てことで調子に乗って2話目書きました。どうぞ。
追憶編Ⅰ
☆
―――2092年8月6日
カタカタカタ、とキーボードを叩く音が室内に響いている。外から入り込んだ太陽光が机の表面に反射して眩しい。
世間では夏休みだというのに、私はいつものように魔法式をいじっていた。というか、今日に限らず夏休み中はずっとこんな感じだ。
え?友達はいないのかって?
考えても見てほしい。放課後毎日のように魔法大学に入り浸っていて友達が増えるとでも?教室で話す友達くらいはいるが、わざわざ休みの日に出かけるほど仲のいい子もいない。
だから、今思えば、私にとって1番仲の良い人は響子さんだったのかもしれない。歳が離れてるから、気軽に友人と呼んでもいいのかわからないけれど。
響子さんといえば、卒業祝いとして渡した『天挺空羅』。
分類としては一応無系統魔法になる。自分のサイオン波を薄く周囲に展開して、周囲のサイオンを探知し、その中から特定の個人を選び出して会話をするいわば通信魔法。
個人個人で保有するサイオンの形質が微妙に異なることを利用した魔法だけど、如何せん使用者のサイオンの量や干渉力によって展開する範囲が変動するため使い勝手はあまり良くない。
それにこの世界ではもちろん通信機器が発達しているため使用する状況は限定されるだろうけど、それにしても有用性は高いと思う。サイオンを周囲に展開するだけの使い方をすれば、知覚魔法としても使えるのだ。それに通信傍受の心配もない。
唯一の心残りは詠唱と入れ墨を再現できなかったことだ。アニメの虎徹ちゃん、かっこよかったなあ……。
古式魔法ならいざしらず、現代魔法では基本的に長い詠唱や触媒は必要としない。
でも原作でリーナも『ダンシングブレイズ』やってたし、斬魄刀の解号くらいならなんとか…
まあ
響子さんが卒業してから約半年。私は中学1年生になっていた。とはいえ、私にとっては2回目の中学生ということもあって特に新鮮味はないし、勉強だってあくびが出るくらい簡単だ。だから、結局はこうして魔法に打ち込んでいる。
とはいえ、この半年で私にも一つ大きな変化があった。簡単に言うと、肩書が増えたのだ。
国防陸軍兵器開発部特別技術士官
まさかの国防軍!
どこから噂を聞きつけたのか知らないが、中学に上がってすぐの頃、魔法大学で研究していた私のもとに国防軍の人が訪ねてきて、協力を打診されたのだ。
というか真田さんだった。あの101旅団の真田さん。
詳しく話を聞くと、今度魔法戦闘に重きをおいた部隊が新設されるから、そこで魔法式の調整に加わってほしいとのこと。
これを聞いたとき思った。独立魔装大隊じゃん。
やはり国防軍といえども魔法式をいじれる人材は貴重なようで、まだまだ子供ということもあってなかなかな高待遇だった。
一応未成年だから軍人としての偽名を名乗ってるけど、実際の扱いは魔法大学とたいして変わらない。普段は今までどおり魔法大学で研究して、定期的に軍の施設に赴いて活動している。
やってることは、主には個人個人の要望に合わせた起動式の調整と従来の魔法式の最適化。
それと私が開発した魔法が軍で有用だったらそれを採用してもらったりもする。
開発した起動式の隅っこの、式自体に無影響な部分に『紅』と署名を入れてるのはちょっとした秘密だ。
この署名は私が魔法大学で活動を始めたときから続けていて、軍人名を紅葉にしてもらったのも、これと揃えるためだったりする。
なんで、『紅』なのかというと。いや、私浦原さん大好きなんだよね。だからさ、ほら。わかるよね?
まあとにかく私としては、スキルアップとテスターの確保とお小遣い稼ぎが並立したおいしい仕事だったのだけど、今になって少し後悔してる。
どうしてかって?
