ISー兎協奏曲ー第二楽章   作:ミストラル0

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まだまだ続くぞ一回戦!
ということで今回は乱のチームの試合です。


14話 一回戦④

「マドカも紫音も勝ち上がったみたいね」

 

選手控室にて乱は獰猛な笑みを浮かべつつチームメイトへと向き直る。

 

「相手はヴェルデ・グリフォーネの統一チーム。α組だと私と水戸さん、それから冬海さんが選択していたわね」

 

「そ〜だね〜、私とさよっちとみみっちゃんだけだね」

 

紗代子と茉優が言うようにα組でヴェルデ・グリフォーネを選択したのは紗代子と茉優、そしてチーム・神龍のサポートを受け持っている冬海実弥(ふゆみみみ)の三人だけと意外と少ない。

理由としてはオプションパックが他の量産機に比べてどれも機動力タイプで、そういった機体特性のクセが原因だった。

ヴェルデ・グリフォーネはロッソ・アクイラをベースとしている関係か常に動き続ける機動力タイプに分類され、まだ自身の適正が判らない者が多い1年生が選ぶ機体としては難のあるISなのだ。

だが、その代わりに装甲切換の際の切換が非常にスムーズで、動きながら切換を行っても動きがブレ難いというメリットも存在する。

それを統一チームとして使用してくるヴェルデヴィントというチームは必然的に機動力に秀でたチームであると予想が出来る。

 

「茉優達から機体特性を聞いてるからまだ何とかなりそうね」

 

「それにうちの茉優には“隠し玉”もあるものね」

 

渚はそんなグリフォーネの特性を知れた事から茉優に感謝しており、乱は茉優が紗代子らと用意した“隠し玉”はきっと切り札になると読んでいる。

 

「ふふ、鷲獅子はどんな声で鳴くのかしら?」

 

一方、もう1人のチームメイトである美与はさっきから愛用のMVB達の刃を磨いている。

 

「美与、お願いだから映画みたいなスプラッターなのはやめてよ?」

 

「善処するわ」

 

「「(試合になったら絶対忘れるな、この娘)」」

 

乱が一応注意はしたが、このスプラッター映画マニアが自重するとは思えない。

 

「紗代子、フォローよろしく」

 

「ええ、何とかするわ」

 

さて、そんなチーム・神龍の機体構成は乱が専用機である先行量産試作機の鋼竜。紗代子と茉優がグリフォーネ。渚はインパルス・イーグルを選択しており、美与は鋼だ。

同じグリフォーネでも紗代子は射撃寄りのアクイラ、茉優はバランス型のグリフォーネの基本パックをメインに使用している。

渚は近接寄りのアサルトイーグルを、美与は武器をオプション選択したMVBのナイフを複数拡張領域に格納した隼を使用する。

 

「それじゃあ行くわよ!」

 

「「お〜」」

 

***

 

『続いて第五試合!ε組からチーム・ヴェルデヴィント、α組からはチーム・神龍の登場です!』

 

『グリフォーネ統一のチームと鈴の従妹のチームだな』

 

『という訳で今回はロッソ・アクイラのテスターのアレシアちゃんと乱音ちゃんの従姉の鈴音ちゃんに来てもらいました〜』

 

『うぅ、私、場違いじゃない?』

 

『何で私まで………というか雪兎!さっきはよくも好き勝手言ってくれたわね!』

 

『お前さ、そういうとこだぞ?これ、一応中継とか入ってるからな?』

 

『………えっ?』

 

『雪兎君、それ、マジ?』

 

『お二人共、聞いてなかったんですか?今年のトーナメントは初めての試みですし、今年から本格導入になった量産機の一般公開も兼ねて中継が入ると事前に連絡があったはずですが………』

 

そう、今年のトーナメントは江里子が説明した以外にも様々な思惑が重なってTV中継がされており、実況者の役も全国中継とあって部活内で熾烈なじゃんけん大会が行われ、3年の部長を抑えて江里子が勝ち取ったものだったりする。

 

『あ〜、あん時クラスが別日の2年の部のチーム決めで揉めてたからな』

 

