出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。第73話を投下します。
お楽しみいただければ幸いです。




第73話:1年A組vs(ヴィラン)集団‐その6‐

瀬呂(セロファン)side

 

「オラオラオラァ!」

 

 短弓(ショートボウ)モードのシックルシューターから、光の矢(レーザースタンアロー)を乱射しつつ、前以てあちこちに用意しておいた岩塊をテープで引き寄せ、投げつける。

 城跡へ向かって歩き続ける(ヴィラン)を足止めしようと、攻撃を続けているが…

 

「………」

 

 (ヴィラン)は顔色一つ変える事無く、光の矢(レーザースタンアロー)を防ぎ、岩塊を撃墜していく。

 

「くそっ! 足止めすら出来ねぇのかよっ!」

 

 思わずそう愚痴りながら、エネルギー切れになったシックルシューターのバッテリーを新しい物へと素早く入れ替える。

 予備のバッテリーはこれで最後。なんとか()()まで持たせないとな…。

 

瀬呂君(セロファン)!」

 

 そこへ聞こえてきた麗日(ウラビティ)の声。咄嗟に俺がその場から飛び退くと―

 

「いっけぇぇぇっ!」

 

 俺が攻撃している間に麗日(ウラビティ)()()()()()()大量の岩塊を纏めて落としていく。 

 容赦なく(ヴィラン)へ降り注ぎ、山のように積み上げられた岩塊。その重さは軽く3tはあるだろう。

 

「はぁっ、はぁっ……あれっ?」

麗日(ウラビティ)!」

 

 青褪めた顔でふらついた麗日(ウラビティ)を咄嗟に支えながら、岩塊の山に視線を送る。

 あれだけの質量。いくらあの(ヴィラン)が超一流と呼ばれる類だとしても―

 

「ッ!?」

 

 ただじゃ済まない。心に芽生えたそんな願望を打ち砕くかのように、岩塊を吹き飛ばして歩みを再開する(ヴィラン)

 

「くそっ!」

 

 背筋に冷たいものが走る感覚を味わいながら、俺はシックルシューターを、麗日(ウラビティ)はデュアルチャクラムを構え―

 

「レーザースタンアロー! 最大出力!」

「軌道入力。回転数MAX! デュアルチャクラム! シュート!」

 

 同時に攻撃を仕掛ける! 恐らく効果が無いことは百も承知。だけど5秒でも、3秒でも良い。時間を稼げれば!

 

「無駄な足掻きだ」

 

 次の瞬間、俺達は(ヴィラン)の放った衝撃波によって吹っ飛ばされ、地面へと叩きつけられてしまった。畜生、まるで歯が立たねぇ!

 

「………」

「くっ!」

 

 間髪入れずに放たれた追撃を、俺はテープの巻取りによる高速移動でなんとか回避。

 その後も弾幕のように放たれる攻撃を掻い潜って、麗日(ウラビティ)を回収すると―

 

「もうすぐ本命だ。何とかそこまで!」

「う、うん!」

 

 ボロボロの体に鞭打って、本命の(トラップ)が仕掛けられた地点へと急ぐ。あと少し…あと少しだ!

 

 

麗日(ウラビティ)side

 

瀬呂(セロファン)麗日(ウラビティ)!」

 

 峰田君(グレープジュース)の声に迎えられ、転がるように着地した私達は―

 

峰田(グレープジュース)!」

「準備出来てるぜっ!」

「よし、麗日(ウラビティ)! 頼む!」

「うんっ!」

 

 すぐさま本命の(トラップ)発動に取り掛かる。と言ってもやることは単純。

 ここまで来る間に(ヴィラン)へぶつけた岩塊の全て。それを3倍してもまだ足りない程の大量の岩塊。

 それを堰き止める為地面に打ち立てられた大量の丸太全てを、私の“個性”『無重力(ゼログラビティ)』で浮かせるだけだ。

 正直、許容量(キャパシティ)はもう限界。この状態で、これほど大量の丸太を浮かせればどうなるか…想像するまでもない。

 

「それでも…やる!」

 

 私は残る力全てを振り絞りながら、丸太へと触れ―

 

「うぅぅぅぅぅっ!」

「プルス! ウルトラァァァァァッ!!」

 

 一気に丸太を浮き上がらせて、岩塊を(ヴィラン)へと解き放った!

