出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。Season2の開幕となります。
お楽しみ頂ければ、幸いです。



序章 家庭訪問と小旅行編
第1話:家庭訪問


根津side

 

『ヒーロービルボードチャートJP! 事件解決数、社会貢献度、国民の支持率など諸々を集計し毎年2回発表される現役ヒーロー番付!!』

『不動のナンバー(ワン)がまさかの!! 日本のみならず、ヒーローの本場アメリカでも騒然!!』

『オールマイト、本当の姿! 体力の限界! ナンバー(ワン)の座を返上し、第一線から退く事を表明!!』

『そしてナンバー(フォー)ヒーロー、ベストジーニスト! ナンバー10(テン)ヒーロー、ギャングオルカ! ナンバー28(トゥエンティーエイト)ヒーロー、シンフォニックのメンバー、カデンツァ、ウイング、レゾナンス、サンライト、ムーンライト、期待の若手Mt.レディ!』

『それぞれ怪我の治療に専念する為、1ヶ月から2ヶ月程度の活動休止を表明!!』

『更にナンバー32(サーティーツー)ヒーロー、根強い人気のワイルドワイルドプッシーキャッツが1人、ラグドール! 拉致後“個性”が使用出来なくなるという変調から、活動を無期限見合わせ!』

『一夜にして、多くのヒーローが大打撃を受けた“神野の悪夢”! これからどうなる日本! そしてヒーローよ! 以上、今日のクイックニュースでした!』

 

 目的にしていたコーナーの終了と同時にテレビを消し、僕は机の前に立つオールマイト、相澤先生(イレイザーヘッド)管先生(ブラドキング)の3人の方へ椅子を回転させる。

 そして、神妙な顔で直立不動の3人へ楽にするよう促すと―

 

「その身を犠牲に多くを救ってくれた。国民、ヒーロー、そして校長として感謝してもしきれない」

 

 オールマイトへ深々と頭を下げた。これで終わりに出来れば良いのだけれど、そうもいかないのが、校長の辛いところだね…。

 

「ただ…世間では、君が雄英教師を続けるのに、少なからず批判意見も出ている…」

「『元はと言えば、オールマイトが雄英に赴任したのが問題』『戦えない体になった今こそ、再び子ども達が巻き込まれるのでは?』……」

「まぁ、尤もらしい理屈をつけてはいるけど、一番の理由は不安(・・)なのさ。だからこそ、今度は我々で紡ぎ、強くしていかなきゃならない。これまで君が繋ぎ止めていたヒーローへの信頼をね」

「恥ずかしながら、あの一件で気づかされました。知らず知らずの内に、貴方1人へ背負わせてしまっていた事、背負わせていたものの大きさ…」

 

 僕に続くように口を開いた管先生(ブラドキング)の言葉に頷きつつ、僕は本題へと入る。

 

「脅威はまだ拭いきれていない。だからこそ、これからはより強固に守り育てなければならない。そこで兼ねてより考えていた案を実行に移すのさ」

「僕と管先生(ブラドキング)は被害の大きかったB組へ、オールマイトと相澤先生(イレイザーヘッド)はA組へ…」

「よろしく頼むね。家庭訪問」

 

 全寮制の導入。新学期のスタートまで、あと2週間弱。時間との勝負になりそうだ。

 

 

相澤消太(イレイザーヘッド)side

 

 校長からの指示を受けたその日から、俺とオールマイトさんは行動を開始。生徒やご両親の都合を確認しながら日程を調整。家庭訪問を行っていった訳だが…。

 

「んー……ロックじゃないよねぇ…」

「情報が漏れていたのはマスコミのせいだし、大事にも至らなかった…とはいえ、(ヴィラン)の襲撃を許して、大切な1人娘が被害に遭ったのは事実な訳で、そのすぐ後にしれっと全寮制にしますって」

 

 当然、親御さんの反応は厳しいものが予想され、初日の1件目に訪問した耳郎のご両親からの反応も芳しいものではなかった。

 

「お父さんの仰る事はごもっともです。しかし…我々も知らず知らず芽生えていた慢心・怠慢を見直し、やれる事を考えております。どうか今一度、任せては頂けないでしょうか。かならず、響香さんを立派なヒーローに育て上げて見せますので…」

 

