出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。第72話を投下します。
お楽しみいただければ幸いです。


第72話:1年A組vs(ヴィラン)集団‐その5‐

常闇(ツクヨミ)side

 

 まだ夜も明けきらぬ早朝。島民の避難と(ヴィラン)迎撃の準備を並行して行いながら、俺は数時間前に行われた作戦会議、その内容を思い返していた。

 

 

緑谷君(グリュンフリート)、そろそろ頼む」

 

 我々と村長さんが島の全体が写された航空写真に注目する中、飯田(インゲニウム)の声が響き―

 

「それじゃあ、作戦について説明します」

 

 緑谷(グリュンフリート)が指示棒を使いながら、作戦について話し始めた。

 

「確認出来た(ヴィラン)は3人。首魁と思われる“個性”を複数所持する(ヴィラン)。様々な動物の特徴を併せ持つ異形系“個性”を所持する(ヴィラン)。そして、髪の毛を鋭い刃物に変化させ、自由に操る“個性”を持った(ヴィラン)

「いずれも一流もしくは超一流の(ヴィラン)と言って差し支えない程の実力を持っています。この3人と一遍に戦うのは、危険すぎる」

「よって、後ろが断崖絶壁の城跡を拠点にして、(ヴィラン)の進行ルートを1つに絞らせます」

「そして、先制攻撃を仕掛ける事で(ヴィラン)を分断。それぞれの地形も利用して、(ヴィラン)1人に対し、1年A組(こちら)が複数で立ち向かう状況に持ち込みます」

「先制攻撃の際に、1人くらいは戦闘不能に出来れば理想なんだが…まぁ、高望みはせず、確実な分断を狙うべきだな」

 

 緑谷(グリュンフリート)の声に続き、吸阪(ライコウ)も口を開く。うむ、欲を出さず、堅実を選ぶべきだな。

 

「島の人達は、断崖絶壁の洞窟に避難。活真君と真幌ちゃんは僕達で護衛。いざという時の脱出経路も確保」

「“個性”の複数持ちへの対応は?」

 

 ここで(アブソリュート)が口を開き、首魁と思わしき(ヴィラン)への対応策を問う。

 

「僕と雷鳥兄ちゃん(ライコウ)が戦った時、突然苦しみだしていた。恐らく、“個性”を使いすぎると体に負担がかかるんだ」

「だから、活真君の“個性”『細胞活性』を奪おうとしていた」

「なるほど…消耗させんのか」

(ヴィラン)には波状攻撃を仕掛けて“個性”を使わせる。“個性”を奪われる恐れがあるから、接近戦は可能な限り避ける方向で」

「それで(ヴィラン)を倒せればよし。たとえ倒せなくても、救援が来るまで持ち堪えれば…」

「皆を守れる…か」

「そういう事だ。だが、時間稼ぎしようなんて考えるなよ。やるからには全力全開。俺達だけで勝利を掴むくらいの気概でいかないと…負けるぞ」

 

 話し合いを〆る形で放たれた吸阪(ライコウ)の声に、その場の全員が頷き…作戦会議は終了。そして今へと至るわけだが…

 

「夜明けか…」

 

 東の空が白み始め、俺は再度気合を入れなおす。あと数時間で始まる戦いに備え、準備を万全にしておかなくては。

 

 

雷鳥(ライコウ)side

 

 東の空が少しずつ明るくなる中、俺と出久(グリュンフリート)八百万(クリエティ)が創造した(ヴィラン)迎撃用(トラップ)を片っ端から設置していき―

 

「よし、これで全部だな」

 

 無事に全ての(トラップ)設置を完了する事が出来た。

 

「あとは(ヴィラン)が来るのを待つばかり…か」

 

 静かに呟きながら、考えを巡らせる。八百万(クリエティ)の創造した(トラップ)に、俺が用意した()()()

 それら全てが上手く機能すれば、(ヴィラン)達を分断出来るし、あのキメラとかいう(ヴィラン)と女(ヴィラン)に関しては、恐らく…8割がた勝てるだろう。だが…

 

「問題は()()()だ…」

 

 オール・フォー・ワン程ではないが“個性”を複数所持している。それだけなら絶無(あの馬鹿)と同じだが、アイツの場合は戦い方そのものがかなり巧み…“個性”抜きでも相当な実力だろう。

 (アブソリュート)飯田(インゲニウム)常闇(ツクヨミ)が、分断した他の(ヴィラン)への対応に向かう以上、アイツと正面切って戦えるのは、俺と出久(グリュンフリート)くらいだ。

