出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
少々短いですが、お楽しみいただければ幸いです。

また、第68話の展開を一部修正しております。話の流れに変更はありません。


第69話:1年A組vs(ヴィラン)集団‐その3‐

切島(レッドライオット)side

 

 島役場に避難した住民の無事を八百万(クリエティ)達が確認するのと並行して、俺は烈怒守吠羅流刃烈斗(レッドスパイラルバレット)で吹っ飛ばした(ヴィラン)を拘束していく。

 完全に意識を失っているし、右腕と左脚がおかしな方向に曲がっているから大丈夫だとは思うけど、念には念をだ。

 

「これでよしっと」

 

 (ヴィラン)の拘束を終えるのとほぼ同時に、八百万(クリエティ)達が島役場から出てきた。俺も、(ヴィラン)を担いで皆と合流し、情報を共有していく。

 

「島役場に避難した皆さんの中に怪我人などは無し。全員、西地区へと避難されるそうです」

「それで、ウチ達に念の為の護衛に就いてほしいって話になってる」

「拘束した(ヴィラン)の事もあります。ここは二手に分かれるべきかと」

「そうだな…よし! (ヴィラン)の方は、俺が責任持って事務所へ護送する。だから皆は護衛の方に回ってくれ!」

 

 八百万(クリエティ)耳郎(イヤホン=ジャック)から話を聞いた俺は、そう判断するけど―

 

「ちょーと待った! 切島(レッドライオット)1人で(ヴィラン)を護送するのは、避けた方が良いと思う」

「あぁ、万が一にも(ヴィラン)の仲間が取り返しに来たりしたら、色々と面倒だ」

 

 芦戸(ピンキー)と心操がそう指摘してきた。そうだな、そのあたりを考える必要もあるか…。

 

「だから、護送には私も付き合うよ!」

「オイラも付き合うぜ! 多目的発射器(ランチャー)(カートリッジ)も補充しなくちゃならないからな」

「すまねぇ、頼むぜ」

 

 名乗りをあげた芦戸(ピンキー)峰田(グレープジュース)に頭を下げた俺は、住民の護衛に就く八百万(クリエティ)達と別れ、(ヴィラン)の護送を開始する。

 慎重にかつ急いで護送を終わらせないとな!

 

 

瀬呂(セロファン)side

 

「はぁぁぁっ!」

 

 (アブソリュート)が右腕を振るって放つ地を這う氷結。命中すれば長時間は無理でも多少は(ヴィラン)の動きを封じられる。筈なんだけど…

 

「ウォォォ…デェイッ!」

 

 (ヴィラン)は咆哮と共に左腕を振るい、氷結を迎撃。逆に木っ端微塵に粉砕しちまった!

 

「くぅっ…」

 

 氷結を粉砕した余波で生じた突風を咄嗟のガードで防ぐ(アブソリュート)だが―

 

「あっ!」

「デァァァッ!」

 

 その隙を狙って放たれる(ヴィラン)の攻撃!

 

「やらせるかよっ!」

 

 間一髪、俺のテープが間に合って回避に成功するけど、(アブソリュート)の代わりに|拳を叩き込まれる羽目になった砂浜には、巨大な穴が出来上がった。

 

「クソッ、パワーでねじ伏せてきやがる」

 

 (アブソリュート)の口から漏れる忌々しげな呟き。それは俺達全員の思いと言っても過言じゃない。

 緑谷(グリュンフリート)級のパワーに、見た目をはるかに上回るタフネス。おまけにスピードも並以上ときてる。

 細かい技を使ってこないのが幸運と言え…いや、使ってこないんじゃなくて、使()()()()()()()って事だな。

 

飯田(インゲニウム)、打つ手は?」

「今は奴を釘付けにする事だけを考えるんだ。島民の避難が完了するまで!」

 

 飯田(インゲニウム)の声を聴きながら、俺は避難状況を素早く確認。残り4割弱ってところか…急いでくれよ、口田(アニマ)麗日(ウラビティ)梅雨ちゃん(フロッピー)

