魔法科でオサレに生きる   作:雨雫

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お久しぶりです(2年ぶり)

とりあえずキリの良いとこまで出します


追憶編Ⅳ

 

 

 

 

 

 

 基地に着いて私たちが案内されたのは応接室のような部屋だった。青と金を基調とした部屋で、黒い革のソファーが並べられている。私たちはここでシェルターの準備が整うまで待つように軍の人たちに言われていた。

 

 銃声がなり始めたのを聞いて、兄は外の様子を見るために部屋から離れてしまったし、紅葉はまだ帰ってこない。だから私とお母様と穂波さんの3人でソファーに腰掛けて話していた。

 

 すると、銃で武装した国防軍の兵士たちが現れて、地下シェルターに案内してくれると言ってきた。しかし、彼らを怪しく思ったお母様が、兄が外の様子を見に行っているからここで待つと言い、それを聞いた兵士たちはなぜか焦っているようだった。

 

 そこから状況はどんどん動いていった。紅葉とともに基地まで案内してくれた檜垣ジョセフ上等兵が駆け込んできて、部屋にいる兵士たちは裏切り者だと言って銃撃戦が始まった。慌てて穂波さんが障壁魔法を張り、銃弾から私とお母様を守ろうとすると、一人の兵士が銃ではなく左手を私たちに突きつけてきた。

 

 そこから発せられたのは、魔法を阻害する「キャストジャミング」と呼ばれる無系統魔法。

 キャストジャミングは、魔法式が対象物のエイドスに働きかけるのを妨害する無系統魔法の一種で、無意味なサイオン波を大量に散布することで、魔法式がエイドスに働きかけるプロセスを阻害してしまう。

 

 簡単に言うと魔法式という一つの大きなプログラムにノイズを紛れ込ませてその魔法式が正しく働かなくしてしまう魔法だ。これは魔法師でなくても特殊な鉱石があれば使うことが出来るので、左手に着いている指輪にその鉱石が付いているのだと思う。

 

 キャストジャミングを浴びた穂波さんの魔法は解け、体の弱いお母様は立てなくなってしまった。

 

 しかし、檜垣上等兵の決死の説得により銃撃が収まりキャストジャミングも減弱した。

 

 

(今だ…!)

 

 

 私はお母様たちを守るために、キャストジャミングを放った兵士に向かって魔法を使った。

 

 

 

『精神凍結魔法 コキュートス』 

 

 

 私の持つ四葉としての固有魔法。その力は、人の「精神」を止めることで体に死を命じる即死魔法。避けることなど出来ない、文字通りの必殺魔法。

 

 コキュートスを受けた金髪の兵士は、左手を私たちに向けたまま凍り付いた。この瞬間この兵士は精神が凍り付き、二度と動く事はない。

 

(やった…私が、殺した)

 

 実際に人を「凍らせる」のは初めてで、私は息を切らしながら凍った死体をぼんやり見つめることしか出来なかった。

 

 そして、その隙が致命的だった。

 

 

 「マーク…!よくも、よくもマークを…!!」

 

 

 ドドガッガドゴガと、銃が火を噴くのを私はどこか人ごとのように聞いた。

迫り来る弾丸、動かない体、私とお母様をかばって両手を広げる穂波さん。

そして、そして…

 

 

 その穂波さんの前に、輝く半透明の膜が開くのを見た

 

 

縛道の八十一・断空

 

 

「良かった!間に合った…!!」

 

 

 背中から軽い体が勢いよく飛びついてきて、危うく転びそうになってしまう。ゆっくり振り返ると、きれいに輝く亜麻色の髪が視界を塞いだ。

 

「…くれ、は?」

 

「紅葉だよ!深雪生きてる!!?」

 

 光を反射している琥珀色の目がまっすぐ私に向けられていて、どうしようもなく泣きそうになってしまう。

 

「もう…遅いわよ紅葉」

 

 涙声でそう返すと紅葉はにかっと笑って前を向いた

 

「大丈夫!私が来たからには、絶対に深雪を傷つけさせやしないんだから!」

 

 その横顔を見て、こらえきれずに頬を涙が伝っていった

 

 

☆☆

 

 

 神がかった速さで深雪の前に「断空」を展開した紅葉はぐるっと辺りを見回した。きらびやかな応接室は弾痕で見るも無惨な部屋に様変わりしていて、突然現れた紅葉に誰も動くことが出来ずに固まっていた。