 だが、俺達に出来るのは、真摯な態度で頭を下げるだけだ。深々と頭を下げていると―

 

「あぁ、先生。いいスよ。頭なんか下げなくて!」

 

 耳郎がそんな事を言いながら入室してきた。そして―

 

「このオッサン。神野区の(あの)戦い観て、『こんなロックな人に教えてもらえるなんて、ウチの娘マジブライアンザサンだぞ!』って泣いてたらしいスもん」

 

 俺達によく冷えたアイスコーヒーを差し出しつつ、真相を暴露してくれた。

 

「響香やめろ! 折角厳格な父親で通そうとしてんのに!」

「うっさいな、オッサン」

「2人ともやめてよ。ラウドパンクじゃないんだから」

「「………はい」」

 

 父子喧嘩を開始しそうな2人を窘め、黙らせる耳郎のお母さん。この家での力関係が見えた気がするな…。

 

「私個人としては、響香の望むとおりにさせてやりたいと考えています。何より…雄英には好きな人(・・・・)がいるみたいですし」

「「はぁぁぁぁぁっ!?」」 

 

 いきなり過ぎる告白(カミングアウト)に揃って驚きの声を上げる父子。その後、紆余曲折はあったが…全寮制には同意してくれたから、良しとしておこう。

 

 

「もっと非難されるものと覚悟していました」

 

 家庭訪問を始めて3日。幸いにも、いや不思議な事に、と言うべきか…親御さんからは厳しい意見を頂戴する事はあっても、雄英高校や我々への直接的な非難は驚くほど少なかった。

 恐らくは、隣に座るオールマイトさんの活躍に、心打たれた人が多いということなんだろう…。

 

「………家庭訪問が終わったら、一杯奢ります」

「ハハハ、よせやい。らしくないよ。それに…私、お酒飲めないんだ」

「………じゃあ、烏龍茶でも」

「それじゃあ…ご馳走になろうかな」

 

 そんな会話を交わしながら、今日の訪問先である吸阪と緑谷の家へと向かっていく。このまま行けば、あと20分程で到着する筈だ。

 

「あ…そう言えば、この近くだったね……爆豪少年の家」

「……寄ってみますか? 少しなら時間にも余裕があります」

「………うん、頼むよ」

 

 オールマイトさんが思い出したように呟いたのは、その時だ。すぐさま、車の進路を変更する。

 いつもなら非合理的だと切って捨てていたが…今回は仕方ない。

 

「ここが…爆豪少年の家、か…」

()が付きますけどね。今は、誰も住んでいません。もっとも、住めるような状況でもありませんが…」

 

 噛みしめるように呟くオールマイトさんに答えながら、廃墟と化した爆豪の家に視線を送る。

 俺が爆豪を除籍にした翌日、奴は自ら家に火を点け、失踪。次に姿を見せた時には(ヴィラン)絶無へと変わり果てていた。

 未成年という事で警察は、絶無の身元を非公表としていたが…神野区での戦いの際、奴の姿がマスコミのカメラに映った為、ネットを中心にその正体が拡散。

 今では絶無=元雄英生の爆豪勝己という事が、多くの人に知れ渡っている。

 

「それにしても…酷いものだ」

 

 オールマイトさんは、庭に投げ込まれたゴミの山や、壁にスプレーで書かれた『ここは(ヴィラン)の生家!』『悪の巣窟!』などの落書きに心を痛めているようだ。気持ちは解るが、過度な感傷は非合理的だ。

 

「そろそろ行きましょう。予定の時間に遅れます」

「あぁ…」

 

 俺達は車に乗り込み、本来の目的地へ向かう。

 

「そう言えば、爆豪少年のご両親はどうしているんだっけ?」

「…公安の保護下にあると聞いてます。母親の方は精神を病んで、警察病院に入院中。父親も職を失ったとか…」

「そうか…」

 

 雰囲気が暗くなったな。約束の時間には…間に合いそうだ。

 

 

オールマイトside

 

「どうぞ、お上がりになってください」

 

 リラックスした様子の吸阪少年と緑谷少年。そして僅かに緊張した様子のお母さんに一礼し、私と相澤君は家へと上がらせてもらう。

 リビングへ続く廊下を歩く間、目に入ってくるのは様々なポスターやフィギュアといった私のグッズ。緑谷少年の趣味がよくわかる。

 

