出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
Season2第9話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第9話:ヒーロー仮免許取得試験!‐その3‐

雷鳥side

 

「はい、お疲れ様。水分補給だが…スポーツドリンクで良いかい?」

「大丈夫ッス! スポーツドリンクは大好物ッス! ありがたく頂くッス!」

 

 俺が差し出したスポーツドリンクを受け取り、大声を出しながら頭を下げる夜嵐イナサ。うん、悪い奴では無いんだが…もう少し音量を落としてほしいものだ。

 さて、夜嵐が一服したところで、本題に入るとしよう。

 

「ところで…夜嵐イナサ。お前さん、轟と何か因縁でもあるのかい?」

「ッ!」

 

 俺の問いかけに対し、露骨に表情を変える夜嵐。やれやれ、こいつは少々骨が折れそう(・・・・・・)だな。

 

 

梅雨side

 

「貴女は誰でも助けるの?」

「境界は?」

「何を以て線を引く?」

 

 矢継ぎ早に問いながら、私へ向かってくる士傑の女子。恐らく“個性”の関係だろうけど、全裸(・・)で突撃してくるのは…どうかと思うわ。

 

「質問に答えても良いけど、まずは服を着てほしいわ」

「やる事やったらね」

「やる事って?」

「秘密♪」

 

 こんなやりとりを交わしながら、彼女が次々と繰り出す攻撃(引っ掻き)を、私は籠手(ガントレット)を装備した腕で受け流し続ける。

 この鋭さ…生身で受けていたら、腕がズタズタになりかねないわね。それに攻撃の軌道が変則的で、読み難いわ。

 防戦一方になりつつあった状況。それが変化したのは、30秒ほど経った頃。

 

「ッ!」

「もぉ…」

 

 前触れ無く飛んできた3本のテープ(・・・)を避ける為、私と彼女は互いに距離を取る。そう、駆けつけてくれた。

 

「梅雨ちゃん、何この羨ま…じゃない、とんでもない状況!」

「瀬呂ちゃん、良いタイミングで来てくれたわ」

「瀬呂だけじゃねぇぞっ!」

 

 テープを射出して、彼女を牽制する瀬呂ちゃんにそう返した直後、響く声。駆けつけてくれたのは、瀬呂ちゃんだけじゃなかったのね。

 

「何が何でも、捕まえてやるぜ!」

 

 鼻息荒く飛び出し、彼女へもぎもぎを次々と投げつける峰田ちゃん。だけど、彼女はその全てを難なく回避すると―

 

「いいトコだったけど…残念…本当に!」

「もっとお話したかった。でも、これじゃあもう無理ね…残念」

「梅雨ちゃん、お話の続きはまたの機会にね」

 

 そう言い残して、素早くこの場を離脱して行ったわ。

 

「あ、待て! 痴女!」

「相手ならオイラがしてやらぁ!」

「2人とも追わなくていいわ…特に峰田ちゃん」

 

 彼女を追いかけようとする2人を私は制止し、近くの岩陰に身を隠すよう促す。

 

「“個性”の関係だと思うけど、彼女服ごとターゲットを脱いでいるわ。また狙われるリスクが無い訳じゃ無いけど、残り時間なんかを考えたら、彼女でポイントを稼ぐのは難しいと思った方が良いわね」

「あと…大丈夫だと思うけど、2人は本物よね?」

「? どういう事だ?」

「ドンパチやってるのが見えたから、急いで駆け付けたんだよ。峰田とは途中で合流したんだ」

「そう…とにかく助かったわ。2人ともありがとう」

 

 これで3人。岩陰の外にいる他校生の集団くらいなら、何とか出来そうね。

 

「瀬呂ちゃん、峰田ちゃん。私が囮になるわ。2人で周りにいる他校生を一網打尽にして頂戴」

「囮って…戦力差は3倍どころじゃねぇんだぞ…無茶だって!」

「だが、他の皆を待っていられるほど時間に余裕がある訳でもねぇ…峰田、覚悟決めろ」

 

 弱気な言葉を口走る峰田ちゃんを窘め、覚悟を決めるよう促す瀬呂ちゃん。

 

『現在、通過者22名。あと78名通過で終了です!』

 

