魔法科でオサレに生きる   作:雨雫

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いや、もうほんとに感想・評価ありがとうございます!おかげさまでルーキーランキング12位になりました。みんな黒棺好きすぎでしょ()

 1つ注意点です。この追憶編の間、つまり仮にも軍の人間として登場している間は、奏の呼び方は基本的に紅葉で通したいと思います。ややこしくなってしまいますが、ご了承下さい。


追憶編Ⅱ

 

 奏―――紅葉はもちろん原作既読の転生者である。故に、近いうちに沖縄戦が起きることも知っていたし、その何日か前に司波兄妹が基地を訪れることも分かっていた。

 

 けれど、いざ主人公とメインヒロイン(妹)と対面したときの衝撃は想像以上だった。

 

 今も、紅葉は対面に座った深雪と何気なく話しているように見えるが、実は心臓バクバクである。

 

 

「それじゃあ……朝露さんはずっとこの基地にいるんですか?」

 

「ふふ、紅葉でいいよ。同い年なんでしょ?私も深雪って呼ぶから。あと、敬語もなしで」

 

「あ、わかり……わかったわ、紅葉。改めてよろしくね」

 

「うん、こちらこそ。それで、えっと、そう。ここ10日くらいはさっきの研究室にこもりっぱなしで、せっかく沖縄にいるのに海にも行ってないのよ」

 

 

 軍の重労働にも参っちゃうわ、と紅葉は肩をすくめて真田中尉の方を恨みがましく見る。

 

 

 ここは研究室のそばに設けられた談話室。研究室で紅葉と司波兄妹が対面したあと、達也に貸す予定だったCADを持ち出して5人で移動してきたのだ。

 

 紅葉と深雪が向かい合って話している横では、達也が真田中尉からCADの説明を受けている。

 

 やはり達也はCADに興味津々で、その様子を深雪は少し珍しそうに見ていた。けれど、そこには少し羨望の色が隠れており、それを見て紅葉は頬を緩めた。

 

 

(なんだかんだいって、この時点でブラコンの資質が見えてるんだよなぁ)

 

 

 自分もそんなふうに見てほしい、という可愛らしい嫉妬が垣間見えた。

 

 

「まあとにかく、こんなところに籠もりっぱなしだからちょっと退屈してたの。だから、深雪。いっぱいお話しましょっ」

 

「ふふ、いいわよ紅葉。そういえば、紅葉は魔法を作ってるの?」

 

「まあ、そうね。でもここにいる間は兵士さんたち一人ひとりに合わせた起動式の調整を主にやってるわ。開発は、いつも別のところでやってるの」

 

「一人一人って……それってとてもすごいことなんじゃないかしら」

 

「今までこればっかりやってきたんだもの。だから他の人よりは当然できると思うわよ」

 

「もしかして、朝露はCADについても詳しいのか」

 

 

 紅葉が少し誇らしげに胸を張ると、話が一段落したらしい達也が横から話しかけてきた。

 

 

「達也も紅葉でいいわよ。最低限起動式を導入するくらいの技術はあるけど、ハードやソフトにはそこまで詳しいわけじゃないわ。せいぜい、自分用のCADを調整できるくらいかしら」

 

「それだけでも十分な気がするのだけれど……」

 

「そうだな。俺も詳しく勉強したいと思っているが、なかなかうまくいかなくてな」

 

「私はせっかく魔法を作っても自分で使えなきゃ意味ないと思ったから、必死に勉強したのよ。それに、達也ならすぐにこれくらいできるようになるわ」

 

 

 なにせ未来のトーラス・シルバー様だものね、と心の中で付け加える。

 

 

「紅葉君はその年齢ではありえないくらいの知識と技術を持っていますからね」

 

「そうだな。魔法師としての実力も相当なものだ。情けない話だが、この基地にいる人間ではほとんど太刀打ちできないだろう」

 

「真田さんに風間さんも、あまり煽てないでくださいよっ。恥ずかしいじゃないですか」

 

「こういうところは年相応なんだがな」

 