 

「うぉぉぉっ!」

 

 そこへ、再び咆哮をあげながら突っ込んでくる(ヴィラン)。俺は咄嗟に短弓(ショートボウ)モードのシックルシューターを構え―

 

「これなら!」

 

 最大出力で発射! 放たれた光の矢(レーザースタンアロー)は狙い通り、(ヴィラン)の右肩に命中したけど…

 

(いて)ぇじゃねぇか!」

 

 多少の痛みを与えただけだった。並の(ヴィラン)だったら、軽く15分は動けなくなる筈なのに…なんて奴だ!

 

「闇を纏いて力と成す! 深淵闇躯(ブラックアンク)!!」

「レッグクローラー! 出力全開!」

 

 それでもホンの一瞬だけ、僅かにだが奴の動きを鈍らせる事が出来た!

 半ば反射的に常闇(ツクヨミ)砂藤(シュガーマン)が飛び出し―

 

「必殺! 堕天使の手斧(ルシファーズトマホーク)!!」

 

 まずは常闇(ツクヨミ)が、(ヴィラン)の顔面目掛けて、跳び回し蹴り!

 

「エクラゼ! ナックル!!」

 

 続いて、砂藤(シュガーマン)の放つ必殺の鉄拳が、(ヴィラン)の顎に炸裂!

 

「ぐぉっ…」

 

 顎に強烈な一撃を受けた事で脳が揺れたのか、僅かによろめく(ヴィラン)

 

「うぉぉぉぉっ!」

 

 そこへ突撃するのは飯田(インゲニウム)

 

「ぬぁぁっ!」

 

 迎撃で放たれた(ヴィラン)の一撃を横っ飛びで回避すると同時に視界の外へ移動。

 

「レシプロ! タービュランス!」

 

 そのまま(ヴィラン)の真横から跳びかかって、左の側頭部に三段蹴りを叩き込んだ!

 

「ぐぉぉぉぉぉっ!」

 

 声をあげながら海へと吹っ飛び、派手な水飛沫をあげながら着水する(ヴィラン)。並の相手ならこれでKOだけど…

 

「舐めんじゃねぇぞ!」

 

 アイツは並の(ヴィラン)じゃない。だから、立ち上がる事も想定内だ。

 

「尾白流格闘術! 旋尾斬!」

海魔の双槌(クラーケンハンマー)!」

 

 間髪入れずに打ち込まれるのは、尾白(テイルマン)の尻尾の一撃と、障子(テンタコル)の諸手突き!

 さっきとは逆に、海から陸へと吹っ飛ばされた(ヴィラン)。なおも立ち上がろうとするけど…

 

不死鳥の眼光(フェニックスグレア)!!」

 

 駄目押しで放たれたのは、(アブソリュート)の必殺技!

 

「よしっ!」

 

 熱線と見紛う程に圧縮された炎が命中し、爆発に飲み込まれる(ヴィラン)を見て、俺は勝利を確信した。

 あれだけの攻撃を叩き込んだんだ。いくら何でも戦闘不能になってる筈だ!

 

「やるじゃねぇか…」

「え…」

 

 その声と共に爆発で生じた砂煙が晴れ…俺は、想定の甘さを痛感した。

 たしかに、アイツには相応のダメージを与える事が出来た。それは間違いない。だけど―

 

「まさか、ここまでやられるとは思ってなかったぜ。大したもんだ!」

「だからよ…俺も本気を出して戦えるってもんだぜ!!」

 

 アイツはまだ、本当の意味での()()()()()()()()()()()…。

 

「俺の“個性”はスロースターターでな! 発動しても暫くは全力が出せねぇんだ!」

「全力を出すのは久しぶりだ…頼むから、さっさと死ぬんじゃねぇぞ!!」

 

 その声と共に、(ヴィラン)の頭には山羊のような角が、背中には蝙蝠みたいな翼が生え…尻尾の先端がコブラみたいな毒蛇へと変化した。

 

