出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。第74話を投下します。
お楽しみいただければ幸いです。


第74話:1年A組vs(ヴィラン)集団‐その7‐

耳郎(イヤホン=ジャック)side

 

「あそこ、飯田(インゲニウム)達の!?」

 

 突如響いた爆音に慌てて単眼鏡を向けてみると、そこに見えたのは森の一部が火の海になっているというショッキングな光景。それを見て―

 

「苦戦してるのか…今からでも応援に!」

「駄目だ! 俺達の任務は真幌ちゃんと活真君の護衛…それを放り出す訳にはいかない」

 

 尾白(テイルマン)飯田(インゲニウム)達の援護に向かおうとするけど、障子(テンタコル)に止められる。

 いや、障子(テンタコル)も本当は飛び出していきたい筈。その気持ちを必死に堪えているんだ。

 震える右手を左手で抑えつけている障子(テンタコル)を見て、その事に気づいた私は、そのまま眼下で戦っている緑谷(グリュンフリート)吸阪(ライコウ)へ視線を戻す。

 

「ライコウ…」

「グリュンフリート…」

 

 真幌ちゃんも活真君も勝利を信じてる、2人とも頼んだよ!

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

 (ヴィラン)の放った衝撃波を回避し、左右に散った僕と雷鳥兄ちゃん(ライコウ)は―

 

VECTOR(ヴェクター)! スマッシュ!」

「マグネ・フレシェット!」

 

 拳を振るって放つ衝撃波の弾幕と十数発の砂鉄の矢弾(フレシェット)で反撃。

 

「………」

 

 だけど、(ヴィラン)は動じる事無く両手で空気の壁を展開して、反撃の全てを防御。

 

「………」

 

 それどころか両手の爪を高速連射して、僕達の接近を阻んできた。

 

「くっ!」

 

 避けきれなかった爪が左頬を掠め、横一文字の傷を作っていく。

 

「ちぃっ!」

 

 雷鳥兄ちゃん(ライコウ)も防御こそ間に合ったけど、間合いを開けられてしまっている。

 

「………」

 

 そこへ向けられる(ヴィラン)の掌。追撃が来る!

 

「ん!?」

 

 だけどのその追撃が放たれる事は無かった。

 

「させるかよっ!」

 

 瀬呂君(セロファン)が自身のテープを飛ばして、(ヴィラン)の腕を明後日の方向に向けてくれたんだ!

 瀬呂君(セロファン)はそのままテープを巻き取り、その勢いを利用した跳び蹴りを放つけど―

 

「………」

「がはぁっ!」

 

 その蹴りが当たる寸前に(ヴィラン)が放った衝撃波で吹き飛ばされてしまう。

 

瀬呂(セロファン)!」

 

 瀬呂君(セロファン)の安否を確かめる雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の声が響く中―

 

「えぇい!」

 

 巻き上がっていた土煙を隠れ蓑にして、麗日さん(ウラビティ)(ヴィラン)の背後から肉薄。

 

「触れて浮かせば!」

 

 一発逆転の投げ技を試みるけど、駄目だ! それは(ヴィラン)に読まれてる!

 

「………」

「ッ!」

 

 制止しようとした直後、(ヴィラン)の背中から出現した青い竜のような怪物。その(あぎと)に捕らわれ、振り回される麗日さん(ウラビティ)

 

「危ないっ!」

 

 空中から地上へ投げ捨てられたところを何とか受け止める事が出来たけど…完全に意識を失っている…。

 

「よくも、麗日さんをっ!」

 

 麗日さん(ウラビティ)を安全圏に寝かせると同時に、僕は(ヴィラン)へと飛び掛かり―

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 迎撃しようと向かってきた怪物の頭を粉砕。更に雷鳥兄ちゃん(ライコウ)が刀身に電撃を纏わせたケラウノスを振るって、(ヴィラン)後退させることに成功した。

 

「…理解、出来んな」

 

 (ヴィラン)が呟いたのはその時だ。

 

「お前達は何故…弱い者、力の無い者を庇い、守ろうとする?」

「今だってそうだ。あの女を受け止めたりしていなければ、お前の一撃は俺に届いていたかもしれない。庇い、守るなどという無駄な行為を挟むから、攻撃を決めきれない」

「強者に守られなければ生きていけない存在でありながら、自分達に理解出来ない存在を集団で排斥する…それが弱者だ」

「そんな奴らを守る価値が何処にある?」

 

 僕と雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の動きを警戒しながらも、静かに己の考えを述べていく(ヴィラン)。正直言ってかなり偏った考え―

 

「生憎、九分九厘成立しない問答に付き合う気なんてこれっぽっちも無いね」

 