 

 ははは、と紅葉以外の4人の中で笑いが起こる。当の本人はむっとしていたが。

 

 

「せっかくだから、紅葉君も司波君と組手をしてみては?」

 

「自分と紅葉がですか?」

 

「同い年で一戦交えるのも面白いと思いましてね」

 

「やめてくださいよ真田さん。さっき達也は兵士さんたちを体術で圧倒したのでしょう?しかも術式解体(グラムデモリッション)まで使ったとか。剣術なら私も修めてますけど体術は苦手ですし、相性最悪です」

 

「おやそうですか。それは残念」

 

「むー……ほら深雪あっちに海が見えるところがあるの。そこでお話しましょ」

 

「ふふ。いいわね」

 

 

 おどけたふうに笑う真田中尉を見て頬を膨らませた紅葉が、深雪を誘う。深雪はクスッと笑って付いていった。

 

 

「その……紅葉は何者なんですか?」

 

 心なしか目を細めて達也が聞く。

 

「そうだな……それなりに有名な魔法師の家系の出だが、それを鑑みてもあの年の子供としては異常なほどの実力の持ち主だ。しかも、相当に大人びている」

 

「もっとも、それは司波くんにも言えることだと思いますけどね」

 

「有名な家、ですか」

 

 

 頭の中に十師族や百家の名を思い浮かべながら、達也は深雪とともに去っていく紅葉の背中を見つめる。その視線は、険しいものだった。

 

 

(紅葉、お前が深雪に害をなす存在なら、その時は……)

 

 

 

 そのまま夕方になるまで、紅葉と深雪は楽しく話をして過ごした。浜辺にも出て遊んで、年相応の夏休みを満喫した。

 

 

 そしてその5日後、8月11日。運命の日がやってくる。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 紅葉の朝は早い。

 

 前世で一度寝坊により大遅刻をかましてから、朝の5時には起きるのが日課になってしまった。この基地にいる間は、その時間を使って誰もいない演習場で体を動かしている。

 

 この基地には何棟か用途別の演習場があるが、ここはその中でも剣術を扱う修練場だった。

 

 修練場の中央で1人、紅葉は木剣を振っていた。

 

 最初は素振り。次に足の動きも加えて。更にだんだんと立ち回りを激しくしていく。

 

 イメージするのは最強の敵。どんな攻撃も当たらず、さらにたやすく反撃を加えてくる敵。

 

 如何にして攻撃を届けるか、如何にして効率よく防御をするか。時間とともに雑念が払われ思考が澄んでいく。

 

 ただ目の前の敵を倒すために。生き残るために。

 

 

 傍から見ると、それはまさに剣舞。わずかに朝日が差し込む美しい板張りの道場で、美しい少女が剣を振る様子は美しい絵画のようだった。

 そのまま10分ほど舞い続けて、紅葉は動きを止めた。

 

 

「ふぅ……」

 

(今日はいつもよりも調子がいい。良かった……)

 

 

 今朝は普段よりも深く集中して鍛錬に望めたため満足気な紅葉。

 

 否、そうでなくては困るのだ。なにせ、沖縄戦は今日なのだから。

 

 紅葉は一応非戦闘員なので、前線に駆り出されることはまずないだろうが、基地内も安全とは言い難い。

 

 レフトブラッド―――沖縄に駐留していた米軍が引き揚げた際に取り残された子供たち―――によって、基地内で反乱が発生するのだ。

 

 それに司波家が巻き込まれて、達也が『再成』を使うはめになり、結果的に兄妹間のわだかまりが解消される。いや、解消されすぎると言うべきか。

 

 とにかく、紅葉自身も戦闘の危険がある以上、不安にもなるということだ。

 同時に、多少なりとも気持ちが昂ぶっているようだが。

 

 

(なにせ、正当な理由で魔法をぶっ放せる数少ない機会だからね)

 

 

