出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
Season2第7話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。



第7話:ヒーロー仮免許取得試験!‐その1‐

雷鳥side

 

 さて、仮免許取得試験に臨む俺達は、暫しの間バスに揺られ―

 

「降りろ。到着だ」

 

 試験会場である国立多古場競技場へと到着した。

 

「この試験に合格し、仮免許を取得出来れば…おまえら志望者(タマゴ)は、晴れてヒヨッ子。セミプロ(・・・・)へと孵化出来る」

「頑張ってこい」

「っしゃぁ! なってやろうぜ! ヒヨッ子によぉ!!」

「いつもの一発、決めて行こーぜ!」

 

 相澤先生の言葉に続くように、切島が声を上げ、瀬呂がそれに続く。すぐさま全員で円陣を組み―

 

「せーのっ! Plus(プルス)…」

Ultra(ウルトラ)!!」

 

 声を上げようとした瞬間、何者かが物凄い大声で割り込んできた。制帽を被った短髪の男…見覚えがあるな。前世の記憶によるとたしか…

 

「勝手に他所(よそ)様の円陣へ加わるのは、良くないよ。イナサ」

「あぁ、しまった!」

 

 そうそう、思い出した。夜嵐イナサ…だったな。ついでに、この仮免試験がどういう展開になるか(・・・・・・・・・・)も思い出したよ。

 

「どうも大変!」

「失礼!」

「致しましたぁ!!」

 

 頭を地面に叩きつけるほど深々と頭を下げる夜嵐イナサに、出久達がドン引きしている中、俺はどう動くのが最善かを全力でシミュレーションしていく。

 

「一度言ってみたかったッス! プルスウルトラ!」

 

 シミュレーションして…

 

「自分、雄英高校大好きッス!」

 

 シミュレーショ…

 

「雄英の皆さんと競えるなんて、光栄の極みッス! よろし―」

「OK、言いたい事はわかった。だから、もう少し音量を落とせ。至近距離で大声を聞かされる方の事も考えろ…」

 

 近くにいた梅雨ちゃんや耳郎が耳を抑えている事に気づかず、大声を出し続ける夜嵐イナサの肩を掴み、少しばかりの殺気を込めて(・・・・・・・・・・・・)注意する。

 

「も、申し訳ないッス…」

 

 それで周囲の状況に気づいたのだろう。夜嵐イナサは再度深々と頭を下げ、元居た集団の方へと戻っていった。

 悪い奴ではないようだが、所構わず暑苦しいのは…少しばかり配慮が欲しい所だ。

 

「何者なんだアイツ…テンションだけで乗り切る感じだったけど…」

「飯田と切島を足して、2乗したような…」

 

 砂藤と瀬呂が呆然と呟く中―

 

「待って、あの制服…」

「あ! マジでか」

「アレじゃん! 西の! 有名な!!」

 

 事態に気づいた周囲から声が上がり始め、出久と飯田が集団の正体に気が付いた。

 

「そうか! あの人達が!」

「……東の雄英、西の士傑。数あるヒーロー科の中でも、雄英に匹敵する程の難関校…士傑高校!」

 

 2人のそんな声が響く中、悠然と会場へ歩いていく士傑高校の面々。その背中を見ながら―

 

「夜嵐イナサ…か」

 

 相澤先生が、ポツリと呟いた。

 

「先生、知ってる人ですか?」

「ありゃあ…強いぞ。夜嵐は昨年度…つまりお前らの年の推薦入試。トップの成績(・・・・・・)で合格したにも拘らず、何故か入学を辞退した男だ」

 

 夜嵐の事を簡潔に説明し、嫌なのと同じ会場になったな…と苦い顔をする相澤先生。士傑高校…夜嵐を含め、奴らは要注意(・・・)だ。

 

 

出久side

 

「さぁ、ここで止まっているのは非効率的だ。会場入りすると―」

「イレイザー!? イレイザーじゃないか!」

「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは、久しぶりだな!」

 

 相澤先生の言葉を遮るように響く女性の声。その声の主を確認した途端、相澤先生は露骨に嫌な顔をした。

 

「結婚しようぜ!」

「しない」

「しないのかよ! ウケる!」

 

 相澤先生と何とも噛み合わない会話を交わしているあの女性は、もしかして!

 

「相変わらず絡み辛いな、ジョーク」

「やっぱりそうだ! スマイルヒーロー・Ms.ジョーク! “個性”は『爆笑』! 近くの人を強制的に笑わせて、思考・行動共に麻痺させるんだ! 彼女の(ヴィラン)退治は、狂気に満ちている(・・・・・・・・)よ!」

「おっ、詳しいね! 少年! 流石はオールマイトの愛弟子だね!」

 

 僕の解説が気に入ったのか、Ms.ジョークは笑顔でサムズアップをすると―

 

「イレイザー。私と結婚したら、笑いの絶えない幸せな家庭(・・・・・・・・・・・・)が築けるんだぞ」

「…その家庭、絶対に幸せじゃないだろ」

「ブハッ!」

 

 相澤先生との会話を再開した。この感じ…2人は親しいのかな?