 

 そして手を伸ばしたまま無機質な目線を向けてくる氷像を見つけて、紅葉の思考が切り替わった。

 

 「檜垣上等兵、あなたは敵?」

 

 その声は驚くほど低く、地の底を這うような怒りが込められていた。檜垣は額に汗をにじませてゆっくりと返答する。

 

 「いや、俺は、味方だ」

 

 「そう、なら良かった。だって」

 

 紅葉は深雪を抱きしめたままくるりと体を反転させて、固まったままの反乱兵たちに向き直った。

 そして次の瞬間、彼らの四肢から血しぶきが噴き出した。

 

「だって、後始末の手間が減るもの」

 

 斬られた本人たちも、見ていた深夜や穂波でさえも何が起こったか分からなかった。唯一分かるのは紅葉が何かをしたということ。誰もが息をのむ中、一人の少年が駆け込んできた。彼は一目散に紅葉に抱かれたままの深雪の元に駆け寄る。

 

「深雪、大丈夫か!?」

 

「あ、兄さん…」

 

「怪我はないか!?どこか痛まないか」

 

「はい、紅葉が助けてくれましたから」

 

「そうか、良かった……っ!!」

 

 安心した表情を浮かべた達也はふんわりと微笑む深雪を抱きしめる。普段の達也からは考えられないスキンシップに驚くものの、深雪もゆっくりと抱きしめ返した。

 

「ふふっ、ほらね深雪。心配することなんてなかったでしょ」

 

「紅葉……ええそうね。ありがとう紅葉、私を助けてくれて。それと…心配してくれてありがとう…お兄様」

 

「!……ああ、どういたしまして。それと、紅葉。俺からもお礼を言わせてくれ。深雪を助けてくれてありがとう」

 

「うん、2人ともどういたしまして。友達のためだもんねっ」

 

 すぐそばで人が倒れているとは思えないほど穏やかに話す三人だったが部屋に軍服を着た男性2人が入ってきたため居住まいを正す。

 

「歓談中のところ申し訳ないが、少しよろしいか」

 

「風間大尉、真田中尉」

 

 紅葉と達也は立ち上がり、2人と向かい合う。

 

「すまない、叛逆者を出してしまったことは、完全にこちらの落ち度だ。何をしても罪滅ぼしにはならないだろうが、望むことがあれば何なりと言ってくれ。国防軍として、できる限りの便宜を図らせてもらう。そして朝露特尉、反乱の鎮圧ご苦労。君のおかげで既に基地内の反乱兵は一掃した。」

 

 頭を下げる風間大尉に、「顔を上げてください」と達也が告げる。そして紅葉が「礼は不要ですので、正確な状況を教えてください」と続いた。

 

 風間大尉の説明によると、敵は大亜連合の可能性が高く既に上陸を許しているとのこと。それを聞いた達也が戦線に加わるという波乱があったが、話はスムーズに進んだ。その流れを紅葉は深雪とともに黙って眺めていた。

 

「朝露特尉、君はどうする?」

 

「前線に出るのかというご質問でしたら、私は必要ないでしょう」

 

「ほう、なぜだ」

 

「達也1人で十分でしょうから。それに、達也の怒りに巻き込まれるのはごめんです」

 

 そう言って紅葉は微笑むと深雪の元へ向かった。そこでは達也と深雪が向かい合って話しをしていた。

 

「い、行かないでくださいお兄様。お兄様が危険を冒す必要なんてないと思います」

 

「確かに必要はない。俺は、必要だからじゃなくてそうしたから行くんだよ、深雪。俺はお前を危険にさらされた報復に行くんだ。お前のためじゃなくて、自分の感情のために。俺が本当に大切だと思えるのはお前だけだから」

 

 そう言った達也が困ったような笑顔を浮かべて深雪の手をそっと離した。深雪はその言葉をかみしめているようだったが、はっと何かに気づいたように顔を上げるとつぶやくように言った。

 

「大切だと、思える……?」

 

「そこに気づかれるとは、参ったな。お前もそろそろ知っていてもいい頃だ。あとでお母様に教えてもらいなさい。お前が今疑問に思ったこと、その答えを」

 

「お母様に……?」

 

