出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

21 / 112
お待たせしました。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第12.4話:原作世界へ‐その4‐

梅雨side

 

 吸阪ちゃんと緑谷ちゃんが、並行世界(こちら側)の1-A男子と模擬戦を行う間、私達女子は見学に回る事にしたわ。

 他人の戦い方を見て、その良し悪しを分析するのもまた、立派な訓練。しっかり勉強させてもらうわ。ケロケロ。

 

「お隣、良いかしら?」  

「えぇ、どうぞ」

 

 セメントス先生の“個性”でリングが着々と作られていく中、声をかけてきたのは、並行世界(こちら側)の私。何か聞きたい事があるみたいね。

 

「……昨日のお話には驚いたわ。向こう側(・・・・)の私には彼氏がいて、しかもオールマイトの弟子の1人だなんて」

「そうね。皆の反応を見て、この事がどれほど凄い事なのか再認識出来たわ。ホント、慣れって恐ろしいものね」

「まったくだわ……それで、今回の模擬戦はどんな結果になるのかしら?」

「そうね…吸阪ちゃんと緑谷ちゃんが負ける事は、まず無い。と言えるわ。こちらが見るべき点としては、吸阪ちゃん達相手に、対戦相手(そちら)側がどれだけ持ち堪える事が出来るか(・・・・・・・・・・・・・・・)、かしら?」

「彼氏さん達の勝利を、微塵も疑ってないのね」

「吸阪ちゃんと緑谷ちゃんは、期末試験で殆ど本気のオールマイト(・・・・・・・・・・・)を相手に、劣勢とはいえ30分間戦い抜いたのよ。1対7くらいじゃハンデとしては…」

 

 軽いくらいね。そう続けようとした私の言葉は、唖然となった並行世界(こちら側)の私を見たことで打ち切られる。

 周りを見れば、私達の会話が聞こえていたお茶子ちゃん達女子勢も、唖然とした表情でフリーズ(・・・・)していた。

 

「そういえば、この事は話してなかったわね…」

 

 私は自らの失敗を反省しながら、敢えて声をかけずに様子を見る。模擬戦が始まるまでには、皆元に戻る筈よ。

 

「はっ、私はいったい何を…」

 

 うん、予想通りだわ。

 

 

(パラレル)出久side

 

「オッケー、ほぼ完成だ。君達の準備が良いなら、5分後に模擬戦第一試合を始めるよ」

 

 セメントス先生の“個性”でTDL内に闘技場が作られ、模擬戦の準備が整っていく。

 第一試合は僕達Aチーム対、並行世界(向こう側)の僕だ。

 

「緑谷君、作戦を立てる為にも並行世界の…あぁ、出久君と呼ぶように言われていたんだった。出久君の“個性”や戦い方について、君の率直な意見を聞きたい」

「うん。昨日、“個性”は『フルカウル』と言っていたから、“個性”の基本的な性質は、僕の“個性”と同じと考えて良いと思う」

「高い増幅率を持った増強型か…接近戦では脅威となるな」

「体格を見ても、緑谷のそれよりも強力と見た方が賢明だろう」

「うん…気を付けるに越した事は無いと思う」

 

 飯田君や轟君とそんな会話を交わしながら、作戦を練っていく。5分という時間はあっという間に流れ―

 

「それではこれより、男子Aチーム対緑谷出久の模擬戦を行います」

 

 審判を務めるセメントス先生の声が響き渡った。いよいよだ!

 

 

出久side

 

「制限時間は10分。その間にAチーム全員を戦闘不能にするか、降参させれば出久君の勝ち、1人でも生き残るか、出久君を戦闘不能にする若しくは降参に持ち込めば、Aチームの勝ちだ」

 

 セメントス先生からのルール説明も終わり、互いに一礼して、僕とAチームはそれぞれ構えを取る。そして―

 

「それでは、始め!」

 

 セメントス先生の声で、模擬戦は始まった!

 僕は『フルカウル』を最大出力(43%)で発動すると―

 

「たぁっ!」

 

 気合と共に床を強く踏みつけてジャンプ! TDLの天井付近まで跳び上がると、左腕から放った『黒鞭』を照明に絡みつかせて、蜘蛛のようにぶら下がる。

 

「なっ…」

「なんだよ、あの黒いロープみたいなやつ!? “個性”は増強型じゃないのかよ!?」

 

 『黒鞭』の存在が完全に想定外(・・・)だったのか、動揺を隠せないAチームの面々。気持ちはわかるけど、動きが止まるのは良くないね。

 

「隙だらけだね! スナップショット!」

 

 声と共に右手でフィンガースナップを繰り返し、衝撃波を次々と発射

 

「うぁぁぁっ!?」

Dangereux(危ない)!」

 

 その射線上にいたのは、青山君と上鳴君だ。2人が焦った表情で衝撃波を避け続ける光景に―

 

「援護する! 体勢を立て直せ!」

 

 轟君が援護に入った。瞬時に氷壁を作り出して衝撃波を防御しながら、僕に向けて火炎放射!

