それはさておき、やっとISが出てきます。
新しい機体が増えます。
多少のトラブルはあったものの、無事に入学式を終えた翌日。
1年α組は実技実習の前に多くのISが置かれた格納庫へとやってきた。
「今日はお前達に在学中のパートナーとなるISを選んでもらう」
これはISコアが増産可能となった事で実現した在学中の専用機持ち以外もISを常備出来るという新たな試み。
これは今までの実習用のISしかなく、使用申請をしても必ず使える訳ではなく、自主練習等の機会が大幅に減ってしまっていた事に対する是正処置で、各国にもこれによる人材の育成充実を理由に*1押し通したもので、提案者は今やISコアの製造が可能な二人目の人物となった
この試みにはいくつかの実験的要素を含んでおり、一つは男子操者達とISコアのリンク時間を増やす事でコアネットワーク上での男子への適合を促進する事。二つ目は先も説明したように各個人にISを持たせる事での訓練時間の改善。三つ目は少し前に起きた平行世界からの介入や去年度に何度も起きたIS学園への攻撃、これに対する生徒達自身の自衛能力の向上。四つ目として各国からの代表候補生以外の優秀な人材の早期発掘の為のデータ収集。他にも細かな理由はいくつかあるが、これらの理由から兎達が多方面に呼び掛けを行って実現したのだ。
「事前に各国から寄せられた“次世代量産機”のカタログスペックは見ていたと思う。そこからそれぞれ三年間を共に過ごすものを選べ。間違っても『お友達と同じだから』等のくだらん理由で選ぶんじゃないぞ」
「この子達を用意してくれた人が言うには『きっと触れた時にこの子だ、ってくるISが見つかる』そうですよ」
並んでいるのは日本産*2の鋼にフランスのリヴァイヴⅡ、イギリスからはBTシリーズのデータから作られた量産試作機のブルー・アクシスに、ドイツからは同じくシュヴァルツェア・レーゲンの稼働データと兎由来の技術から作られた試作機のハイゼ、中国からは鋼竜の正式量産バージョンの鉄竜、アメリカからはファングクエイクのマイナーチェンジによるバリエーション機のインパルスイーグル、イタリアからもロッソ・アクイラとテンペスタのデータから開発されたヴェルデ・グリフォーネ、今年の選抜に合格したこれらのISだ。
「カタログでは見てはいたけど、ほんとに各国の最新の量産機ばかりだね」
「例年は型落ちの打鉄やリヴァイヴ、しかも数に限りがあったと考えると、ほんとに今年は色々特別なのね」
それらの実機のISを見て生徒達は圧倒されつつも、それぞれお目当ての機体へと散っていく。
「この様子を見ると専用機が与えられるって言うのも少し考えものに感じるよ」
「確かに………でも、私のはそこの鉄竜の先行量産型だからあまり変わらないわね」
一方でルークや乱といった既に専用機を与えられているメンバーは特にやる事が無かった。
「私は兄さんから貰った
「私の風舞も前のからアップデートしてあるって言ってたなぁ」
蘭が持つ風舞は以前異世界に跳ばされた際に護身用として持たされていたISの改修型で、戻ってきた際に一度返還していたのだが、IS学園に入学するという事で再び入学祝いとして貰ったものだ。
「私も雪兎お兄さんから専用機を貰いました!」
エクシアはコアが肉体と融合してしまっているという特殊な事例の為、雪兎からカリバーンと名付けられた外装を与えられており、それを融合しているコアに取り込ませた形だ。
他にもマテリアルズの五人やコメット姉妹、クロエ、そして紫音が専用機持ちとなるのだが、紫音はまだ専用機を受け取っていなかった。
「雪兎兄は入学したら渡すって言ってたけど………」
あの雪兎の事なのでまだ完成していないという事は無いのだろうが、どのような形で受け渡しをするのか紫音は全く聞いていなかった。
多くの生徒がISを選び終えた頃、格納庫の扉が開いて一人の生徒が入ってくる。
それはこの学園でおそらく生徒会長より知名度と権限を持つであろう男………天野雪兎だった。
「よっ、紫音。待たせたな」
「雪兎兄!」
「悪かったな、少しHRが長引いちまってな」
そう言って紫音の所へやってきた雪兎に高速で迫る影があった。
「先輩!お久しぶりでござっーー」
「日向、いきなり飛びかかってくるなって前にも言ったよな?」
その影こと日向の頭をアイアンクローでガッチリと掴む雪兎の様は何時だったか、
「あ〜、この懐かしき手の感触………」
「そこで恍惚とした顔するな!バカ日向!」
この時、その一部始終を見ていた生徒達は日向の知りたくもなかった本性を知る事となった。
「天野、紫陽の事はこちらに任せて用を済ませろ」
「お願いします、織斑先生」
「さあ来い、紫陽」
「あっ、先輩!?そんな御無体な!?あ〜!?」
そして、日向は雪兎から千冬へと手渡され、そのまま襟首を掴まれて引き擦られていった。
「さて、仕切り直して………初めましての顔もいるが、俺が天野雪兎だ。今後はこのクラスとも色々関わっていくと思うからよろしく頼む」
日向の突然の変貌と雪兎の登場にしばらく麻痺していた1年α組だったが直ぐに元に戻り、雪兎に頭を下げる。
「さて、紫音の専用機だが、大体のデータは先行入力済みだからあとはフィッティングくらいだ」
「そうなんだ」
「で、これがその専用機………エクストリームだ」
「これが、僕の専用機………」
そう言って空いてるハンガーに雪兎はそのISを呼び出した。
全体的には白い装甲を持ち、部分的な装甲が薄紫色をしており、一部紫の水晶体のようなパーツもある。
見た目は非常にシンプルで四肢と簡易的なバックパック、そして装備はソードライフルと思われる武器とシールドだけ。