「外は暑かったでしょう。アールグレイのアイスティーを淹れましたので、まずは一杯」

「やぁ、これはありがたい」

「…すまんな」

 

 吸阪少年が淹れてくれたアイスティーを受け取り一口。この猛暑で火照った体が程良く冷えたところで―

 

「えー…事前にお話が言っているとは思いますが、雄英の全寮制について…」

 

 相澤君が本題を切り出した。それに対するお母さんの反応は…。

 

「はい、えと…その件ですが……私、嫌です」 

 

 十分に予想出来るものだった。

 

「お母さん、何言ってるの!? 一昨日、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんと一緒に話し合った時は、良いって…!」 

「あの時は言ったよ。でも、やっぱり考えが変わったの」

「そんな…」

 

 だが、緑谷少年にとっては衝撃だったのだろう。椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり、焦った顔でお母さんを問い詰めるが―

 

「出久、落ち着け。姉さんには姉さんなりの考えがあるんだ。まずはそれを聞いてあげないと…な?」

「う、うん…ごめん、お母さん」

 

 吸阪少年に宥められ、謝罪しながら席についた。お母さんもゆっくりと深呼吸をしてから、我々の方を向き―

 

「出久は“個性”が出なくて、一度は全てに絶望しかけました…」

 

 自分の思いを語り始めた。

 

「でも、弟が…雷鳥が出久に希望を与えてくれて、10年以上共に歩んでくれました。そして、去年の春、奇跡的(・・・)に“個性”が発現して、雄英にも入れて、ずっと憧れだったオールマイト(あなた)の弟子にもなれて…」

「ひたすらに努力して、少しずつ夢を形にしていく息子や弟の姿を見るのは、母親として、姉として誇らしかった」

「でも、先日の戦いを見て、思ってしまったんです。2人をこのまま進ませていいのか? って」

「もちろん、1人の一般市民としては、とても感謝しています。だけど、親としては、家族としては…怖くなったんです」

「雄英体育祭の最後に、貴方は言いましたよね? 2人は私の後継者となると…」

「……はい」

「貴方の後継者となった2人には、どんな未来が待っているんですか?」

「それは…」

「失礼ながら、お聞きします。奥様やお子さんは?」

「………どちらも、おりません」

「結婚もせず、家族も持たず、今の貴方の様に痩せ衰え、命を削りながら戦って、それでも報われないかもしれない。マスコミの悪意に晒されるかもしれない…」

「2人の行く末がそんな血みどろで、希望がない未来なら、私は…私…」

 

 ここまで言うとお母さんはハンカチで涙を拭うと―

 

「ハッキリ申し上げます。出久の母として、雷鳥の姉として…今の雄英高校に2人を預けられるほど、私の肝は据わっておりません」

「貴方がたが、どれだけ素晴らしいヒーローでも関係ありません。(ヴィラン)に狙われて、まともに授業を続けられない。実力が、才能があるからと学生を戦いに巻き込む。そんな学校にこれ以上通わせたくない…私は…」

 

 私と相澤君を睨みながら、宣言した。

 

「「………」」

 

 お母さんの言葉に、私達は何も言う事が出来ない。お母さんの訴えは至極尤もだ。特に、エンデヴァーやグラントリノと話し合った結果とはいえ、オール・フォー・ワンとの戦いに2人を連れて行った件に関しては、言い訳のしようがない。

 

「モンスターペアレンツかもしれません。でも、モンスターでいいです。私は2人の夢を奪いたくないんです」

「どうしてもヒーローになりたいなら別に……雄英でなくても、ヒーロー科はたくさんありますよね。2人は辛い選択を強いる事になりますけど…」

 

 その言葉の後、室内を沈黙を包む。そして、その沈黙を破ったのは―

 

「……そうだな。ヒーロー科は山ほどある」

「雄英に拘る理由は、無いかもしれないね」

 

 吸阪少年と緑谷少年だった。

 

「職場体験で(ヴィラン)が奪ったお金を取り返した時、持ち主の女の人が凄く喜んでくれた。保須市で(ヴィラン)に襲われている人を助けた時には、泣きながら命の恩人だって言ってくれた」