 

「戦うまでに、どれだけアイツを消耗させられるか。それが勝負の鍵を握るな」

 

 相応に消耗させる事が出来ていれば、勝率もその分上がるが…想定よりも消耗の度合いが小さかった時は…

 

4:6(ヨンロク)…いや3:7(サンナナ)でこっちが不利だな」

 

 一切の希望的観測を排除して導き出した結果に、思わず冷めた笑い声が零れる。

 いかんな。今回の戦いはこれまで違って()()()()()()()()()()()()。その事で少々不安になっているようだ。

 

 -お前の“個性”では、俺には勝てない-

 -簡単な話だ…お前と俺では“個性”の()()()()

 

 不意に脳裏へ浮かんだアイツの言葉に渋面を作りながらも、俺は出久(グリュンフリート)と合流する。不安なんてものはサッサと―

 

『…撤廃……ます……解除に……強化を…ますか?』

 

 …ん?

 

「出久、今何か言ったか?」

「え? 何も言ってないけど…」

「そうか…すまん、空耳みたいだ」

 

『封印…よる……“個性”の…行い…』 

 

 微かに聞こえる空耳のようなものを無視して、俺は出久(グリュンフリート)と共に歩き出す。もうすぐ戦いが始まる。俺達は全力を尽くすだけだ。

 

『制限………一定……後……再び……ます』 

 

 

ナインside

 

「ナイン! ターゲットは城山の頂上。ヒーローもね」

「チッ、籠城かよ」

 

 先行し様子を窺ってきたスライスからの報告、そしてキメラの悪態を聞きながら、俺は振り返る。

 

「目標に向かうぞ」

「王となる者に…小細工などいらない」

 

 そう、奴らがどんな小細工をしようが関係ない…正面から叩き潰すだけだ。そもそも、奴らの用意出来る小細工など()()()()()()()

 

 

 城跡へと続く一本道を姿を隠すこともせずに歩き続けていると―

 

「ヘッ、下手な隠し方だ」

 

 聞こえてきたキメラの嘲るような声。指差す方へ視線を送ると、1本のワイヤーが張られていた。

 

「ワイヤートラップか」

「あぁ、すぐに見つかるような隠し方から見て…本命はこれだ」

 

 すぐさま、1本目とは違い巧妙に隠された2本目のワイヤーを見つけ出すキメラ。二段構えか、少しは出来るようだが、所詮は無駄な足搔きだ。

 

「ガキども! どうせどこかで見てるんだろ? お前らが仕掛けた小手先の罠なんて無駄なんだよ!」

 

 大声を張り上げながら、2本目のワイヤーを避けて進んでいくキメラ。まったく、意地の悪い―

 

「ぬぉっ!」

 

 奴だ。そう続けたかった心の声は、キメラの声で中断を余儀なくされた。それと同時に、巧妙に隠されていた複数の(トラップ)が次々と起動していく。これは…指向性対人地雷(クレイモア)か!?

 

 

耳郎(イヤホン=ジャック)side

 

「爆発音を確認! アイツら、(トラップ)に引っかかった!」

 

 プラグになった左の耳たぶを地面に挿したまま、ウチは声を張り上げる。

 

「目視でも確認した。(ヴィラン)は3人とも予想地点で動きを止めている!」

 

 続けて障子(テンタコル)の声も周囲に響き、それを聞いた緑谷(グリュンフリート)が―

 

雷鳥兄ちゃん(ライコウ)八百万さん(クリエティ)青山君(Can't stop twinkling.)! お願い!」

 

 すぐさま、持ち場で待機している3人に指示を送る。数秒の間を置いて吸阪(ライコウ)の声と共に何かが次々と発射され…それが着弾した瞬間、(ヴィラン)の周囲は炎で包まれた!

 

 

八百万(クリエティ)side

 

「1本目は勿論、2本目のワイヤーも囮。(ヴィラン)が避けた先に本命の3本目…流石は吸阪さん(ライコウ)ですわ」

 

 (ヴィラン)のいる地点に仕掛けられた全12個の指向性対人地雷(クレイモア)が次々と点火していく様子を見ながら、私は静かにそう呟きました。

 指向性対人地雷(クレイモア)の中身は鉄球ではなくゴム球に変えていますが、それでも小口径の拳銃弾並みの威力はありますから、多少なりとも効果はある筈!