 下手な土砂崩れを軽く上回る勢いで、轟音と共に斜面を転げ落ちていく岩塊は、迎撃を物ともせずに(ヴィラン)を飲み込んでいき―

 

「行けっ! 峰田(グレープジュース)!」

「任せろぉっ!」

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃぁっ!」

 

 更に瀬呂君(セロファン)の『テープ』を使って宙に舞った峰田君(グレープジュース)が、頭からの出血も厭わずに投げ続けた『もぎもぎ』によって、一塊になっていく!

 

「見たか! これが本命だぁ!」

 

 (ヴィラン)を封じ込めた巨大な岩塊を前に、勝利の雄叫びを上げる峰田君(グレープジュース)

 

「よっしゃぁ!」

 

 瀬呂君(セロファン)も小さくガッツポーズを決め、私も安堵の溜息を吐く。あの岩塊の質量は、軽く見積もっても10tはある。

 いくら超一流の(ヴィラン)でも、あれから抜け出す事は簡単じゃない…筈。と言うか、そうであってほしい。

 

「ヘヘッ、閉じ込めて…やったぜ」

 

 頭からダラダラと血を流しながら呟いている峰田君(グレープジュース)も、そして瀬呂君(セロファン)も私と同じ思いだろう。だけど…

 

「ッ!?」

 

 一塊になった岩塊。その隙間から光が漏れた次の瞬間、岩塊は爆音と共に木っ端微塵になり、それによって生じた衝撃波で、私達は吹き飛ばされてしまった…。

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

「クッ! 本命が防がれた!」

(ヴィラン)麗日(ウラビティ)達に接近!」

 

 障子君(テンタコル)耳郎さん(イヤホン=ジャック)の焦り混じりの声を聞きながら、僕は真幌ちゃんと活真君に一瞬だけ視線を送り、すぐに数百m先の(ヴィラン)へと視線を戻す。

 あの本命(トラップ)は、今用意出来る最上の物だった。それが通じなかったとなると、残す手段は…()()()()()()()()()しかない!

 

「前に出る! 真幌ちゃんと活真君をお願い!」 

 

 麗日さん(ウラビティ)達に迫る(ヴィラン)青山君(Can't stop twinkling.)八百万さん(クリエティ)が牽制し、雷鳥兄ちゃん(ライコウ)がケラウノスで斬りかかって行く中、僕も全速力で飛び出していく。

 ここで必ず、守り抜いてみせる!

 

 

雷鳥(ライコウ)side

 

「はぁぁぁっ!」

 

 青山(Can't stop twinkling.)の『ネビルレーザー』と八百万(クリエティ)が創造した軽機関銃(ライトマシンガン)*1の援護を受けながら、俺は刀身に電撃を纏わせたケラウノスで、(ヴィラン)へ斬りかかる。

 

「………」

 

 残念ながらこの攻撃は、(ヴィラン)の展開した空気の壁によって防がれてしまうが…

 

「あれから半日と経たずにここまで動けるとは…痛めつけ方が足りなかったか?」

「生憎お前と違って、日頃の行いが良いもんでね」

 

 (ヴィラン)の注意をこちらへ向ける事が出来た。

 

VECTOR(ヴェクター)! スマッシュ!」

 

 更に出久(グリュンフリート)も拳を振るって放つ衝撃波で(ヴィラン)を牽制しながらこちらへ合流。

 

「ここは俺と出久(グリュンフリート)で食い止める!」

青山君(Can't stop twinkling.)達は、麗日さん(ウラビティ)達と一緒に一時後退! 態勢を立て直して!」

 

 そう叫びながら、俺と出久(グリュンフリート)(ヴィラン)へと向かっていく。

 

「ここから先は!」

「僕達が通さない!」

 

 

常闇(ツクヨミ)side

 

「ハハハッ! そらそらっ!」

 

 光無き鍾乳洞の中で、耳障りな金属音と共に女(ヴィラン)の声が響き渡る。

 

「くっ…」

 

 矢継ぎ早に繰り出される攻撃は、深淵闇躯(ブラックアンク)を発動している俺であっても、防御に専念しなければ危険だと感じるほどに凄まじいものだ。

 

「何が俺の世界よ! 威勢の良い事言って!」

「ちぃっ!」

 

 その猛攻にこちらの防御が僅かに緩んだ隙を突いて、女(ヴィラン)が繰り出したのは―

 

「この程度!」

 

 踵落とし! 爆発音にも似た轟音が響き、俺は後方へと大きく吹き飛ばされてしまう。

 

