出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
Season2第8話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第8話:ヒーロー仮免許取得試験!‐その2‐

飯田side

 

『試験開始、30秒前!』

「皆! あまり離れず、一塊で行動しよう!」

 

 ルール説明。そして試験に使用するターゲットとボールの配布が終わり、試験開始へのカウントダウンが刻一刻と進む中、僕は皆に集団で行動する事を進言していた。

 

「飯田さんの仰る通りです。雄英体育祭で私達の“個性”や手の内が知られている以上、単独での行動は避けるべきです」

「そうね。同校で潰しあう必要はない以上、手の内を知る者同士でチームアップが勝ち筋だわ…だけど」

「えぇ、それは他校も同じ事。となれば、この一次試験は謂わば学校単位での対抗戦(・・・・・・・・・)

「だったら、次は当然どこの学校を狙うか(・・・・・・・・・)って事だよな…」

『試験開始、20秒前!』

 

 それに続くように、八百万君、蛙吹君、瀬呂君が口を開き、皆が他校の狙い(・・・・・)を察する。

 そう、学校単位の対抗戦が行われる中、雄英高校(僕達)だけは“個性”も手の内も知られてしまっている。相手からしてみれば、絶好のカモ(・・・・・)に見えるだろう。

 

『試験開始、10秒前!』

「全員分担して、全方位を警戒! 互いの死角をカバーしあうんだ!」

 

 だが、僕達は単なるカモじゃない。迫り来る理不尽(ピンチ)は全て打ち砕くまでだ!

 

『5、4、3、2、1、START!!』

 

 試験開始を告げるアナウンスが響くと同時に、文字通り全方向から他校の生徒が一斉に我々へ群がり―

 

「まず最初に手前らを落とす!」

雄英(お前達)だけ特別扱いなんて、認められるかよ!」

 

 怒りの声を上げながら、攻撃を仕掛けてきた。僕達へ向かって飛んでくる数百個のボール。

 主に増強系の“個性”を発動した上で投げつけられたボールは、その全てが時速200kmを軽く超える豪速球。だが―

 

「この程度のスピード!」

 

 吸阪君の電撃や緑谷君の衝撃波、轟君の炎等に比べれば、遅い(・・)の一言だ。

 僕は自らに向かって来るボールを迎撃する為、両肩と背中の推進装置(スラスター)を起動。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 気合と共にその場で独楽の様に高速回転して、飛んで来たボールを次々と蹴り飛ばす(・・・・・)! これぞ、仮免試験に向けて生み出した防御技、『レシプロウィンドミル』だ!

 

「あれだけのボール、全部蹴り返しやがった…」

「だ、誰だよ! オールマイトの弟子(・・・・・・・・・)エンデヴァーの息子(・・・・・・・・・)がいなくなれば、楽勝だ。なんて言った奴は!」

 

 僕目がけて投げつけたボールが全て蹴り返された事に、驚きの声を上げる他校の生徒達。その内の何人かはボールが命中し、ターゲットが発光している。

 それにしても、吸阪君がいなくなれば楽勝とは…随分と甘く見られたものだな。よし!

 

「聞け! 俺の名は飯田天哉! インゲニウムの名と魂を継ぐ者だ!!」

 

 僕は自らを鼓舞する為、そして相手を威圧する為に、あえて大声で名乗りを上げる。すると―

 

「トップの3人が欠け、俺達の戦力はガタ落ち…と考えたんだろうが、甘かったな」

「ウチらもかなり強いからね」

「侮る葛に倒さる*1…この諺の意味を思い知るがいい!」

 

 僕と同じように、投げつけられたボール全てに対処した皆が同調し、啖呵を切ってくれた。

 

「うぉ、な、何だよコイツら…1年のくせに…」

「これが、雄英…」

 

 それに怯み、後退る他校生達。僕は皆を更に鼓舞する為、声を張り上げた。

 

「皆! 締まって行こう!!」

 

 

真堂side

 

「あれだけの数を苦も無く対処するかぁ…」

「まぁ、このくらい(・・・・・)でやられてたら、雄英ブランド(・・・・・・)の失墜だよね」

 

 真壁の呟きにそう返しながら、俺はどう動くのが傑物学園(俺達)にとって最善かを考える。うん、出来れば、もう少し判断材料が欲しいな。

 

「頼めるかい? 真壁、投擲」

「わかった」

「心得た」

 

 クラスメートの真壁と投擲に頼み、雄英に仕掛けてもらう。さて、彼らはどう動くかな?

