現実世界で神々はゲームを始めたようです~プレイヤーランキング一位のラッキーボーイは平穏に暮らしたい~   作:ササキ=サン

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 お久しぶりです。続きは面倒だったので書く気はなかったのですが、続きを求める声が意外と多いのと、少し気が向いたので書いてみることにしました。
 仕事をしていますが、現在長期休暇中で暇を満喫していて、新年なので初投稿です。

 1章の終わり方は以前の構想があるので、頑張って書いていきたいなーと思いつつ、忙しい仕事についているので、小説を書くゆとりがあるのは長期休暇シーズンくらいです。一応土日は休みなので、気が向いたら書きます。

 設定を忘れていたらごめんなさい。いくらか読み返しましたが、抜けているところが多々あります。最後に投稿したの、4年近く前です。だいぶ時が経ったんだなぁ……。


四十七話 ソフィアとのコミュ

 夕暮れ。日が暮れる午後5時ごろ。あなたは病院から出ると、夕焼けが沈んでいく外の景色の中、10メートルほど離れた場所に一人の少女の姿を見つけた。

 

「あ、緑」

 

 ソフィアはあなたを見つけると大きく手を振った。その顔に浮かぶ表情は、喜びにあふれていた。

 

 無表情でぼんやりとこちらが出る扉を見つめていたときと、あなたの姿を見つけた瞬間の笑顔。蕾が花開くようなその移り変わりは、人間関係に臆病で猜疑心に満ちたあなたでも否定できないほどに、ソフィアがあなたをどのように思っているのかを物語っていた。

 

 こんな時、どのような返しをすればいいのだろうか。

 

 少なくとも自分は他者を見かけたから手を振って、自分の存在をアピールするような行動はしない。もし自分がそれをやるというのなら、よほど心を預けた親しい人物へ、会えて嬉しい時にするのだと思う。自分とソフィアさんの考え方は違えども、大なり小なり、好意をもとに行われた行動なのだと思う。ならば、相応の反応を示さなくてはならない気がするのだ。

 

 会釈?いや、違う気がする。ラフな仕草に対して、対応が硬すぎる気がする。じゃあ、自分も同じように手を振るか。それは……なんだかすごく恥ずかしい。自分のキャラじゃない。でも、なにか同質のものを返さないと失礼な気がするのだ。

 

 迷った末に、あなたは小さく手を振り返した。それでも恥ずかしくて、顔はうつむきがちである。

 

 たかが一つのコミュニケーションでも、あなたはしどろもどろになっていた。なんせソフィアとの関わりのあり方は、あなたにとって初めてなのだ。無関心などうでもいい相手ではない。あなたの心を救ってくれた恩人だ。失礼ではないか、不快感を与えないか、あなたは最大限に気を遣って彼女と接していた。

 

「可愛いわ!」

 

 走ってきたソフィアがあなたに強く抱きついた。

 

 戸惑い。恐れ。

 

 抱きつかれたあなたは戸惑いながらも、まず初めに自身の体臭が相手に不快感を与えていないか心配になった。それからゾワゾワと、他人から与えられた熱に鳥肌が立った。排他的な防衛反応というよりは、自身のパーソナルスペースに異物が入り込んできた怯えだ。衝動的に魔法を使って異界に逃げ込みそうになる自分を抑える。

 

「ふふ、やっぱりあなたってとてもシャイなのね」

 

 その通りです。こんなコミュ障の反応でも、可愛いと言い切れるのはすごいな。あなたは眼の前にいる女性の懐の深さを実感した。

 

 ――すいません。こういうのには慣れていないんです。

 

「これから慣れていけばいいわ!メリケンでは、ハグはあいさつよ!」

 

 ええ……。内心、あなたはドン引きした。コミュ障のあなたにとっては、あまりにも敷居が高いあいさつだった。

 

「少しレクチャーしてあげる!私とハグをする時は、こうして、腰のあたりに手を回すの」

 