常闇(ツクヨミ)!」

 

 それを見た芦戸(ピンキー)が援護に動くが―

 

「引っ込んでな! 小娘!」

 

 女(ヴィラン)は硬質化した髪の毛を針のように飛ばし、芦戸(ピンキー)を牽制。その場へ釘付けにしてしまう。

 

「哀れね。ヒーロー気取りのガキども」

 

 勝ち誇った顔で俺達を嘲る女(ヴィラン)。たしかに、ここまでの戦況は俺達の圧倒的不利。奴は己の勝利を微塵も疑っていないのだろう。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()

 

「まだ、勝負はついていない…ここからは、俺のターンだ!」

「アンタのターンなんて、無いんだよ!」

 

 そう叫んだ俺に対し、そう叫び返した女(ヴィラン)。再度発動した“個性”で髪の毛を刃に変えながら向かってきた。

 落ち着け。この手が使えるのは1回限り。全てはタイミングの勝負だ!

 

黒影(ダークシャドウ)…」

 

 奴の攻撃。そのリーチと攻撃速度はこれまでの攻防で把握している。そして()()()()()()()()

 

「死ぃぃねぇぇ!」

漆黒双翼(ダークウイング)!」

 

 叫びと共に深淵闇躯(ブラックアンク)を解除した俺は、そのまま漆黒双翼(ダークウイング)を発動。漆黒の翼を羽搏かせて跳び上がることで、攻撃を回避!

 

「目覚めよ! ノワール! シュバルツ!」

 

 更に2枚のディスクを投げ、指を鳴らすことで我が使い魔(ファミリア)、ノワールとシュバルツを起動すると―

 

攻撃(アタック)!」

 

 女(ヴィラン)へと差し向けた! 俺の命令に従い、矢のようなスピードで女(ヴィラン)へ向かっていくノワールとシュバルツ。

 

「ハン! 何かと思えば、そんな玩具の鳥が何になる!」

「鳥ではない! 烏だ!」

「知ったことかぁぁぁっ!」

 

 俺の声をそう切り捨て、ノワールとシュバルツを叩き落そうと待ち構える女(ヴィラン)。そう来ると思っていたぞ!

 次の瞬間、ノワールとシュバルツ両方の嘴が開き、仕込まれていた小型閃光弾が炸裂!

 

「あぁぁぁっ! 目が! 目がぁぁぁっ!」

 

 放たれた強烈な閃光によって焼かれた両目を手で覆い、苦悶の叫び声を上げる女(ヴィラン)。好機到来!

 

芦戸(ピンキー)!」

「待ってました!」

 

 俺の声を聞くや否や、岩陰から飛び出してくる芦戸(ピンキー)。手にした万能噴霧器の弾倉(マガジン)型カートリッジを素早く入れ替え―

 

「集中噴射!」

 

 化学接着剤を噴射! 女(ヴィラン)の髪を接着剤まみれにして固めてしまった!

 

「わ、私の…か、髪が!」

 

 ガチガチに固められた状態では“個性”も働かないのか、未だ視力の戻らない目を抑えるのも忘れて狼狽する女(ヴィラン)。悪いが…勝負を決めさせてもらう!

 俺は、漆黒の翼を羽搏かせて奴との間合いを一気に詰めると、奴の両肩を掴んで再度上昇。空中で体勢を入れ替えて肩車のように担ぎ上げると―

 

「必殺! 堕天使の生贄(ルシファーズサクリファイス)!」

 

 上下逆さまとなり、そのまま自由落下。地面へと叩きつけた!

 

「ガハッ…」

 

 吐血すると同時に白目を剥いて気絶する女(ヴィラン)。本来の威力ならば、その命を刈り取ることも出来たが…

 

「ギリギリでブレーキをかけておいた。命を奪うつもりはない」

 

 土壇場で翼を羽搏かせ、威力を僅かに弱めておいた。如何に凶悪(ヴィラン)とはいえ、法の裁きを受けさせない訳にはいかないからな。

 

常闇(ツクヨミ)!」

「こいつの拘束が済み次第、他の救援に向かうぞ。残る(ヴィラン)はどちらもこいつ以上の使い手。戦力が必要な筈だ」

「うん!」

 

 

(アブソリュート)side

 

「はぁぁぁっ!」

 

