農耕を営む者だった。

 

 ある日二人は神に捧げ物をする。

 

 結果、捧げ物が受け取られたのはアベルのものだけだった。

 

 これに嫉妬したカインは、アベルを殺してしまう。

 

 その後、神はカインにアベルはどこにいったのかと尋ねた。

 

 カインは知らないと答えた。

 

 それを聞いた神はカインに言いました。

 

 アベルの血を受けた大地が、貴方の所行を語っている。もはやあなたは大地から恵みを受けることできないだろう。

 

 そしてその罪から、カインは住んでいた土地を追放されることになる。

 

 生業である農耕ができなくなり、地上を放浪することになったカインは、このような罪深い私を、地上の誰もが殺そうとするだろうと悲嘆にくれる。

 

 そこで神は、カインを殺すものには七倍の復讐を与えると告げ、カインが誰かに殺されてしまわぬように一つのしるしを与えた。

 

 そうしてカインは神の前から去り、エデンを出て行くことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

<あなたは【父なる神の慈悲(カインのしるし)】を獲得した>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪リザルト≫

 

○救恤の説得(1d2)

結果【2】失敗

 

1.成功 2.失敗

 

○救恤の使用資格(1d2)

結果【2】使えなくした

 

1.まだ使える 2.使えなくした

 

 




今回の話を書いてて、私の脳内のライナー汚染が激しいことを自覚しました。

感想一杯一杯で嬉しいのですが、今日明日は忙しくて少し感想返しが滞ります。感想自体はめっちゃ見てるので、感想をいただけるととても嬉しいです。


○母親の命乞い
主人公曇らせ要員。感受性が高い緑くんに100万ダメージ。

○我に返る主人公
スッキリすると、急にしでかしたことの大きさに動揺しまくるやつ。まるで刑事ドラマの犯人みたいだなぁ……。

○聖書名言シリーズ
・復讐をするな。神の怒りに任せよ。
 隣人愛とか、復讐を厭うキリシタンの精神を表わす分かりやすい聖書の名言。
・人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。
 キリストの名言。作中では自業自得的な扱いになった。

○放蕩息子の例え
神様は改心する人に優しいんやでというお話。キリシタンの間では非常に有名な話。

○救恤の説得
成功すると、救恤の好感度が上がり、メンタルダメージがある程度緩和される反面、主人公の信仰心が強化される。日本人的な価値観においては、宗教への嫌悪感が結構大きいので、ある意味失敗してよかったやつかもしれない。具体的な作者のイメージとしては、成功したら主人公は光堕ちしました。失敗したから闇堕ちしたんですが。
光堕ちか闇堕ちしかないダイスってどうなんですかね、救恤さん.……。

○カインのしるし
殺人して闇堕ちする経緯が神話のカインそっくりだったので導入。深淵魔法級でないと攻撃が通じない上に、攻撃が通じたら通じたで七倍の威力で反撃がくる、控えめにいってチートスキル。
しかし戦闘中にこれが発動すると、現状の主人公だとキレる。そして頑張ってこの加護を破壊しようとする。
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