「なんという…あれはまるで…キメラだ」

「そう! 俺の名はキメラ! 最強の異形系“個性”だ!」

 

 常闇(ツクヨミ)の声に答えるように叫ぶキメラ…こいつは、予想以上の怪物だぜ…。

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

VECTOR(ヴェクター)! スマッシュ*1!」

 

 (ヴィラン)の張る空気の壁には、スナップショットじゃ威力不足。そう判断した僕は、(ヴィラン)の周りを動き回りながら拳を振るい、衝撃波を連続で放っていく。

 

「…拳を振るって衝撃波を放つか……空を飛ぶ“個性”だと思ったが、違うのか?」

 

 放たれた衝撃は空気の壁に阻まれるけど、それでも構わない! 奴を真幌ちゃんや活真君に近づけさせない為にも、ここで足止めする!

 

「ここで―」

 

 釘付けにする。そう叫ぼうとした瞬間、何かに突き飛ばされるように僕の体は15m近く浮き上がった。突風? いや、衝撃波だ!

 

「………」

 

 間髪入れず、奴の右手から弾幕のように放たれる無数の爪。咄嗟に防御を固めつつ、『浮遊』を発動して回避を試みるけど、全てを回避する事は出来ず―

 

「くっ…」

 

 爪が掠めた事で、左頬に出来る横一文字の傷。このくらいなら何の問題も無い。だけど、今の突風も“個性”に依るものだとしたら、奴が使用した“個性”はこれで3つ。

 3つで打ち止めだという保証がどこにもない以上、()()()()()()()()()を想定して動くべきだ! 

 考えを巡らせながら着地した僕は、一旦(ヴィラン)から距離を取ると―

 

「相手の能力は未知数。それなら出方を窺うより…今出せる全力で先手を打つ!」

「ワン・フォー・オール、フルカウル! 57%!」

 

 『フルカウル』の出力を57%(自壊半歩手前)まで引き上げ、一気に突撃!

 

HYDRA(ハイドラ)!スマァァァァァッシュ!!」

「ッ!?」

 

 咄嗟に張られた空気の壁ごと、(ヴィラン)を蹴り飛ばした!

 

「やったか?」

 

 余波で雑木林の一角が更地となるほどの攻撃を叩き込んだ。その事に一定の手応えを感じながらも、僕は濛々と立ち込める土煙の奥にいるであろう(ヴィラン)に対し、警戒を解く事が出来ずにいた。

 今の攻撃で倒せていれば最良だけど、奴から感じた()()()()()がそう思う事を許してくれない。一瞬でも気を抜けば―

 

「グリュンフリート?」

「ッ!?」

 

 突然背後から聞こえてきた声に、僕は耳を疑った。2人とも、逃げたんじゃなかったのか!?

 

「2人とも! どうして戻ってきたんだ!」

「ッ! ご、ごめんなさい…」

「も、もう大丈夫だって思ったから…(ヴィラン)はやっつけたんでしょ? あんな凄い攻撃なら…」

 

 思わず出してしまった大声に、涙目になりながら謝る活真君。真幌ちゃんも楽観的な想定をしているけど…

 

「今の攻撃で(ヴィラン)を倒せた保障なんて無いんだ。今からでも遅くないから、すぐにここを―」

 

 離れるんだ。そう続けたかった言葉は、土煙の奥から弾幕の様に放たれる無数の爪によって阻まれる。

 

「はぁぁっ!」

 

 僕は咄嗟に2人を背後に庇い、『黒鞭』を左右3本ずつ、計6本発動。そのまま手首を軸に高速回転させ、シールド代わりにする事で放たれた爪を尽く弾いていく。

 

「2人とも! 今のうちに逃げるんだ!」

「う、うん…」

 

 僕の声に何とか返事を返し、活真君を連れて逃げようとする真幌ちゃん。だけど…

 

「空を飛ぶ“個性”、超パワーの“個性”、黒い縄のような物を自由に操る“個性”……お前、潜在的に複数の“個性”を持っているな」

「ッ!」

 

 それよりも早く、土煙の向こうからゾッとするような声が聞こえてきた。そして―

 

「残念だが()()()()()()()()()()()。脅威となる存在は…排除する」

 

 次の瞬間、土煙を一気に吹き飛ばしてこちらへ向かってきたのは、さっき僕を空中に浮き上がらせた衝撃波!

