出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
特別版 原作世界編を最終話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第12.8話:原作世界へ‐その8(終)‐

雷鳥side

 

 並行世界(こっちの世界)の出久と爆豪が、和解を果たして5日。今日も1-Aは仮免取得試験に向けて、特訓に励んでいた訳だが― 

 

「だから、左で蹴る時の踏み込みが甘ぇって言ってんだろうが! あと半歩内側に踏み込めや!」

「あと、蹴りだからって脚の振りだけに頼ってんじゃねぇ! 腰の回転使えや!」

「ご、ごめん! かっちゃん!」

 

 TDL全体に響く程の声をあげながら、()()()()()()()()()。この5日ですっかりお馴染みになった光景だ。

 まだまだぎこちない部分もあるが、2人は昔の関係に戻りつつある。もう心配はいらないだろう。

 それにしても…口調こそ荒いが、アドバイスの内容は的確そのもの。爆豪には指導者としての才能もあったようだな。

 

 

「よし、今日はこの辺にしておこうか」

 

 訓練終了15分前。次にTDLを使うB組も集まり始めたところで、俺は努めて明るく宣言する。その視線の先には―

 

「くそがぁ…今日も、勝てなかった…」

 

 俺達を相手にした実戦形式の模擬戦で力を使い果たし、倒れこんでいる1-Aの面々。

 まぁ、パッと見は1-Aの完全敗北だが…

 

「いやいや、初めて戦った時に比べたら、皆強くなってるぞ。平均して…4割増ってところかな」

 

 1-Aの皆も順調に実力を伸ばしている。仮免取得試験まであと10日。何事も無ければ皆、今の3倍は強くなれるだろう。

 

「それじゃあ、皆クーリングダウンをしっかりやっておくように。B組も時間通りに始めるから、ウォーミングアップ忘れるなよ?」

 

 A組とB組にそう伝え、俺達も水分呼吸をしようとしたのだが―

 

「み、皆さん! か、完成しました! ()()()()()が、完成しました!」

 

 TDLに駆け込んで来た発目の声で、状況は一変した。遂に完成したか!

 

 

出久side

 

「皆、待たせてごめんなさいね。ようやく完成したわ!」

 

 発目さんに連れられ、第二開発工房へ足を踏み入れた僕達を迎えてくれたのは、ネイビーのツナギに身を包んだメリッサさんと、並行世界(こっちの世界)の発目さん。

 そして2人の奥には、あの時見た物と寸分違わぬ物質転送機が設置されていて…僕達の心に、元の世界へ帰れるという思いが湧き上がってきた。

 

「メリッサさん、もう物質転送機は使えるんですか?」

 

 興奮を抑えながら、メリッサさんに問う。これからどう行動するかは、メリッサさんの返答次第だ。

 

「流石に今すぐは無理ね。本体とプログラムの最終点検に、エネルギーの充填…最短で2日、余裕を持って準備するなら3日ってところね」

「3日ですか。それなら…」

「あぁ、並行世界(こっち)の皆と、お別れをする時間は十分にある」

 

 僕の思いを察したのか、そう言って微笑む雷鳥兄ちゃん。

 この後僕達は、根津校長に物質転送機が完成した事を伝え…3日後の夕方に、元の世界へ帰還する事が正式に決定した。

 

 

梅雨side

 

「そうか。3日後に…」

 

 B組の訓練を終え、(ハイツ・アライアンス)に戻った私達は、先に戻っていたA組の皆に状況を説明。3日後お別れする事を伝えたわ。

 

「あぁ、B組の訓練が終わった後に出発する予定だ。仮免取得試験まで見届けられないのは、少々残念だが…残り3日間、出来る限りの事はさせてもらう」

 

 そう言って頭を下げる吸阪ちゃん。すると―

 

「だったら1つ頼みがある」

 

 爆豪ちゃんが声を上げたわ。何事かと、皆が視線を送ると…

 

「吸阪…3日後、訓練の最後で良い。俺と1対1(サシ)で勝負してくれ」

 

 覚悟を決めた表情で、吸阪ちゃんに勝負を申し込む爆豪ちゃん。これは少々予想外だわ。 

 