 僕の思考を中断させたのは、雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の声。

 

「そもそもの話。俺達は守る価値があるかどうかなんて、考えちゃいねぇ。()()()()()()()()。それだけだ」

「…愚かにも程があるな。無思慮な行動が弱者を増長させると、何故理解出来ない?」

「生憎と俺達は、お前のように()()()()()()()()()()()()()()()()()()んでね。『葦の髄から天井を覗く*1』って諺を知らないのか?」

「…残念だ。お前達なら、俺の創ろうとしている新世界。強さによって全てが決まる世界で生きていく資格があると思ったが…」

 

 雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の声にそう呟き、“個性”を再度全開にしていく(ヴィラン)

 数秒後来るであろう攻撃に、僕と雷鳥兄ちゃん(ライコウ)が構えた次の瞬間―

 

「ぐ、ぐぁ…ぐがぁぁぁぁぁっ!」

 

 (ヴィラン)が突然苦しみ始めた。これは…

 

「来たんだ…奴の限界時間!」

 

 

(アブソリュート)side

 

「グォォォッ!」 

 

 口から放つ熱線で周囲を薙ぎ払い、火の海へと変えてしまった(ヴィラン)。俺達は何とか退避に成功したが…

 

「なんてパワーだ…」

「近づく事すら出来ないわ…」

 

 (ヴィラン)のパワーと火力は圧倒的。

 

「くっ…間もなくレシプロが終わる」

 

 対するこっちは限界が近い…やはり、やるしかないか。

 

「皆、少しでいい。時間を稼いでくれ。メリッサさんが作ったサポートアイテム(こいつ)の…()()()()使()()

「切り札…そんなものがあったのかよ」

「あぁ、こいつを当てる事が出来れば、それで決着がつく…筈だ」

「今はそれに賭けるしかない…か。それで轟君(アブソリュート)、どのくらい時間を稼げば良い?」

「…30秒、いや20秒だけ頼む」

「20秒か。1人7秒稼げばおつりがくる、楽勝だぜ!」

「あぁ、これが最後のアタックだ!」

「ケロケロ、最後の力を振り絞りましょう!」

 

 そう言いながら頷きあい、飛び出していく飯田(インゲニウム)切島(レッドライオット)蛙吹(フロッピー)。3人とも…20秒だけ、頼む!

 

 

キメラside

 

「グルル…」 

 

 唸り声をあげながら火の海と化した周囲を見渡していると、赤髪の男が姿を現し、俺の正面に立ち塞がると―

 

「これが最後。真っ向勝負で行くぜぇ!」

 

 そう叫びながら、俺へと一直線に向かって来た! 馬鹿が! 消し炭になりたいようだな!

 

「グォォォッ!」 

 

 向かって来る赤髪へ熱線を放つ。こいつが命中すれば、赤髪は一瞬で消し炭となり、それで終わり。

 ………その筈だった。

 

安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)閼威猗守(アイアス)!!」

 

 その叫びと共に赤髪は、自身の両腕だけを歪なほど重点的に硬化させることで俺の熱線を耐え凌ぎ―

 

烈怒守吠羅流刃烈斗(レッドスパイラルバレット)!!」

 

 熱線が途切れ、2発目を放つまでの僅かな隙を突いて、体当たり攻撃を仕掛けてきやがった!

 

「ぐぉぉぉぉぉ…」 

 

 まるでドリルのように回転しながら突っ込んできた赤髪。その速度と質量から生まれる威力は、今の俺でも防御を選択せざるを得ないレベル。火炎瓶を食らったせいで左腕が半ば使い物にならない今なら猶更だ。でもなぁ…

 

「なめるなぁぁぁっ!」 

 

 それがどうした! 俺はこいつら全員八つ裂きにして、ナインの元へ行かなくちゃならねぇんだ!

 俺は重度の火傷で半ば使い物にならなくなった左腕を無理矢理動かし、赤髪へアッパーを叩き込んで上空へ吹っ飛ばす!

 

「ぐぁぁぁっ!」

「まずはてめえから八つ裂きだぁ!」 

 

 クルクルと回転しながら落ちてくる赤髪。俺は右腕の一撃で仕留めようと待ち構えるが―

 

「レシプロ! トルネード!」

FROPPY()Spiral()Crusher()!」

 

 まるでそれを待っていたかのように左右からの挟撃を仕掛けてくる鎧男と蛙女もいる。チッ、赤髪は囮かよ!

 

「それがどうしたぁ!」

 

 だが、その程度の事はこっちも予想済み! 両腕を力任せに振るって、左右からの攻撃を弾き飛ばす。これで3人。もう1人はどこだ?

