出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

111 / 112
お待たせしました。
SEASON2第7章 劇場版 ヒーローズ:ライジング編最終話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。



第77話:さらば那歩島

砂藤(シュガーマン)side

 

「そろそろ30分か…」

「あぁ、今ちょうど30分だ」

「戦闘…終わったんだよね?」

「多分そうだと思う。シンミアを外に出してみようか?」

 

 洞窟の入り口を塞ぐ大岩に視線を送りながら、俺は口田(アニマ)や心操、葉隠(インビジビルガール)と言葉を交わす。

 外で激しい戦いが繰り広げられている事を俺達に教えていた轟音。それが聞こえなくなって30分。

 八百万(クリエティ)の作った通信機も、この状況じゃ上手く動作しない…やっぱり、直接外の様子を窺うしかないか。

 

「よし、俺が外を見てくる。皆は万が一に―」

 

 入り口を塞いでいた大岩が動いたのはその時だ。俺を含む全員が万が一に備えて構えを取る中、大岩はゆっくりと動き…

 

「救援に来ました! 皆さん、もう大丈夫です!」

 

 声をかけてきたのはウワバミ! その背後には何人かのヒーローと数十人の自衛隊員。そして…相澤先生(イレイザーヘッド)

 

「お前達、よく持ち堪えた。島民の皆さんを洞窟の外へ誘導するから、あともう少しだけ頑張れ。出来るな?」

「「「「はい!」」」」

 

 戦いが終わり、救助隊がやって来た事に島の皆さんが歓声を上げる中、俺達は相澤先生(イレイザーヘッド)の指示に返事を返す。

 ゴールが見えてきたんだ。もう一頑張りだぜ!

 

 

(アブソリュート)side

 

「無事か!? 怪我は無いか!? 焦凍ォォォッ!!」

 

 俺を見つけるや否や、まるで幼子をそうするかのように俺を抱き上げ、泣きながら声を上げる親父。

 心配してくれるのはありがたいが…暑苦しいし、力が入り過ぎて少々苦しい。

 

「愛されてますわね。轟さん」

「麗しき親子愛だね♪」

 

 八百万(クリエティ)青山(Can't stop twinkling.)からそんな声をかけられたり、飯田(インゲニウム)蛙吹(フロッピー)達から暖かい視線を向けられるのも…正直気恥ずかしい。

 

焦凍君(アブソリュート)、ボスも酷く心配していたんだ。この場はボスの気持ちを優先してあげてくれ」

「もう少しすれば、ボスも正気に戻ると思いますから」

 

 ナックルコングやブロッサムはこう言っているが…自衛隊の皆さんがドン引きしてるぞ。親父、早く正気に戻ってくれ…

 

「焦凍ォォォッ!!」

 

 頼むから…

 

 

常闇(ツクヨミ)side

 

「お疲れさま、ツクヨミ」

 

 自衛隊の方より受け取ったペットボトル入りの飲料水。それをがぶ飲みして、一息ついた俺に声をかけてきたのは…ホークス。よもや貴方まで来ていたとは…

 

「君が倒した女(ヴィラン)スライスは、間違いなく一流に分類される使い手。それを撃破するなんて、やるじゃないか」

「…いえ、俺などまだまだです」

 

 ホークスの言葉に短くそう返し、俺は考えを巡らせる。

 事実、首魁と思わしき(ヴィラン)に対しては、ダメージを与える事すら出来ず、最後は吸阪(ライコウ)緑谷(グリュンフリート)に任せるしかなかった…」

 

「もっと精進を重ねなくては…」

「まぁ、高い目標を持つ事は立派だけど…とりあえず、今はしっかり体を休めなよ」

「……はい」

 

 苦笑いしながらそう告げるホークスに頷き、俺は再び水に口をつけるのだった。

 

 

雷鳥(ライコウ)side

 

 自衛隊の方からオールマイトが貰ってきてくれたペットボトル入りの飲料水。それに口を付けながら、俺と出久はオールマイトに今回の戦いの事を話していたわけだが…

 

「なるほど、“個性”が成長…いや、“個性”にかけられていたリミッターが解除された…という事か」

「おそらくその解釈が正しいと思います。いやはや、出久の“個性”を誤魔化す為にでっち上げた話が本当になるとは…まさに世界は複雑怪奇」

「まったくだ」

 

 オ-ルマイトも俺の“個性”が『雷神』から『嵐神(ユピテル)』へと強化された事に驚きを隠せないようだ。

 まぁ俺自身、何故こうなったのかわからないからな。オールマイトが驚くのも当然だろう。

 

「これは推論ですが、僕や雷鳥兄ちゃんの祖先…多分曾祖父母よりも上の世代に、風に関係する“個性”を持った人がいたのでは無いでしょうか?」

「その“個性”因子が、隔世遺伝のような形で雷鳥兄ちゃんに受け継がれ、お爺ちゃんやお婆ちゃんから受け継いだ“個性”因子と組み合わさる事で、雷と風を操る…轟君の『半冷半燃』のような複合型“個性”となった…のだと思います」