 ソフィアがあなたの手を引いて、自分を包むようにして、腰のあたりにおいた。

 

 ん?なんかこれ際どくないか……?あなたは疑問に思った。ちょっとエイムがズレたらおしりを触ってしまうことになる。異性間ではちょっとまずいのではないだろうか。

 

「それと、他の人とする場合は、相手が手を広げてハグのサインを出さない限りしなくて大丈夫よ。そしてもしすることになった場合は、こんな感じで、肩を包むようにハグするわ」

 

 ソフィアがもう一度あなたの手を引き、次は腰ではなく、肩を覆うように手を動かした。

 

 なるほど……。こっちの方が普通そうだな。あなたはなんとなく直感で思った。大正解である。腰に手を回すタイプのハグは、恋人などの親しい間柄で行うもので、肩に手を回すタイプが一般的な友人に行うものだ。あなたの無知につけ込んだ卑しい策略である。

 

 なんかこれちょっと違くないですか?あなたは抗議の声をあげようと思ったが。

 

「私とする時はこっちよ。間違えないでね」

 

 腕を再び腰の方に動かされる。改めて前を向くと、すごく近い位置にソフィアさんの顔があった。澄んだ瞳があなたの目をまっすぐ見つめていた。怖い。

 

 ――は、はい。

 

 まあ、ソフィアさんはとても良い人なので、間違ったことを教えることはないだろう。あなたはそう思うことにした。

 

 

 

 

 

「ところで、緑」

 

 ――なんですか?

 

 ハグのレクチャーを終え、仕切り直すようにソフィアはあなたに声をかけた。

 

「この後、あなたの家に行っていいかしら?色々と聞きたいことがあるし、あなただって私に聞きたいことがあるでしょう?」

 

 だから、落ち着ける場所で話がしたいわね。

 

 ソフィアの提案に、あなたは非常に悩ましい思いをする。恩人だから、お願いはできるだけ聞くべきだ。しかし、自分の家はあなたにとって聖域だ。自身の最もプライベートで大切な空間に他者が入ってくるのは、すごく嫌だった。

 

 ――盗聴や見られることを防ぐ空間は簡単に作れますが……

 

 しかし、あなたの言葉は遮られた。

 

「ごめんなさい、伝え間違えたわ。あなたの家に入ってみたいの。情報漏洩については二の次よ」

 

 飾り気がなく、とてもストレートな言葉だった。ステレオタイプだが、メリケン人らしい直球さだ。

 

 ――……。

 

 言葉につまるあなただった。プレイヤーに関する情報漏洩を避けるためなど、建前を飾る理屈勝負なら、プレイヤーとしてのステータスを活かしてでもお家行きを回避できたが、感情論になると気弱で押しに弱いあなたでは分が悪い。

 

 星を焼き、世界を壊すほどの力を持っていても、未だにあなたは道徳に縛られている。自分が我慢すればよく、周りの人にさして迷惑をかけないタイプの人からのお願いは中々断れないし、ましてや恩がある相手のお願いはなおさら断れない。心の中で嫌だと叫びながらも、あなたはソフィアの願いに頷くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

「ここがあなたのハウスね!」

 

 嫌だー!!家の中に嬉々として入るソフィアを見ながら、あなたは内心で叫んだ。

 

「ふふ……キッチンは大丈夫そうね。招待してくれたお礼よ!マルティネスのフルコースをあなたにごちそうしてあげるわ!」

 

 ソフィアはあなたの家のキッチンを見て、料理ができる設備があることを十分に確認し、あなたと同じ【異空間収納箱】から食材を取り出し始めた。

 

 確かに彼女が確認した通り、この家にはちゃんとした調理器具が存在する。しかしながらあなたはそれをほとんど使わない。あなたの得意料理が卵かけご飯で、外食をこよなく愛する食生活を見ればそれは分かるだろう。

 

 だけど、ソフィアが取り出した調理器具は定期的に手入れされており、いつでもちゃんと使える状態で置かれていた。あなたが定期的に手入れをしていた証である。

 

