出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
梅雨side
吸阪ちゃんと緑谷ちゃんが、
他人の戦い方を見て、その良し悪しを分析するのもまた、立派な訓練。しっかり勉強させてもらうわ。ケロケロ。
「お隣、良いかしら?」
「えぇ、どうぞ」
セメントス先生の“個性”でリングが着々と作られていく中、声をかけてきたのは、
「……昨日のお話には驚いたわ。
「そうね。皆の反応を見て、この事がどれほど凄い事なのか再認識出来たわ。ホント、慣れって恐ろしいものね」
「まったくだわ……それで、今回の模擬戦はどんな結果になるのかしら?」
「そうね…吸阪ちゃんと緑谷ちゃんが負ける事は、まず無い。と言えるわ。こちらが見るべき点としては、吸阪ちゃん達相手に、
「彼氏さん達の勝利を、微塵も疑ってないのね」
「吸阪ちゃんと緑谷ちゃんは、期末試験で
軽いくらいね。そう続けようとした私の言葉は、唖然となった
周りを見れば、私達の会話が聞こえていたお茶子ちゃん達女子勢も、唖然とした表情で
「そういえば、この事は話してなかったわね…」
私は自らの失敗を反省しながら、敢えて声をかけずに様子を見る。模擬戦が始まるまでには、皆元に戻る筈よ。
「はっ、私はいったい何を…」
うん、予想通りだわ。
「オッケー、ほぼ完成だ。君達の準備が良いなら、5分後に模擬戦第一試合を始めるよ」
セメントス先生の“個性”でTDL内に闘技場が作られ、模擬戦の準備が整っていく。
第一試合は僕達Aチーム対、
「緑谷君、作戦を立てる為にも並行世界の…あぁ、出久君と呼ぶように言われていたんだった。出久君の“個性”や戦い方について、君の率直な意見を聞きたい」
「うん。昨日、“個性”は『フルカウル』と言っていたから、“個性”の基本的な性質は、僕の“個性”と同じと考えて良いと思う」
「高い増幅率を持った増強型か…接近戦では脅威となるな」
「体格を見ても、緑谷のそれよりも強力と見た方が賢明だろう」
「うん…気を付けるに越した事は無いと思う」
飯田君や轟君とそんな会話を交わしながら、作戦を練っていく。5分という時間はあっという間に流れ―
「それではこれより、男子Aチーム対緑谷出久の模擬戦を行います」
審判を務めるセメントス先生の声が響き渡った。いよいよだ!
出久side
「制限時間は10分。その間にAチーム全員を戦闘不能にするか、降参させれば出久君の勝ち、1人でも生き残るか、出久君を戦闘不能にする若しくは降参に持ち込めば、Aチームの勝ちだ」
セメントス先生からのルール説明も終わり、互いに一礼して、僕とAチームはそれぞれ構えを取る。そして―
「それでは、始め!」
セメントス先生の声で、模擬戦は始まった!
僕は『フルカウル』を
「たぁっ!」
気合と共に床を強く踏みつけてジャンプ! TDLの天井付近まで跳び上がると、左腕から放った『黒鞭』を照明に絡みつかせて、蜘蛛のようにぶら下がる。
「なっ…」
「なんだよ、あの黒いロープみたいなやつ!? “個性”は増強型じゃないのかよ!?」
『黒鞭』の存在が完全に
「隙だらけだね! スナップショット!」
声と共に右手でフィンガースナップを繰り返し、衝撃波を次々と発射
「うぁぁぁっ!?」
「
その射線上にいたのは、青山君と上鳴君だ。2人が焦った表情で衝撃波を避け続ける光景に―
「援護する! 体勢を立て直せ!」
轟君が援護に入った。瞬時に氷壁を作り出して衝撃波を防御しながら、僕に向けて火炎放射!
「流石は轟君!」
僕は『黒鞭』を解除して、垂直に落下する事で火炎を回避。当然そんな事をすれば―
「よし、
Aチームの反撃を許してしまう。お返しと言わんばかりに青山君のレーザーと、上鳴君が事前に発射したポインターに誘導された電撃が襲い掛かるけど―
「甘いよ!」
今度は『浮遊』を発動する事で、空中で急停止。レーザーと電撃を難無くやり過ごした。
「あの“個性”は!?」
観戦していたオールマイトが驚愕の表情を浮かべているけど、それは後回し。
僕は『黒鞭』と『浮遊』を併用した
「はぁぁぁぁぁっ!」
「
頭上からの衝撃波連射で、青山君を戦闘不能に追い込み―
「捕まえたっ!」
「えっ!? あっ、うわぁぁぁっ!?」
「せいっ!」
「ぐほっ…」
『黒鞭』で絡め捕ってからの一撃で、上鳴君の意識を刈り取った。
「残り…5人」
「捕まえる事さえ出来ればっ!」
青山と上鳴を戦闘不能にした出久が着地した直後、“個性”を発動した砂藤が己を鼓舞するように叫びながら、出久に掴みかかる様に突撃。手四つの体勢に持ち込むが―
「ぬぐぐぐぐぐ…」
「砂藤君、君の“個性”『シュガードープ』には、まだまだ伸び代がある。5倍の強化で満足してちゃいけないよ」
全力の砂藤に対し、出久は涼しい顔。信じられん…なんという剛力!
