トーナメントから数日が経ったある日、レオンは雪兎から呼び出しを受けて彼が管理する研究棟にやってきていた。
「先輩からの呼び出しとか嫌な予感しかしねぇ………」
トーナメント中に相棒である鋼を何度か酷い損傷をさせてしまい迷惑を掛けた自覚のあったレオンはその事についてアレコレ言われるのではないかと思ったが、紫音や優斗からはそういう用件ではないだろうと言われホッとする。
だが、ディアーチェからは何故か同情の視線を向けられたのが上の嫌な予感に繋がっている。
「ようやくきた」
そんなレオンを入口で出迎えたのはカロリナだった。
「ゼンナーシュタット先輩?」
「名前の方でいい」
「うっす、ならカロリナ先輩で………で、カロリナ先輩が何でここに?」
「師匠に言われて貴方を迎えにきた。ついてきて」
恐る恐るカロリナの後を追って研究棟の奥へと案内されると、そこには雪兎の他に研究会のメンバーも揃っており、増々レオンは呼び出された理由がわからなくなる。
「おっ、きたか」
「あっ、はい」
「ちょっと待っててくれ、もう少ししたら“コイツ”の調整が済むから」
雪兎のその言葉にレオンが部屋の奥を見ると、そこにはダークグレーの装甲を持つ1体のISがハンガーに鎮座していた。
「このISは………」
「プロジェクトフロンティアは知ってるな?」
「えっ、あっはい!先輩達が立ち上げた新宇宙開発計画ですよね?」
「そのプロジェクトの新型IS開発チームが開発したはいいが、あまりにもじゃじゃ馬過ぎて俺に投げてきたのがコイツ、
「黒雷………」
「何か開発メンバーに日本のロボットアニメヲタがいたらしくて和名にしたんだとよ」
「は、はぁ………」
何故そんな話を自分にするのかわからないレオンはそう返す。
だが、次の雪兎の言葉は意外過ぎるものだった。
「これ、お前の今後の専用機な」
「はぁ!?じゃじゃ馬ってさっき言ってましたよね!?」
聞けば代表候補生や国家代表レベルでも持て余すじゃじゃ馬というのだからレオンの反応も当然である。
「いや〜、加速性能はピカイチなんだが、高過ぎて軽くスピード上げようとしたらトップギアまで上がっちまうような性能でな。なら止まるのはどうするんだってなったら慣性制御で強引にスピード落とすとかいう具合でな」
「それって、トップとローしかギアが無いってことじゃ………」
「そういうこった。だからそこを改良してメインスラスターだったそれを大型のサブスラスターとしてメインスラスターを通常のに取り換えたんだ」
そのおかげか通常の動作なら支障が無い範囲に収まったものの、やはり戦闘時にサブスラスターを稼働させるとハイ&ローの極端な出力になってしまうんだとか。
「何でそんな機体に俺が………」
「お前がトーナメントでやった個別連続瞬時加速の使い方、あれが決め手だ」
あの無茶苦茶なZ字走行を行えるレオンならばこの黒雷も扱えるのではないか?と目を着けたのだ。
「コアは今のを移植するし、武装面も希望がありゃ少しは聞いてやる」
「俺は………」
***
その後、レオンは黒雷を受領することを承諾し、今はその試運転の為にアリーナに来ていた。
『一次移行は問題なく済んだな』
一次移行を終えた黒雷はダークグレーだった装甲が漆黒となり、一部のフレームと縁が黄色に変化していた。
「はい、さっきよりも動かし易くなったというか、俺に最適化されたって事ですよね?」
『そうなるな』
武装は元から装備されていた実弾とビームの複合ガトリングガンの付いたガトリングシールドにグレネードランチャー付きビームサブマシンガン、出力が高くて並の慣性制御では反動で自身が後ろに吹っ飛び兼ねない専用ビームガンに加えて、レオンの要望で柄の部分を連結する事で双刃刀になるヒートブレードとアサルトライフルを追加している。
『移行後のデータも取るから出てくるドローンを色々やって落としてみろ』
「はい!」
アリーナに出現したドローンを次々と落としていくレオンはふとある事を試してみようとドローンに向かって加速し、その目前で急制止しながら回し蹴りでドローンを蹴り砕いたのだが………何故かその蹴りの軌道上に衝撃波の刃のようなものが発生してその先にあったドローンが両断されてしまう。
『………おい、今何やった?』
「えっと………制止する時の慣性制御で行き場を失くしたエネルギーを変換して衝撃波として放出した?」
『何サラッと“牙の玉璽”の牙みたいな事やってんだよ、コイツ………』
その後の検証の結果、牙としてではなく砲弾のようにも飛ばせ、少しの間ならそれを溜めておいて後から放つ事も可能だと判明した。
「牙と角の複合型かよ………確かに概念的には似たような理論使ってるとはいえ、なんつーもん作ってんだよ………それにそれを初めて使ってやらかしたコイツもコイツでおかしいし………」
多少は手を加えたとはいえ、面白半分で世に放った技術が生み出した想定外の成果とそれを使い熟してしまったルーキーに流石の雪兎も頭が痛くなる。
「………レオン」
「はい」
「お前、ウチのプロジェクト預かりにするから」
「は、はい………って、えっ!?」
「最初は黒雷をお前にぶん投げてデータだけ取らせてもらうつもりだったが、お前と黒雷放置しとくのは色々ヤバいと判断した。安心しろ、ウチの直轄になれば今より支援金増えっから」
「えぇえええ〜!?」
こうしてレオンは早くも兎一味に取り込まれる事になるのであった。
という訳でレオン君、一味の仲間入りです………時間の問題だったよね?それは言わないお約束。
次回くらいからちょっとした番外編を書こうと思ってます。
ウチのイリスの出処に絡む話となりますが、なのはではなく別の場所に雪兎と数名が出張して色々やらかす事になります。
詳しくは次回をお待ち下さい。