出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
SEASON2第7章 劇場版 ヒーローズ:ライジング編最終話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
「そろそろ30分か…」
「あぁ、今ちょうど30分だ」
「戦闘…終わったんだよね?」
「多分そうだと思う。シンミアを外に出してみようか?」
洞窟の入り口を塞ぐ大岩に視線を送りながら、俺は
外で激しい戦いが繰り広げられている事を俺達に教えていた轟音。それが聞こえなくなって30分。
「よし、俺が外を見てくる。皆は万が一に―」
入り口を塞いでいた大岩が動いたのはその時だ。俺を含む全員が万が一に備えて構えを取る中、大岩はゆっくりと動き…
「救援に来ました! 皆さん、もう大丈夫です!」
声をかけてきたのはウワバミ! その背後には何人かのヒーローと数十人の自衛隊員。そして…
「お前達、よく持ち堪えた。島民の皆さんを洞窟の外へ誘導するから、あともう少しだけ頑張れ。出来るな?」
「「「「はい!」」」」
戦いが終わり、救助隊がやって来た事に島の皆さんが歓声を上げる中、俺達は
ゴールが見えてきたんだ。もう一頑張りだぜ!
「無事か!? 怪我は無いか!? 焦凍ォォォッ!!」
俺を見つけるや否や、まるで幼子をそうするかのように俺を抱き上げ、泣きながら声を上げる親父。
心配してくれるのはありがたいが…暑苦しいし、力が入り過ぎて少々苦しい。
「愛されてますわね。轟さん」
「麗しき親子愛だね♪」
「
「もう少しすれば、ボスも正気に戻ると思いますから」
ナックルコングやブロッサムはこう言っているが…自衛隊の皆さんがドン引きしてるぞ。親父、早く正気に戻ってくれ…
「焦凍ォォォッ!!」
頼むから…
「お疲れさま、ツクヨミ」
自衛隊の方より受け取ったペットボトル入りの飲料水。それをがぶ飲みして、一息ついた俺に声をかけてきたのは…ホークス。よもや貴方まで来ていたとは…
「君が倒した女
「…いえ、俺などまだまだです」
ホークスの言葉に短くそう返し、俺は考えを巡らせる。
事実、首魁と思わしき
「もっと精進を重ねなくては…」
「まぁ、高い目標を持つ事は立派だけど…とりあえず、今はしっかり体を休めなよ」
「……はい」
苦笑いしながらそう告げるホークスに頷き、俺は再び水に口をつけるのだった。
自衛隊の方からオールマイトが貰ってきてくれたペットボトル入りの飲料水。それに口を付けながら、俺と出久はオールマイトに今回の戦いの事を話していたわけだが…
「なるほど、“個性”が成長…いや、“個性”にかけられていたリミッターが解除された…という事か」
「おそらくその解釈が正しいと思います。いやはや、出久の“個性”を誤魔化す為にでっち上げた話が本当になるとは…まさに世界は複雑怪奇」
「まったくだ」
オ-ルマイトも俺の“個性”が『雷神』から『
まぁ俺自身、何故こうなったのかわからないからな。オールマイトが驚くのも当然だろう。
「これは推論ですが、僕や雷鳥兄ちゃんの祖先…多分曾祖父母よりも上の世代に、風に関係する“個性”を持った人がいたのでは無いでしょうか?」
「その“個性”因子が、隔世遺伝のような形で雷鳥兄ちゃんに受け継がれ、お爺ちゃんやお婆ちゃんから受け継いだ“個性”因子と組み合わさる事で、雷と風を操る…轟君の『半冷半燃』のような複合型“個性”となった…のだと思います」
「うむ、私も緑谷少年の推測が正しいと思う。と言うか、そうでないと説明がつかない」
「強いて言うなら、
俺の発した突然変異という言葉に、2人揃ってギョッとした顔になる出久とオールマイト。いかんいかん、不穏な事を言って不安にさせちまったな…反省反省。
2人の気を逸らす為にも、話題を変えてみるか。
「そう言えば、俺達が倒した
「あぁ、発電所のボイラー室に閉じ込めていた者を含む3人は既に拘束し、
オールマイトの答えに、俺と出久は安堵の溜息を吐く。海へと吹っ飛ばした事で、逃げられる恐れもあったが…既に確保へ動いているなら、おそらく大丈夫だろう。
