ISー兎協奏曲ー第二楽章   作:ミストラル0

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零時更新が間に合わずにこんな時間になりました。
そして、ついに兎が本格的に動き出します。


5話 兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)

全員の機体が選び終わったところで、千冬と真耶は全員にISスーツに着替えて0番アリーナに集合するように伝えられた。

0番アリーナとは、昨年度末に建造されたAR技術を使った特殊アリーナの事で、設定を変更すれば如何なる運用も可能なアリーナで、他のクラスも同じく選んだISの慣らし運転を行うという事でα組はこの0番アリーナを割り振られたのだ。

まあ、今回は慣らし運転の為に通常のアリーナと同じ設定にされている。

そこへアリーナの更衣室で着替えたα組の生徒がISスーツで整列する。

 

「さて、これからお前達には順番にISに搭乗して慣れて貰う訳だが、その前に今年から導入されるカリキュラムの一つについて説明しなくてはならない」

 

新しいカリキュラム。入学式で楯無が告げていた新たな試みの一つ。それは全生徒がISを常備するだけではない。

 

「今回はお前達以外にも関係するカリキュラムでな………入ってこい!」

 

千冬がそう告げると上空から一機の純白のISが飛来してきた。それは急降下でありながら地面スレスレでピタリと停止しており、その技量を示している。

だが、α組の生徒からしたらそんなことは問題ではなく、そのISの搭乗者こそが問題だった。

 

「よっ、さっき振りだな、α組の諸君」

 

それは先程IS選びのアドバイスをしてくれた先輩である雪兎だったからだ。

 

「今回のカリキュラムは言ってしまえば上級生による指導実習だ」

 

これは2年生以上で一定の技量を認められた生徒が後輩への指導を行うというカリキュラムで、α組の指導担当に選ばれたのが雪兎他数名。今回は初回という事で雪兎だけがやってきたという訳だ。

 

「天野、今回の内容はお前に一任するが………あまりやらかすなよ?」

 

「わかってますって」

 

という事で突然始まった雪兎の指導。その初回の内容は………

 

「さて、全体への指導の前に少しだけやっておきたい事がある」

 

「やっておきたい事?」

 

「ルーク=ファイルスと凰乱音、ちょっとIS展開してみろ」

 

そう言われ、ルークと乱はそれぞれ専用機を展開する。

ルークの専用機はシルバリオ・ファング。名前からお察しの通りシルバリオ・ゴスペルのアメリカ側の開発スタッフが作り上げた全身装甲(フルスキン)に近いISだ。

一方で乱の専用機は鋼竜。鉄竜の先行試作型で尻尾のようなサブアーム兼スラスターを持つ機体だ。

 

「展開したけど、一体何をさせようっての?」

 

いきなりISを展開させられて何をさせるつもりなのかと乱が問うと、雪兎は自身の専用機である雪華にある装備を展開する。

それは進級するにあたって増えたパック類を一度整理しアップデートを施した事で再誕した旧【T:トライアル】に当たる新パック【TR:トライアルR(リメイク)】という。見た目はトライアルと同じくエッジ付きのシールドとソードライフルというシンプルな構成ながらスラスター配置や装甲のデザイン等を変更した純白の装備だ。

先程までの非武装形態からこの形態へ移行したという事は………

 

「お前達二人には俺と模擬戦をしてもらう。国で一通りの操縦は習ったんだからやれるな?」

 

「2対1でですか?」

 

「ああ、それと俺はこのパックしか使わない」

 

「随分と上から目線じゃない!」

 

憧れの人物からのハンデキャップの提案にルークは困惑し、乱は舐められてたまるかと闘志を燃やす。

 

「他の子らはとりあえず見てな。ついてこい」

 

そう言って雪兎が浮上すると、ルークと乱もそれを追ってアリーナの上空へと向かう。

 

「なあ、紫音」

 

「何?」

 

「お前の兄貴って強いのは知ってるんだが、あの二人相手に勝てんのか?」

 

レオンは去年度の年度末トーナメントの戦闘を映像で見た事があるので1対1の戦闘なら雪兎があの二人に負けっこないのは知ってる。

しかし、雪兎の真骨頂と言える装甲切換無しにあのシンプルな装備であの二人を相手出来るのかは疑問であった。

が、そんな疑問に対して紫音の回答はあっさりとしたものだった。

 

「目を離さない方がいいよ、多分すぐに終わると思うから」

 

紫音は知っている。雪兎が時々いつもの特訓メンバー相手に2対1で相手しているという事を。

 

「鈴はアレコレ言ってたけど、この最新機相手にそんな貧弱な装備で勝てるなんて思わない事ね!」

 

「待って!」

 

鈴への憧れと対抗意識を持つ乱は青竜刀を手にし、オプション装備の一つである近接戦闘パック・雷爪でルークの制止を無視して雪兎に斬りかかる。

 

「奥せず向かってきたは良し、でもまだまだ甘い」

 

しかし、雪兎は迫る青竜刀を最低限度の動きで右に避け、その青竜刀の側面をエッジシールドで殴る事で乱の態勢を崩し、そこへいつの間にかチャージしていたソードライフルのチャージショットを叩き込む。

 

「うわぁ!?」

 

「乱音さん!」

 

「おいおい、余所見はいかんぞ?」

 

「しまっ」

 

チャージショットで弾き飛ばされた乱にルークが意識を向けたその一瞬でルークとの距離を詰めていた雪兎の蹴りがその腹部を捉え、ルークも乱と同じように弾き飛ばされてしまう。

 

「………めっちゃ強くね?お前の兄貴」

 

「あれでもまだマシな方だよ?いつもだったら弾き飛ばす方向を同じにして二人まとめて弾幕の追い打ちくらい普通にするし」

 

「マジ?」

 

そうこうしている間に復帰した乱とルークが2方向から同時に仕掛けるも、ソードライフルとエッジシールドで容易くあしらわれ焦った乱が龍咆をルークにFF(フレンドリーファイヤ)させられてしまう。

そこを追撃してルークを撃墜判定にすると、完全にパニック状態となった乱にトドメを刺し、二人は雪兎に一撃も食らわせる事が出来ずに模擬戦は終了となった。

 

「う〜、マスターだけ楽しそう!」

 

「レヴィ、また機会はありますよ」

 

あの模擬戦を見てほとんどの生徒が絶句している中、レヴィは羨ましいとばかりに拗ねており、それをユーリが宥めている。

また少し離れた場所ではキャーキャーと黄色い声をあげる日向がいた。

 

「………あれが兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)

 

誰かがポツリと呟いたその言葉でα組の生徒は改めて天野雪兎という人物の規格外さを思い知るのであった。




という訳で雪兎VS乱、ルークコンビでした。
二人が選ばれた理由は雪兎と直接関係の無い専用機持ちという理由です。

【TR:トライアルR】
【T:トライアル】の改修型のパック。
これまでの運用データから最適化された仕様のパックで、装備は雪華の基本装備である改修型ソードライフルが予備を含めて2つとレーザーブレードが2つ。専用のクリアパーツのエッジが取り付けられたエッジシールドという構成で、非常にシンプル。
雪兎が試作した装備をテストするテストベッドでもある。
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