「うむ、私も緑谷少年の推測が正しいと思う。と言うか、そうでないと説明がつかない」

「強いて言うなら、()()()()という線もありますが…まぁ、限りなく0に近いでしょうね」

 

 俺の発した突然変異という言葉に、2人揃ってギョッとした顔になる出久とオールマイト。いかんいかん、不穏な事を言って不安にさせちまったな…反省反省。

 2人の気を逸らす為にも、話題を変えてみるか。

 

「そう言えば、俺達が倒した(ヴィラン)どもはどうなりました?」

「あぁ、発電所のボイラー室に閉じ込めていた者を含む3人は既に拘束し、移動式牢(メイデン)に収納している。そして、海へ吹っ飛んでいった首魁と思わしき(ヴィラン)に対しても、既に確保へ動いている。拘束は時間の問題だろう」

 

 オールマイトの答えに、俺と出久は安堵の溜息を吐く。海へと吹っ飛ばした事で、逃げられる恐れもあったが…既に確保へ動いているなら、おそらく大丈夫だろう。

 

 

死柄木side

 

 ドクターの用意した片道切符を使って、とある島の花畑に降り立った来た俺は―

 

「やっぱり生きてた」

 

 この島へ流れ着き、這うように花畑へと移動するナインを発見。軽く手を振りながらゆっくりと近づいた。

 

「死柄木…」

「限定的とは言え、先生の“個性”を受け継いだアンタが、ずいぶんと無様なもんだな。雄英高校を、オールマイトの弟子を甘く見たか?」

「まだ、終わった訳ではない…俺が生きている限り、終わりでは…ない」

「あぁ、そうだな。アンタが生きている限り、アンタの夢は終わりじゃない」

 

 銀色だった髪は真っ白になり、全身の皮膚も変色している。肉体的にはとても正常(まとも)とは言えない…だが、ゆっくりと立ち上がったナインの目には、まだ力が残っている。

 まったく、()()()()()()()()()は哀れだよ。だから…

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 次の瞬間、俺はナインとの間合いを一気に詰め―

 

「ッ!?」

 

 反射的に振るわれた右腕を紙一重で避けながら、奴の脇腹にドクターから預かっていた注射器を突き立てた!

 

「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁっ!」

 

 注射器の中身である薬液が注入された直後、声を上げて苦しみだすナイン。

 

「き、貴様…な、何を…注射、した…」

「ドクター特製の、細胞の自殺(アポトーシス)を促進させる劇薬だよ。今のアンタにとっては、最高の毒だろう?」

「俺の手で崩壊させてやってもよかったが…それじゃあ、アンタも無念だと思ってな。最後にひと暴れするといい」 

 

 俺が指差した先に見えるのは一隻の小型船。おそらく、ナインを捕える任務を帯びたヒーローどもが乗っているんだろう。

 

「船の大きさから見て、ヒーローの数は多くて8人ってところか。()()()()()()には十分だな」

 

 そう言い残し、俺は胸を押さえて蹲るナインを置いて、その場から去っていく。

 

「ドクター、任務完了だ。この後の指示をくれ」

『ご苦労じゃったな、死柄木弔。そこから北へ5km行けば空港がある。そこで、先生の信奉者(シンパ)が自前の小型機を用意しておる』

『小型機で本島に移動した後は、本島の空港から飛行機で本州へ移動するんじゃ。チケットや交通費は途中で受け取ると良い』

「わかった」

『それから…本島に着いたら、紅芋タルトとちんすこう、マンゴープリンを土産に頼む。あぁ、サーターアンダギーと泡盛も追加でな』

「…了解」

 

 ドクターとの通話を終え、スマホをポケットにしまった俺は、空港へ向かって歩き出す。その途中で―

 

「支配者は…」

「支配者は、俺だぁぁぁぁぁっ!!」

 

 血を吐くような叫び声と共に、黒雲が発生。一筋の雷を落とし…すぐに消えていった。

 

「じゃあな、ナイン。アンタの夢は俺が、俺達が引き継ぐ。おつかれさま

 

 

出久side

 

 あの戦いから1週間が経ち、那歩島は本来の穏やかな時間を取り戻していた。

 

「「お父さーん!!」」

「おぁ、真幌! 活真!」

 

 真幌ちゃんと活真君もお父さん、保典(やすのり)さん*1と無事に再会する事が出来た。

 保典さんは(ヴィラン)に“個性”を奪われた事や、真幌ちゃんと活真君が(ヴィラン)に狙われた事から、出稼ぎをやめて島で働いていく事を決めたそうだ。

 

「この子達には寂しい思いや辛い思いをさせましたからね。これからは極力一緒にいてやろうと思います」

 

 そう言っていた保典さんに、真幌ちゃんも活真君も凄く良い笑顔を見せていた。

 

 

 今回の事件。島の人達を守り切る事は出来たが、その被害は決して小さくなかった。

 ヒーロー公安委員会は、事件の発生を理由にプログラムの即時中止を決定したけれど、僕達は期日まで島に残り、復興作業のお手伝いをさせてもらった。

 そして、プラグラム終了の日が訪れ…

 