「深雪、大丈夫だ。俺は無傷で帰ってくる。この世に俺を本当の意味で傷つけられるものなど存在しない」

 

 そう言って深雪の頭を一撫ですると、達也は立ち上がって出口にむかって歩いて行く。そして紅葉とすれ違いざまに一言。

 

「深雪を頼む」

 

「もちろん、任せて」

 

 お互いに笑みを浮かべて、それぞれの役目を果たしに行った。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 そこからは本当に怒濤だった。達也が『分解』と『再成』を駆使して敵軍を殲滅して、最後には戦略的魔法『マテリアルバースト』を使用して戦いに決着をつけた。

 

 一方、司令室に避難した私と深雪は達也が戦う様子を見たり、深夜さんから達也の感情の欠落について聞いたりした。深雪はひどくショックを受けていたけれど、なんとか立ち直って兄妹で支え合っていくことを決意していた。

 

 こうして誰一人傷つくことなく「追憶編」は終わりを迎えた。深雪は痛い思いをすることなかったし、私はたくさんの魔法を試せたからとても満足している。それに深雪とはこれからも仲良くしていけそうでとても嬉しい。

 

 深雪の希望で、私は司波家が沖縄を離れる日まで司波家にお邪魔していた。深雪といっぱいおしゃべりして、一緒にお風呂に入ったり同じ布団で寝るまでお話ししたりした。深雪たちには私の本名を教えたから深雪は「奏」って呼んでくれる。かわいい。

 なんだか深雪の距離感が近すぎる気もするけど…この年頃なら普通だよね!(メソラシ

 

 達也とはCADなどの技術的な話で盛り上がった。未来のシルバー様のお得意になる気満々だからね!いっぱい恩を売っておかなきゃ。会ったばかりの頃は警戒していた様子の達也も、あの日以来心を開いてくれたようで一安心かな。

 

 そんなこんなで今日は司波家が沖縄を離れる日。私は空港まで見送りに来ていた。

 

「またね深雪、元気でね」

 

「奏……」

 

「もう、そんな泣きそうな顔しないで。またいつか会えるよ」

 

 でもやっぱり難しいのかな、深雪は四葉だしこの頃はまだ山梨の四葉本家で暮らしていた気がする。もしかしたら次に会うのは高校生になってからかもしれない。

 

「えぇ、奏も元気でね。ほんとうは奏を家に招待できたら良いのだけれど……」

 

「何か事情があるんでしょ?しょうがないよ。逆に私の家はいつでも歓迎だし、それに好きなときに電話できるじゃない」

 

「あら、深雪さん。そういうことなら本家にお呼びしたら良いでしょう」

 

 

「「え?」」

 

 

……え??

 

 

「お母様、よろしいのですか……?」

 

 

 いやいやいや、四葉って秘密主義だから部外者を入れるなんてないないない。

 

「ふふっ、この子には助けていただいた恩がありますし構いませんよ。それに……あなたは私のことをご存じのようですしね、『紅姫』さん?」

 

「え“”」

 

「初対面の時からサイオンが緊張していたし、私にだけ態度が違いましたもの。じゃないと達也の秘密をあなたのいるところで話したりしません」

 

「ひえっ」

 

「悪いようにしませんから近いうちに本家にいらっしゃいな。しっかりともてなして差し上げます。それに……真夜もあなたに会いたいそうよ?」

 

「え、えぇ!?」

 

 なんで私「『忘却の川の支配者(レテ ミストレス)』」と「夜の女王」にロックオンされてるの!?

 

「えっと、よく分からないのだけれど……奏に会えるのを楽しみにしてるわねっ」

 

「う、うん…」

 

 深雪の輝くような笑顔に、私は引きつった笑みを返すことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

『追憶編』完

 

 

 

『クローバーの末席編』に続く

 

 




続かない

最後まで読んでいただきありがとうございます。プロットだけは先々まであるのですが、忙しさと気力と相談して書けたら投稿します。

今の予定だと全部出すのが難しそうなので。どれを再現してたらオサレ?(できるかは作者の想像力次第。)

  • 桃ちゃんは正義 『飛梅』
  • 頭が高いぞ 『侘助』
  • ぶっちゃけニヴルヘイム 『袖白雪』
  • 僕は蛇や 『神鎗』
  • 破面ならこの人 『群狼』
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