 事実、3人の(ヴィラン)は動きを止め、周囲を警戒しています。

 

雷鳥兄ちゃん(ライコウ)八百万さん(クリエティ)青山君(Can't stop twinkling.)! お願い!』

 

 そこへ飛び込んでくる緑谷さん(グリュンフリート)からの通信。私はすぐさま迷彩布を取り払い、予め創造しておいた自動擲弾銃*1の発射態勢を整えます。

 同様に青山さん(Can't stop twinkling.)も両肩の発射筒から『リフレクトフローター』を発射。そして―

 

()()()()()()()()だ。存分に味わってくれよ!」

 

 私と同じように迷彩布を取り払った吸阪さん(ライコウ)は、リヤカーに載せられた簡易的な多連装発射機(ランチャー)*2(ヴィラン)へ向け発射!

 底に接着剤を塗り、鉄粉を(まぶ)すという処置を施していた火炎瓶は、電磁加速によって次々と(ヴィラン)へと飛翔。着弾と同時に(ヴィラン)の周囲を火の海へと変えました!

 そして火炎瓶の一部は(ヴィラン)に命中したようです。あのキメラという異形系“個性”の持ち主、その左腕が炎に包まれているのが、ここからでも確認出来ました。

 大慌てで地面をのたうち回っていますが、その炎はなかなか消えず…苦悶の声が風に交じって微かに聞こえてきました。正直、あまり気分の良い光景ではありませんが…

 

「粉にした発泡スチロールを混ぜ込んでおいたからな。ガソリンがゲル状になって、簡易的なナパームになってる。ちょっとやそっとじゃ消えねえよ」

「俺達をガキだと侮るからこうなる。俺達の後ろには島の皆さんがいるんだ。1000の命を守る為なら、卑怯? 卑劣? えげつない? 最高の誉め言葉だね!」

 

 吸阪さん(ライコウ)の言葉に、気持ちを切り替えます。そう、今は島の皆さんを守る事を最優先に考えなくては!

 

青山さん(Can't stop twinkling.)! 『ネビルレーザー』を最大出力で!」

「了解♪ Pluie de lumière(光の雨)!」

 

 私の声と共に、青山さん(Can't stop twinkling.)は最大出力のレーザーを発射! 『リフレクトフローター』によって拡散反射されたレーザーが、雨のように(ヴィラン)達へ降り注いでいきます。

 私も自動擲弾銃の狙いを定め、擲弾を連射! レーザーの雨を掻い潜る(ヴィラン)達を爆発で追い立て、分断していきます。

 そして、分断した(ヴィラン)の内、異形系“個性”の持ち主と女(ヴィラン)が目標地点に到着したところで!

 

「点火!」

 

 リモコンを操作。あらかじめ仕掛けておいた爆薬を爆発させることで、2人を予定ポイントへと吹き飛ばすことに成功しましたわ!

 

「第一段階、完了!」

「ふぅ…ギリギリ漏れずに済んだよ♪」

「2人とも、すぐにここを離れるぞ。一番ヤバイ奴が健在だからな」

 

 吸阪さん(ライコウ)の声に頷き、私達は可能な限り急いでこの場を離れます。第二段階は…任せました!

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

「分断成功!」

「予定ポイントに誘い込めてるよ!」

「よし!」

 

 障子君(テンタコル)耳郎さん(イヤホン=ジャック)からの報告に尾白君(テイルマン)が声を上げる中、僕も静かに頷きながら考えを巡らせる。

 ここまでは作戦通りだ。第二段階の先陣を…頼んだよ! 麗日さん(ウラビティ)瀬呂君(セロファン)峰田君(グレープジュース)

 

 

お茶子(ウラビティ)side

 

「オラオラオラァ!」

 

 右手に短弓(ショートボウ)モードのシックルシューターを構え、低出力の光の矢(レーザースタンアロー)を乱射しながら―

 

「テープショット…ディフュージョン!」

 

 左腕から無数の細いテープを射出する瀬呂君(セロファン)。そのテープは予め浮かせておいた無数の岩塊に次々と貼りつくと、瀬呂君(セロファン)の方へ岩塊を引き寄せていく。

 

「…解除!」

 

 それに合わせて私も“個性”を解除。それによって浮いていた岩塊は一斉に(ヴィラン)目掛けて落下して

いく!