「何も黙って帰ることなくね?」

「ねぇ」

 

 本島行きのフェリー。その出航を待ちながら、瀬呂君がそんな事を呟き、芦戸さんもそれに同調する。

 そう、今日僕達が帰る事は島の皆さんには伝えていない。何も伝えず、静かに帰るのだ。

 

「今日までの間に、僕達が出来る事は全部やってきた。これ以上、この島に残っていても復興の邪魔になるだけだ」

「帰る事を伝えれば、島の皆さんは見送りに駆けつけてくださるでしょう。しかしそれは、復興作業の手を止めてしまう。という事でもあります」

「挨拶をせずに帰るのは不義理ではあるが…これが最良だと思う」

「そうか…まぁ、黙って去って行くって言うのも」

「ヒーローっぽいか!」

 

 飯田君と八百万さんの説明に、納得したような声を上げる瀬呂君と切島君だったけど―

 

「おーい!」

 

 そんな声と共に、十数台の軽トラックが港へとやってきた。先頭の一台を運転しているのは…村長さんだ!

 

 

雷鳥side

 

「いやぁ、間に合って良かったよ」

 

 村長さんを始めとする数十人の島の皆さんが港へとやってきた為、俺たちは慌ててフェリーから一時下船。

 

「まさか、皆さん見送りに来てくださったのですか?」

「あぁ、『いおぎ荘』の女将さんが知らせてくれてね」

 

 飯田の声にそう答える村長さん。そうか、『いおぎ荘』の女将さんは、島の皆さんの中で唯一俺達が今日帰る事を知っていたな。

 

「まったく、水臭いじゃないのさ。復興の邪魔をしたくないって、あんたらの気持ちもわかるけど…島を守ってくれたヒーローにお礼を言いたいっていうのも、あたし達の本心なんだよ」

「それは…申し訳ありません!」

「私達の配慮不足でしたわ!」

 

 鈴村さんの言葉に、飯田と八百万が真っ先に頭を下げ、俺達もそれに続く。

 

「いやいや、君達の気持ちもありがたく思っているよ。本来なら島民総出で見送りたいところだが、復興の手を止めてしまっては君達が気にすると思ってね。私達が代表で来たという訳さ」

 

 村長さんの言葉の後、島の皆さんが口々に俺達にお礼を言ってくる。

 島を守ってくれてありがとう。家の片付けを手伝ってくれてありがとう。怖い時に励ましてくれてありがとう。

 その言葉一つ一つが俺達の心に響き、胸を熱くしていく。そして、お礼の声が一通り済んだところで、村長さんが俺達に近づいてきた。

 

「これは、()()()()()()()()()()だ。少ないが、受け取ってほしい」

 

 そう言って差し出されたのは、熨斗(のし)のついた封筒。これは……結構な厚さだな。

 

「いえ! このような物は受け取れません! お気持ちだけで充分です!」

「そうです! 私達は未だ仮免の身。お金を受け取る資格など!」

「いや、これは島民の総意なんだ。無理を言っているのは承知だが、そこを曲げて受け取ってほしい!」

 

 受け取りを拒否する飯田と八百万に対し、受け取ってほしいと食い下がる村長さん。仕方ない、介入するとするか。

 

「良いじゃないか、受け取ろうぜ。飯田」

「しかし、吸阪君。仮免の身でこのような…」

「島民の皆さんの気持ちをこのまま蔑ろにするというのも、道義的にどうかと思うが?」

「そ、それは…」

「ここはありがたく受け取ろうぜ。使うのに抵抗があるなら、相澤先生にでも預ければいい」

「…そう、だな」

 

 俺の説得で考えが変わったのだろう。飯田は村長さんの方へ向き直り―

 

「ありがたく頂戴します!」

 

 封筒を受け取った。うむ、これで良し。

 

 

 出航を告げる汽笛が鳴り、俺達を乗せたフェリーはゆっくりと港を離れていく。

 手を振って俺達を見送る島の皆さんに、全員で手を振り返す中―

 

「出久お兄ちゃーん!」

「みんなー!」

「島の人達を守ってくれて!」

「「ありがとー!」」

 

 真幌ちゃんと活真君が、そう言いながらフェリーを追いかけてきた。

 

「出久お兄ちゃーん! 僕、強くなるね!」 

「お父さんとお姉ちゃんを守れるくらい、強くなるから!」

「そして、出久お兄ちゃんや雷鳥さんみたいな、カッコイイヒーローに絶対なってみせる!」

 

 活真君が走りながら発したその叫びに、俺と出久は笑みを浮かべ―

 

「その言葉、忘れるなよ! 少年!」

「活真くーん! 君は…君はヒーローになれる!」

「雄英で待ってるからね!」

 

 それぞれの言葉でエールを送る。

 こうして、俺達の那歩島での日々は…終わりを迎えるのだった。

 

*1
本作オリジナル設定




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

短編を挟んだ後、第8章へと突入します。
第8章が、(ヴィラン)連合vs異能解放軍編になるか、冬休みインターン編になるかは未定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。