 両肩と背面の推進装置(スラスター)を使った縦横無尽な動きで、(ヴィラン)を翻弄しながら、適格に蹴りを打ち込んでいく飯田(インゲニウム)

 

烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)!」

 

 そんな飯田(インゲニウム)とは対照的に、最短距離を一直線に駆け抜けて必殺の拳を叩き込む切島(レッドライオット)

 (ヴィラン)の左腕は、火炎瓶の直撃で炎に包まれた結果重大な支障を来しているし、吸阪特製ブレンド(あの液体)を浴びせられた事で、右目と鼻が利かなくなっている。

 だから、飯田(インゲニウム)の動きには付いて行けなくなっているし、切島(レッドライオット)の攻撃。特に左側への攻撃には、防御が間に合わず何発も直撃を許している。

 

「痒いな!」

 

 だが、その圧倒的なパワーとタフネスは健在。反撃として振り回される右腕を一発でも食らえば、それで終わりだ。だからこそ―

 

「ケロッ!」

 

 俺や蛙吹(フロッピー)の援護が重要になってくる。蛙吹(フロッピー)は保護色で姿を隠しながら、舌を使って(ヴィラン)の動きを阻害。

 

「発射」

 

 そして俺は、背中に装着したサポートアイテムを利用して、空から援護射撃だ。

 メリッサさんの作ったサポートアイテムは通常、俺に飛行・滞空能力を与えるフライングユニットとして機能するが、状況に応じてユニットの一部が銃…2挺のライフルに変形した銃撃形態(ライフルモード)を取る事も出来る。

 銃撃形態(ライフルモード)では飛行速度と滞空能力が低下する代わりに、俺の“個性”と連動させることで、右側のライフルからは冷凍光線。左側のライフルからは熱線を発射出来るようになる。

 威力に関しては、直接放った方が高いが…殆ど負担を考えずに遠距離攻撃出来るのは、ありがたい限りだ。そして―

 

「てめえら…無駄だと言って―」

 

 苛立ち混じりの咆哮を上げようとした(ヴィラン)の動きが鈍くなったのはその時だ。()()()()()()()()()()

 

「な、なんだ…か、体が…」

「ただ我武者羅にお前を攻撃していた訳じゃないってことだ」

「俺の足、そして切島君(レッドライオット)の手には、蛙吹君(フロッピー)の作った毒性の粘液が塗られていた」

「私の舌からも分泌させていたわ。でも、普通の(ヴィラン)なら10人は動けなく出来る量を使って、ようやく動きが鈍くなるなんて、とんでもないタフさだわ」

「観念しろよ! オッサン!」

 

 動きの鈍った(ヴィラン)を仕留める為、一斉攻撃の態勢に入る飯田(インゲニウム)切島(レッドライオット)、そして蛙吹(フロッピー)

 俺も砲撃形態(ライフルモード)を解除し、“個性”による直接攻撃の態勢に入る。これで勝負を―

 

「小賢しい真似しやがって…」

「この程度の毒で…俺が…」

「俺が仕留められるかぁぁぁっ!!」

 

 咆哮と共に、昨日海岸で見せた“個性”を全力で発動した姿へと変わっていく(ヴィラン)。いや、違う!

 

「見せてやるよ! 俺が化け物だと呼ばれる理由をっ!」

「巨大化!?」

「あの姿…天喰先輩かよっ!」

 

 5mを超える程に巨大化した(ヴィラン)を前に、数秒前まで感じていた勝利の予感はどこかへ吹っ飛んだ。

 

「ふぅぅぅ……」

「攻撃、来るぞ!」

霜巨人の大盾(ヨートゥンシールド)!」

 

 そして飯田(インゲニウム)の声に、俺が全力で氷壁を展開した直後!

 

「グワォォォッ!」 

 

 (ヴィラン)は口から熱線を発射。氷壁で受け止めるが…

 

「くそっ!」

「退避だ! 蛙吹君(フロッピー)!」

「ケロッ!」

 

 俺達が回避する時間を数秒稼いだところで、熱線は氷壁を貫通。

 

「グォォォッ!」 

 

 そのまま(ヴィラン)は、熱線で周囲を薙ぎ払い…周りの森を火の海へと変えてしまった。

 

「くそっ、なんて奴だ…」

 

 思わず口から出た言葉は、その場にいた全員に共通した思いだろう。現状の戦力であいつを止められるとしたら…やはり、()()()()()()()()()()()

*1
ゴム弾使用




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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