「せいっ!」
「ぐはぁっ!」
力負けし、膝を突いた瞬間。掌打を叩き込まれ、吹っ飛ばされていく砂藤。そこへ―
「隙有りだ!」
尾白が背後から跳びかかった。砂藤を吹っ飛ばした事で、体勢が僅かに崩れた出久へ向け、尻尾の一撃を放つが―
「攻撃が正直すぎる!」
「なっ!?」
出久は尾白の攻撃を一瞥すらせずに受け止めてみせた。気配だけで、あの攻撃を受け止めたというのか!?
「尾白君、君は地力があるけど、戦い方が基本に忠実過ぎる。
そう告げると、出久は尾白を数回振り回して天井近くまで放り投げ―
「はぁぁぁぁぁっ!」
両手でフィンガースナップを繰り返した。衝撃波の弾幕に晒された尾白は、成す術なく打ちのめされ、墜落していった。
「これで、残るは3人」
「なんという強さだ…まさしく鬼神の如し」
5分足らずで4人が倒されたという事実に、背中を冷たい物が流れるのを感じる。
「だが、諦める訳にはいかん!」
俺も緑谷も轟も、ヒーローを志す者として、戦いから逃げるなど言語道断!
「纏え!
「アイヨ!」
「
「………それ、言い難くない?」
「改名は検討中だ!」
出久の指摘にそう答え、俺は突撃。
「ダララララララッ!」
突きの
「良いパンチだね。手数も申し分ない」
そう言いながら、悠然と
「でやぁっ!」
俺が距離を取ると同時に、緑谷が一気に距離を詰めて、飛び回し蹴りを放つ!
「なるほど、良い攻撃だね」
しかし、その蹴りは出久に当たる事は無く、空を切った。
「だけど、自分以上の速度を持つ相手に当てようと思うなら、まだまだ練度が足りない」
出久は緑谷の接近を目で追い、スウェーバックで回避してみせたのだ。しかも―
「はぁぁぁっ!」
「えっ!?」
空振りとなった緑谷の足を掴み、力任せに振り回すと―
「でぇぇぇいっ!」
「何っ!?」
右腕に氷の刃を纏い、密かに死角から近づいていた轟に投げつけたのだ。三段構えの攻撃が見抜かれていたとは…
「驚くのはわかる。でも、そんな雑な後退じゃ、すぐに追いつかれるよ」
「ッ!?」
迂闊! この一瞬で距離を詰められるとは!
「
直後、叩き込まれる強烈な6連打。纏っていた
「ぐはっ…」
容赦なく吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた俺は、そのまま意識を手放していった…。
「これで…5人」
「………予想以上だな」
闘技場で繰り広げられる模擬戦を見ながら、俺は静かに呟いた。
「
難しい顔で模擬戦を見ているオールマイトさんへ一瞬視線を送り、すぐに元へ戻す。闘技場では轟が自身の“個性”をフルに使って猛攻を仕掛けているが―
「氷の練度に対して、炎の方はまだまだ甘いね。氷結で相手の動きを誘導したりして、炎が確実に当たる状況を作ると良いと思う。それも単純な火炎放射じゃなく、炎を圧縮して熱線状にするとか一工夫すれば、なお良いかな」
「………そうか」
生やした氷柱はパンチ1発で粉砕され、火炎放射は蹴りで生じた衝撃波によって吹き散らされる。
平然とそんな芸当を見せながら、アドバイスまで送ってくる緑谷には、劣勢の極みだ。そして―
「でやぁっ!」
「ぐあっ!」
氷結と火炎、2つの攻撃の間に生じた一瞬の隙を突かれ、遂に右のハイキックを受けてしまった。何とかガード出来た轟だったが、緑谷の蹴りはガードの上からでも十分すぎる威力を持っていた。
壁まで吹っ飛ばされ、激しく叩きつけられた事で、そのまま崩れ落ちていく轟。
「残るは、こちら側の緑谷か…」
1対1の状況となり、睨みあう2人の緑谷を見ながら、俺はこの模擬戦の終わりが近い事を感じていた。
出久side
「なるほど、蹴り主体の戦い方か」
轟君を倒し、
向こうも同じように蹴りを放ち、ぶつかり合うけど―
「うわっ!」
競り勝ったのは僕の方だ。
「コンセプトは良いと思う。だけど体の使い方を含めて、甘い点が多い。『フルカウル』の出力は10%くらいかな? まだまだだね」
アドバイスを交えつつ、奮起を促す。
「まだまだなのは、百も承知さ…だからこそ、学んでいくんだ!」
立ち上がり。そう吠えた
「いくぞ!」
猛然とダッシュ。横っ飛びやジャンプを組み込んだ…グラントリノを彷彿とさせる立体的な動きを見せ―
「でやぁぁぁぁぁっ!」
僕の死角となる位置から、飛び回し蹴りを放ってきた。恐らく、並の相手だったら、逆転勝利を齎す乾坤一擲の一撃になっただろう。
「だけど…」
今の僕には、十分余裕を持って対処出来るスピードだ。先程同様、スウェーバックで蹴りを回避し―
「せいっ!」
カウンターの上段回し蹴りを叩き込んだ!
「ぐはっ…」
壁まで吹き飛ばされ、崩れ落ちる
「そこまで! 7分15秒、Aチーム全滅により、勝者! 緑谷出久!」
セメントス先生の声に一礼し、僕は闘技場を降りていく。次はいよいよ雷鳥兄ちゃんの出番。
どんな戦いを見せてくれるのか。出迎えてくれた麗日さん、耳郎さんとハイタッチを交わしながら、僕はワクワクがだんだん大きくなっていくのを感じていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。