 

「仲が良いんですね」

「昔、事務所が近くでな! 助け助けられを繰り返すうちに、相思相愛の仲へと―」

「なってない」

 

 半ば僕達を代表して、梅雨ちゃんが2人の関係を質問していると―

 

「おぉ! 本物じゃないか!」

「すごいよすごいよ! TVで見た人ばっかり!」

「1年で仮免! へぇー、随分ハイペースなんだね。まぁ、色々あったからねぇ。流石やる事が違うよ」

 

 男女の集団がこちらへ近づいてきた。そうか、あの人達が…。

 

「傑物学園高校2年2組! 私の受け持ち、よろしくな」

 

 Ms.ジョークの言葉に続くように傑物学園高校の面々は僕達に一礼し―

 

「俺は真堂! 今年の雄英は、トラブル続きで大変だったね!」

「しかし、君達はヒーローを志し続けているんだね。素晴らしいよ!」

「不屈の心こそ、これからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」

 

 リーダー格の男子が、僕達に握手を求めながら称賛の言葉を並べてきた。この人…。

 

「ドストレートに爽やかイケメンだ…」

 

 確かに外見(・・)は、耳郎さんの言う通り、爽やかな好漢と言った感じだ。だけど、何かが引っかかる。その証拠に―

 

「中でもオールマイトの愛弟子であり、神野事件でも活躍した吸阪君と緑谷君。そして、エンデヴァーの実子である轟君」

「今日は、君達の胸を借りるつもりで、頑張らせてもらうよ」

「それはどうも。先輩方の期待を裏切らないよう、微力を尽くしますよ」

 

 握手に応じている雷鳥兄ちゃんの笑顔が、礼儀知らずのマスゴミ(・・・・・・・・・・)を相手にした時と同じものになっている。

 うん、彼は警戒しておいた方が良い(・・・・・・・・・・・)な。

 

「おい、戦闘服(コスチューム)に着替えてから、説明会だぞ。時間を無駄にするな」

「「「「「はい!!」」」」」

 

 直後響く相澤先生の声。僕達は急いで会場へと走る。試験開始まで1時間と少し。準備は入念に行わないと!

 

 

雷鳥side

 

 

 さて、戦闘服(コスチューム)に着替え、ウォーミングアップを済ませた俺達は試験会場入りした訳だが…。

 

「多いな…」

「多いね…」

 

 会場は、大勢の受験者でごった返していた。この人数…前世の記憶通りなら、1500人は下らなかった筈だ。

 やがて定刻となり、試験官が登壇。ざわついていた周囲も一瞬で静かになっていく。

 

「えー…ではアレ、仮免のヤツをやります」

「あー…僕、ヒーロー公安委員会の目良(めら)です。好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく」

「仕事が忙しくて、ろくに寝れない…! 人手が足りてない…! 眠たい!」

「そんな信条の下、ご説明させていただきます」

 

 寝不足のせいかフラフラしている上に、声に力もない試験官に対し、恐らく受験者全員が不安を感じたが―

 

「ずばり、この場にいる受験者1540人一斉に(・・・・・・・・)勝ち抜けの演習(・・・・・・・)を行ってもらいます」

 

 勝ち抜けの演習という試験内容に、不安は一瞬で吹っ飛んだ。

 

「えー、現代はヒーロー飽和社会と言われ、ヒーロー殺しことステインの登場以降、今現在のヒーローの在り方に対して、疑問や批判的な意見を抱く人も決して少なくはありません」

 

 ステインの登場以降…奴の思想である『ヒーローとは見返りを求めてはならない』『自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない』という思想に影響された奴が、それなりの数いるという事だな。

 

「まぁ…一個人としては…動機がどうであれ、命がけで人助けしている人間に『何も求めるな』は…現代社会に於いて無慈悲な話だと思う訳ですが…」

「とにかく…対価にしろ、義勇にしろ、多くのヒーローが救助・(ヴィラン)退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決に至るまでの時間は今、ドン引きするくらい迅速になってます」

「君達は仮免許を取得し、いよいよその激流の中に身を投じる。そのスピードについていけない者は、ハッキリ言ってヒーローとしてやっていくのは厳しい」

 

 ここまで言うと試験官は、いったん言葉を切り…俺達全員を見回すと―

 

「よって、試されるはスピード(・・・・・・・・・)! 条件達成者先着100名(・・・・・・)を通過とします」

 

 一気に宣言した。

 

「待て待て待て! 1540人だぞ! 5割どころじゃねえぞ!!」

「マジかよ!」

「まぁ、社会で色々あったんで…運がアレだったと思って、アレしてください」

 