 いいタイミングで通過者を知らせるアナウンスも流れてくれたわ。峰田ちゃんはホンの一瞬だけ唇を噛み―

 

「あぁもう! やってやらぁ!」

 

 覚悟を決めてくれた。大丈夫、私達3人が最善を尽くせば、良い結果が得られる筈よ。

 

「それじゃあ…行きましょう!」

 

 

お茶子side

 

『現在、通過者22名。あと78名通過で終了です!』

 

 通過者を知らせるアナウンスが響く中、私と尾白君、砂藤君は士傑高校の男子と対峙していた。

 

「所詮は低レベルの私立校生……この程度の力量で仮免試験に挑むなど、笑止千万」

 

 そう冷たく言い放ち、たった今団子のように丸めた他校生をゴミのように投げ捨てる男子。彼の周りには同じような人間団子が全部で20個。

 どうやら私達がここに辿り着く前から、彼はここで他校生と戦い、その全てを倒していたみたいだ。

 

「見たか?」

「あぁ、どうやら彼の“個性”は、物体を捏ねて別の形にしてしまうってところ…かな?」

「その解答、ほぼ正解だ。流石は我が士傑高校と肩を並べる名門校。雄英高校の生徒だと賛辞を贈らせてもらおう」

「そりゃどうも…」

 

 芝居がかった動作で雄英高校を褒め称える男子。その目的がわからずに、私達3人は迂闊に動けずにいた。

 

「我々士傑生は活動時、制帽の着用を義務付けられている。何故か?」

「それは、我々の一挙手一投足が士傑高校という伝統ある名を冠しているからだ」

「これは示威(・・)である。就学時より責務と矜持を涵養する我々と、粗野で徒者のまま英雄(ヒーロー)を志す者達との水準差。諸君ならご理解頂けると思う」

 

 たしかに、彼のレベルは相当なもの。緑谷君や吸阪君、轟君ならともかく、私達が単独で遭遇したら苦戦(・・)は免れない。だけど…

 

「1つ質問…貴方は一次試験突破の条件を、もう満たしているんですよね? それなのに、なんで…」

「有象無象の数を減らしている理由を問いたいのかな? 言ったであろう。これは示威である」

「力も精神も未熟でありながら、英雄(ヒーロー)を目指す愚者がなんと多い事か! 英雄(ヒーロー)という存在を貶める有象無象は徹底的に叩き潰し、二度と大それた事を考えないように矯正(・・)する! それがこの行為の理由である」

 

 彼の言葉に、私達は試験官が試験開始前に言った内容を思い出す。この人は、ヒーロー殺しの思想に少なからず影響を受けている!

 

「その顔…どうやら理解出来ないようだな。雄英高校…私は御校を尊敬していた(・・・・・・)。今年の雄英体育祭で見せたレベルの高さに胸躍らせ、今日この場で伍する事に誇りすら感じていた…だが!」

「諸君らはその思いを裏切ったのだ! 爆豪勝己…絶無などという存在を世に出し、多大な被害を出しておきながら、平然と仮免試験に参加する厚顔無恥な振る舞い! 万死に値する!!」

「ちょ、何だよ…その理屈!」

絶無(やつ)には俺達も被害を受けている! それなのに、何故俺達が仮免試験を辞退しなくちゃいけないんだ!」

連帯責任(・・・・)という言葉を知らんのか! この愚か者どもめ! 数ヶ月とはいえ、同じ学び舎で共に学んだ者が咎人となったのであれば、責任を取るのが道理!」

The rotten apple injures its neighbor(腐った林檎は、周りの林檎を腐らせる).爆豪勝己と接していた貴様らもまた、腐っている可能性があるということだ!」

「それだと言うのに、オールマイトの弟子やエンデヴァーの実子を優遇し、一次試験を免除させるという暴挙! どれだけ実力があろうと、腐った可能性がある者は排除すべきなのだ!」

 

 とても納得出来ない無茶苦茶な理屈を口にしながら、彼は背中から肉塊を生やし―

 

「故に、私は諸君達も排除する。覚悟するがいい!」

 

 それを切り離して、私達へ飛ばしてきた!

 

「迎撃するぞ!」

「素手で触るのは多分拙い! サポートアイテムで迎え撃とう!」

「うん!」

 

 私達も迎え撃つ。あんな理屈でやられる訳にはいかないから!