死柄木side
ドクターの用意した片道切符を使って、とある島の花畑に降り立った来た俺は―
「やっぱり生きてた」
この島へ流れ着き、這うように花畑へと移動するナインを発見。軽く手を振りながらゆっくりと近づいた。
「死柄木…」
「限定的とは言え、先生の“個性”を受け継いだアンタが、ずいぶんと無様なもんだな。雄英高校を、オールマイトの弟子を甘く見たか?」
「まだ、終わった訳ではない…俺が生きている限り、終わりでは…ない」
「あぁ、そうだな。アンタが生きている限り、アンタの夢は終わりじゃない」
銀色だった髪は真っ白になり、全身の皮膚も変色している。肉体的にはとても
まったく、
「
次の瞬間、俺はナインとの間合いを一気に詰め―
「ッ!?」
反射的に振るわれた右腕を紙一重で避けながら、奴の脇腹にドクターから預かっていた注射器を突き立てた!
「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁっ!」
注射器の中身である薬液が注入された直後、声を上げて苦しみだすナイン。
「き、貴様…な、何を…注射、した…」
「ドクター特製の、
「俺の手で崩壊させてやってもよかったが…それじゃあ、アンタも無念だと思ってな。最後にひと暴れするといい」
俺が指差した先に見えるのは一隻の小型船。おそらく、ナインを捕える任務を帯びたヒーローどもが乗っているんだろう。
「船の大きさから見て、ヒーローの数は多くて8人ってところか。
そう言い残し、俺は胸を押さえて蹲るナインを置いて、その場から去っていく。
「ドクター、任務完了だ。この後の指示をくれ」
『ご苦労じゃったな、死柄木弔。そこから北へ5km行けば空港がある。そこで、先生の
『小型機で本島に移動した後は、本島の空港から飛行機で本州へ移動するんじゃ。チケットや交通費は途中で受け取ると良い』
「わかった」
『それから…本島に着いたら、紅芋タルトとちんすこう、マンゴープリンを土産に頼む。あぁ、サーターアンダギーと泡盛も追加でな』
「…了解」
ドクターとの通話を終え、スマホをポケットにしまった俺は、空港へ向かって歩き出す。その途中で―
「支配者は…」
「支配者は、俺だぁぁぁぁぁっ!!」
血を吐くような叫び声と共に、黒雲が発生。一筋の雷を落とし…すぐに消えていった。
「じゃあな、ナイン。アンタの夢は俺が、俺達が引き継ぐ。おつかれさま」
出久side
あの戦いから1週間が経ち、那歩島は本来の穏やかな時間を取り戻していた。
「「お父さーん!!」」
「おぁ、真幌! 活真!」
真幌ちゃんと活真君もお父さん、
保典さんは
「この子達には寂しい思いや辛い思いをさせましたからね。これからは極力一緒にいてやろうと思います」
そう言っていた保典さんに、真幌ちゃんも活真君も凄く良い笑顔を見せていた。
今回の事件。島の人達を守り切る事は出来たが、その被害は決して小さくなかった。
ヒーロー公安委員会は、事件の発生を理由にプログラムの即時中止を決定したけれど、僕達は期日まで島に残り、復興作業のお手伝いをさせてもらった。
そして、プラグラム終了の日が訪れ…
「何も黙って帰ることなくね?」
「ねぇ」
本島行きのフェリー。その出航を待ちながら、瀬呂君がそんな事を呟き、芦戸さんもそれに同調する。
そう、今日僕達が帰る事は島の皆さんには伝えていない。何も伝えず、静かに帰るのだ。
「今日までの間に、僕達が出来る事は全部やってきた。これ以上、この島に残っていても復興の邪魔になるだけだ」
「帰る事を伝えれば、島の皆さんは見送りに駆けつけてくださるでしょう。しかしそれは、復興作業の手を止めてしまう。という事でもあります」
「挨拶をせずに帰るのは不義理ではあるが…これが最良だと思う」
「そうか…まぁ、黙って去って行くって言うのも」
「ヒーローっぽいか!」
飯田君と八百万さんの説明に、納得したような声を上げる瀬呂君と切島君だったけど―
「おーい!」
そんな声と共に、十数台の軽トラックが港へとやってきた。先頭の一台を運転しているのは…村長さんだ!