雪兎にしては珍しい簡素と言っていいデザインである。
「もしかして、コイツも他のみたいに装甲切換タイプなのか?」
そこへ自身のISを選び終えたレオンが戻って来て呟いた。
「ご明察だ、そこの後輩君。とはいえ、コイツは少し特殊でな」
「というと?」
「今のコイツには対応する換装装備はねぇんだ」
「えっ!?」
それは未完成なのではないのか?多くの生徒がそう思う中、雪兎は続けてこう告げた。
「コイツは乗り手の成長に合わせて装備を生み出し、それを
「それで
「そういう事だ」
乗り手に応じて常に成長するIS。既存の2次移行等の段階をおいた進化ではなく、紅椿のような無段階移行に近いシステムで、まだ白紙と言っていい紫音にはある意味でピッタリな機体と言えた。
「フィッティングはほぼ自動でやってくれるから着けてからしばらくジッとしてな」
「うん」
そう言って紫音にエクストリームを装着させてオートフィッティングプログラムを走らせると既に雪兎にはやる事がなくなってしまった。
「さて、やる事も済んだし、次の準備もあるから戻るとするかねぇ」
と、雪兎が格納庫を去ろうとした時だった。
「あ、あのっ!少々よろしいでしょうか?」
アリスが雪兎に声を掛けて呼び止めた。
「うん?君は………あ〜、ローズウェルのとっさんのとこのアリス=ローズウェルだっけか?そういや娘が今年から世話になるって言ってたな」
「ち、父をご存知で!?」
「まあな、聖剣事変の前から色々と支援をしてくれてたアメリカでも珍しい企業だったからな」
「父は目先ではなく、時勢をよく見て行動しろとよく言っていましたから」
アリスの父・アラン=ローズウェルはそういう良き眼を持つ実業家で、雪兎も何度か直接話した事のあるくらいには親しくしている人物だ。
「で、俺に何か?」
「そ、そうでした!少しお伺いしたい事がありまして!」
そう言ってアリスが取り出したのはとあるリストの表示されたタブレット端末だった。
それに表示されているのは量産機の選考からは外れてしまったものの、来年以降の選考に選ばれるべく武器や各種オプション等を各国の企業から送られてきており、その中から学園関係者が厳選したもののオプションカタログである。
「実はインパルスイーグルを選ぼうと思っているのですが、そのインパルスイーグルの装備に無いオプションを探していまして」
「ほう」
詳しく聞くと、アリスは自国の機体であるインパルスイーグルを選んだのだが、自身の戦闘スタイルに合う装備が無く、オプションカタログからそれを探していたのだが、どれもしっくりくるものが無いのだという。
それを聞いてこのIS馬鹿は食いついてしまった。
この男、よく
「種類は何だ?」
「両手剣………出来ればグレイトソードを」
「ほうほう、グレイトソードか………確かにアレは癖が強いって理由で外されてたな。鉄竜が採用された関係で青竜刀タイプならあったが」
「念の為にそちらも試してみたのですが、やはり両刃の大剣の方が………」
女性にしては珍しいタイプの武装を所望するアリスを雪兎はこの段階で割と気に入っていた。なので、そんなアリスに雪兎はタブレット端末を操作してカタログには無かった武器を数点表示して見せた。
「この中にピンとくるやつはあるか?」
それは雪兎が個人的に面白いと試作品を取り寄せたり、訳有りで雪兎の元に流れてきた類いの武器であった。
雪兎からタブレット端末をひったくるように受け取ったアリスはそのリストに記載されているデータを読み漁る。
そして、一つの武器の画面を開いて手を止めた。
「ほう、そいつに目を付けたか………その眼は親父さん譲りのようだな?」
そこに表示されていたのはISの全長と同じ長さを持つ幅広のグレイトソードで、専用のバックパックにマウントする事でウイングブースターへと変形するマドカのフッケバインの【レーヴァテイン】のデータを元に開発された大剣【ストームブレイカー】という雪兎の技術提供でイギリスで製造されたものだった。
「これです!私が探していたのはこういう剣なんです!」
「山田先生〜、ちょっとカタログからは外れるけど、これ渡してもいいですか」
「えっ?この大剣をですか?」
「どうもこの娘、しっくりくる武器が無いって言うんで、選考落ちしたやつから条件に合いそうなのを見繕ってみたんですが」
「ジョイントの規格は統一規格なので何とかなりますが………かなり癖のある装備なので扱いには苦労するかと思いますが、ローズウェルさん、構いませんか?」
「はい!」
「なら現物はここに出しておくぞ」
そういうと雪兎は空いている整備用のハンガーに【ストームブレイカー】とその専用バックパックを展開する。
「扱い方はマドカに聞け。アイツもそれの元になった武器を持ってるから基本的な扱いは教えられるはずだ」
「わかりました」
「さて、一部の生徒だけ特別扱いするのもあれだし、他にも少しIS選びを手伝ってやるとするかね」
その後も雪兎は数名の悩んでいる生徒にアドバイスをしてから紫音のフィッティング完了を見届けた後「この後の準備があるので俺はこれで」と選考落ちした装備等の詰まったstorageを真耶に預けて格納庫を後にした。
尚、千冬のOHANASHIから戻った日向がそれを知って更に絶望する事になる。
「何かすげ〜人だったな、あの雪兎って先輩」
「俺、さっきあの人に『また時間空いたら呼ぶからよろしく』って言われたんだけど」
「あはははは………多分悪いようにはされないはずだから」
この時、彼ら1年α組はまだ知らなかった。雪兎が言う「この後の準備」が自分達に関係があるのだと。
という事で次回は実技実習になります。
さて、兎の準備とは一体………