 

「任せた」

「任された」

 

 真壁が“個性”『硬質化』でコンクリート以上に硬くしたボールを投擲に投げ渡し、投擲はそのボールを―

 

「これ、うっかり僕から一抜けすることになるかもだけど、それは敵が減るって事で大目に見てもらえるとありがたいかな」

「ターゲット、ロックオン。軌道…弦月!」

 

 “個性”『ブーメラン』を発動して、ボールを投擲。予め硬質化したボールは次々と地中に潜り、弦月の名の通り半月の軌道を描きながら、雄英生目がけて突き進んでいく。

 

「さぁ、どう対応するかな?」

 

 お手並み拝見。とばかりに呟いた直後―

 

「皆下がって! ウチがやる!」

 

 女子の1人…たしか、耳郎響香だったか…が前に出た。この距離じゃ、細かい動作まではわからないが…両手を地面に当てたようだな。

 

「ハートビートファズ!!」

 

 直後、放たれる強烈な衝撃波。それによって地面が抉られ、投擲の放った攻撃の軌道が丸見えになってしまう。そして―

 

「粘度溶解度MAX! アシッドベール!」

 

 展開された溶解液の壁で、容易く防がれ、溶かされてしまった。

 

影の細剣(シャドーレイピア)!」

「危な!」

 

 反撃も的確。体を自由に折り畳める畳だから、何とか避けられたが…こいつはなかなか厄介なチームだ。

 

「ふー、強い」

「体育祭の頃のイメージは捨てなきゃいけないね。成長率が段違いだし、仲間同士でお互いを良くカバーしている。戦力を分断しないといけないな…」

 

『えー、現在まだどこも膠着状態…通過、0人です。あ、情報が入り次第、私がこちらの放送席から、逐一アナウンスさせられます…眠い…早く終わってほしい

 

 タイミング良く聞こえてきたアナウンスに、俺は覚悟を決める。

 

「皆離れろ! 今のままじゃ、こっちが不利。戦況をひっくり返す!」

 

 まずは奴らの陣形を崩す! 奴らを分断して、少数になったところを集団で奇襲するのがベストだ!

 

「最大威力!」

「震伝動地!!」

 

 “個性”を最大出力で発動し、一定範囲内に地震を起こす必殺技。発動後、反動が来て暫く動けなくなるのが欠点だけど…

 

「移動するぞ、真堂。暫く身を隠す(・・・・)…で良いんだよな」

「あぁ、頼むよ。奇襲の準備を整えよう」

 

 その間は素直に仲間の力を借りる。さぁ、最高のタイミング(・・・・・・・・)を狙うとするか。

 

 

雷鳥side

 

 さて、一次試験免除となった俺達は待合室で、皆を見守っていた訳だが…

 

『あ、ようやく1人目の通過が…うぉ!?』

『脱落者120名!! 1人で120人脱落させて、通過した!!』

 

 夜嵐イナサが行った芸当には、少なからず衝撃を受けていた。“個性”の強さもだが、ボールだけを操るその制御もなかなかの物だ。

 

「流石は、推薦入試でトップを取っただけの事はある」

 

 もう少しで、夜嵐も待合室へやって来るだろう。轟と話をさせて、あんな事(・・・・)が起きないようにしないといけないな。

 あの真堂とかいう奴が地震を起こし、フィールドを破壊する光景を見ながら、俺は轟と夜嵐の関係改善について、考えを巡らせるのだった。

 

 

梅雨side

 

「それにしても、無茶苦茶な事をやってきたわね」

 

 あの真堂って男子の必殺技で、倒壊してしまったフィールド。私は幸い掠り傷1つ負わなかったけれど、皆と分断されてしまったわ。

 恐らくだけど…こうやって私達を分断し、あわよくば負傷させようというのが、傑物学園の作戦ね。

 

「早く皆と合流した方が良さそうね。集団で襲われでもしたら、万が一という事も…ッ!」

 

 次の瞬間、半ば反射的に繰り出した攻撃が、何かに命中。その勢いを利用して、私はそれ(・・)から距離を取ったわ。

 

「うわぁ、完全に捉えたと思ったのに…凄いねぇ」

 

 誰もいなかった(・・・・・・・)筈のそこにいたのは、胸元の開いたボディースーツ(コスチューム)に身を包んだ茶髪の女子。たしか、士傑高校の生徒ね。

 

「こういう乱戦が予想される試験だと、まず情報の多いとこを狙う。みたいな発想する人もいるらしいの」

「だから、雄英が早めに脱落してしまう可能性を考えて、会いに来たの。せっかく強豪校との交流チャンスだし、雄英(あなた)達の事、もっと知りたくて」

「よく…喋るのね」

 

 すぐに他校生が殺到する状況なのに…余裕から来るものか、それとも何かの作戦か、目的がわからない以上、下手に仕掛ける訳には―

 

「ッ!」

 

 こちらの考えなんてお構いなしに、石とボールを連続で投擲してくる女子。それを避けた直後―

 

「あら?」

 

 今まで目の前にいた筈の女子が、背後に回り込んでいたわ。さっきと同じように、反射的に手を出していなかったら危なかったわね。

 

「どうしてわかったのかしら?」

「こう見えても、視野の広さと動体視力には多少自信があるの。視界の端に一瞬だけ動くものが見えたから、手を出した。それだけよ」

「なるほど、視野の広さかぁ…それは盲点だったわ」

 

 クスクスと笑いながら、彼女はゆっくりと構えるけど…隙が無いわね。

 