 

「流石は轟君!」

 

 僕は『黒鞭』を解除して、垂直に落下する事で火炎を回避。当然そんな事をすれば―

 

「よし、落下中は回避出来ない(・・・・・・・・・・)! 今度はこっちの番だ!」

 

 Aチームの反撃を許してしまう。お返しと言わんばかりに青山君のレーザーと、上鳴君が事前に発射したポインターに誘導された電撃が襲い掛かるけど―

 

「甘いよ!」

 

 今度は『浮遊』を発動する事で、空中で急停止。レーザーと電撃を難無くやり過ごした。

 

「あの“個性”は!?」

 

 観戦していたオールマイトが驚愕の表情を浮かべているけど、それは後回し。

 僕は『黒鞭』と『浮遊』を併用した立体的な機動(マニューバ)で、Aチームを眩惑しながら―

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

Cette façon de perdre n'est(この負け方は)pas belle(美しくない)…」

 

 頭上からの衝撃波連射で、青山君を戦闘不能に追い込み―

 

「捕まえたっ!」

「えっ!? あっ、うわぁぁぁっ!?」

「せいっ!」

「ぐほっ…」

 

 『黒鞭』で絡め捕ってからの一撃で、上鳴君の意識を刈り取った。

 

「残り…5人」

 

 

(パラレル)常闇side

 

「捕まえる事さえ出来ればっ!」

 

 青山と上鳴を戦闘不能にした出久が着地した直後、“個性”を発動した砂藤が己を鼓舞するように叫びながら、出久に掴みかかる様に突撃。手四つの体勢に持ち込むが―

 

「ぬぐぐぐぐぐ…」

「砂藤君、君の“個性”『シュガードープ』には、まだまだ伸び代がある。5倍の強化で満足してちゃいけないよ」

 

 全力の砂藤に対し、出久は涼しい顔。信じられん…なんという剛力!

 

「せいっ!」

「ぐはぁっ!」

 

 力負けし、膝を突いた瞬間。掌打を叩き込まれ、吹っ飛ばされていく砂藤。そこへ―

 

「隙有りだ!」

 

 尾白が背後から跳びかかった。砂藤を吹っ飛ばした事で、体勢が僅かに崩れた出久へ向け、尻尾の一撃を放つが―

 

「攻撃が正直すぎる!」 

「なっ!?」

 

 出久は尾白の攻撃を一瞥すらせずに受け止めてみせた。気配だけで、あの攻撃を受け止めたというのか!?

 

「尾白君、君は地力があるけど、戦い方が基本に忠実過ぎる。普通の戦い方(・・・・・・)じゃ、一定以上の力量を持った相手には通用しない」

 

 そう告げると、出久は尾白を数回振り回して天井近くまで放り投げ―

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 両手でフィンガースナップを繰り返した。衝撃波の弾幕に晒された尾白は、成す術なく打ちのめされ、墜落していった。

 

「これで、残るは3人」

「なんという強さだ…まさしく鬼神の如し」

 

 5分足らずで4人が倒されたという事実に、背中を冷たい物が流れるのを感じる。

 

「だが、諦める訳にはいかん!」

 

 俺も緑谷も轟も、ヒーローを志す者として、戦いから逃げるなど言語道断!

 

「纏え! 黒影(ダークシャドウ)!」

「アイヨ!」

深淵闇躯(しんえんあんく)!」

「………それ、言い難くない?」

「改名は検討中だ!」

 

 出久の指摘にそう答え、俺は突撃。

 

「ダララララララッ!」

 

 突きの連打(ラッシュ)で猛攻を仕掛けた。

 

「良いパンチだね。手数も申し分ない」

 

 そう言いながら、悠然と連打(ラッシュ)を捌き続ける出久。だが、これは想定の範囲内。

 

「でやぁっ!」

 

 俺が距離を取ると同時に、緑谷が一気に距離を詰めて、飛び回し蹴りを放つ!

 

「なるほど、良い攻撃だね」

 

 しかし、その蹴りは出久に当たる事は無く、空を切った。

 

「だけど、自分以上の速度を持つ相手に当てようと思うなら、まだまだ練度が足りない」

 

 出久は緑谷の接近を目で追い、スウェーバックで回避してみせたのだ。しかも―

 

「はぁぁぁっ!」

「えっ!?」

 

 空振りとなった緑谷の足を掴み、力任せに振り回すと―

 

「でぇぇぇいっ!」

「何っ!?」

 

 右腕に氷の刃を纏い、密かに死角から近づいていた轟に投げつけたのだ。三段構えの攻撃が見抜かれていたとは…

 

「驚くのはわかる。でも、そんな雑な後退じゃ、すぐに追いつかれるよ」

「ッ!?」

 

 迂闊! この一瞬で距離を詰められるとは!