 

「………」

 

 だけど(ヴィラン)は、左手で空気の壁を展開して光の矢(レーザースタンアロー)を防ぎつつ、右手から弾幕のように無数の爪を連射して、岩塊を次々と撃ち落としていく。

 

「このやろぉ!」

 

 瀬呂君(セロファン)が鎖分銅のように振り回して、次々と放った十数個の岩塊も同じように撃墜され―

 

「………」

「危ねっ!」

 

 放たれた反撃を慌てて回避する始末。緑谷君(グリュンフリート)の言う通り、相手は超一流の(ヴィラン)なのは間違いない。

 

「それでも!」

 

 私達に逃げるという選択肢はない! 私は走りながら、周囲の岩塊へ手当たり次第に触れていき、“個性”で浮かせると―

 

瀬呂君(セロファン)!」

 

 瀬呂君(セロファン)と協力して、岩塊を(ヴィラン)へと放っていく。

 

(ヴィラン)に“個性”を…」

「使わせろ…」

「「撃ちまくれっ!!」」

 

 

スライスside

 

 “個性”を発動した髪で周囲の岩を切り刻み、自由を取り戻した私は周囲を見回して、状況を確認する。ここは…鍾乳洞の中?

 

「フン、少しは頭を使ったみたいだけど、私達を分断したところで…」

 

 無駄な事。と口にしようとした瞬間、何か液体が硬い物にぶつかる音が聞こえてきた。

 

「ッ!?」

 

 直感に従って回避行動を取ると同時に、天井から次々と落ちてくる鍾乳石。この断面…酸によって溶かしてある!

 

「フッ!」

 

 察知した気配目掛けて髪の毛を飛ばしてみると―

 

「しくった!」

 

 小娘が一人慌てて逃げていった。なるほど、私がここに落ちる事を見越して…

 

「ん?」

 

 背後から感じる気配。防御を固めつつ振り返ると、黒い影のようなものが私へ攻撃を仕掛けていた。

 その攻撃を防御しつつ、後方へ飛び退いた私は、グローブの指先それぞれに仕込んでいたナイフを展開。

 

芦戸(ピンキー)、あとは任せろ…鍾乳洞(ここ)は俺の世界だ」

 

 黒い影と融合していく鳥頭の小僧と対峙する。

 

「小癪ね!」

 

 アンタ達2人とも切り刻んで、ナインの元へ戻らせてもらうわ!

 

 

キメラside

 

「チッ、体よく分断されたか」

 

 滝の近くにまで吹っ飛ばされたことに悪態を吐きながら、俺は火炎瓶によって焼かれた左腕を川の流れに浸し、冷やしていく。

 かなり派手に焼かれたな…“個性”のおかげで治癒力も相応に高いが…すぐに治るレベルじゃねぇ。左腕は暫く使えないと―

 

「うぉっ!?」

 

 その瞬間、左足に何かが巻きつき、俺は川へと引きずり込まれた。チィッ! セコイ真似をしやがって!

 ふとふつと湧き上がる怒りを抑えつつ、岸へと揚がった瞬間―

 

「ぬおっ!?」

 

 タイミングよく飛んできた何かが顔面に激突。中身の液体をぶち、まけ…

 

「ぬがぁぁぁぁぁっ! 目、目が! 鼻がぁ!」

 

 強烈な刺激臭で鼻が利かなくなり、液体が入ったのか、右目が焼けるように痛んで、とてもじゃないが開けていられねぇ! 何なんだ、こいつは!

 

「酢と山葵と辛子、あと胡椒のブレンド…らしい」

 

 俺の疑問に答えるような声。その主を確認しようと左目で声の方を見てみると―

 

「悪いな。卑怯だとは思ったが、状況が状況だ」

 

 昨日海岸で戦った学生の1人…炎と氷を操る紅白の髪をした奴が、()()()()()()()。いや、背中のバックパックで飛んでいるのか?

 周囲を見回せば、白い鎧のような戦闘服(コスチューム)を纏った奴や、赤髪の男、どこか蛙のような女もいる。1対4か…。

 

「昨日よりも数が少ねぇが…まさか、俺に勝つつもりか?」

「あぁ、そのつもりだ」

 

 紅白の髪をした奴の言葉に、怒りの炎が一気に強まっていく。

 

「舐めんじゃねぇぞ…くそガキども!!」

 

 叫びと共に“個性”を発動する。スロースターターだなんだと言ってる場合じゃねえ。こいつら全員、全力で八つ裂きにしてやる!

*1
口径40mm

*2
横7列×縦3列の21連装。材料は塩ビパイプや鉄板など




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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