「ちなみに、さっきのは技術(・・)。相手の視覚()聴覚()から、私の存在を逸らすのよ。その瞬間、息を止めて何も考えずに相手の意識の外へ潜み、紛れるの。何も考えない(・・・・・・)のが、難関ね」

「………」

 

 私は表面上冷静を装って彼女の説明を聞いていたけど、内心恐怖を感じていたわ。

 彼女と遭遇したのが、視野の広さと動体視力を併せ持つ私じゃなかったら、文字通り何をされたかも解らない(・・・・・・・・・・・)まま脱落していた可能性だってある。士傑高校では、こんな技術も教えているのね。侮れないわ。

 このまま睨み合いが続くかと思ったけど―

 

「ッ!」

 

 それは呆気無く終わりを告げたわ。遠慮無しに降り注ぐ攻撃に、私達はそれぞれ別の場所へ退避。

 

「士傑もいる…嫌だな……」

 

 同時に姿を現す他校生。軽く10人はいるわね…。

 

「良くない状況だわ」

 

 誰とも合流出来ないまま大勢に狙われる。最悪の想定が実現してしまったわね…5対1くらいまでなら何とか出来たけど、流石にこの人数差は…。

 

「だとすれば…」

 

 今、私に出来るのは逃げる事だけよ!

 

「ヒャッハー! アイツは反撃出来ねぇみたいだぞ!」

「落とせる奴から落とそうぜ!」

 

 こっちが反撃出来ないのを察したのか、下品な声を上げながら攻撃を仕掛けてくる他校生。攻撃を避けながら何とか反撃出来ないか考えていると―

 

「梅雨ちゃん!」

 

 突然聞こえてきた声。この声は…お茶子ちゃん!?

 

「梅雨ちゃん、こっちに! 早く!」

 

 自らの身を晒し、私を呼ぶお茶子ちゃん。何か策があるのかしら?

 

「早く! じゃねぇよっ!」

 

 でも、私が近づくよりも早く、他校生がお茶子ちゃんに殺到。攻撃を仕掛けた訳だけど―

 

「うわ、もう邪魔!」

 

 お茶子ちゃんは反撃や回避を試みるでもなく、狼狽えるばかり。

 

「わっ…」

 

 挙句の果てには、足を滑らせて落下してしまった。咄嗟に飛び出した私が受け止め―

 

「2人纏めてもらった!」

「待てよ! 抜け駆けすんな!」

 

 獲物の取り合いで他校生が揉めている間に距離を取り、岩場の陰に隠れたわ。

 

「くそっ、逃がした!」

「岩場の陰に隠れられた! って言うか、さっき思ったけどこのやり方、効率悪くないか?」

 

 とりあえず暫くは大丈夫ね。

 

「ごめんね、梅雨ちゃん。ヘタこいた」

「………大丈夫よ。それより…」

 

 周囲を警戒しながら、私に謝罪するお茶子ちゃんに声を返す。そして―

 

「貴女、さっきの士傑の女子ね?」

 

 背後から私にボールを当てようとしたお茶子ちゃん(・・・・・・)の手を払う。

 

「はえ?」

「お茶子ちゃんは、入学してから今日までの訓練で、ある程度の時間だったら、自分に“個性”を使っても副作用を気にしなくてよくなっているわ」

「それなのに、攻撃を受けても発動の素振りすら見せず、何よりも無策で姿を現すなんて…私の知ってるお茶子ちゃんじゃないわ」

「そ、それは、梅雨ちゃんが心配で、あ、慌ててたから!」

 

 目を泳がせながら、言い訳を並べるお茶子ちゃん。それなら、逃れようのない証拠を突き付ける事にしましょう。

 

「それにもう1つ。私と2人の時はお茶子ちゃん。私の事は梅雨(・・)って呼ぶのよ」

「え!? 2人ってそんな関係だったの!?」

「もちろん()よ」

「………」

 

 本物のお茶子ちゃんなら、こんな単純な引っかけにはかからない。偽者確定(・・・・)ね。

 

「そこまでわかってたのに、助けたって事は…逆に、私を利用する気だった?」

「ッ!」

 

 全身を蕩けさせながら、お茶子ちゃんから士傑の女子へと変わっていく目の前の相手。正直言ってこれ以上の相手はしたくないんだけど…。

 

「そんなつもりは無かったわ。ただ、お茶子ちゃんじゃないなら、猶更浮かんだり出来ない。あの高さで背中から落ちたら、大怪我確定…だから助けたの」

 

 覚悟を決め、私がこの人を助けた理由を打ち明ける。

 

「ふぅん…優しいのね。強くて、頭が切れて、優しくて…貴女の事をもっと知りたいわ…」 

「…試験の後でお願いしたいわね……」

 

 クレイジーとしか言いようのない相手を前に、思わず溜息が漏れる。この試験、一筋縄ではいかないわね。

*1
相手を馬鹿にしてかかると、思いがけずに痛い目にあうということ。相手を軽く見ることによって失敗を招くことの戒め。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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