 

 

梅雨side

 

「ヒャッハー! 今度こそ逃がすな!」

「落ちろ落ちろ落ちろ!」

「雄英死すべし! 死すべし!」

 

 私が岩陰から飛び出した瞬間、目の色を変えて攻撃を仕掛けてくる他校生達。

 

「ケロケロッ!」

「畜生! ちょこまかと跳び回りやがって!」

「反撃出来ないんなら、いい加減諦めやがれ!」

 

 回避に専念し続けた事で、かなりストレスが溜まっているようね。その状態では視野だって狭くなる。今が…好機!

 

「セロファン! GRAPE JUICE(グレープジュース)!」

「「おう!」」

 

 私の声と共に飛び出してきた瀬呂ちゃん(セロファン)峰田ちゃん(グレープジュース)

 2人の手にはそれぞれ、メリッサさん特製のサポートアイテム。さぁ、反撃よ!

 

 

峰田side

 

「セロファン! GRAPE JUICE(グレープジュース)!」

「「おう!」」

 

 蛙吹(フロッピー)の声に答え、オイラと瀬呂(セロファン)は岩場のてっぺんに姿を現した。

 

「あいつら、あんな所に!」

 

 フロッピー1人だと思ってた他校生の奴ら、オイラ達が姿を見せた事で浮き足立ってやがる。見てろ、目にもの見せてやるぜ!

 オイラはメリッサさんに作ってもらったサポートアイテム、多目的発射機(ランチャー)を構え―

 

「発射!」

 

 予め装填しておいたカートリッジを発射! そいつはある程度飛んだところで白煙を吹き出し、他校生の足元に落下!

 

「な、何だよこれ!」

煙幕(・・)だ! くそっ、セコイ真似しやがって!」 

 

 煙幕で視界を塞がれ、パニック状態に陥る他校生の奴ら。慌ててその場から逃げ出そうとするけど―

  

「痛っ! お前、どこに立ってんだ! どけよ!」

「お前こそ、俺の道を塞ぐな!」

 

 視界不良で足元も凸凹だらけ。そんな場所に屯していたもんだから、なかなか煙幕の漂う範囲から抜け出せない。

 

「おりゃおりゃおりゃぁ!」

「そぉらよっ!」

 

 そこにオイラのもぎもぎと、瀬呂(セロファン)のテープを放てばどうなるか? その答えはすぐに解った。

 

「ち、畜生! 動けねぇ!」

「こんなのアリかよ!」

 

 煙幕が晴れたそこにあったのは、もぎもぎやテープで動きを封じられた他校生達の姿。文字通りの一網打尽だぜ!

 

「く、くそっ! こうなったら、逃げて態勢を―」

 

 おっ、1人だけ無事な奴がいた。慌てて逃げようとしてるけど―

 

「悪いな。逃がさねえよ」

 

 瀬呂(セロファン)がそうはさせない。

 

Check the connection(接続を確認).Can be used as a bow form(弓形態として使用可能).』

 

 両腰のホルスターから抜いた一対の鎌、それを合体する事で完成した小型の弓で狙いをつけ、光の矢を発射!

 

「シビビビビビッ!」

 

 光の矢が命中した他校生は全身を痺れさせ、その場に崩れ落ちた。光の矢(レーザースタンアロー)、個人的には食らいたくない攻撃だぜ…。

 そんな事を考えながら、オイラはボールを手に動けなくなっている他校生のもとへ急ぐ。

 

「さて、時間の余裕も無いし、貰うぜ。皆さん」

「………君ら、1年だろ? 勘弁してくれよぉ…」

「雄英はエリートなんだから、まだチャンスあるだろ? 俺ら、ここで仮免取っとかないといけねーんだよ…」

 

 なんだよ、こいつら…蛙吹1人を集団で追い掛け回すような真似しておいて、自分が不利になったら命乞いなんて、恥ずかしくないのかよ!

 思わず怒りの感情が出そうになるけど―

 

「悪いけど、ここで仮免を取りたいのは私達も同じよ」

 

 蛙吹が余計な事は言わず、淡々とボールをターゲットに押し付けているのを見て…オイラもそれに倣った。

 下手な言葉より、こうした方がこいつらには効果がありそうだしな!