「……良いぜ、全力で相手をしてやる」

 

 周囲の驚きを尻目に、勝負を受ける吸阪ちゃん。文字通り()()()()()が決定ね。

 

 

(パラレル)爆豪side

 

 スカ…吸阪に勝負を申し込んでからの3日間は、文字通りあっという間だった。

 俺は出来得る限りの準備を整え―

 

「それじゃあ、そろそろ始めるか」

「あぁ…」

 

 吸阪との一騎打ちに臨んだ。

 

「それではこれより、吸阪雷鳥対爆豪勝己の模擬戦を行います」

 

 審判を務めるセメントスに続くように、俺と吸阪は互いに頭を下げ、構えを取る。

 

「はじめっ!」

閃光弾(スタングレネード)ッ!」

 

 開始と同時に、俺は閃光弾(スタングレネード)を発動。閃光と大音響で吸阪の目と耳を塞ぎ、その間に距離を取ると―

 

「くらいやがれっ!」

 

 両掌を向けた。体は十分温まっている。最初から全開だっ!

 

徹甲弾(A・P・ショット)機関銃(オートカノン)ッ!!」

 

 徹甲弾(A・P・ショット)を、()()()()()()()()撃ちまくる!

 俺より遥かに格上の吸阪に勝つには…いや、一矢報いるには、()()()()

 吸阪がギアを上げる前に、俺の全力全開(オーバートップギア)を叩き込む。これしかねぇ!

 

「………やったか?」

 

 両掌が出血するまで徹甲弾(A・P・ショット)を乱射し、立ち込めた煙が晴れるのを待つ。あれだけの攻撃を撃ち込んだんだ…効果無しって事は無い筈…。

 

「流石だな、爆豪。今のはかなり肝を冷やしたぞ」

 

 そんな声が聞こえた次の瞬間、一気に晴れていく煙。そこには―

 

()()()()()()()()のは、運が良かった…電磁バリア(ライトニングウォール)もギリギリだったからな」

 

 電磁バリアを展開し、攻撃を凌いだ吸阪の姿。何発か掠ったようだが、直撃は0かよ…

 

閃光弾(スタングレネード)で、視覚と聴覚を麻痺させて、徹甲弾(A・P・ショット)の乱射を叩き込む。よく考えられた作戦だが…()()()()()()()()な」

「…どういう意味だ?」

徹甲弾(A・P・ショット)機関銃(オートカノン)…だったか? その技は確かに強力だ。だが、いくら収束しているとはいえ、()()()()()。反動だって相応にあるし、連発すれば炎や煙が発生して、()()()()()()()

「ただでさえ反動が強い上に、視界も不良。単発ならまだしも、フルオートの射撃を狙った場所に一点集中で撃ち込む…なんて事は、まず不可能。違うか?」

「ッ!」 

「技の選択を誤った。とは、そういう意味だ。閃光弾(スタングレネード)を攻撃に組み込むのであれば、徹甲弾(A・P・ショット)は単発、もしくはバースト射撃で撃つべきだったし、逆に徹甲弾(A・P・ショット)機関銃(オートカノン)を組み込むのであれば、閃光弾(スタングレネード)は使わずに面制圧を行うべきだった」

「そのどちらかを選択していたら、俺の電磁バリア(ライトニングウォール)では防ぎきれず、直撃を何発も食らっていただろう」

 

 淡々とした吸阪の言葉に、俺は自らの作戦ミスを悟る。くそっ、確実に倒せる手段を取った筈が…

 

「完璧を期したつもりだったんだろうが…()()()()()()()()()()()()()。考え過ぎたな」

「ハッ…そうだな。たしかに考え過ぎだ…」

 

 俺とした事が、()()()()()()をやっちまった。

 

「最初っから…こうすればよかったぜ!」

 

 俺は両掌から滴る血を振り払い、拳を握ると…吸阪に殴りかかった! 吸阪も笑みを浮かべ、俺を迎え撃つ!

 そう…“個性”抜きでの、殴り合いだ!