 

HYDRA(ハイドラ)!スマァァァァァッシュ!!」

 

 咄嗟に僕も右足を振り抜き、衝撃波を放つ事でこれを相殺。

 

「もう一発!」

 

 続けて左足を振り抜こうとするけど―

 

「きゃぁぁぁっ!」

「ッ!?」

 

 それよりも早く、地面を突き破って青い竜のような怪物が姿を現した。まさか、これも奴の“個性”なのか!?

 

「くぅっ!」

 

 半ば反射的に左腕の『黒鞭』を操作し、活真君に襲い掛かろうとした怪物を絡め取って、その動きを封じる。

 片方を怪物の拘束に回した分、弾幕の防御が厳しくなるけど…大丈夫、まだ耐えられる!

 

「やるな…だが、これは防げるか?」

 

 表情一つ変える事無く、再び衝撃波を放つ(ヴィラン)。僕は再度、右足を振り抜いて衝撃波を放ち、相殺するけれど―

 

「ぐぁぁぁぁぁっ!」

 

 衝撃波を相殺した瞬間、頭上から降りそそいだ雷をまともに食らってしまった。雷、を…操る“個性”ま、で…

 

 

真幌side

 

「あ、あぁ…」

 

 (ヴィラン)の攻撃から私と活真を守ってくれていたグリュンフリートが、雷に打たれて倒れる光景を前にして、私は自分の行動を心底後悔した。

 

「私のせいだ…」

 

 丘の上から見えた…グリュンフリートが(ヴィラン)を吹き飛ばす姿に、もう大丈夫だって安心しきってた。

 

「私が戻ろうなんて思ったから…」

 

 私と活真を庇ってなかったら、グリュンフリートはこんな事にならなかったかもしれない…。

 

「2人とも…逃げ、るんだ…」

「グリュンフリート!」

 

 ボロボロなのに、それでも立ち上がって私達を守ろうとするグリュンフリート。

 

「奴の狙いは…君た…」

 

 だけど、(ヴィラン)はそんなグリュンフリートを嘲笑うように攻撃を放って…

 

「ぐぅぅぅ…」

 

 グリュンフリートはたちまち全身ボロボロになっていく。

 

「早く…行くんだ!」

「あ、あぁ…」

 

 それでも必死に私と活真を逃がそうと(ヴィラン)に立ち塞がるグリュンフリート。

 

「いや、いや……」

「いやぁぁぁぁぁっ!!」

 

 その瞬間、私は絶叫と共に“個性”を発動。今作れる最大サイズでグリュンフリートの幻影を作り―

 

「誰かグリュンフリートを…グリュンフリートを守ってぇぇぇっ!!」

 

 声の限り助けを求めた。そして、その助けは…すぐに現れた。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

「ッ!」

 

 物凄いスピードで(ヴィラン)に突撃して、手にした剣を叩きつけるヒーロー。あれって…

 

「…その剣、相当な業物と見た」

「正解だ。ご褒美にぶった斬ってやる」

雷鳥兄ちゃん(ライコウ)…」

「あの人…」

「ライ、コウ…」

「遅くなった! ここからは、俺が引き受ける!」

 

 (ヴィラン)から一旦離れながら、剣を構え直したライコウは、そう言って(ヴィラン)へと向かっていく。

 お願い! ライコウ! (ヴィラン)をやっつけて!!

 

*1
この場合のヴェクターは『ベクトル』ではなく、クリスUSA社製のサブマシンガン『KRISS Vector』を意味




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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