魔法科でオサレに生きる   作:雨雫

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 お待たせしました!
感想・評価・誤字報告ありがとうございます。おかげさまでルーキー日間、二次創作日間で1位を獲得しました!

 ちょっと無駄話を。
 個人的に魔法科ssでは原作とほぼ丸かぶりな展開になりがちだと思っています。でもやっぱり、書き手としてはちょっと退屈になってしまうんですよね。なので、この作品ではオリ展開多めにしたいな、なんて。原作イベントでも原作とは違った場面を描ければと思っています。賛否両論だとは思いますが……。

 てことで追憶編の後はオリ展開が2章ほどある予定です。もちろん、原作を捻じ曲げるようなことはしません。現在の予定だと、それ含めて3〜4章で完結かな?
お楽しみに。


 ところで某呪術マンガって「縛り」という概念のおかげで合法的(?)に様々なオサレな口上を可能にしててすごいですよね。


追憶編Ⅲ

 

 

 初めて基地に行ってから5日経った。あの日以来、私は紅葉とメッセージのやり取りをしている。

 結局あの日は海辺のベンチで長いこと二人で話し込んでいた。好きな食べ物は何か、休みの日はいつも何をしているのか、得意な魔法は何かなど。お互いにたくさん質問しあって、時には一つのことをずっと話し込んだりして、とにかく楽しい時間だった。

 

 聞けば紅葉は、起動式の研究ばかりをやっていたせいであまり友達がいなかったみたいで同い年でこんなに気の合う友達ができて嬉しい、と笑ってくれた。

 

 かくいう私も、普段は四葉というしがらみのせいで一歩引いた人との関わり方しかしてこなかった。けれど、軍の基地という特殊な環境で出会ったおかげなのか、それとも単に波長がものすごく合ったのか、紅葉とはとても自然体で接することができた。

 

 結局、ほんの数時間話しただけなのにまるでずっと昔から仲が良かったかのような心地よさを感じるようになっていて、何日か経った今でもメッセージのやり取りを続けている。

 

 この端末は連絡用にとお母様に頂いたもので、紅葉はそこに登録された友達第一号だ。

 

 

「深雪さん、またお友達とお話してるんですか?」

 

「あ、桜井さん。はい、紅葉とファッションについて話をしてました」

 

「ふふ、仲がいいのは結構ですけど視力に影響が出ないようにしてくださいね?」

 

「もうっ、分かっています」

 

 

 私の言葉に苦笑しているこの人は、お母様のガーディアンの桜井さん。小さい頃から私もお世話になっているから、どちらかというとお手伝いさんのように感じている。魔法師としても優秀な人で、特に障壁魔法に精通している。

 

 

 ここ何日か、こうしてリビングで私とお母様と桜井さんが団らんしている間、兄は部屋にこもっていることが多くなった。

 

 あの日真田中尉からCADをいただいて、それからずっと飽きることなくそれをいじっているのだ。

 

 

 2日前、私は兄に「深雪」と呼ぶようにお願いした。お願い、というよりは命令に近かったかもしれないけど……。

 兄は戸惑いながらも了承してくれて、口調も柔らかくなったけど、でもまったく心の距離が縮まっていないのが分かってしまって、私はどうしょうもなく苦しくなった。

 

 それから私はずっと、兄に優しくしようと思っている。でもその決意に反して私はあの人を振り回してばかりで自分が情けなくなってくる。

 

 

 そんな気持ちも紅葉に相談してみたのだ。もちろん、ガーディアンのことはぼかして。そしたら紅葉は、

 

「きっと、達也は深雪のことをとても大事に思ってるんだよ。でも深雪と同じで素直になれないんじゃないかな。きっかけさえあれば、2人とも変われるよ」

 

 と言ってくれた。まだ解消されたわけじゃないけど、おかげでモヤモヤした気持ちも落ち着いてきていた。

 

 

 ああそういえば、お母様にも紅葉のことは話してある。とても仲の良い友達ができたんです、と。あんなにお母様に何かについてお話したのは久しぶりだったかもしれない。

 

 一通り紅葉のことを話し終えた後、お母様はなにか考えていたようだったが、紅葉との友達付き合いはちゃんと認めてくれた。しかも一度会ってみたい、とまで言ってくれた。

 

 バカンスが終わったら、一度機会を作ってみてもいいかもしれない。そのことを伝えたら、紅葉は微妙な反応をしていたけど。

 

 とにかく、今日までは平穏なバカンスだったのだ。でも、今私達はとてつもない非日常に巻き込まれてしまった。

 

 突然の緊急警報。発信元は国防軍。疑いようのない外国からの侵攻だった。

 

 

『潜水艦による奇襲』『宣戦布告はなし』

 テレビではこれと似たようなテロップがあちこちで踊っている。

 

 

「真夜様に便宜を図っていただけるようご依頼します!」

 