 

 

雷鳥side

 

「流石と言うか何と言うか…()()という意味では、お前は俺より上だよ。爆豪」 

 

 5分に及ぶ壮絶な殴り合いを終え、俺は大の字で倒れている爆豪にそう呟く。

 

「ハッ、負けた人間に対して…嫌味かよ」

「いいや、本心。喧嘩殺法であそこまでやられちゃ、武術やってる立場が無いよ」

 

 そう…最終的に勝ったのは俺だが、才能やセンスという点では、爆豪が圧倒的に勝っていた。

 俺が勝てたのは、10年以上続けてきた武術の積み重ねがあったからこそ。爆豪の喧嘩殺法を辛うじて上回る事が出来たのだ。 

 

「まぁ、その気があるなら、今からでも武術を始めてみな。きっと役に立つ筈だ」

「……前向きに検討するわ」

 

 そう言って、俺の差し伸べた手を掴み立ち上がる爆豪。うん、すっかり憑き物が落ちた…良い顔をしている。

 こうして、1-Aへの最後の指導は無事終了した。さぁ、次は1-Bだ。

 

 

出久side

 

 B組の訓練も無事終了し、遂に僕達が元の世界へ戻る時がやってきた。

 見送りの為、根津校長やオールマイトを始めとするとする教師勢、A組とB組の生徒が第二開発工房に集合する中―

 

「物質転送機の最終点検完了。いつでも出発できるわ」

 

 メリッサさんが()()()()と行った最終点検でも異常なし。あとは出発するだけだ。

 

「飯田君、拳藤さん、これを受け取ってほしい」

 

 出発前にA組委員長(飯田君)B組委員長(拳藤さん)へ、僕が差し出したのは2つの紙袋。中身はそれぞれ()()()()()()()だ。

 

「皆の“個性”、その長所や短所、応用方法なんかを纏めた物だよ。今後の訓練に役立ててほしい」

「こんな貴重な物を…ありがとう、出久君! 生憎、何も形に出来る物を返せないが…立派なヒーローとなる事で、この恩は返させてもらう!」

「このノート、大切に使わせてもらうね!」

 

 感動のあまり涙を流す飯田君と、頭を下げる拳藤さんに微笑みながら、並行世界(この世界)の僕にも声をかける。

 

『ワン・フォー・オールについて』(昨日の夜話した事)、忘れずに鍛錬を頑張って。爆豪君と仲良くね」

「うん、君も頑張って…って、僕が言える柄じゃないね」

 

 困ったように笑う並行世界(この世界)の僕。僕も苦笑いしながら―

 

「お互い、立派なヒーロー目指してに頑張ろう」

「…うん!」

 

 互いに拳を合わせ、別れを告げる。

 

「俺直筆のレシピ帳だ。星の数で難易度がわかるようになってる。()()()()()()()()()誰でも、美味い飯が作れるから、これ読んで頑張れよ」

「なんと心強い物を…吸阪さん、感謝しますわ!」

 

 雷鳥兄ちゃんは、直筆のレシピ帳を女子代表の八百万さんに渡し、麗日さん達もそれぞれに別れを告げていく。そして―

 

「それじゃあ、そろそろ出発するわよ」

 

 遂に出発の時間がやってきた。見送りの皆が安全圏まで退避したのを確認し、メリッサさんと発目さんが機械を操作。

 

「データ入力完了。転送開始!」

 

 物質転送機を起動する。あの時と同じように駆動音が響き…銀色の光がポッドから放たれ―

 

「「「「「お世話になりました!!」」」」」

 

 そう言って僕達が頭を下げた直後、銀色の光が僕達を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、僕達は無事に元の世界へ戻ってくる事が出来た。

 不思議だったのは、並行世界(向こうの世界)で10日間を過ごした筈なのに、こっちの世界ではたったの100分間の失踪だったと言う事。

 メリッサさんが、『世界の壁を越えた際に時空の歪みが生じた』とか言っていたけど、詳しい事はわからない。

 間違いなく言える事は、並行世界(パラレルワールド)で過ごした10日間は、決して夢や幻なんかじゃないと言う事。

 そして、今回の騒動を起こした発目さんに、()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という重い処分が下されたと言う事だ。 




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

もう1本短編を投下し、次々回よりヒーローインターン編をお送りします。
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