『織斑君関係で?』

 

『一夏関係で』

 

思わぬところで一夏に飛び火して観客席にいた一夏にカメラが向けられると「えっ!?俺!?」と一夏が慌て出す。

 

『そんな事は置いといて試合いくぞ〜』

 

『ちょっ!?』

 

『今回の見所は?』

 

『統一チームのヴェルデヴィントはともかく、神龍にもグリフォーネが2機いるからな。両チームでどういう運用の違いが出るかが見ものかな?』

 

『そっか、ロッソ・アクイラがベースだから基本的に機動力頼りになるもんね』

 

『そういう事だ』

 

雪兎が見所を語るとアレシアは開発に関与したグリフォーネの特性を思い出す。

 

『それでは第五試合、試合開始!』

 

開始直後、先に動いたのはヴェルデヴィント。

やはり機体特性を活かすべく始めは全機アクイラを装備して散開する。

 

「やっぱりそうきたわね!」

 

それを予期していた乱はバックパックから伸びる竜の頭部を模した大型の龍砲を起動させ、肩にマウントされていた龍砲球を使いチャージを短縮させ、正確な狙いもつけずに龍砲を放つ。

 

「そんな攻撃、このグリフォーネには」

 

「きゃああああ!?」

 

「何!?」

 

乱もヤケクソや当てずっぽうに龍砲を撃った訳ではない。

龍砲は言ってしまえば“圧縮空気砲”………つまり、大出力で放てば射線上の気流を大きく乱す事が可能なのだ。

そう、乱の狙いは撹乱機動によって常に動き続けている相手チームの軌道を潰し、あわよくば乱れた気流で連携を乱そうとしたのだ。

 

「どんどん行くわよ!」

 

「いかん!彼女を止めろ!」

 

最初の一発で運良く連携を乱した乱は続けて龍砲の発射態勢を取り、相手のリーダーはそれを止めさせようとするが………

 

「させませんよ?」

 

「私達を忘れてもらっては困る」

 

乱へと向かっていくグリフォーネ2機を美与の鋼と紗代子のグリフォーネが阻む。

 

「では、行きますわ」

 

美与は両手に逆手持ちでMVBナイフを握ると阻まれた事で機動力の低下したグリフォーネへと一気に接近し、相手が迎撃しようと取り出したアームブレードを弾いて態勢を崩させ、その隙に回し蹴りを叩き込む。

 

「なっ!?」

 

「ほらほらほら!」

 

態勢を崩された相手を美与はMVBナイフでジワジワと削るように連撃を浴びせていく。

 

「今援護を!」

 

そこにリーダーがスナイパーライフルを取り出して援護しようとするが、もう1機と交戦中のはずの紗代子によって銃身を撃ち抜かれて彼女の手から弾き飛ばされてしまう。

 

「こいつ、私と戦いながら!」

 

「ISはハイパーセンサーによって全方位を知覚可能なのだから利用しなくては損だろう?」

 

「嘘でしょ!?」

 

紗代子がやったのはハイパーセンサーを使って目の前の相手を見つつ、サブウィンドウでリーダーの動きも監視するという並列処理である。

一般的には全方位知覚が可能とはいえ、人間である以上自身の視覚に頼りがちになる。

その為、人間としての死角がそのまま死角になってしまう事が多いのだが、紗代子は左右で正面の相手とサブウィンドウに映る相手を正確に認識してノールックにも見える先程の射撃を行ったのだ。

また、紗代子がオプション装備として選んだ装備の1つはISからしても大型のリボルバー2丁。

これは大型化による取り回しの悪化と連射性、反動の増大と引き換えに大口径弾による威力とガンカタにも耐えうる強度を獲得した非常に使い手を選ぶ装備だ。

 

『ねぇ、雪兎君』

 

『うん?』

 

『あの2丁拳銃ってああいう使い方するやつじゃないよね?』

 

『まあ、人間で例えるなら片手でデザートイーグルを2丁使うようなもんだからな』

 

『うわっ………あの娘、そんなのでスナイパーライフルを見ずに弾いたの!?』

 

『そうなるな』

 