 焦りを隠せない口調で桜井さんが提案し、お母様が頷いた。

 まさか、なんの前触れもなく戦争に巻き込まれるとは誰も思わない。私はまだ現実感が湧かなくてパニックにはなっていないけど、兄は異常なほど落ち着き払っているように見えた。

 

 

 そのとき、私の端末から着信音が鳴り出した。家族以外で私に電話をかけてくるなんて一人しかいない。

 

「紅葉!?どうしたの?」

 

 画面を見てすぐに私は電話に出た。突然のことに声が少し上ずってしまった。

 

「あ、深雪?警報は聞いてるよね。時間がないから手短に。国防軍所属の朝露紅葉として、風間大尉からの伝言を伝えます。司波達也さん、深雪さん、及びそのご家族の皆様に恩納空軍基地の地下シェルターへと避難していただける用意があります、だって。どうする?」

 

「え、えっと、待ってて。お母様に聞いてみるわ」

 

 急に情報量が増えて頭がパンクしそうになりながら、お母様に向き直る。

 

 

「お母様、実は……」

 

 私の説明にお母様と桜井さんは難しい顔をして相談していたが、これが当主様が手を回してくれた結果ということもあって基地へと避難することになった。

 

 

「じゃあ紅葉。お願いしてもいいかしら?」

 

「了解。今からそっちに向かうね」

 

 

 どうやら紅葉も迎えに来てくれるらしい。不謹慎だけど、友達と会えることにほんの少し嬉しくなった。

 

 そこから私達は慌ただしく支度をして迎えの車を待つのだった。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 サイレンを聞いてすぐに風間大尉のもとに向かった私は、大尉から司波家の出迎えに行くように言われた。確か原作では桧垣上等兵だけだったはずだが、交流があったため私も追加で選ばれたのだろう。

 

 そして私は今司波家、というか四葉家の別荘に来ていた。

 

 

「紅葉!」

 

「あ、深雪!」

 

「その服、どうしたの?真っ黒じゃない」

 

「んー、なんというか。勝負服?死覇装っていうの。かっこいいでしょ?」

 

 

 深雪とは短い付き合いだけど、だいぶ仲良くなれたと思う。やっぱり私は友達が欲しかったのだ。それは深雪も同じみたいで、今もこうして駆け寄ってきてくれるほどには仲良くなった。

 達也は桧垣さんと話をしていた。そしてすぐ後ろには二人の女性が。あれが四葉深夜と桜井穂波だろう。柄にもなく緊張する。

 

「深雪、すぐに基地まで移動するからね。……はじめまして。国防軍特別技術士官の朝露紅葉と申します。みなさんを基地までお連れします」

 

「ええ、お願いします。それから、深雪と仲良くしてくれてるみたいでありがとうございますね」

 

「いえ、とんでもありません!」

 

 お、お礼言われちゃった。後半だけ口調が柔らかかった。『忘却の川の支配者(レテ ミストレス)』にお礼言われるなんてとてもじゃないけど、心臓が持たない。なんかオーラというか圧がすごいもん!よく桧垣さんは物怖じせずいられるなあ。

 

 

 内心ビクビクしながら車に乗り込む。道中は深雪や桜井さんと状況確認をした。町はひっそりと静まり返っていてちょっと不気味だった。何事もなく無事に基地についたのだけど……基地に嫌な空気が漂っている、気がする。反乱の前触れだろうか。

 とにかく行ってみないと。

 

 

「司波家の皆様、私はここで席を外させていただきます」

 

 シェルターに入ってすぐに私は切り出した。

 

「どうしたの紅葉?」

 

「ごめんね深雪。ちょっと嫌な予感がするから様子を見てくるね」

 

「わかったわ。……気をつけてね」

 

「うん、もちろん」

 

 心配してくれる深雪がかわいい。これでがんばれる気がするなぁ。『織姫の応援』ならぬ『深雪の応援』だね。

 

 さて、戦闘に出遅れても困るし急がないと。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ここは基地内にある小さな広場。複数の通路が合流するこの場所では、敵味方入り乱れた乱戦状態になっていた。なまじ同じ隊内から離反者が出たため誰が敵かの判断が難しい。そのせいで国防軍側は軽い混乱状態に陥っていた。

 

 確認できる限り、離反者のレフトブラッドはたったの数名。しかし数カ所で同時に戦闘が発生していることを考えると、総数では数十名に上るだろう。

 すでに主力の部隊が前線に出ている中での反乱。不意打ちということもあり、すでに何人か死傷者が出ていた。

 

 だが、さすがは国防軍。そんな状況であっても戦線が崩れた様子はない。徐々に態勢を立て直し、反撃の準備を整えていた。

 戦況が逆転するのは時間の問題───ましてや、そこに援軍が駆けつけたなら。

 

 

 

 

 

「破道の七十八・斬華輪(ざんげりん)

 

 

 

 通路の1つから反乱兵に襲いかかったのは、扇状の斬撃。黄色がかったそれは、固まっていた3名の兵の銃器を正確にバラバラにした。

 