 当然、受験者からは戸惑いや疑問の声が出るが、試験官は全く意に介さず、淡々と説明を続けていく。

 

「では、条件に付いて説明………あ、忘れていました」

 

 ん? 忘れていた(・・・・・)? 何故か解らないが…猛烈に嫌な予感がするな。

 

「今から名前をお呼びしますので、呼ばれた方はその場で挙手をお願いします」

「雄英高校1年、吸阪雷鳥さん」

「はい!」

「同じく雄英高校1年、緑谷出久さん」

「はい!」

「同じく雄英高校1年、轟焦凍さん」

「はい」

「以上3名は、一次試験免除(・・・・・・)となります。係員が誘導しますので、待合室へ移動してください」

「えっ!?」

「はっ!?」

「っ!?」

 

 突然告げられた一次試験の免除に、俺達3人はそれぞれの場所で驚きの声を上げ―

 

「ちょっ、なんで雄英だけ…それも1年なんかに!」

「特別扱いが許されるのかよ!」

「納得いく説明をしろ!」

 

 周囲…特に他校の生徒が、猛烈な抗議の声を上げ始める。

 

「あー…やっぱりこうなりますよね。寝不足で注意力が散漫になってて……申し訳ないです」

 

 その抗議に対し、頭を下げる試験官だが…うん、俺の勘が正しければ、あの人…ワザとやった(・・・・・・)な。

 

「一次試験免除の理由ですが、大きく3つあります」

 

 俺の考えを知ってか知らずか、試験官は1本ずつ指を立てながら、俺達が簡易仮免を所持している事、保須市や神野区で活躍して実績を築いている事を説明し、抗議の声を封じていく。

 たしかに、抗議の声は収まった。だが、他校から雄英生(俺達)に向けられる眼差しは厳しくなる一方だ。

 

「やな雰囲気だね。向こうから『雄英生は全員潰してやる』なんて呟きが聞こえてきたよ…」

 

 ウンザリしたような耳郎の呟き。こいつは…試験内容や合格者数に関する不満が、全部雄英生(俺達)への憎悪(ヘイト)に掏り替えられたな。

 

「頑張ってくれよ。皆」

 

 神妙な顔でルール説明を受ける皆に、俺はそう呟き、係員の誘導に従って出久、轟と共に待合室へ移動する。

 こうなった以上、俺達に出来るのは皆を信じる事だけだ。

 

 

相澤消太(イレイザーヘッド)side

 

「イレイザー、チャック開いてるよ」

 

 こちらをチラチラと見ながら、ありえない事を口にするジョーク。そのニヤついた笑みからして、反応するのは非合理的……まったく、何で俺の周りはこう煩い奴ばかりなんだ。

 そんな事を考えている間に、会場が展開。一次試験の最終準備が始まっていた。

 

「しかし、20人(・・・)とはなぁ。例の奴(・・・)以外は除籍していないなんて、珍しいじゃん。気に入ってんだ? 今回のクラス」

「…別に」

「ブハッ! 照れんなよ! ダッセェなぁ! 付き合おう!!」

「黙れ」

 

 ジョークの声に答えながら、教え子達の動きを見ていく。どうやら、固まって行動するようだな。

 

「しっかし、それなら変な話だぜ」

「例年形式は変われど、この仮免試験には一つの慣習(・・)に近いものが存在する」

「全国の高校が競い合う中で、唯一“個性”が不明というアドバンテージを失っている高校。体育祭というイベントで、“個性”はおろか弱点・スタイルまで割れたトップ校」

 

 開始までのカウントダウンが続く中、ジョークの問いかけは続く。

 

「しかも、今回は最高戦力の3人が、一次試験を免除されていなくなった上に、その関係で憎悪(ヘイト)の度合いは桁違い」

「可愛いクラスなら、言ってあげれば良いのに! 毎回まず初めに行われる…」

雄英潰し(・・・・)のことを」

 

 試験開始と同時にあらゆる方向から教え子達へ殺到する他校生。たしかに、並のレベルなら数に圧倒されて潰されるだろう。だが―

 

「雄英潰し…別に言わない理由もないが…結局やる事は変わらんからな。ただただ、乗り越えていくだけ(・・・・・・・・・)さ」

 

 奴らを並のレベルと侮れば、怪我をするのは相手の方だ。

 事実、スタートと同時に、全方位から投げつけられた数百個のボールは、1つもターゲットに命中する事無く、防がれ、受け止められ、弾かれている。

 弾いたボールの幾つかは、攻撃を仕掛けた側に命中したようだな。何人かのターゲットが発光している。

 

理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。そもそもプロになれば“個性”晒すなんて前提条件(・・・・)

「悪いが、雄英(ウチ)は他より少し先を見据えてる」

「皆! 締まって行こう!!」

 

 委員長(飯田)の声が響く中、素早く陣形を組んでいく教え子達。さぁ、お前達の力を他校に見せつけてやれ。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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