 それはなんというか、未練の象徴だった。それを使っていた人はもういないのに、自分が使うわけでもないのに、意味もなくそれを手入れし続けている。

 

 だから、ソフィアがそれを使っていることに対して、あなたは反射的に抗議の声をあげようとして……止まった。

 

 ――あ。

 

 思わず漏れ出た声。ソフィアが楽しげに調理器具を出しながら手際よく料理を始める姿に、忘れていた過去を思い出した。

 

 そうだ。お母さんは……こんな思いを込めながら、いつも料理を作っていた。

 

 すごく当たり前の光景だったのに、どうして忘れていたんだろう。

 

 あなたの他者の感情を映す瞳は、ひどく懐かしい光景を捉えた。あなたはひどく動揺した内心を隠すように、少し唇を噛んだ。ステータスがあって助かった。嬉しいのか悲しいのか自分でも判別がつかないが、こらえる力がなければ、涙が出そうだった。

 

 あなたはテレビのリモコンを手に取り、沈黙をごまかすようにテレビの電源を入れた。番組は何でもいいので、チャンネルは動かさなかった。グルメ番組がやっていた。

 

 あなたは二人がけの小さめのソファーに座り、膝を抱えてぼんやりとテレビを見た。視界の端には、ソフィアの料理している姿が写っていた。

 

 前は、キッチンに背を向けるようにソファーが配置されていたんだけど、料理をしているお母さんの姿が見えなくて寂しいから、配置を変えたんだっけ。昔のことを思い出しながら、膝を抱き寄せる手に力をこめた。そうしていると少し落ち着いた。

 

 ぼんやりと、あなたは昔のことを思い出していた。

 

「緑」

 

 いくらか時が経ったのだろう。あなたはソフィアに呼ばれたので、いつの間にか近くにいたソフィアに焦点を合わせる。

 

 ――??

 

「……」

 

 謎に無言で見つめ合っていた。

 

 ぎゅっ。

 

 あなたはソフィアに抱きしめられた。

 

 ――なんで……?

 

 あなたは戸惑いの声をあげる。

 

 ぽんぽんと背中を軽く叩かれ、さすられる。まるで泣いている子どもをあやすようだった。

 

「あなたはもっと誰かに甘えてもいいのよ」

 

 そんなに弱くはないですよ。

 

 もしくは、そんな相手はもういないんですよ。

 

 出かかった言葉を飲み込む。反射的な発言には本音が混じる。深読みされて、心配をかけるのも面倒だった。

 

 ――ご気遣いいただきありがとうございます。

 

「0点」

 

 そんなあなたの言葉に、ソフィアは不満げな顔をした。

 

 

 

 

 

 ソフィアが作ってくれた料理はとても美味しかった。メリケンの家庭料理は初めてだったが、量が多い以外は普通に美味しい料理だった。あなたは美味しいという感想と、作ってくれた感謝を自分なりに精一杯言葉にして伝えた。ソフィアはそんなあなたの様子をニコニコと見つめていた。

 

 ふと、考えた。

 

 こうしてもっと上手に、丁寧に思いを伝え、お母さんを支えることができていれば、あの人は死なずに済んだのではないか。

 

 ギシリ。

 

 思い至って、心が軋む音がした。

 




 おかしい。この作品初のいちゃらぶを書いてやるぜーと思いつつ、順調にいちゃいちゃさせていたら主人公が曇りだしたぞ……(困惑)。

 トラウマを一つ払拭したら埋まっていた地雷も目を覚ますとは……。まあ、どうして愛が見えなかったのかといったら、それに関連する人物の思い出とともに封印していたというやつなのでしょう。

 さて、このままソフィアちゃんが帰ったら主人公のメンタルがやばそうですが、久しぶりにダイスでも振りましょうか……。結果次第で、有能カウンセラーソフィアちゃんが爆誕します。
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