 

「あぁ?」 

 

 素早く周囲を見回すと、少し離れたところに2つの砲門を備えた…そう、手持ち式の重火器を構える男の姿が見えた。

 なるほど、あの重火器が最後の切り札って訳か。だが、まだ撃てる状況じゃねぇ…今なら、潰せる!

 

「死ねぇ!」 

 

 息を吸い、熱線の発射体勢を取った俺はそのまま最大出力で―

 

「集中噴射!」

「ぬぉっ!」

 

 熱線を発射しようとした瞬間、意識外の方向から放たれた攻撃が俺の顔面に命中した。こいつは…接着剤か!?

 

(アブソリュート)! 今だよ!」

「ちぃっ!」

 

 俺とした事が…迂闊!

 

「これで終わりだ…竜の閃光(ドラゴンノヴァ)!!」

 

 直後放たれた巨大な閃光に俺は飲み込まれ…すまねぇ、ナイン! 俺は、ここま―

 

 

(アブソリュート)side

 

「ギリギリだった…芦戸(ピンキー)が来てくれなかったら、危なかったな」

 

 そう呟きながら、俺は砲撃形態(キャノンモード)に変形させたサポートアイテムを地面に下ろし、一息つく。

 背中に装着していたサポートアイテムを取り外した上で、手持ち武器に変形させたこの砲撃形態(キャノンモード)は、俺の“個性”と連動させる事で強力な光線を発射することが出来る。

 メリッサさんは、炎と氷という相反する力を融合させる事で、対消滅を引き起こすとか言っていたが、詳しい原理は正直わからねぇ。

 とりあえずわかっているのは、この竜の閃光(ドラゴンノヴァ)竜の咆哮(ドラゴンロアー)の優に3倍以上の威力があるってことと、発射までに最短でも15秒の時間を必要とし、その間は身動きが取れなくなること。そして、発射した後の消耗がとてつもなく大きいってことだ。

 

「だが、いつまでも休んではいられねぇ…」

「あぁ、ある程度回復したら、吸阪君(ライコウ)達の元へ急ごう!」

 

 飯田(インゲニウム)の声に頷いた直後、俺達はその場に座り込む。少しだけ…少しだけ、休ませてくれ。

 

 

雷鳥(ライコウ)side

 

「ぐがぁぁぁぁぁっ!」

 

 限界を迎え、頭と胸を押さえながら苦しむ(ヴィラン)。今がチャンスだ!

 

「たたみかけるぞ! 出久(グリュンフリート)!」

「うん!」

 

 残る力を振り絞って、俺と出久(グリュンフリート)(ヴィラン)へと走り出す。

 

「さ…細胞活性さえ手に入れば…」

 

 このまま必殺技を叩き込んで意識を刈り取り、全て終わらせ―

 

「温存など…」

「必要ない!」

「ッ!」

 

 その時、()()。そうとしか表現出来ないものが、全身を走った。次の瞬間、(ヴィラン)の背部に装着されていたアイテムが起動。何かの薬液を(ヴィラン)へと注入していく。

 

「ちぃっ!」

 

 俺は咄嗟に出久の前へ出ると―

 

「出力全開! ライトニングウォール!!」

 

 ケラウノスを構え、最大出力で電磁バリア(ライトニングウォール)を展開した。その直後、昨日と同じように、島全体を覆うほどの黒雲が発生。 

 

「砕け散れぇ!」

 

 何発もの雷が俺達に襲いかかった。3発、4発、5発。息つく間も無く落ち続ける雷に、ケラウノスの補助によって強化されている電磁バリア(ライトニングウォール)も瞬く間に削られていく。

 そして9発目の雷を受け、10発目を受ける寸前…俺は―

 

「出久、お前だけでも!」

 

 出久を安全圏まで蹴り飛ばした。直後落とされた10発目の雷に、電磁バリア(ライトニングウォール)は突破され…俺はまともに雷に打たれてしまう。

 

「ぐはっ…」

 

 全身が焼かれ、血液が沸騰するような感覚に襲われながら、俺はゆっくりとその場に崩れ落ちていく。

 

「雷鳥兄ちゃん…雷鳥兄ちゃぁぁぁんっ!!」

 

 くそ…出久の声が遠く聞こえ始めたな…これで、終わりなのかよ………

 

『…撤廃……ます……解除に……強化を…ますか?』

 

 また、あの声か…一体何なんだよ…

 

『封印…よる……“個性”の…行い…』 

 

 正体不明の空耳が気になりながら、俺の…意識は…

*1
細い葦の茎の管を通して天井を見て、それで天井の全体を見たと思い込むこと。 自分の狭い見識に基づいて、勝手に判断することの例え。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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