 さらに、斬撃の陰に隠れて迫っていた人影が瞬く間に四肢を切り裂いていく。

 

 一転して、乱入者に慌てふためく反乱兵たち。影は目まぐるしく動き回っては次々と敵を斬り倒していく。無傷の兵がその人影に銃を向けるが、遅い。

 

「シっ…!」

 

 短い呼吸音とともに再び放たれた黄色い斬撃が、発砲を許さない。

 

「ぐはっ…!」

 

 

 あっという間に全ての反乱兵が制圧された。ここまででたったの数秒。恐ろしい速度だった。

 

 

「この距離じゃ体を動かしたほうが早いのよ、だっけ?」

 

 

 体の前で刀を切り払って血糊を落としたのはもちろん紅葉。すでに複数の戦場を制圧し魔法の試用を終えたため満足げだ。決め台詞までばっちりである。

 

 

 いまだ味方には戸惑っている人が多かった。当然といえば当然だ。紅葉は戦場には似つかわしくない少女なのだから。死覇装姿の彼女を知っている人だけは、妙な納得を得ているようだが。そんな彼らに向かい紅葉は声を張り上げる。

 

「国防軍特別技術士官の朝露紅葉です!すでにほとんどの反乱兵は制圧されました!負傷者の手当を急ぎ、原状復帰につとめてください!」

 

 その声に兵士たちは慌ただしく動き出す。本来紅葉は彼らに指示できる立場にないのだが、緊急時なので致し方ない。

 紅葉は彼らに背を向けて、再び走り出した。その顔には、いつも冷静な彼女にしては珍しく汗がにじんでいる。

 

 

「ちょっと時間ないかも……!」

 

 

 紅葉は深雪たちが襲撃される正確な時間を知らない。そのため、なるべく早く深雪のところに戻るつもりだった。しかし、予想より広範囲で反乱が起きていたため制圧に時間がかかってしまったのだ。

 だが、自分の迂闊さを呪いつつも足は緩めない。紅葉はその端整な顔を憂慮に染めて、基地内を爆走した。

 

 

 

 

「原作とか知らないもん!私が助けるんだから!」 

 

 

 紅葉の原作に対する向き合い方は、とてもシンプルだ。彼女が決めていることは唯一つ。

 

 

 

 

 『司波達也と敵対しないこと』

 

 もちろん紅葉は自分がこの世界にとってイレギュラーな存在だと理解している。そして、少なからず原作に関わる機会を持ってしまった以上、世界に影響を与えてしまうことは避けられないことも。

 

 だから多少の改変は仕方ない。けれど、対抗する術がない最強のお兄様に関しては、自分と、いつかできるかもしれない仲間のために友好的、もしくは中立の関係を貫こうと決めていた。

 

 

 (下手に原作を怖がって本来ならできたことができなくなるのは嫌だ。助けられた命が助けられなくなるのは嫌だ。私だって、この世界で生きているんだから!)

 

 この思いを胸に、紅葉は自分から原作に関わることを選択した。深雪はすでに、紅葉にとって大切な友人である。少しでも彼女が死ぬ可能性があるのなら、紅葉は自らの全霊を以て彼女を助ける。

 

 

 何回目かの曲がり角を曲がったあと、前方に深雪たちがいるはずの部屋が見えてきた。

 

 ほっと息を吐いて紅葉は目を凝らす。中には深雪と、司波深夜と、桜井さんと、桧垣さんと、

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女たちに銃を向ける、反乱兵がいた。

 

 

 

 

 

 それを見た瞬間、紅葉の姿がかき消えた。

 

 人の肉眼では到底追えない速さで深雪の前に躍り出て、迫りくる銃弾に手をかざす。

 

 唱えるのは、紅葉の持つ最強の防御魔法。幾度となく登場し、その度にその性能とにじみ出るオサレ感から鰤界を震わせた絶対防御の模倣。

 

 

 

 

 

 

 

『縛道の八十一・断空』

 

 

 

 

 

 

 

 その力が、魔法科世界で振るわれた。

 

 

 




 前話の更新後にアンケートを作ってみました。数日後に終了したいと思います。

現時点で侘助が押してるんですけど…一番再現むずくね??

 いつ投稿するとは確約できなくて申し訳ありませんが、しばらくは不定期でやらせていただきます。ではまた。



『斬華輪』
 原作では京楽隊長が使用。名前の通り、二刀をすり合わせて斬撃を円の形に発生させ飛ばす全方位技だったが、紅葉は一刀なので、扇形になる。

今の予定だと全部出すのが難しそうなので。どれを再現してたらオサレ?(できるかは作者の想像力次第。)

  • 桃ちゃんは正義 『飛梅』
  • 頭が高いぞ 『侘助』
  • ぶっちゃけニヴルヘイム 『袖白雪』
  • 僕は蛇や 『神鎗』
  • 破面ならこの人 『群狼』
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