これには実況席のアレシアと鈴もドン引きである。

 

『それよりもあっちも面白い事になってんぞ』

 

そう言って雪兎が示したのは残る1機を追っている茉優のグリフォーネだった。

だが、そのパックは試合開始時に装備していたグリフォーネではなかった。

 

『あれ?グリフォーネにあんな装備あったっけ?』

 

というのも、茉優のグリフォーネはアクイラでもレオーネでもグリフォーネでも無いアレシアが知らないパックが装備されていたのだ。

 

『今年の1年はほんっとに面白えわ』

 

『雪兎、絶対アンタあれ知ってるわよね?勿体ぶらずに話しなさいよ!』

 

『悪い悪い、アレは元々はグリフォーネのオプションパックの試作品の1つだったんだが、学園に納品するまでに完成させられなかったパックでな。あの嬢ちゃんは偶々俺が持ち込んだオプションリストからそれを見つけて「面白そうだからこれをオプションにしてもいいですか〜?」とか言ってな』

 

『えっ、まさか………』

 

『研究会の事を聞いてわざわざ持ち込んで自分専用のパックとして完成させやがったんだよ………まあ、俺やカロリナ、それから優斗も手伝ったけどな』

 

『うわぁ………』

 

その際に茉優は雪兎達とすっかり意気投合してしまい、そのまま研究会に入ってしまった優斗に並ぶ逸材だったのだ。

そうして完成した専用パックの名は【ヒッポグリフ】と言い、元々はヴェルデ・グリフォーネの機動力強化パックとして開発されていたもの。

しかし、ただでさえ機動力に秀でたグリフォーネを強化するとあって開発が難航し結局完成しなかったのだ。

それを兎達が面白半分にあれこれ弄って完成したという経緯からグリフォーネの名の由来となったグリフォンに関連付けて本来ならありえない幻獣と言われるグリフォンと馬の交配種であるヒッポグリフの名を与えられた。

その機動力は通常のグリフォーネを遥かに凌駕するものとなっており、全速力で弾丸をばら撒きながら逃げる相手のグリフォーネを余裕で追従出来る程であった。

 

「ほらほら〜、もっと速く逃げないと捕まえちゃうよ〜?」

 

「な、何なのよそれ!?」

 

「ほら、つっかまえた!」

 

「しまっ、きゃああああ!?」

 

茉優はヒッポグリフの両腕に搭載したアンカークローで相手のグリフォーネの足を掴むとスラスターを全開にして相手を引き摺り回し、急降下しながら拘束を解いて地面に叩きつけてしまった。

 

『うっわぁ………あれ痛そう』

 

『というか、あの娘も中々エッグい事するわね………』

 

最初に龍砲の餌食になった1機は既に渚にトドメを刺されており、茉優と乱がフリーになってしまった事で残る3機も順番に倒されていき勝者はチーム・神龍となった。

 

『まさかここまで一方的な試合になるなんて………』

 

『というか、あの改造パックは有りなの?』

 

『ルールに“改造した装備を持ち込んではいけません”なんて書いてないからな。そんな事言い出したら専用機とかほぼアウトだぞ?』

 

『普通はISを自分で改造しようなんて考えないわよ、普通はね!』

 

雪兎の影響を受け過ぎて“ISを改造する”という発想に疑問を抱かなくなったアレシアに対し、元代表候補生の鈴は雪兎達が普通ではないと声高く指摘するのであった。




ヴェルデ・グリフォーネ茉優専用パック【ヒッポグリフ】

元々はグリフォーネの機動力強化パックとして開発中だったが、未完成のまま雪兎の元に流れたものを茉優が発見し技術向上研究会に持ち込んで完成させたパック。
バックパックの大型ミサイルポッド兼ブースターと各所に備えたアクティブスラスターによって機動力を強化し、両腕に備えたアンカークローによる攻撃や腰のサブアームで銃器やレーザーブレード等を扱えるようになっている。
その機動力は同世代の量産機の中ではトップクラスのスピードを誇るが、制御が非常に難しくなっており、現状では茉優の専用パックとなっている。
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