 この通りである。紅葉が作成・再現した魔法の中には殺傷性ランクの高位に位置づけられるものも多々あり、おいそれと訓練では使用できないのだ。 

 そのため、不謹慎ではあるがこのような実戦はある意味貴重なのである。

 

 

 

 これから起こる戦争に向けて、緊張と少しの期待を感じながら、紅葉は修練場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 朝食を食べた紅葉は、自分のCADの調整を行っていた。

 

 本当はちゃんとした技師の人に頼んだほうが出来はいいのだが、なにせ紅葉のCADには一般にまだ出回っていない、もしくは今後も公開する予定のない起動式が入るのでそう簡単に他人に頼むわけにはいかないのだ。

 

 

「えっと、近接用の78でしょ。あと33と81。77もはいってるね。……こっちも間に合えばよかったんだけど、仕方ないよね。他の魔法を使おう」

 

 

 聞く人が聞けばわかるであろうことをブツブツ言いながら、紅葉はCADの最終調整を済ませた。

 

 

 ちなみに、普段紅葉が使うCADは2種類。

 

 刀の形状をした武装一体型CADと、一般的な端末型。前者は真田中尉に頼んで作ってもらった特注品だ。

 

 本当はある目的のためにもう一種類欲しいCADがある紅葉だが、残念ながら彼女の想像力に技術が追いついていない。

 

 そのため、絶対いつかトーラス・シルバーに作らせてやる、と思っている。

 

 

「さて……」

 

 

 紅葉は立ち上がって鏡の前に立つ。

 

 

(自分で言うのもなんだけど、本当に今世の私は何着ても似合うわよね)

 

 

 亜麻色の髪はシニヨンにし、クリーム色のカバーがつけられている。左腰には柄が途中で曲がった特殊な形の刀型CAD、反対側には端末型CADが服の間から覗いている。

 

 しかし、何よりも目を引くのはその服装だろう。

 

 

 一言で言うなら、黒染めの袴だ。腰回りは白の帯で結わえられ、正面でリボンを形どっている。

 

 それ以外の部分は完全に黒の、この年の少女が身に纏うには異質な格好だ。

 

 

 

 

 

 もちろん、死覇装である。

 

 

 

 なお、戦闘用の特別仕様だ。 

 

 もう薄れつつある記憶を必死に呼び起こして、紅葉が四苦八苦して作り上げた勝負服。どうせ高校に入ったら制服を着させられるのだからと、張り切って作ったものだ。

 

 以前一度軍の訓練に参加したときにこの服装で行ったら、居合わせた人全員に絶句されたのはいい思い出だ。

 

 また、機能性の方は魔法大学や軍で意見をもらって改造したので問題ない。最終的には軍の持つ特殊繊維で製作してもらったので、下手な衣服より防御性能は高い。さすがに防弾性能まではないが。

 

 本当は自作しようとしたのだが……それで死んでしまっては元も子もないので諦めた。

 

 

 

 

 鏡の前で一通り服装を点検した紅葉は、満足そうにうなずいて、刀の鍔を鳴らした。

 

 

 

「よし、行こうかな」

 

 

 

 そのとき、示し合わせたかのように基地内にサイレンがなり始めた。

 

 

 

 沖縄戦の、始まりだ。

 

 

 




 んー、描写が難しい。読みづらい点などありましたら指摘していただけると嬉しいです。  

 紅葉の服装に関して、いくつか隠れBLEACH要素があるので、気づいた方は感想欄でつぶやいてくださると作者が喜びます。

12/13追記
 アンケートを作ってみました。要所要所で出す技は決まっているのですが、それ以外の候補に上がっていたものの中で皆さんの意見を聞かせていただけると幸いです。

なお、使用者は主人公とは限りません。

今の予定だと全部出すのが難しそうなので。どれを再現してたらオサレ?(できるかは作者の想像力次第。)

  • 桃ちゃんは正義 『飛梅』
  • 頭が高いぞ 『侘助』
  • ぶっちゃけニヴルヘイム 『袖白雪』
  • 僕は蛇や 『神鎗』
  • 破面ならこの人 『群狼』
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