今私がいるの、沖縄なんですよ。
ここは沖縄恩納空軍基地。夏休みに沖縄に行けるなんて軍も気が利いてるな、なんて思ったのも束の間。気づいてしまった。
2092年、夏、沖縄、とくれば連想されることはただ一つ。
大亜連合による沖縄侵攻。そして初のお兄様無双。
はい、つまりは追憶編のはじまりですね。
……私、生き残れるかなぁ。
☆☆
真夏の日差しが砂浜に照りつけて、反射で砂粒がきらきらと光っている。昼下がりの暖かい風が私の長い髪を撫でつけて思わず目を細める。
私は
沖縄は海がきれいだし、空気も澄んでいるから楽しいバカンスになると思っていたけど、なんだか雲行が怪しくなってきた。
昨日、船で沖に出ていたら潜水艦から魚雷が打たれたのだ。魚雷自体は兄が処理してくれたのだけど、そのあと事情を聞きに来た軍人さんとのやり取りで疲れてしまった。
そう、兄。
私の兄は、私の
ガーディアンというのは、四葉家において要人につくボディーカードのようなもの。
でも、本質は全く違う。ガーディアンは文字通り命を捧げて主人を守るのだ。
いつも無表情で何を考えているかわからないから、私はもともと兄のことが苦手だった。それもあって、本当の兄妹のはずなのに、私は兄に対してひどい扱いをしてきた。
でも今は、この何日かで今まで知らなかった兄の一面を見たことで兄のことが気になって仕方がない。
どうして普通の兄妹のように私に優しくするの?私達は
そんなモヤモヤを抱えながら私は今兄について行って軍の施設にいた。
兄は私の隣に座って風間大尉と真田中尉のお二人と話している。だいたいは大尉たちからの質問に兄が答えてる形だ。
というのも先程、兄が軍人さんたち相手に何度か組手をして、その全てで鮮やかに勝ってしまったのだ。だから、大尉たちは兄に興味津々だ。
ここではいつもと逆で、主役は兄。私はあくまで「司波くんの妹」。普段の生活では考えられないことだけど、これが不思議と不快ではない。いつの間にか、話題は兄のCADについてに移っていた。
「司波君、良かったら僕が開発したCADを試してみませんか?」
「真田中尉はCADをお作りになっているんですか?」
「僕の仕事はCADを始めとした魔法装備全般の開発です。ストレージをカートリッジ化した特化型CADの試作品があるんですよ」
兄が目を輝かせている、気がする。いつもは無表情なのにこういった話題のときだけ好奇心が顔を覗かせるのだ。と言っても他の人よりはだいぶ控えめだと思うけれど。
「試してみたいです」
この兄の一言で私達は別の部屋に移動することになった。案内された先は軍の基地の中とは思えないほど清潔で整頓された研究室。
風間大尉と真田中尉が微笑ましげに私のことを見ているが、きっと意外感を隠しきれていなかったのだろう。
極力それを気にしないことにして私は室内を見渡す。兄も驚きをわかりやすく顔に出して室内を見回していた。
ふと、机に隠れた部屋の奥の方に一際明るい場所を見つけた。明るい…というより可愛らしい?
他の場所は無機質な研究場所といった感じなのに、そこだけはちょっとした小物類が充実していて、色彩も豊かだ。
どんな場所か気になって顔をのぞかせてみると、椅子に座っている誰かの後ろ姿が見えた。けれども、その体は軍の基地には不釣り合いなほど小さく、そして華奢だ。
私と同い年くらいの…女の子?
ふと、私が見ていることに気づいたのかその子が振り向く。そして目があった。
肩まで伸ばされた亜麻色の髪に山吹色に輝く瞳。最初は不思議そうにしていたが、すぐに驚いたようにその美しい双眸が見開かれる。
どこからどう見ても美しい少女がそこにはいた。
「深雪?そんなに固まってどうしたんだ?」
「あ、に、兄さん。それが…」
近づいてきた兄にそれだけ返すと視線をその少女の方に向ける。兄も驚いたようだ。
「ああ、そういえば紹介がまだでしたね。」
「真田中尉。その、彼女はいったい…」
いたずらでも成功したかのような笑顔で真田中尉が口を開いた。
「彼女は朝露紅葉。今中学1年生の女の子で、魔法式開発のスペシャリストです。一応、私の部下ということになります」
その言葉に驚いてもう一度振り返ると、その子は恥ずかしそうにこちらを見ていた。
これが、私と紅葉―――奏の最初の出会いだった。
結構頑張ったけどこれで3000文字か…深雪視点は難しかったです。
魔法理論ガバガバです。原作は20巻ほどまでしか読めてないのでなにか矛盾がありましたら指摘をいただけると嬉しいです。
リアルが忙しいため気まぐれで投稿しますので気長にお待ち下さい。
今の予定だと全部出すのが難しそうなので。どれを再現してたらオサレ?(できるかは作者の想像力次第。)
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