 

『現在、通過者38名。あと62名通過で終了です!』

 

 

尾白side

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 士傑生が次々と飛ばしてくる肉塊を、俺はメリッサさん特製のサポートアイテムである一対のトンファーを振るい、次々と叩き落していく。

 

「うぉりゃぁっ!」

 

 砂藤は両脚に装着した移動支援兼近接格闘ユニットを使って、肉塊を蹴り飛ばしたり、踏みつけたりして無力化。

 

「えぇぇぇいっ!」

 

 麗日さんは、一対のリング…戦輪(チャクラム)を、ある時は射出、ある時は指で挟んだまま斬りつける事で、飛来する肉塊に対応している。

 

「流石だ…腐っても鯛。諸君らの実力は甚だ不本意ではあるが、認めざるを得ない」

 

 一蹴された肉塊を次々と自分に戻しながら、心底不満そうに俺達の実力を認めてきた士傑生。出来る事ならこういうタイプとは、これ以上関わりたくないんだけどな…。

 

「今回の試験は異例の少数採用。平和の象徴(オールマイト)が引退し、時代は節目。本来であれば、ヒーローは増員して然るべきなのにだ…」

「即ち、これらが示唆するは有象無象の淘汰(・・・・・・・)英雄(ヒーロー)という職業を、より高次のモノにする選別が始まったと推察する。私はそれを賛助したく、活動している」

「試験そっちのけでやる事かな…ハッキリ言っておかしいですよ」

「徒者や君達のような力だけの荒くれ者(・・・・)が世に憚る方がおかしい」

 

 そう言いながら、人間団子になった他校生を遠慮無く踏みつける士傑生。駄目だ…どれだけそれらしい理屈を口にしていようと、この人を認める訳にはいかない!

 

「そうやって…」

「ん?」

「そうやって、自分だけの狭い視野(・・・・)で物事を判断しているから、そんな排他的な思考になるんだ!」

「私の眼は、見目好く長大である!!」

 

 俺の反論に対し、突然激高する士傑生。よくわからないが、今がチャンス!

 

「そんな頭の中だけで組み立てた理論。いまここで叩き潰す!」

「知性無き獣が吠えるなぁぁぁぁぁっ!」

 

 怒りの方向と共に、肉塊を次々と飛ばす士傑生。だけど―

 

「でぇぇぇりゃぁっ!」

「やぁぁぁっ!」

 

 砂藤の蹴りと、麗日さんの戦輪(チャクラム)で迎撃されていく。その間に俺はどんどんと間合いを詰め―

 

「小難しい理屈を並べ立てて、他人を排斥する事しか出来ない貴方を! 俺達は認めない!」

「立場の自覚も出来ぬ愚か者がぁぁぁっ!」

 

 至近で放たれた肉の塊を紙一重で回避しながら、グリップを畳んだトンファーを繋ぎ合わせた長棍(ロングバトン)にすると―

 

「せいやぁぁぁっ!」

 

 士傑生の鳩尾目掛け、一撃!

 

「ぐほぉっ…」

 

 鍛え様の無い急所を攻撃を受け、胃液を撒き散らしながら吹っ飛んでいく士傑生。壁に叩きつけられ、崩れ落ちると同時に“個性”が解除され、人間団子にされた他校生が元へ戻っていく。

 その事自体は良かったんだけど…

 

「雄英生、そこを退け!」

「そこで伸びている士傑生。俺達をゴミみたいに扱った報いを受けさせる!」

「助けてもらった借りがあるから、お前達は攻撃しない。だから、早く退けよ!」

 

 怒り心頭の他校生達が、士傑生への私的制裁(・・・・)を行おうとしているのは…少々予想外だ。

 

「どうする? 尾白」

「どうするも何も…取るべき選択は1つ…だよね?」

「ヒーローを目指すなら、それしかないよね!」

 

 俺は砂藤、麗日さんと頷きあい、士傑生を庇う様に、他校生達の前へ立つ。

 

「あんた達の気持ちはわかる。だけど、そんな集団暴行(リンチ)みたいな真似を許す訳にはいかない!」

 

 そう宣言した直後、怒りの声をあげながら俺達に襲いかかる他校生達。3対20か…やってやるさ! 




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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