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマッシュ! シックスオンワン!!」

 

 直後、叩き込まれる強烈な6連打。纏っていた黒影(ダークシャドウ)も、5発目を受けたところで弾き飛ばされ、無防備なボディに一撃を受けてしまう。

 

「ぐはっ…」

 

 容赦なく吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた俺は、そのまま意識を手放していった…。

 

「これで…5人」

 

 

(パラレル)イレイザーヘッド(相澤消太)side

 

「………予想以上だな」

 

 闘技場で繰り広げられる模擬戦を見ながら、俺は静かに呟いた。並行世界(パラレルワールド)の緑谷達は、その佇まいから相当な実力者…少なくとも教え子達より数段上だとは思っていたが、まさかこれほどとは…

 

向こう側(・・・・)のオールマイトさんは、相当優秀な指導者らしいな」

 

 難しい顔で模擬戦を見ているオールマイトさんへ一瞬視線を送り、すぐに元へ戻す。闘技場では轟が自身の“個性”をフルに使って猛攻を仕掛けているが―

 

「氷の練度に対して、炎の方はまだまだ甘いね。氷結で相手の動きを誘導したりして、炎が確実に当たる状況を作ると良いと思う。それも単純な火炎放射じゃなく、炎を圧縮して熱線状にするとか一工夫すれば、なお良いかな」

「………そうか」

 

 生やした氷柱はパンチ1発で粉砕され、火炎放射は蹴りで生じた衝撃波によって吹き散らされる。

 平然とそんな芸当を見せながら、アドバイスまで送ってくる緑谷には、劣勢の極みだ。そして―

 

「でやぁっ!」

「ぐあっ!」

 

 氷結と火炎、2つの攻撃の間に生じた一瞬の隙を突かれ、遂に右のハイキックを受けてしまった。何とかガード出来た轟だったが、緑谷の蹴りはガードの上からでも十分すぎる威力を持っていた。

 壁まで吹っ飛ばされ、激しく叩きつけられた事で、そのまま崩れ落ちていく轟。

 

「残るは、こちら側の緑谷か…」

 

 1対1の状況となり、睨みあう2人の緑谷を見ながら、俺はこの模擬戦の終わりが近い事を感じていた。

 

 

出久side

 

「なるほど、蹴り主体の戦い方か」

 

 轟君を倒し、並行世界(パラレルワールド)の僕と1対1になった僕は、改めて僕を見る。

 戦闘服(コスチューム)や構え方、重心の位置などから、戦闘スタイルを察した僕は、敢えて誘うように蹴りを繰り出した。

 向こうも同じように蹴りを放ち、ぶつかり合うけど―

 

「うわっ!」

 

 競り勝ったのは僕の方だ。

 

「コンセプトは良いと思う。だけど体の使い方を含めて、甘い点が多い。『フルカウル』の出力は10%くらいかな? まだまだだね」

 

 アドバイスを交えつつ、奮起を促す。平和の象徴(オールマイト)から“個性(ちから)”を受け継いだんだ。そこで足踏みしている暇が勿体無いよ。

 

「まだまだなのは、百も承知さ…だからこそ、学んでいくんだ!」

 

 立ち上がり。そう吠えた並行世界(パラレルワールド)の僕は、一旦僕と距離を取り―

 

「いくぞ!」

 

 猛然とダッシュ。横っ飛びやジャンプを組み込んだ…グラントリノを彷彿とさせる立体的な動きを見せ―

 

「でやぁぁぁぁぁっ!」

 

 僕の死角となる位置から、飛び回し蹴りを放ってきた。恐らく、並の相手だったら、逆転勝利を齎す乾坤一擲の一撃になっただろう。

 

「だけど…」

 

 今の僕には、十分余裕を持って対処出来るスピードだ。先程同様、スウェーバックで蹴りを回避し―

 

「せいっ!」

 

 カウンターの上段回し蹴りを叩き込んだ!

 

「ぐはっ…」

 

 壁まで吹き飛ばされ、崩れ落ちる並行世界(パラレルワールド)の僕。その直後―

 

「そこまで! 7分15秒、Aチーム全滅により、勝者! 緑谷出久!」

 

 セメントス先生の声に一礼し、僕は闘技場を降りていく。次はいよいよ雷鳥兄ちゃんの出番。

 どんな戦いを見せてくれるのか。出迎えてくれた麗日さん、耳郎さんとハイタッチを交わしながら、僕はワクワクがだんだん大きくなっていくのを感じていた。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。