雷鳥side
「いやぁ、間に合って良かったよ」
村長さんを始めとする数十人の島の皆さんが港へとやってきた為、俺たちは慌ててフェリーから一時下船。
「まさか、皆さん見送りに来てくださったのですか?」
「あぁ、『いおぎ荘』の女将さんが知らせてくれてね」
飯田の声にそう答える村長さん。そうか、『いおぎ荘』の女将さんは、島の皆さんの中で唯一俺達が今日帰る事を知っていたな。
「まったく、水臭いじゃないのさ。復興の邪魔をしたくないって、あんたらの気持ちもわかるけど…島を守ってくれたヒーローにお礼を言いたいっていうのも、あたし達の本心なんだよ」
「それは…申し訳ありません!」
「私達の配慮不足でしたわ!」
鈴村さんの言葉に、飯田と八百万が真っ先に頭を下げ、俺達もそれに続く。
「いやいや、君達の気持ちもありがたく思っているよ。本来なら島民総出で見送りたいところだが、復興の手を止めてしまっては君達が気にすると思ってね。私達が代表で来たという訳さ」
村長さんの言葉の後、島の皆さんが口々に俺達にお礼を言ってくる。
島を守ってくれてありがとう。家の片付けを手伝ってくれてありがとう。怖い時に励ましてくれてありがとう。
その言葉一つ一つが俺達の心に響き、胸を熱くしていく。そして、お礼の声が一通り済んだところで、村長さんが俺達に近づいてきた。
「これは、
そう言って差し出されたのは、
「いえ! このような物は受け取れません! お気持ちだけで充分です!」
「そうです! 私達は未だ仮免の身。お金を受け取る資格など!」
「いや、これは島民の総意なんだ。無理を言っているのは承知だが、そこを曲げて受け取ってほしい!」
受け取りを拒否する飯田と八百万に対し、受け取ってほしいと食い下がる村長さん。仕方ない、介入するとするか。
「良いじゃないか、受け取ろうぜ。飯田」
「しかし、吸阪君。仮免の身でこのような…」
「島民の皆さんの気持ちをこのまま蔑ろにするというのも、道義的にどうかと思うが?」
「そ、それは…」
「ここはありがたく受け取ろうぜ。使うのに抵抗があるなら、相澤先生にでも預ければいい」
「…そう、だな」
俺の説得で考えが変わったのだろう。飯田は村長さんの方へ向き直り―
「ありがたく頂戴します!」
封筒を受け取った。うむ、これで良し。
出航を告げる汽笛が鳴り、俺達を乗せたフェリーはゆっくりと港を離れていく。
手を振って俺達を見送る島の皆さんに、全員で手を振り返す中―
「出久お兄ちゃーん!」
「みんなー!」
「島の人達を守ってくれて!」
「「ありがとー!」」
真幌ちゃんと活真君が、そう言いながらフェリーを追いかけてきた。
「出久お兄ちゃーん! 僕、強くなるね!」
「お父さんとお姉ちゃんを守れるくらい、強くなるから!」
「そして、出久お兄ちゃんや雷鳥さんみたいな、カッコイイヒーローに絶対なってみせる!」
活真君が走りながら発したその叫びに、俺と出久は笑みを浮かべ―
「その言葉、忘れるなよ! 少年!」
「活真くーん! 君は…君はヒーローになれる!」
「雄英で待ってるからね!」
それぞれの言葉でエールを送る。
こうして、俺達の那歩島での日々は…終わりを迎えるのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
短編を挟んだ後、第8章へと突入します。
第8章が、