「そして、合宿の時に助けた子は…ヒーローどころか、“個性”まで嫌っていたのに、ありがとうって言ってくれたんだ…嬉しかった。選んだ道が間違いじゃないって思えた。だから…」 

「雄英でなくたって…どこだって、いいよ! 僕は、ヒーローになる…から!」

「俺は元々、出久を最高のヒーローにする事が目的な訳だし…学校に関しては、どこでもいいって言うのが本音かな」

 

 2人の言葉を聞いた瞬間、私は勢い良く立ち上がってマッスルフォームに変化。同じく立ち上がった相澤君と共に、お母さんへ土下座した。

 

「え…なっ、ちょっと…!? やめて下さい。何ですか!?」

「平和の象徴…だった者としての謝罪です。2人の才能に甘え、師匠としての責任を果たせなかった事、深くお詫びいたします」

「同じく、1-A担任として…2人の優秀さに甘え、担任としての働きが不十分であった事を、深くお詫びします」

「そして、ここからは雄英教師としての懇願です。たしかに、私の道は血生臭いものでした…! だからこそ、2人には同じ道を歩ませぬよう横に立ち、共に歩んでいきたいと考えております」

「『今の雄英』に不安を抱かれるのは、仕方のない事です! しかし、雄英ヒーロー達もこのままではいけないと…変わろうとしています!」

「オールマイト…! 相澤先生…!」

「どうか、『今の』ではなく、『これから』の雄英に目を向けて頂けないでしょうか…!!」

「そして、願わくば…2人に私の全てを注がせてはもらえないでしょうか!!」

「この命に代えても…守り、育てます!」

 

 私と相澤君の懇願に、お母さんは思わずその場にへたり込み…

 

「………やっぱり、嫌です」

 

 暫しの沈黙の後、拒絶の意思を口にされた。駄目だったか…。

 

「だって、貴方は出久の生きがいなんです」

「ッ!」

「ヒーローが嫌いな訳でも、雄英が嫌いな訳でもないんです…私、2人に…幸せになってほしいだけなんです…だから」

「命に代えないで、ちゃんと生きて、守り育ててください」

「それを約束して下さるのなら、私も折れましょう」

「お母さん…!」

「約束、します!」

「担任として、全力を尽くします」

 

 最大限の譲歩をしてくれたお母さんに、私と相澤君はそう答え…家庭訪問は終了した。

 

 

「2人とも、良いお母さん、良いお姉さんを持ったな」

 

 相澤君が車を取りに行っている間、私は吸阪少年、緑谷少年とお母さんについて話していた。

 

「はい!」

「自慢する気はありませんが…最高の姉ですよ」

 

 -命に代えないで、ちゃんと生きて、守り育ててください-

 

 ナチュラルボーンヒーローをやってきて…そんな事、久しく言われなかった。強い人だ。まるで―

 

「お師匠…どことなく先代と似ているよ」

「姉さんが…ですか?」

「……そういえば、どことなく似ていますね。髪とか、目鼻立ちとか」

 

 お師匠の顔を知っている緑谷少年には、私の言いたい事が伝わったようだ。 

 

「まぁ、姉さんが先代に似ているかはさておき…オールマイトもそろそろ身を固めるべきかと…。元ナンバー(ワン)ヒーローがいつまでも独り身じゃ、対外的にもよろしくないのでは?」

「………吸阪少年。君って時々、年寄り染みた事言うね」

「精神年齢は高めだと自覚していますので」

 

 そんな会話を交わしていると、相澤君が車を回してくれた。

 

「それじゃあ、2人とも! 残り少ない夏休みを有意義に過ごしたまえ!」 

 

 そう言い残すと私は車に乗り込み、雄英高校へと急ぐ。新学期が始まるまでに、少しでも教師として成長するために!

 

 

雷鳥side

 

 家庭訪問も無事に終了し、俺と出久は新学期から寮生活となった。その事を、1-AのグループLINEで皆に知らせていると―

 

「ん? 八百万からか…なになに、『夏休みの思い出を皆で作りませんか?』か…」

 

 どうやら、八百万が色々と手配してくれたようだな。2泊3日の旅行。出発は3日後か…何が起きるか、楽しみだ。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回より数話にかけて、夏休みの旅行編をお送りします。
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